真剣で貴方と恋がしたい   作:長光

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捌話 登校二日目 後編

 

学園までの道中くだらないことを考えていた

 

(確実に先ほどの一戦が響いている、今日これ以上の戦闘は恐らく肉体的に厳しいだろう)

 

八坂はあらゆる才能に恵まれていた

その力は人間一人には収まりきらず

その氣は川神鉄心、川神百代、ヒューム・ヘルシング

など、その名を世界にとどろかす人間皆を足しても足らず

勉学もその他もろもろあり得ないレベルに達している

その人外さ故に彼を知る人間のほとんどは彼を”神童”と呼んだ

だが、どんな神であれ弱点はある

だがそんな八坂でも唯一恵まれないものがあった

それが体の頑丈面と健康面である

しいてあげるなら良くて”師岡卓也”程度の体である

それも、頑丈さに至っては恐らく障子紙を破るより容易い

彼は常に体に他者には見えないようにしてはいるが

実際は川神百代の倍以上の量を纏っている

彼女のパワー主義に文句をつける資格はない

 

(ん、あれは、当麻の?)

橋の中ほどに一人の男がいた

(この橋は厄介ごとが舞い込むなぁ)

 

 

「八坂さん、お久しぶりですねっ」

そう言いながら男は懐に手を突っ込む

「なっ」

しかし男の視界には八坂は居なかった

「どこへ行った!」

 

――八雲流 珍技 メリーさん

 

「あ・な・た・の・う・し・ろ」

 

「ひっ」

男は後ろを反射的に振り返ろうとした

だがそれが出来なかった

それよりも先に後頭部に強い衝撃を受け気絶してしまった…

 

八坂は周囲を見渡し誰も見ていないことを確認し

吐血する

 

「くっ、このオンボロめ」

そう毒づいて学園へと急ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふう、担任の授業の前についてよかった)

 

(ん? なんだか嫌な予感がする)

 

「それでは授業を始める」

そう言って授業が始まった

(当たらないでくれ⦅二重の意味で⦆)

 

十分後

 

窓際の生徒が校門を指さし言う

「先生、校門に変な集団が」

 

(当たった!!(涙))

 

私は皆が窓際に視線を寄せている時に懐から水筒をだし

柄に水をすり込む

 

*こうする事によって柄木に粘りをだし折損し辛くし柄糸が水を吸い

引き締める効果がある

 

だが八坂のその動作を見たものが二人いた

一人は椎名京くだらないとして表を見ないでいると八坂がコソコソとしているのを見た

もう一人は小島梅子、八坂の纏う空気の違いに気付き彼を見た

 

(これで良し)

 

「あ、ルー先生が出てきた」

 

そして一人の男はルー先生と男は何かを話し男は校舎に入る

ルー先生はそのままその集団の見張りに着く

集団は見張りや生徒の視線など気にも留めず

襷をかけたり目釘を点検したり 戦闘の準備をしていた

 

私は大刀の駐爪を外し鯉口を切っておく

水を一口飲み口を湿らせ目を閉じゆっくりと心を落ち着けるように深く呼吸し目を閉じて眠る

 

 

一人の男が扉を蹴破って開けた

 

「授業中失礼する」

男の纏う異様な雰囲気にクラスが呑まれた

それは担任の小島梅子も例外ではない

 

「ふぁ~あ、ずいぶんと変わったノックだね」

八坂はいつもと変わらぬと言うより完全にキャラを忘れ素で返していた

「もしかしてそれが当麻家流の正しいノックの仕方かい?」

 

「いえ、我流ですよ」

 

「そうかい。で、何の用だい阿保(あぼ)

「椿井翁が死んだかい?」

 

「いえ、ただの授業参観ですよ」

そう笑いながら男は言う

 

「そいつはご苦労様。その上着の香、変わった香水だね、硝煙の香かい」

 

男は懐に手を入れ例の物を取り出す

 

カチャ

 

「……………」

「……………………」

 

「ロシア製かい?素敵なライターだ、でも生憎と私はタバコをやらない主義だ、しまってくれ」

 

「残念ながら中国製だ、ケチなあの人だ 純正なんてむりさ」

「それはそうとそいつは健康的だね、このライターは不良品なのか中華製なせいか判らないがとても不健康な代物でね、いつも爆発し銅に覆われた鉛の弾が飛び出してあなたをとても不健康な体にしてしまう…」

 

「そうかい」

 

 

そんな常人には理解できないやり取りの最中、空気が読めないことで有名な一人の女が口をはさむ

 

「銃など卑怯だぞ、その腰の剣で戦うべきだ」

 

「「…………」」

 

二人は何も言えなかった

八坂にとって銃は特に脅威ではなく 阿保にとっては銃など八坂に向けた所で文字通りライター程度の価値しかない事が解っている

だからこそ二人とも戯れていたのだ

そこに本気で答えた人間がいたのだ、二人とも面喰って言葉に詰まる

八坂はコミュ症気味、阿保は鳩がバードショットの散弾をくらった様な顔をしており本題を忘れていた

因みにそれを言った当の本人は言ってやったぜと言う様なドヤ顔をしていた

 

