呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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第七話

「ご機嫌よう、公爵。此度は大変愉快な催し物に招待して下さり感謝しているわ。これを機に両家の関係がより良いものとなる事を願うわね」

 

 要約すると、ウチの娘の婚約が決まって早々に何やってるんだ。お前の娘が問題児だって恥晒したし、婚約に関する契約は有利にさせて貰うぞ、である。

 

 リアスとライザーの結婚が早まったことで開催される今回のゲーム、多くの貴族がライザーの勝利を疑いもせず、茶番程度に思っている。そんな中、次期次期当主であるミリキャス(恐らくミリキャスが有力な次期魔王候補の為)の婚約者の母であるリェーシャと兄であるザナクも招待されており、リアスの父である公爵と会って開口一番に出た言葉が上のである。

 

「は、ははは……。善処いたします」

 

 本来地位は公爵家の方が高い。今回の件で負い目があるにしろ、周囲のグレモリー関係の貴族が何か言いそうなものだが誰もが口を閉ざす。彼らにとって公爵よりも彼女に流れる血の方が大切なのだ。

 

「私は今後について話をしておきます。貴方は来ている婚約者候補を中心に挨拶周りでもしていなさい。くれぐれも恥を晒すことが無いように」

 

「はい、分かりました。では、僕は此処で……」

 

 公爵達に一礼し去ったザナクは取り敢えずと婚約者候補達と言葉を交わす。縁談話が終わりかけていたのが復活し始めた事に喜びがあるのか嬉しそうにしている彼女達に笑みを向けながらも婚約を決定させるような事は言わず、一通り挨拶をすませると今度は関係のある貴族の所へと向かって行く。最後に向かったのはリアスとは従兄弟だからと一応派遣されたマグダランの所だ。

 

 

「やっほー! いやぁ、挨拶周りって疲れるよねぇ」

 

「意外と元気だな、おい。レイヴェルの事で落ち込んでいただろう、お前……」

 

 何時もと何一つ変わらない友人の姿に複雑な心境のマグダランは呆れたように肩を竦める。取り敢えず落ち込んだままでなくて安心したようだ。次期当主の座を失って両親の関心も失った彼にとって話し相手は見下していた兄か、ザナク達の数人しか居ない。だからこそ本気で心配していた。

 

 

「確かに寂しいけど、何時までも落ち込んでいたら僕のお嫁さんになってくれる子に悪いでしょ? それに今までのようなベタベタした関係じゃなくても友人や親戚として付き合えば良いだけだからね。……だから今はお嫁さんになる子の将来が心配かな。ほら、あの人と比べられるだろうからさ」

 

「……確かにな」

 

 マグダランの耳にもリェーシャの敏腕っぷりは届いている。彼女がアルシエル家に嫁いでからインフラ整備を筆頭に教育研究医療等、各機関の発展は目覚ましい。実際、旧政権時には父や兄を差し置いて彼女が祖父の後を継ぐのではとさえ噂されていた程だ。それに加え見た目はリリスに瓜二つだといわれ、ザナクの婚約者は彼女と比べられる事を覚悟しなければならなかった。

 

「当主代行としてのあの人は尊敬しているんだよ、僕。将来的に僕の子とメアリーの子を従兄弟同士で結婚させる気らしいし、その時の為に来年からは冥界に戻ってキッチリ仕込むって言われたよ。……参ったなぁ」

 

 ザナクが肩を落として落ち込む中、リアスとライザーの戦いが始まろうとしていた。

 

「……お前、本音はリアスに勝って欲しいんじゃないのか? 多少薄くなってもグレモリーを通じて繋がるからとレイヴェルが候補から外されたが、ライザーとの婚約が破談になれば……」

 

「マグダラン、僕達は貴族なんだ。部下や領民に死ぬであろう命令を下すこともあれば命を捨てる気で行動する必要もある。……だから心くらい殺さなきゃ。今は悲しくても、将来より多くが笑っていられるようにしなきゃ……でしょう?」

 

「……だな。すまん、失言だった」

 

 ザナクの言葉にマグダランはそっと目を伏せる。一見呑気なだけに見えた友人がどれほど考えて行動しているのか、それをちゃんと考えて行動していなかったのを恥じているのだ……。

 

 

 

 

 

「……何というか妙な技だな。効果は有るようだが……」

 

 ゲーム開始時、マグダランはザナクの勝敗に対する予想を聞いていた。一誠が倍加した力を他所や他人に付与する譲渡の能力を使えるようになっているか、体に負担がかかるのでどれだけ温存してライザーに挑めるか、それが鍵だと言っていた。リアスの持つ滅びの魔力の威力は高く、一誠が最大まで倍加して譲与した状態で全力で魔力を放てばライザーの不死を破れる可能性はあるとの事。

 

