呑気な悪魔の日常   作:ケツアゴ

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顔合わせで上層部が大王家が魔王になるのは前代未聞とか言ってたし、何回か世代交代したのかな、魔王?

でもリゼヴィムが初代の息子なんだよね? 

初代の子孫とは言われてもカテレアたちは娘や息子とは言われなかったし、ルシファー以外は早く生まれて何回か交代したのかな? 

政権奪還後、何度か選出されて現在当選したのがサーゼクス達とか?

どうも代表程度の扱いになってたし


第八話

(茶番ね、茶番。実にくだらないわ)

 

 結婚式に乱入した一誠と、それに立ち塞がるバアル兄弟の姿をリェーシャは冷めた目で見詰める。冥界に居ない筈の彼が、この結婚式場に来ている時点で誰かの手引きがあるのは間違いなく、突入時に驚いた顔をせず、兄弟の行動に僅かに慌てた様子のサーゼクスが妹の為にやったのだと直ぐに思い当たった。

 

「まぁ、落ち着き…」

 

「貴方達、静まりなさい。貴族たる者が易々と賊の前に立ち塞がるものではないわ。警備兵の仕事を取るものではなくてよ」

 

 これから自分が仕掛けたサプライズの余興とサーゼクスが言おうとした時、リェーシャの声が割って入る。その声に誰もが注目し、同時に圧し潰されそうな威圧感が乱闘に突入しようとした三人に降り掛かった。特に一誠には念入りに降り掛かり、ぜぇぜぇと息苦しそうにしながら膝を付いていた。

 

「結婚式の最中に下劣なセリフと共に乱入してきたその者と、感情的に立ち向かおうとした青二才。そして本来なら兄として次期当主として止めるべきにも関わらず義務を果たそうとしなかった愚か者。貴方達、悪魔の名に泥を塗る気かしら?」

 

 顔も声も冷静そのもので感情など全く感じさせないが、まるで心臓を直接掴まれているような悪寒を三人は感じている。そして矛先はサーゼクスに向けられた。

 

「……この騒ぎ、貴方の仕込みでしょう。ルシファーの名を継いだ自覚はあるのかしら?」

 

 場がざわつきサーゼクスに視線が集まる。笑みを浮かべた仮面を崩さないサーゼクスだが冷汗が流れるのを感じていた。場の空気は完全に目の前の彼女に支配され、流れを作って展開を操るのは困難になって来ている。下手をすれば一誠が罰せられて終わる可能性さえあった。

 

「お気に召さなかったようで残念です。私としては妹の結婚を祝って余興を用意しただけの積もりだったのですがね。フェニックスの才児と赤龍帝の一騎打ちなんて盛り上がりそうな演目だと思いませんか?」

 

「式の主役の片方が余興に参加してどうするのよ。そんなのは関係者が二人を祝って……口を出すのも馬鹿馬鹿しくなって来たわ。私は関与しないから好きにやったら?」

 

 これ以上話しても無駄だというようにリェーシャはワイングラス片手に部屋の隅へと向かっていく。心中でホッと胸を撫で下ろしたサーゼクスはライザーにどうするか問うが、この空気で断れる筈もない。続いて一誠に彼はこう言った。勝った場合の褒美は何が良いか、と。

 

「部長を、リアス・グレモリーを返してください」

 

(……貴族に眷属が付随するのであって、眷属が主を返せというのはどうなのかしら。主がいる場所が眷属の居場所であって、眷属がいる場所が主の居場所ではないのに……)

 

 ワインを口に含みながらリェーシャは一誠の姿を眺め、次にライザーに視線を向ける。少しだけ面白くなかったので口を挟む気になった。

 

「なら、ライザーの方にも褒美が必要ね。勝ったら……生き残っている初代達や上層部に口をきいて最上級悪魔にしてあげる。最年少だもの、凄い快挙よ。……精々励みなさい」

 

 元々ライザーは婚約破棄をかけた試合に勝って今回の結婚式をしている。ならば再び破棄を願うというのならライザーにも褒美は必要だ。元々この場に集まったのは両家に関係ある者達であり、ライザーの出世は自分達の利益にも通じる。異論の声は上がらなかった。

 

(これで手を抜くようなら仕方ないわね。私からすればどちらでも構わないのだし……)

