ある薬師魔女のお話   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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 Twitterで「#魔女集会で会いましょう」を見て書かずには居られなかった。
 手書きで書いたの写してるだけだから、妄想録には影響無いと思います。


始まり—魔女の門出ー

 子供を拾った。

 否。なんか家の前に捨てられていたから、とりあえず保護せざるを得なかった。

 暖かくなってきたとはいえ、まだまだ冷える外に放置するわけにもいくまい。

 歳は一歳から二歳くらいの幼子でモノが付いていることから男であることは判った。

 子供は寒さと飢えのせいか酷く衰弱していたため、とりあえず身体を暖めて、緩めの粥を作って少しずつ食べさせる。

 この時に秘薬を混ぜて一緒に飲ませたのだが、初めは薬の苦さが駄目で飲み込んでくれなかった。

 仕方がないので、久々に魔女の薬事書を引っ張り出して苦味を抑える工夫をして何とか食べてもらえたけど、お陰で貴重な材料を使う羽目になった。

 こういうのは大人しく薬用の溜飲ゼリーかなんかを使った方が確実だし楽だと思う。

 私は魔女だ。古くから続く魔導を受け継いでいる者だ。

 特に私は薬や生活に役立つ様な魔法に長けているのだが、はっきり言って現代に魔導や魔法は必要がなくなっていている。

 これは文明の発達に伴い魔法でやらずとも機械で済む様になったから。

 それに、今の世じゃ魔法は想像(フィクション)のものだと思われている。

 近所でも私を魔女だと知る者は居ないはずだ。

 魔女の中には未だに不老長寿の秘術を使う者も居ると聞いているが、私の師匠は不老長寿を好まなかったし、私も秘術は使ってない。

 要するに私は魔女ではあるが、人と同じ様に歳をとる。

 当然、人間の社会で生きている。

 ……何が言いたいかと言うと、私はまだ独身なのに子供を引き取りたいとは思わない。

 今は食事が終わってぐっすり寝ているので、この隙にパソコンでどうすれば良いのかを調べてみると、基本的にはこうした子は役所を通して施設に預けるべきらしいのだが、施設の評判はお世辞にも良いとは言えず、その後の扱いを知って引き取れば良かったと言ってる人がかなり居る。