 ただ、避けられたら逆にピンチを招くし、リアスの性格から仲間がしがみついて動きを止めている間に諸共、と言う作戦は無理だろうと考えていた。そしてゲームが開始して初戦、一誠は小猫と共に舞台となった駒王学園のコピーの体育館に突入し、開発した技でライザーの眷属を裸にした。

 

「ゲームって大勢が見てる訳だし、羞恥心は強く感じるから効果は有るよね。でも、貴族の子女相手に使ったら家の間で問題になりそうだね」

 

 何処からどう見ても性欲の為の技だが、二人は効果はあると評価していた。但し、貴族の間で行う競技である以上は何らかの問題になりそうだとも思ったが。戦う家同士の関係で勝敗が左右されるのは知られており、民衆に貴族の力を示す軍事パレード的な要素がある以上はショーとしての面からは受けても、貴族の品位を気にする者からは評価を貰えないだろうと。

 

「……さて、いきなり倍加を使った上に戦闘まで……どう響くかな?」

 

 ザナク個人としてリアスの勝利を望む気持ちを押し殺し、貴族としてライザーの勝利を願う中、リアスの眷属は奮闘するも徐々に消耗していった。

 

 まず、小猫がライザーの女王であるユーベルーナの奇襲で脱落。朱乃が戦っている間に木場と合流、譲渡の力もあって残りの眷属を撃破した後、リアス側に回復要員が居ないので秘薬を持ち込んでいなかったユーベルーナを辛くも撃破した朱乃が合流し、残った四人でライザーを攻め立てた。

 

 彼女達は奮闘したと言えるだろう。事実、ライザーの傷が癒える速度が落ちてきて追い詰めていたのは確かだ。だが、途中で一誠が限界を迎えた時から形勢が一気に傾いた。リアス達は良くも悪くも仲間を想いすぎているのだ。だから一誠に気を取られた瞬間に木場が落とされ、それでも追い詰めるも消耗していた朱乃も脱落、最後まで粘るも経験の差でライザーが勝利を収めた。

 

 試合内容こそ観客の多くが予想を超えられたが、結果は予想通りの内容。かくしてリアスとライザーの結婚は数日後に行われる運びとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「……あーなんだ。悪かったな、レイヴェル。俺が負けてりゃ今頃よ……。お前が彼奴と結婚した場合でもグレモリー家との繋がりは強かったし……」

 

 結婚式当日、お祝いの言葉を言いに部屋を訪れたレイヴェルに対しライザーは多少気まずそうだ。ハーレム主義でやや変態の彼だが大勢の眷属に慕われ、ハーレム内でギスギスした空気が流れないなど気配りも出来る所もある。だから妹がザナクと結婚出来ない事に多少なりとも罪悪感を感じているらしい。

 

「いえ、何を仰います、お兄様。なるべくしてなったという事です。……それに実は気後れしていましたの。レェーシャ様という姑と比べられるであろう事に。だから平気ですわ……」

 

 気丈に振る舞うも兄であるライザーには見抜けていた。だが全ては遅い。今更婚約破棄など無理な話だし、彼にも公爵家に婿入りするという野心もある。どちらにせよ式は間近に迫っていた

 

 

 

 式に集まった両家の関係者や招待客。その中にはリアスの兄であるサーゼクスも居て、あることを今か今かと待っていた。そして、その時は訪れる。

 

 

 

「リアス・グレモリーの処女は俺の物だーーー!」

 

 式の最中、サーゼクスの手引きで会場に入った一誠が乱入する。自分がリタイアした時の仲間の表情が頭から離れず、ゲームの為に頑張っていたリアスの為、この結婚を許す訳には行かなかった。

 

 

 だが、彼の行動を許せない者がこの場に居た。今回の騒動によって振り回された友人達の姿を見ているだけしか出来ない自分に無力を感じていた者が。

 

 

 

「……けるな。ふざけるな、貴様ぁっ!! ザナクがっ! レイヴェルがっ! 家の為、領民の為にどれだけ自分を押し殺していると知っているのかっ!! それを貴様は条件を飲んだ上で負けていながらっ!!」

 

 激昂と共にマグダランの体から魔力が溢れ出す。一誠は邪魔するのならと拳を構えるが、マグダランの横にもう一人並び立った。

 

 

 

 

 

 

「リアスの事を想って行動したのだろうが……弟に手を出そうというのなら俺が、このサイラオーグが相手になろう」

 

 若手ナンバーワンと称されるバアル大王家次期当主が一誠の前に立ちふさがる。マグダランは余計なことをと一瞬思ったが、サイラオーグが自分を見る目に気付き、思わず笑みがこぼれる。家族と言える者達の中で唯一自分とちゃんと話をしてくれるのは兄だけだと、彼はこの時ちゃんと認識した。兄弟の絆が芽生え始めた瞬間であった……。

 

 

 

 




アンチする気はないのよん でも友人が必死に心を押し殺しているのに黙っていられなかったんです、彼 兄貴との和解も進めたかったし

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