第六駆逐隊と廃線跡を辿る男の話   作:黒廃者
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第4話 Funny Driver


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マスターと別れて、15分程。

町の出入り口に差し掛かるにつれて建物は数を減らし、再びしっかりと線路跡を確認できるようになってきた。

ちなみに助手席には響が座っている。喫茶店を出る直前、ローテーション方式で4人を入れ替える約束をしていたからだ。

「山がどんどん大きくなっていくわ!あんなに小さかったのに!」

「鎮守府から眺めていた時とは大違いなのです!」

「当然でしょ、えんきんほーよ、えんきんほー!」

後ろではしゃぐ3人をよそに、響が義文に話しかける。

「そういえばこのドライブ、山をこえて、線路の終わりまで行くのかい?」

「そいつは無理だ。今日はそうだな……山のふもとまでだな」

「「えー!」」

「俺だってお前達を鎮守府に送り届けたらまたここ通って家まで帰らなきゃならんのだよ。結構疲れるんだぞ、運転手ってのは……」

「諦めたらそこで試合終了よ?」

「諦めたんじゃねぇよ、行きたくねぇっつってんの。それに、槙人の奴からもあまり遅くならないようにしてくれって釘刺されてんだ。恨むんなら自分らのところの提督を恨め」

「ケチ!貧乏!ニート!年金くらい払え!」

「う、うるせぇ!つか、年金払えてないってなんで知って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?(暗黒提督スマイル)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………あいつ帰ったら殺す」

 

「! あれなに?」

 

響が座席から身を乗り出して、指さす。

あれは、人々が交通機関を利用する上で線路を横断する際、安全の確保をするためになくてはならない……。

 

 

 

「───踏切か」

 

 

 

EK9の速度を落とし、道脇に駐車する。

ナビを確認すると、丁度、花葉町の出口のようだ。

義文と艦娘たちは車から降りてボロボロの踏切周辺を探索し始めた。

相変わらず線路には手付かずの雑草が好き放題伸びて、レールも錆びている。

踏切そのものが廃線当時から放置されているためか、黄色と黒色の縞模様の自動遮断機は、マスターの手入れがなされていた廃駅とは打って変わって汚れに飾られていた。

この先の線路は緩い傾斜に乗って、山の方まで伸びているようだ。

「踏切って何なの?」

「そうか、良く知らないんだなお前らは。列車が通過するってことをこの道を利用する人たちに点滅と音で警告して、通行を規制する装置だ」

と、一般的な認識を説明してみたはいいがすべてが正しいかなんてわからないので、スマホでYouTubeを開いて実際に踏切が動作している映像を見せてみる。

義文には見慣れた光景であるが、初見には新鮮で魅力的な映像なのだろう。彼のスマホに釘付けになって離そうとしない……。

とりあえずスマホは彼女たちに預け、杖に体重をかけているために歩行すら常人より疲労を蓄積してしまう義文は質素な岩の上に腰掛け、何をするでもなくボーっと景色を眺め始める。

 

(……?)

 

体感から30秒くらい経った頃だろうか……穏やかであった空間に、少しずつ人工的な振動と音が近づいてくることに気が付いた。

エキゾーストノートだ。

やがて姿を現したのは、一台の自動車。結構なスピードで踏切の反対側……山の方面からやってくる。

第六駆逐隊も音に釣られ、動画を観るのを止めてそちらに注目していた。

やがて踏切をこえ義文のEK9を通り過ぎた辺りで停車した車は、派手に着飾ったスポーツカーのようだ。

綺麗な水色に塗装された車には、ウイングが付いていたりカーボン製ボンネットだったりとさまざまな手が加えられている。

すると、運転手が外にドアを開けて降りてきた。

 

 

 

まだまだ垢抜けない雰囲気の、若い女性だった。

 

 

 

「わー!EK9だーーー!!!」

 

女性は子供のように瞳を輝かせながら、興奮隠さず義文の車を観察し始めた。

「…………」

しばらく呆気に取られていたが、所有物をジロジロ見続けられている事実を理解して立ち上がると、ゆっくり少女に近づいていく。

改めて見ると、歳は義文とそう変わらない感じだ。目元はくっきりしていて、快活なイメージを持たせる顔立ちに、柄の入った半袖のTシャツにキュロットスカートという恰好。

そのすらりとしたシルエットは、アスリートと比べても遜色ないだろう。

「あ、ごめんなさい!勝手にじろじろと……」

「いや、別に構わんが……」

初対面でいきなりフレンドリーな話し方をする少女に若干戸惑った、次の瞬間……。

 

「でも、ほんとイイ車だよねぇ。最近のも悪くは無いんだけど、一昔前のちょっと尖ったデザインがあたしは好みかなー」

 

割り込む余地もなく、女性は嬉々としてペラペラ語りだした。

なるほど、と義文は察する。目の前の女性は車のことになると周囲が見えなくなる人種だ……。

 

「……ハッ!?またやっちゃったぁ。すみません、勝手にしゃべり倒しちゃって」

「い、いえ……お気になさらず」

今度は過剰に落ち込む女性。随分と喜怒哀楽がはっきりしている天然娘だ。自分とは正反対な性格をしている。

 

 

 

(……あいつみたいで、なんかヘンな奴)

 

 

 

その姿を見て、義文はある記憶を手繰る。

相良義文の友人と呼べる人間の1人に、スポーツカーに乗って悪路を走行する競技に精を出す者がいることを思い出した。

義文がEK9を購入したのも、実はその人物の影響を受けてのことだ。

「あ、まだ名前、名乗ってなかったね」

「それはお互い様かな」

「あたしは根城凛音(ねじろりんね)。見ての通り走るのが趣味の普通の女子大生!」

「……相良義文だ」

車での走行が趣味の女性はあまり普通ではない気もするが……と思いながら、義文は名乗り返した。

 

 

 

 

 

 

そう言えば、あいつと最後に会話したのも、こんなボロボロの踏切のそばだった……。

 

 

 

 

 




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第5話 過去-夢-

2年前……相良義文は夢を持たない高校生でした。そんな彼の数少ない友人・日畑は、反対に壮大な夢を持っていました。






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