第六駆逐隊と廃線跡を辿る男の話   作:黒廃者

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序章-プロローグ- 第六駆逐隊side


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彼女らがそれ(・・)に関心を持ったのは何日(いつ)ほど前だったか…。

鎮守府に敷かれた鉄のレールを辿って歩き続けた先に見つけたもの。

今日も第六駆逐隊の暁、響、雷、電の四姉妹はそれを見に裏口のゲート前まで来ている。

鎮守府を囲う、関係者以外立ち入り禁止の札を引っ掛けたフェンスに手の指を掛け、胸の奥から密かに湧き出る好奇心に身を任せて、何も考えずそれ(・・)をボーッと眺めていた。

「……あれって、何処に続いていると思う?」

三女の雷が、感情のこもっていない声色で呟く。

「雷ちゃん、それ聞くのもう三度目なのです……」

電が苦笑しながら答える。

雷本人とて、姉妹達が分かるつもりで質問しているわけではないのだろう。ただ目視では確認し切れないので、何となく呟いてるだけだと思われる。

再びポケーっと廃線跡を眺め始めた時、響が口を開いた。

「ずっと昔は、鎮守府に物資を届けるのに使われていたみたいだね。トラックが普及して、需要がなくなったらしいよ」

「あら響、よく知ってるわね?」

暁が驚いて声を上げる。

「別に。図書室の本に載っていたのを見つけただけさ」

彼女たちが目にしているものは、どの国にもあってかつて普及し、次第に忘れられていったものだ。

 

 

 

 

 

 

所謂(いわゆる)廃線跡(はいせんあと)というやつである。

 

 

 

 

 

 

自動車のない時代は貨物列車が物を運搬し、客車が人を運んでいた。

それの名残りは全国至るところに点在し、かつての面影を儚く感じさせてくれる。

第六駆逐隊が所属する鎮守府にも、まだ艦娘も深海棲艦もいなかった頃にはしっかり列車が走っていた。しかし今は錆びた路線だけが緑の雑草の間から見え隠れしているだけだ。

「響、他には何か書いてなかった?」

「残念ながらかなり古い本だったことに加えてこの鎮守府自体の記録が碌になかったせいでこれ以上はさっぱり」

響の返答に、暁と雷は残念そうに肩を落とす。

 

 

 

子供の知的好奇心というのは存外強い。気になるものがあればその全てを識ろうとする。

艦娘の中でも駆逐艦である4人は外見も精神レベルもまだ幼い。故に、鎮守府から外出する機会を得られない彼女たちは外へと繋がる線路に興味を持っていた。

鎮守府から伸びるレールの終着点、そこまでの道のりに広がる景色、すべてが未知の世界。想像するだけで艦娘たちの胸は高鳴る。

強めの潮風が吹き、彼女たちの髪と、廃線跡の雑草が揺れると同時に……。

 

 

エキゾーストノートが鎮守府に小さく木霊した。

 

 

 

 

序章-プロローグ- 第六駆逐隊side 終

 




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第六駆逐隊のいる鎮守府に、一人の青年がやってきます。


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