準々決勝第二試合は
スタンドの記者、スカウト達。
「総合力なら黒撰高校かなあ」
「今大会は沖くんの安定感がいいですよね」
「それになんてったってナンバーワンバッターの村中由太郎がいる」
「これが今年のドラフト生じゃないってのがなー」
「今プロに行っても通用しそうですけどね」
記者達は昨年の埼玉代表で全国区になった村中由太郎がかつての大打者村中紀洋の息子だと知ると
もちろんそう位置づけるだけの実績が由太郎にはあった。
公式戦成績
打率6割 出塁率7割5分
本塁打25本
練習試合を含めた本塁打は既に73本
公式戦本塁打25本は10年間県内で負けていない華武高校の4番御柳と同じ数字である。
ただ華武は甲子園、関東大会、明治神宮大会など公式戦が多いため御柳の本塁打が多いのは当然と言えば当然だった。
一回裏
音瓶高校の攻撃
ツーアウトから3番バッターの打球は三遊間に転がる。
涙山「そこは抜けないと言っておるだろう」
バシッ
十藤「おい、それオレの
涙山「私に捕ってくれとボールも言っておったぞ」
しかし、涙山はファーストに暴投してしまう。
十藤「はっは、ざまあ」
由太郎「しっかりしてくれよ」
沖「はあ、もうどうでもいいよ」
猿野「あいつら去年の三遊間みたいでおもしれえな」
子津「でも暴投っすよ」
辰羅川「いえ、あれは普通ヒットになる打球ですよ」
バッターは4番の玄渕
春の練習試合で犬飼からホームランを放っている。
犬飼「………」
今大会もキャプテンとして6割4本塁打15打点と素晴らしい成績を残している。
由太郎(沖!)
沖「コクッ」
シュッ
沖が投げたのはゆっくりのボール。
フワッ
玄渕(失投か?)
昨年の黒撰高校にはキャプテンでエース、村中紀洋の長男である村中
その魁の決め球がナックルボール″小町″。
ふらふら揺れるボールである。
それが1年の時を経て復活する。
後輩の沖の手によって。
玄渕(揺れた、ナックル!)
ブンッ「ストライク!」
初球でうまくナックルを印象付け玄渕を打ち取る。
辰羅川「またあのボールですか」
猪里「去年は蛇神さんのおかげで何とか勝てたばってん」
虎鉄「勝ち上がってくるなら厄介だZe」
黒豹「まあ黒撰が勝つんやろうけどな」
十二支のメガネ陣は複雑な表情。
凪「……」
大方の予想通り黒撰が有利に試合を進める。
7回表までに8点を取りこの回を1点で抑えることでコールドゲームが成立する。
先頭バッターは玄渕
玄渕「俺が出るからお前ら続けよ!」
印照「いや、2点はもう無理だよ」
彼は3年生の
昨年からクリーンナップを打ち今年は5番を打つ。
玄渕の良き相談相手。
玄渕「なに言ってんだよ」
「印照の言う通りだよ」
「そうそう」
玄渕「お前らどうしちまったんだ!」
印照「だからさ、音瓶高校キャプテン玄渕としての最後の打席、最高のプレーを見せてよ。
チームのために出塁しようとか思わずに自分の最高のバッティングを!あの時みたいに!」
あの時というのは十二支との練習試合のことである。
虎鉄「この回で終わりだNa」
猪里「あとは玄渕が打つかどうかやけど」
犬飼「あの人は打ちますよ」
玄渕「お前ら…」
少し涙ぐむ玄渕だったが3つのメガネを全て外しそれを
玄渕「特等席で最高のプレー見せてやるよ!」
大正監督(ほんと素敵なアレ)
眼鏡を外し涙を拭く監督
由太郎「お、やっと出てきたな…てあれ?メガネどうしたんだよう」
玄渕「うるせ、来いよ」
由太郎(沖、打たせないぞ″小町″だ)
沖「コクッ」
″小町″
野球というのはチームスポーツだが、打席にたてばいつも1人。
孤独なスポーツだとも言える。
それでも仲間の声援、皆の想い、いろいろなものを背負って打席に立つ玄渕は孤独なんて全く感じていない。
仲間の大切さを知った玄渕を止められるものはもういなかった。
目に見えない力が後押しした。
カキンッ
十二支高校、黒撰高校
両校ベスト4進出
玄渕の打球の行方はわからなくなりがちです。
次回は明日の夜に投稿したいと思います。