『今日でレオンズが日本一に王手をかけましたが、ワイルズの状態はどうでしょうか』
『そうですね、悪くはないと思うのですが』
『まずはホーム一勝することですね』
ピンポーン
「はーい!」
『おそらく明日先発予定の村中魅投手が1戦目同様のピッチングを見せてくれたら……』
「あなたーお客様よー!」
「ん?」
そこの家主は子津忠之介。
スポーツニュースを観ている最中に訪問者が現れた。
その訪問者の名前は猿野
子津「猿野くん!?どうしたんすかこんな時間に!」
時刻は午後11時を少し回ったところ。
翌日も試合のため早く自宅に帰って早めの睡眠をとるべきなのだが。
猿野「子津よ」
子津「……なんすか」ゴクリ
普段からおちゃらけた態度の猿野は高校時代よくキャプテンだった子津にとがめられていた。
それによって猿野も暴走しすぎることもなくいいバランスを保ったチームだった。
その猿野が真剣な表情を見せる、それもとても深刻そうな。
猿野「ちょっと出られるか?」
2人は公園に移動してキャッチボールを始めた。
バシッ
バシッ
高校時代にもこの公園でキャッチボールをしたことを2人とも覚えている。
このキャッチボールという競技は普段言えないようなことも、
ボールの受け渡しによりコミュニケーションを取ることができる。
猿野「来年……」
子津「来年?」
バシッ
重そうな口を開いた猿野だが、子津はその話し始めが意外だった。
次の試合で敗退すれば日本一になれないこの日に、口を出た言葉が来年…。
てっきり明日の相談かと思っていた子津にとって猿野から出てくる言葉は全く予想できていないものだった。
猿野「来年、というか今年か」
「子津、お前をトライアウトで取る動きが出ている」
バシッ
子津「え!?!?!?!?」
寝耳に水だった。
普段の子津は十二支高校の監督をしている。
しかし、教師をしているわけではない。
部活が始まる前の平日は独立リーグに所属し、試合や練習に出ている。
土日も部活が半日であれば午前午後どちらかには独立リーグに顔を出していた。
プロ入りを諦めていないと言っていた子津だったが、本当になれると思っていたかというと別の話。
ケガをしてすぐに羊谷のあとを受け監督になった子津は、これまでに何人かのプロ野球選手を排出した。
その度に羨ましいというか嫉妬の気持ちがあったが、先日の丹羽の指名にはほぼ祝福の気持ちしかなかった。
28歳という年齢、今年のドラフトでも指名されていない事実。
これらから子津はほとんど諦めてしまっていたのかもしれない。
猿野「牛尾キャプテンと同じようにトライアウトを受けてほしい」
「もちろん結果次第では落ちるだろうけどうちは取る気でいるって言ってたぜ」
子津「……猿野くん」
子津の頭が整理され、プロ野球への道が開いたことが理解された。
幼少期からの夢がプロ野球選手。
ほぼ掴みかけていた夢を手放してしまったことがある。
再び掴んだチャンスを自覚し、子津は泣いた。
子津「すびまぜん、猿野ぐんにとっで大事な日なのに」
猿野「ああ、本当はシリーズ前には知ってたんだけどよ」
「なんつうか負ければ終わりって追い込まれてる中でよ」
「お前と会って話したいって思ったんだよな」
「うんうん、やっぱり子津くんと話すと安心するんだよね」
「コクコクッ」♪
子津「なんでいるんずか!」
まだ泣き止まない子津。
そこに現れたのはかつてのチームメイト達。
兎丸「なんでってあんちゃんに誘われたんだよねー」
司馬「ニコッ」♪
猿野「子津、観ていてくれ」
「絶対に日本一になるからよ」
もちろん積もる話があった3人だったが、夜も遅いためすぐに解散した。
勝負の第5戦。
というよりもワイルズにとってはここから全ての試合が負ければ終わる試合。
猿野「高校時代と一緒じゃねえか」
御柳「さ、今日で終わりだろ」
由太郎「打って打って打ちまくるぞー!」
飛鳥「凪が泣いちゃうかもしれないな♪」
牛尾「みんな行くよ!」
魁「相手に不足はない」
猿野「終わらせてたまるか!」
実際のトライアウトの仕組みは知りません。
次回は明日の夜に投稿したいと思います。