子津「さあ、行くっすよー!」
7対5で2点差を追う6回裏。
8番の打順に入っていた鹿目に代わって代打子津。
ピッチャーは同い年、何度も激闘をしてきた元黒撰の沖。
変化球を得意とする彼だが、軟式ボールは変化しづらい特徴がある。
そのため狙い打たれると、
カキンッ
沖「あーあ」
紅印「まあ!」
黒豹「あいつ、バッターでプロ入りしてもええんちゃうか」
笑顔でそれでいてゆっくりグラウンドを駆ける子津。
レフトのフェンスを越えていくホームラン。
子津は同級生のレギュラー陣で唯一プロ入りしていないため落ちこぼれかと思われがちだが、そうではない。
そもそもケガが無ければプロ入りしていただろうし、実力は当時の十二支で3本の指に入る。
兎丸と司馬はそれぞれ走塁、守備のスペシャリストとして新設した牛尾ワイルズが欲しがった選手たち。
辰羅川は犬飼の不調で埼玉レオンズが専用機として獲得した捕手。
3人はコネ入団といってもいい形でプロの世界に入っている。
しかし、子津は違う。
当時キャプテンを務めたこの男は猿野、犬飼に勝るとも劣らない実力をつけチームを牽引。
打たなければ負けの場面、猿野は敬遠など勝負を避けられやすいため子津に回ってくることが多かった。
打たれれば終わりの場面、先発が犬飼で救援が子津という形をとっていたため子津が登板していることが多かった。
そのいずれの逆境にも恐れることなく立ち向かい、果ては全国制覇を成し遂げた。
甲子園優勝記念雑誌には猿野、犬飼の間に入るようセンターで表紙に写ったこともあった。
「相変わらシュアなバッティングだなあ」
「僕らがいた時はあんな感じじゃなかったのにね」
「子津くんはほんとにすっごくがんばったんだよー!」
グラウンド外で4人で話す人影。
4人目はサングラスをかけ、無口な様子で頷いている。
4人のうち3人は一般の人よりも高身長なため、それが集まっていると何となく目立つ。
観客の何人かも、もしかしたら彼らなんじゃ?みたいな顔はしている。
しかし、オーラなのか何か、話しかけられない雰囲気が出ていた。
黒豹「よし!次はわいにまかせい!!」
子津「うす!頼みます!!」
子津は軟式ボールでは投げないのでこの一振りで出番は終了。
このホームランを皮切りに十二支打線は勢いづく。
9番黒豹、1番亥狩の連続ヒットでチャンスを作ると、2番の巳上の内野ゴロでランナーが進塁する。
沖「これ以上好き勝手されるの嫌だなあ」
キンッ
泥片「草次くん!!」
バシッ
三遊間抜けそうな当たりをサードの泥片がダイレクトキャッチ。
「お、エロ師匠ばりのホットコーナー」
「やっぱり仲いいんだな」
2アウト2.3塁となってバッターは虎鉄。
獅子川「すまんッ」
虎鉄「大丈夫っすYo」
(むしろ打てばヒーローDa)
そう、逆転の一打を放つヒーローになれるこの場面でグラウンド外がざわつく。
虎鉄(Fu、オレ様に期待が止まらねえってKa)
目線を外に向ける虎鉄の目に飛び込んできたのは大きな人だかり。
虎鉄「Ha?」
黒豹「なんやなんや??」
猪里「どしたんね、いったい」
子津「あ、あれは……」
人だかりの正体はもちろん猿野たちワイルズ兼十二支OBの4人だった。
気づいた観客の1人が勇気を出して声をかけると、そこからは自分も気づいていたと言わんばかりの大群が4人に押し寄せる。
「猿野選手ですよね!!」
「わあ!牛尾選手!!サインください!!」
「兎丸選手!どうしたら足が速くなるんですか??」
「司馬選手!サングラス貸してーーー!!!」
少し騒動になってしまい、試合も一時中断してしまう。
虎鉄「っのやろう、せっかく俺がYo」
蛇神「あやつららしい也」
亥狩「先輩たちオレの活躍見てたんかなあ」
猪里「来てくれて嬉しいばい」
獅子川「とうとう来たか!オッレのライバル!!」
軽口を叩きながらも笑みがこぼれてしまう虎鉄や他の十二支OB。
それは対戦相手も同じのようで。
沖「なんか見たことある顔だ」
紅印「あら、いい男がたくさんっ」
玄渕「おお、有名人!」
椿「けっ、ちやほやされやがって」
泥片「私の美しいプレーを観にきたのだろうか」
久芒「ずずず、あいつらとあんまじゃべっだことねえ」
一方、試合終わりにかっこいい登場をしようとしていた猿野はファンに囲まれてんやわんや。
対応に追われてグラウンドにいる旧友たちに挨拶すら出来ない状態だった。
猿野「こんなはずじゃ…」
猿野たちは何しに来たのでしょうか。
次回は明日の夜に投稿したいと思います。