 ちなみに私が親権を得ることも出来るらしい。

 かと言って私が引き取らねばならぬ義理も無いのだが……。

 さてどうするかと考えを巡らせていると、いきなり家の中に泣き声が響き渡った。

 声のするリビングに駆け込むと、子供が私を見るなりよちよちと駆け寄り抱きついてきた。

 やがて泣き止むと、今度は私がお母さんでは無いことに気づいたらしく不安そうに「ママどこ?」と問いかけてくる。

 いや、私に聞かれても解らないんだけど。

 話を聞こうにも、まだ会話が出来るほど言葉を覚えていないようで、辛うじて自分の名前が言えた程度。

 トモ。それがこの子の名だ。

 これからどうしようか迷った挙句、私はこの子を引き取ることにした。

 何で気が変わったのかは解らない。

 もしかしたら泣き喚いて母を求めるこの子を見て情が湧いたのかもしれないな。

 私も、親がいなかったから。

 それに私とて魔女だ。自らの子を捨てる人の業に腹が立ったのかもしれない。

 代わりになれるとはおこがましい事は思っていないが、少しでも独りの寂しさを共有できたら良いなと思う。

 と言っても、私は人間社会で生きる身。当然仕事だってしているから常に見てる事は出来ない。

 元々、家の中でも出来るような仕事ではあるが、それでも週に数回は外に出なくてはいけない。

 そこで、私は使い魔を呼び出してはどうかと考えた。

 今までは黒魔術や召喚術を人の道を外れた術だと日常で使わないようにしてきたが、どうせ子を育てるなら弟子にしたい。

 だから魔女らしく遠慮せずに魔法を使って育ててやろうと思ったら気にならなくなった。

 専門では無い召喚術に少し戸惑ったものの他には、特に問題もなく呼び出すことに成功した。

 それも下級魔族とは運が良い。

 種族としては一番オーソドックスな人魔種で小間使いにも最適な種だ。

 もしかして私ってば才能あるんじゃ無いかしら。

 と言うのは冗談で、実は魔女集会で知り合いの召喚術師に教わった術式に少し手を加えただけ。

 優秀なのはその魔女であって私では無い。

 今度の集会でお礼を言っておこう。

 呼び出した悪魔は小汚い姿だったので家のことを簡単に説明して、私の服も着られるものがあれば着ても良いと伝え、後は家の片付けと子守を頼み、私は財布とローブを引っ掴んで買い物に行く事にした。

 薬を飲ませた時に流動食が食べれるのは解ったので、普通の食事も取れるか確認したりダメだった時のための離乳食などや、おやつになる物を買わねばならない。

 ついでに子供服も少し買っておくとしよう。

 そのせいで、特に買うものが他にあったわけではないのに帰る時の私は何故か両手いっぱいの荷物を持っていた。

 私は悪くない。布が安かったのが悪い。

 こう言う時、自分が魔女で良かったと感じる。何と言っても浮術は魔法の基本だ。

 重かろうが浮かせてしまえば関係ない。

 とは言え両手が塞がっていることには変わりなく、箒を目の前に溜息を漏らす。

 持てないのは仕方ないので周りに気をつけながら浮かせて、とりあえず人気のないところまで移動し、幻影の魔法を使ってから箒の枝に手に持った荷物を次々に下げていく。

 やっぱり、空間転移の魔法を覚えるべきだろうか?

