白雪「君は埼玉に帰ってもらう」
「これは華武の菖蒲監督にも了承を得ていることなんだ」
この県対抗総力戦は1度だけ選手の交代が可能である。
桜花「え、えっとあの…」
(うまく投げられないならいる意味はないの…)
白雪「ただその前にしてもらわないといけないことがある」
「このメモの通りの行動をしてください」
こういって1つの紙きれが渡される。
桜花「え、はい…」
♢
昼休憩
昼ごはんを食べて少し休憩している選手たち
桜花「あの、君が子津くん?」
子津「え、あ、はい。そうっすけど…」
桜花「よかった、聞きたいことがあるんだけど…」
子津「あ、わかったっす」
(覚えられてなかったんすね)
メモを取り出し質問を始める桜花。
桜花「なんで野球してるの?」
子津「え、なんすかその質問」
桜花「いいから!」
子津「え、えっと…」
「野球が好きだからっすね」
桜花「ふーん」
子津(なんなんすかいったい)
桜花(野球が好きなんだ…)
桜花「次、なんでピッチャーしてるの?」
子津「なんでって、」
桜花「投げてるときどんな気持ち?」
子津「んー、打たれたくないって感じっすかね」
桜花「なんで打たれたくないの?」
子津「なんでって、そんなの当たり前じゃないっすか!」
桜花「??」
子津「勝ちたいからっすよ!」
桜花「なんで勝ちたいの?」
子津(?ほんとに疑問なんすかね)
「それはもっと長く皆と一緒に野球したいからっすかね」
桜花「ん?勝てばなんで長く野球できるの?」
子津(よし、こうなったら桜花くんのために真摯に答えるっすよ)
「負けたら次の試合が無いからっす!」
桜花「!!、負けたら次無いの??」
子津「そうっすよ、大会は負けたら次がないっす」
桜花(そうだったのか、てことは勝ったらもっと投げられるんだ)
常勝華武高校において勝つことは当たり前だった。
桜花にすれば試合が終わればまた試合がある。
結果的に勝ってはいるが、勝ち負け関係なく無限に投げられるのだと感じていた。
勝っているから試合が続くことに本当に気づいていなかったのだ。
桜花「だからみんな勝ちたいのか」
子津「?、そうっすよ!みんな勝ちたいんす!」
最後の発言を子津は理解出来ていなかったが、桜花が何かに気づいたことは感じ取った。
白雪監督は子津なら誠実に、桜花が知らなければいけないことに応えてくれるだろうと思っての指名だった。
こうして桜花の勝ちへのモチベーションが完成した。
十二支高校にとっては桜花のパワーアップに繋がることだったが、それを責めるチームメイトはいない。
むしろライバルが強くなることを喜ぶ選手ばかりだ。
桜花「監督!」
白雪「ん?どうしたんだい」
桜花「あの、ここに残りたい…です」
白雪「うん、わかりました」
桜花「え、あ、」
白雪は特に何も言わず桜花を受け入れた。
表情、桜花の表情で不安が吹き飛んだことを理解した。
白雪「あとは…」
須咲「はあ、はあ…」
(なかなか完成しないな)
バシッ
斎柳「痛っ」
(くっそーまだだな)
白雪「んー四神の2人はちょっと遅いね」
♢
準々決勝
埼玉vs広島
打撃に定評のある広島選抜
先発は今大会初登板の黒撰沖。
今まで温めていた右腕を遺憾無く発揮し、強力打線を8回無失点に抑える。
打っては御柳猿野の連続ホームランや宝町の走者一掃スリーベースなどで得点。
最終回のマウンドにはモチベーションMAXのエース桜花。
見事3人で仕留め、完全復活を見せた。
試合は6対0で勝利。
嗚「埼玉にはあんな投手もいるんだ」
百湖「須咲は?」
準決勝
埼玉vs愛知
大阪、神奈川に並ぶ出場校の多い愛知選抜
初回、Mr.チェントが捕まってしまい一挙に3点を失ってしまう。打線も相手のエース豊川に4回まで0で抑えられてしまう。
2回以降立ち直ったチェントだったが、5回にまた失点し4.1回5失点でマウンドを後にする。
1アウト満塁の場面で登板した桜花がバッター2人を三振にとってピンチ脱出。
その裏、桜花の代打丑光から打線が大爆発。
9番から5番までの6連打などで一気に逆転し、あとの4イニングスを子津と赤城で締める。
終わってみれば6対13の快勝だった。
白雪「だいぶ仕上がってきたかな」
桜花「これがチームのためってことなのかな」
子津「決勝もリリーフとして貢献したいっすね」
村中「セカンド慣れてきたぞ」
御柳「へっ、オレ様が不動の4番サードだ」
猿野「ぐぬぬ、決勝はバブリシャスより打つ!」
そして、その夜
パシンッ
金剛「どうだ!!」
パシンッ
丑光「そだねー」
パシンッ
斎柳「女の子が好きだー!」
紅印(あらやだ、3人ともにキャッチされちゃったわ)
「あとは決勝だけね」
「はい!!!」
須咲「ふーっ」
シュッ
バシッ
大神月(すごい、今までと出来が違う…)
白雪「よし、完成だね」
「明日は働いてもらうよ」
須咲「ああ、承知した!」
タッタッタッ
凪「猿野さん!」
猿野「凪さん!今年も来てくださったんですね!」
凪「ええ、だって…」
ここは宿舎近くの公園
2人の付き合いが始まった場所でもある
凪「私たちの思い出の日なんですもん」
猿野「凪さん…」
昨年の決勝前夜、猿野と凪は結ばれた
その日は雨が降っていた
凪「猿野さん、応援…してますね!」
猿野「はい!2年連続優勝旗を埼玉に持って帰ります!」
これより14時間後
全国高校野球県対抗総力戦
決勝 埼玉vs福島
いよいよ始まる
集大成になる試合が始まります。
次回は明日の夜に投稿したいと思います。