真剣で貴方と恋がしたい   作:長光

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取り敢えず 最初は暗いですが次話からは普通の予定です


零章 悪夢
零話 プロローグ


そこはまるで地獄のような光景であった

 

いや地獄そのものかもしれない

 

そこには死が充満していた

 

刺殺 圧殺 撲殺 斬殺 銃殺 ありとあらゆる死に様があった

 

しかし そこには幾名かの生者があった

 

一人の青年と思しき人間が 傷ついた男と

その男に寄り添って居いる傷つき意識のない女の元へと寄って行った

 

青年が男へ近づくと 男は青年へと話しかけた

 

「…お…か、私…ご覧…有様…、彼奴に…手酷くや…た」

 

「親父、それ以上喋るな、傷に触る」

 

青年は息も絶え絶えの 父へとそう言い放ち 二人の傷の手当をしようとする

 

「もう…だだ、どの…助か…ない、そ……も私…ち介錯…頼む」

 

男は言い放つやいなや腹へ刃を突き立てた

 

「親父、何やってんだよ!」

 

青年は怒鳴り 止めようとするも

 

間に合わず 既に腹を掻っ捌いていた

 

「お…に……た…む、彼奴を……止めてやれ…

 そ…が出来…は…だけだ…頼む」

 

男はそう言って首を垂れる

 

青年は手に血刀を引っさげゆるりと男に近づく。

刀を、肩に担ぐようにして。

 

父の心の臓を止めに、介錯の為に近づく。

 

青年は上段の構えを取り、無言にて近づく。

 

 

 

 

――やがて。

 

 

 

 

男はいつ首を斬られたか分からぬほどに。

 

青年は  喉の皮一枚を残して切り、その首を胸元へと転げ落とした。

それは、斬首ではなく 切腹に用いられる、葬送の剣。

 

技量がなければ振るう事の出来ない

 

死に臨む武士にのみ報いる、最大の礼節の剣。――『順刀』。

 

青年は、父へ対して最期に剣者として親子としての礼を尽くした。

 

 

 

 

 

 

青年の頬には一筋 赤い涙が伝う

 

 

 

 

 

しかし 青年に 感傷へ浸る暇は与えられなかった

 

 

 

三人 生き残っていた

 

男たちはただ青年へ向かっていった

 

「げあっ」

一人めの男は掛け声と共に

左片手打ちに打ち込んできた 右手で柄を押し放ち

青年の頭上を一気に襲った

 

青年はそれを事も何気に抜き胴で一蹴した

 

二人目の男は青年と相打つ心算で突き殺しにかかる

 

だが青年はそれをただ刃を返すだけで躱す

すると刀の反りに依って 男の剣先は青年を外れ

青年の刀は男の鳩尾へと吸い込まれるように刺さる

 

三人目の男はゆっくりと青年に歩み寄り

右手で柄を握り左手で鯉口を切り

抜きつけて切ろうとする

 

しかし 青年には届かなかった

 

「遅い」

 

男がその一言を聞いたのは

いつの間にか自身の刀身を引き抜かれ

胸を突き刺された時だった

 

 

 

 

 

 

 

この日 仁 義 礼 智 忠 信 孝 悌 勇 和

十徳すべて備えていた青年は

 

全てを捨てた いや 捨てざるを得なかった 

 

父を 母を 祖父を 姉を 妹を 妻を 腹の中の子を 斬った時に

 

いや それ以前に この日 人生で初めて人を斬った時に

 

青年は 奇しくもこの日 世の真理を知った

この世には 善はなく 悪もなく 愛もなく 憎もない

 

全ては表裏一体 自身が感じていたものは その一面だけであった事を

 

 

男は捨てた 十徳を 心を 真の活人剣を

 

そして 皮肉にも 悟りと無念夢想の域へとたどり着く

 

男の物語はこれから始まる 終わりへと向かって

 

 

 

 

 

 




これが初作品です
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遅筆ですが完結させるつもりですので温かい目でよろしく
おねがいします
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