 あれがあればどれだけ荷物を持っていようが、一瞬で家に着くから楽だろう。

 そんな風に独り言ちて私は箒に腰掛ける。

 既に魔法で姿を隠しているのでそのまま飛び立ち、帰路へと着く。

 幻影魔法(ミラージュ)はあくまでその場しのぎの術だが、飛んでいる間はローブが私の姿を隠してくれるので“人に”見つかる心配はない。

 ちなみに魔女のローブと言えば黒のイメージがあるかもしれないが、これにはちゃんとした理由がある。

 古来から魔女は闇に生きる者で、その闇に溶け込むために黒い服を着るようになり、そこから更に性別やシルエットさえも隠せるローブとなった。

 つまりはカモフラージュだ。

 当然ながら昼に黒いローブを着ていたら目立って仕方ないので黒ではなく、白や空色のローブを着る。

 まぁ、中には目立つためにあえて派手な服を好む魔女もいるが、あくまでも少数派。

 また、魔女のローブは手作りが多い。

 これは自らの手で作ることにより自分の魔力が伝えやすくなったり、魔術的な工夫が出来るからだ。

 自分で作らない者は師から貰ったか、もしくは不器用で作れない者のどちらか。

 これだけ魔女の手が加わる物だ。当然ながら魔女集会ではローブを自慢しあったりすることもある。

 大抵はただの自慢話で聞き流すだけだが、時々その手があったかと思えるような工夫をしている物に出会えたりするので全く役に立たないわけではない。

 勿論、私もローブにはしっかりと工夫をしてある。

 師匠が編み出した方法で、生地の合わせ方や色、縫う方法を駆使して服そのものに魔術効果を付与する。

 これを利用して、私はローブに幻影魔法を仕込んでいて術式を省略して術を発動出来るようにしてある。

 実の所、私が専門にしている薬術には法的に禁止されている素材を使ったりもするので幻影魔法は非常によく使う。

  物にローブを被せて発動してしまえば、一瞬で幻影に包まれて何が隠してあるか、そもそも物があるのか発動させた本人以外は例え犬だろうとわからなくなる。

 これはただ見えなくするだけでなく『そこには何もない』と認識させる魔法だからだ。

 師匠の下にいた時は誰かに怪しまれたら魅了化(チャーム)の魔法薬で無理やりここから帰らせたりしていたが、これは最終手段で乱暴な手だから出来れば使いたくない。

 この先トモを育てて行けば魔導を教える機会もあるだろうが、薬の扱いは徹底的に教え込まねばなるまい。

 薬というのはちょっと使い方を違えるだけで簡単に毒となり得る。

 本当、少し考えただけでも我が師がどれだけ偉大だったかを思い知るね。

 私を人間として育て、それでいて魔女としての世界も教えてくれた。

 上手な世渡りも、家事も、今の私は全て師のお陰で生きている。

 残念ながら一昨年にその寿命を全うしてしまったが、彼女はとても幸せそうに息を引き取ったのを今でもハッキリと覚えている。

 だから私も塞ぎ込む事なく、前を向く事が出来た。

 今度は私が師になる番。

 上手くできるか解らないけど、今まで師に教わってきたことを思い出してトモに教えていこう。

 師のことを思い出し、家を出るときとは打って変わり元気に玄関を開ける。

 ただいまと言いながら開け放たれた戸の先には、散らかり放題だったものは何もなく開放的な空間が広がっていた。

 ちらかった物は何もなく、床に積んであった書物は本棚に、研究レポートなどの紙類は分類ごとにファイルの中に分けて保管され、窓の桟に指を這わせても塵一つつかない。

 一瞬、家を間違えたかと思って表札を見てしまった位、家の中は様変わりしていた。

 いや、これが本来の姿なのかもしれないが。

 また、家の中に何やら鼻をくすぐる甘い匂いが漂っていた。

 匂いに誘われるようにトモが居るリビングへ入ると、出かける前に呼び出した悪魔が料理の手を止めて「おかえりなさいませ」と言いながらパタパタと駆け寄ってくる。

 驚いたことに悪魔は呼び出した時とは比べものにならないくらい綺麗になっていた。

 あまりにも違う印象に思わず誰かと問いかけてしまったほどだ。

 ボサボサの髪でよく見えなかった顔と布切れを身体に巻いただけのせいで男かと思っていたが、目の前に居る彼女は間違っても男には見えない。

 シンプルながら単調ではない、身体の各所が絞られたくらい服の上から、派手ではないもののしっかりと主張をした白いフリルのついたエプロン。どこからどう見てもそれはメイドの姿だった。

 どうやら、掃除の後に風呂を使って私の服を着ただけらしいがそれだけでここまで変わるのは、元の素材が良いためだろう。

 目はパッチリ、鼻は高く、口は赤みがかったピンク。まるでお人形さんのようだ。

 サイズもピッタリ、悔しいがとても可愛い。と言うか、メイド服なんて持ってたっけ?師匠が作ったものだろうか?

 買った布で悪魔の服も作ろうかと思ったが、様子を見るに余ってる私の服で十分そうだ。

 でも気に入ってるみたいだしメイド服なら作っても良いかな?

 そんな事を思いながら視界を巡らすと、物陰からこちらを見るトモと目が合った。

 チラチラと悪魔の方を見て居ることから考えるに、気づいたら居なくなってた私が悪魔にでもなったと思ったのかもしれない。

 私がおいでおいでと手招きしてあげると少し悪魔に怖がりながらもよちよちと近づいてくる。

 足元まで来たトモを抱き上げると安心したように笑った。

 つられる様に私も微笑みながら「これからは私がお母さんになるよ」と言う。

 トモは何のことかよく解って無さそうだったが、成長するうちに解る様になるだろう。

 その時はトモを傷つけない様に優しく包み込んであげるとするさ。

 それから、羨ましそうにトモを見つめる悪魔の方にも顔を向けて「これからよろしく」と伝えた。

 パァっと嬉しそうに笑った悪魔に名を聞くと、名は棄てたので私につけて欲しいと言われたので“友”からとって、『ユウ』と名付けた。

 誰かの名前を考えるなんて初めてだったけど、喜んでくれて私も嬉しい。

 さて、これからはこの三人での生活が始まる。まずは、そうだな。

 明日の昼にでもトモを私の養子にするため役所へと出向くとしますかね。

 

 

 

To Be Continued

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