『どうですかご子息の対決をこのような舞台で観ることに』
『ええ、親としては非常に嬉しいです』
『監督、一野球人としてはどうでしょう』
『才能という面では由太郎の方が上ですが、直接対決となると若干魁の方が有利ですかね』
『なるほど、屑桐選手はいかがですか』
『ええ、高校時代由太郎とはバッテリーを組んだこともありますが非常に対応力の良い選手でしたね』
『なのでこの場面も先制点を取るための打撃をするか、兄と個人同士の勝負をするか考えていると思いますね』
『魁の方も選抜でチームメイトだったのですが、自分を見失わない冷静さが武器の選手だと思います』
『なのでどんな場面でも関係なく自分のピッチングをすることで勝利に近づけるのではないでしょうか』
(ほう、よく見とるなこいつ)
『いやあ素晴らしい考察眼ですね、ありがとうございます』
1アウト3塁
打席にはパ・リーグ首位打者.373の村中由太郎。
対するは入団から7年連続2桁勝利、安定感抜群の村中魁。
2人は交流戦などで度々対戦したことがある。
結果は7打数1安打。
対戦成績を見ると魁の優位が伺える。
キンッ
3球目のナックルをすくい上げてライトへのフライ。
『少し浅めのフライ!』
『ライトには強肩の牛尾!!』
『タッチアップには厳しいか!!!』
飛鳥「当然行くよ♪」
ダッ
『スタートしたーーーー!!!!』
ほぼ完璧なスタート。
周りから見るとライトの牛尾には選択肢があった。
浅いフライ、スタートがシビアななか捕球のタイミングをずらしスタートさせないこと。
普通に捕ってランナーをアウトにすること。
野球を愛する牛尾には、前者の選択肢は存在しない。
こちらも完璧な捕球、持ち替え、スローイングで対応した。
月「ナイスボーーーーーー!!」
ホームベースの1歩前、ストライク送球を捕球した月がすぐにタッチへ行く。
飛鳥もホームプレートの右寄りにスライディングし左手でタッチしようとする。
フライの浅さを考えれば恐ろしく高い走塁技術だったが、牛尾の守備力が上回った。
「アウトオオォォ!!」
飛鳥「やられちった♪」
牛尾「流石にあの浅さだったらね」
御柳「けっオレに任せればいいのによ」
この勢いに乗りたいワイルズの次の先頭は猿野。
ドクンドクン
この時が来たんだな。
どうしても負けられない戦いがある。
あいつのすかしっ面ゆがませてやるぜ。
牛尾「君たちがいよいよ激突するのか」
××××××××××
猿野高校2年生
埼玉予選決勝戦後
牛尾「大事な話があるんだ」
「僕はいまプロ野球球団を作って2年後のシーズンから参入することを考えているんだけど」
「君たちをそのチームのドラフト第1号として来てもらいたいなと思っているんだ」
何を言われたかよくわかっていない猿野と犬飼。
牛尾の実家は考えられないくらいのお金持ちで、それら込み込みで新規参入の話が出たようだ。
要約すると2年後、つまり猿野たちが高卒1年目に新球団が誕生する。
その新規球団ということで高卒に限りドラフト一位を2人優先指名できるということだ。
ドラフト二位の指名権は無いが一位の抽選も存在しない。
猿野「てことはプロになるってことか」
(プロ、そんなこと考えたことも無かった)
(スポーツ嫌いだったオレがプロ野球選手?)
猿野は惚れた女子にスポーツしている男子のせい?でことごとく振られてきたことからスポーツが嫌いになっていた。
しかし、高校1年の春に野球部マネージャーの凪に一目惚れしたことで野球部に所属する。
(この犬はそういうことも考えていたのか?)
犬飼「牛尾キャプテン」
牛尾「もうやめてくれよキャプテンじゃないんだから…」
犬飼「こんないい話をしてもらったけどすみません、お断りします」
猿野「!!」
「なに言ってるんだお前は!プロ野球選手になれるんだぞ!」
ふーっと息を吹き話し始める。
犬飼「とりあえず、プロ野球選手になることは当たり前だ」
「大神さんを超える世界一の投手になるのも当然」
「その中で…」
また一呼吸置く。
「お前と戦いたい」
「こんなこと言いたかねえが」
「チームメイトじゃなくてライバルとして戦いたい」
猿野「!!」
(こいつ、こんな…!)
犬飼「冗談だ」
猿野「へ?」
犬飼「バカ猿とこれ以上チームメイトでいたら脳みそが腐っちまうからな」
猿野「……んだと!!」
ここからいつものケンカ、言い合いが始まる。
牛尾は懐かしそうにその光景を見ていた。
085発目の続きでした。
次回は明日の夜に投稿したいと思います。