第六駆逐隊と廃線跡を辿る男の話   作:黒廃者

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序章-プロローグ- 杖つきの青年side


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相良義文(さがらよしふみ)は慣れない田舎にいた。

都会っ子というわけではないが、ド田舎に住んでいたわけでもない。中途半端に都会かぶれな街出身の、どこにでもいる日本の男子学生だ。

シビックEK9という愛車で早1時間、峠を越えてはるばるここまでやってきた。

彼は今鎮守府に向かっている。旧友と呼べる男がそこで艦隊を指揮する立場の人間で、突然誘いを受けた。

旧友から送られてきた周辺の地図はお世辞にも解りやすいとは言えず、結局カーナビ頼りだ。

幸い、峠に差し掛かったあたりから鎮守府までは貨物線の廃線跡が伸びており、平らな土地に入ればあとは廃線跡を辿るだけでよかった。

カーナビの音声がルートガイド終了のお知らせを告げ、やがて鎮守府が見えてくる。ここまで来ると、廃線跡は雑草だらけだった。

(……ん?)

義文は人の姿を視認する。

小さな子供たちがフェンス越しにこちらを見ていた。

 

 

(艦娘か……)

 

 

彼の心中に湧いた感想はその一言に尽きた。

ハンドルを右に切ると、義文の関心は薄れていった。

鎮守府裏手より進入し、駐車スペースにEK9をつける。

『杖』を手にし、右足に体重を乗せないよう意識しながら車から降りて周りを見渡すと、明らかに都会と違う空気を吸って、顔をしかめた。

(土っぽくて海水のにおいがする……)

 

 

「土っぽいとか思ってる?」

 

 

声がする。義文はそちらを向いた。

真っ白な軍服をきっちり着込んだ端正な面立ちの青年と、青い袴がミニスカートのように丈の短い、弓道着姿の美少女……否、艦娘がいた。

「わざわざ司令官殿自らお出迎えとは、暇か?」

「生憎暇ではない。しかしこちらから呼んでおいて放ったらかしにするわけにもいかないじゃないか。態度が悪いと思われたくはない」

「そんなに外面気にするタイプだったっけ……?」

「よし出迎えはした。私の体裁は守られた。加賀、お客様を客間へ案内してあげなさい。ついでに要件も話しちゃって」

「おい」

呆れる義文と話す男は木ノ本槙人(きのもとまきと)。彼こそこの鎮守府の提督にして、義文の友人と呼べる人物である。

胡散臭い喋り方と甘いマスクが特徴(義文談)。

しかし最終的に艦娘に全投げするあたり本当に忙しいようで、そそくさと背中を向けて去っていった。

「それでは、私のあとをついてきてください」

加賀という艦娘はニコリともせず、機械のように淡々とした口調で指示を出す。

義文は少々の居心地の悪さを感じながらも杖をつき、本来右足に掛けるべき体重をすべて杖に移動させながら進む……。

 

 

 

 

 

「緑茶、紅茶、麦茶など一般的な茶葉は揃っています。どれにしますか?」

「……緑茶で」

殺風景な客間のソファに座らされ、加賀という艦娘が紅茶を作り始める。

「……あの、俺は緑茶を頼んだはずですが」

「申し訳ありません。提督から貴方を煮るなり焼くなり好きにしていい、むしろやれとの命令を受けておりまして。私なりに嫌がらせ(歓迎)の仕方を模索してみたのですが」

「そんな命令鵜呑みにしなくていいから」

「この後紅茶に砂糖ではなく塩を加える計画がありますが?」

「やめろください」

最初こそロボットのような印象を受けたが、あのキザ野郎の息のかかった部下であることを再認識。

普通の緑茶を入れ直してもらった。物凄く残念そうにため息をついたのが腹立つ。

一息ついて、温かい緑茶の注がれた茶碗をそっと手に取りながら、義文は本題を口にする。

「それで、槙人の用事というのは何なんですか?」

加賀は直立したまま質問に答えた。やはり、表情は動かない。

喉が渇いたので緑茶を口につける。

「至極単純明快ですよ、提督の用件は……」

返ってきた答えは確かに至極単純明快だったのだが、苦みが強いはずの緑茶に溶け込んだ濃厚な甘味に吐き気を催しそれどころではなかった……。

 

 

序章-プロローグ- 杖つきの青年side 終

 




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第1話 廃線跡を辿る者達

青年と第六駆逐隊が出逢い、物語が動き始めます。
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