 

 ライザーの視線の先、ザナクやレイヴェルがいる方向を見たリェーシャはグラスを傾けて喉を潤した。

 

 

 

 

「さっきは僕の為に怒ってくれて有難う。でも、大丈夫? 後で大王からみっともないって怒られない?」

 

「なに、構わん。友人の為に怒った結果なら名誉の負傷という奴だ。……使える金が減らされたらお前に借りるがな。無利子無担保無返却で頼む」

 

「いやいや、せめて十日に一割の利息は貰わないと」

 

 冗談を言い合い笑いあう二人。その輪に入りたそうにしながらも出来ずにいるレイヴェル。一誠との戦いが始まる寸前、ライザーはその姿を眺めていた。

 

 

「行くぞ、焼き鳥野郎っ!」

 

「あのなぁ、ゲームの前やら最中なら挑発として見逃されるけど他の場で言ってたらフェニックス家に喧嘩を売っているようなもんだぞ、小僧」

 

 戦いの前だというのにライザーには少々やる気が見られない。それどころか観客に聞こえない声で呟いてさえいた。

 

「……最上級悪魔かぁ。なりてぇなぁ。兄貴達を追い越してとか最高なんだけどなぁ」

 

 気怠そうに髪を掻き毟り少しの間迷った彼は大きく溜息を吐くと全身から炎を噴出した。龍の鱗すら焦がすという不死鳥の炎。周囲の空気が一気に熱せられる。

 

「俺もフェニックス家の一員として此処に居るからなっ! 悪いが無様な戦いは見せられん、死んでも文句は言うなよっ!!」

 

 本来ならば遥か格上で勝率ゼロの絶望的な相手。だが一誠には奥の手があった。片手を犠牲にした一時的な禁手。出来れば聖水や十字架でも有れば良かったが生憎伝手が無いので手に入っていない。正面からの対決、それも短時間での勝利。それを目指していた。

 

 

 殆どの者ががライザーの勝利を信じて疑わない中、接近戦を繰り広げている最中にライザーが一誠にのみ聞こえる声で話し掛ける。わざと拳を食らって体勢を崩すから、そこに全力の魔力を叩き込めと。

 

「誰が騙されるか、馬鹿にすんなっ!」

 

「……良いから聞け。俺とリアスの結婚か、妹と妹が惚れてる男との結婚かで話が割れて、既に決まっていた俺とリアスの結婚に決まった。だが、此処で俺が負けて破談になれば妹のチャンスが生まれる。泣きそうなのを押し殺してたんだよ、あいつはっ!」

 

「……お前だって部長と結婚したいんじゃないのか?」

 

「したいが、気が変わった。どっちにしろ魔王様に恨まれそうだし、どっちにしろ家の為になるんなら妹が笑っている方が良いに決まってるだろっ!」

 

 最初は疑っていた一誠だが、ライザーの気迫に圧され真実だと悟る。そしてライザーの言う通りに一誠の魔力が彼を飲み込み、意識を持たせようとしなかった彼は気を失った。

 

 それを予想していたようにリェーシャはグレモリー公爵の所に向かって行き、今後について話がしたいと告げる。ライザーが勝つにしろ、一誠が勝たして貰うにしろ、何方でも得をするような考えに既に至っていた。

 

 

 リアスと共に一誠が去っていき、ライザーは医務室に運ばれる。安静の為に人払いが済んだ所でレイヴェルが溜息を吐いた。

 

 

「……お兄様、起きてらっしゃいますわね」

 

「バレたか。俺の演技も捨てたもんじゃないと思ったんだがなぁ」

 

 既に意識を取り戻していたライザーが上半身を起こして舌を出した時、レイヴェルが彼に抱き着いた。

 

「……有難う御座います」

 

「おいおい、これからだ、これから。後はお前次第だからな? 俺が譲ってやったんだ、確実に婚約者になれよ」

 

 レイヴェルの頭を軽く叩きながらライザーは笑う。婿入りも最上級悪魔の座も駄目になったが、まぁ良いかと自然と笑みが浮かんでいた……。




感想お待ちしています

リェーシャさんの実家、分かっても内緒で バレバレかもしれんけど 今までヒント出てたし

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