「で、あんなにお友達を連れてきていったい何の用なんだい」

そう言いながら八坂は鞘をさり気なく握る

「ああ、それですか」

「単刀直入にお聞きします、貴方は次期当主争いに参加しますか?」

そう言いながら阿保は八坂の胸に銃口を向ける

八坂ならばこの程度なら簡単に避けることが出来るだろう

だが彼は力を秘匿しているため、致命傷は避けるだろうがケガは避けないだろう

仮に避けられても隙はできるだろうこの銃には弾が一発しか入ってない

彼は連発に備えるだろう 身構えた瞬間にこの剣で突き刺す

だからこそ少なからず八坂の戦力は確実に下がる

ソレだけでここに来た甲斐はある

 

「御当主様の意、若君さまの友として、八雲八坂最後の忠を尽くすのみ」

 

そう言って八坂は羽織を脱ぎ懐から紐を取り出し襷をかける

そして、羽織を裏返す そこには真っ白な生地に椿井家の紋が入っていた

それが意味するところは 椿井家の臣として椿井翁の孫として

 

「それが…貴方の…答え…ですか……」

阿保の声が徐々に悲しげに沈み込む

 

阿保は八坂ではなく少し離れた金髪の彼女を狙った

八坂はそれを止めようと彼女の前に立つ

 

パン

 

「チッ、いらぬケガをしたな」

 

八坂は純白の羽織の胸元を紅色に染めていう

 

「ハンデはこれ位で良いか。椿井家、八雲八坂お相手仕ろう」

 

「ほざけっ!」

 

「もう一つ君に言うことを忘れていた」

「君の弟子は預かった、見張りには伊藤をつけた」

「無事だといいなぁ~」

ニタリと笑いそう言いながら阿保は腰の刀を音もなく抜き 構える

 

八坂は初めて驚の表情を覗かせる

 

「Deat before Dishonor 不名誉よりも死を」

「それが彼女の座右の銘だ」

 

そう一言言って

通路へとゆっくりと歩く

 

(流石、フェンシング金メダリスト相手に圧勝しただけの事はあるな、隙が無い)

 

八坂は通路へ出ると鞘に左手が触れている

 

「硝煙のにおい、()()を撃ったのか?」

「ええ」

「アレなら弾くらい避けそうなものなんだがなぁ」

「……」

「刀を、三段突きを出す暇もなかったのかい?」

「………」

 

彼は何も言わず刺突の構えを見せる

 

「はぁ、仕方ない」

八坂の声が不気味に沈む

「一人の人生を狂わせるかもしれないんだ、君も、彼らも未来を剣を失う覚悟は出来ているんだね?」

 

阿保はいきなり突きかかる

だが八坂は柄頭でその切っ先を止める

 

体をクイと捻りながら抜刀する阿保は数歩後ろへ下がり構え

八坂は平晴眼に構える

阿保は片手平突きを繰り出す 八坂はチョイと刀を前に出す

切っ先同士が触れていた

 

――八雲流 接吻

 

技の通りまるで接吻でもしているかのようにチョイと触れていた

 

言うのは容易いだろうが実現するとなると難しい

八代流の一点の原型となった技である

 

男が引けば八坂が前に出 男が前進すれば八坂は後退する

八坂がサッと刀を引き 上段へ構える

男はまたも突いてくる

(それはもう飽いた)

 

八坂はパンと男の剣を叩きピタリと喉にその切っ先を向ける

 

「もうわかっただろう、お前の負けだ」

 

「まだだ!」

そう言ってまたも同じく突きを放つ

八坂は刀をクルリと返す

男の剣は八坂を外れ八坂の剣はまたも男の喉元へと向けられた

 

 

八坂はまた三歩ほど下がり平晴眼に構える

 

「いい加減負けを認めろ、お前を壊したくない」

 

阿保もまた構えた

 

「シッ」

八坂は短く攻撃の気を吐く

ダンと一歩踏み込み突きを放つ

また喉元で止め

今度は五歩下がる

 

すると阿保の鳩尾と心臓付近の布が吹っ飛び喉元からツーと血が一筋伝う

 

――八雲流 魔剣 三段突き

 

阿保はヨタヨタと後ろへ下がり黒板にぶつかると

糸が切れたようにペタリと座り込んでしまった

 

「分かっただろ、大人しく道を空けてくれ」

どこか悲しげに八坂はそう言った

 

 

「やっぱり貴方には敵いませんね」

「貴方の下で働きたかった」

 

「なら今からでも間に合うぞ」

 

「ふっ、言っておいてなんですが少し考えさせて頂けませんか?」

 

「ま、好きにしろ。お前はそこで寝ておけ」

 

「そうさせて頂きます」

 

 

八坂は窓を開け ボソリと呟く

「八十人かチョット多いな 三十人くらい減らすか」

 

「ああそうだ、こいつを持って行ってください」

そう言って阿保は刀を投げ渡す

 

「ワッ あぶね、投げるな!」

 

「腰が抜けて歩けないんですよ」

 

「こいつへし折れても知らんぞ」

 

「刀は折れる物なんですから、気にしませんよ。ただ、貴方の命までは折らない様に注意してください」

「それじゃあ私は寝てますから、行ってらっしゃい」

 

八坂は刀をみる 刃毀れだらけである 刃切れはない

反りは極めて浅く直刀に近いが使えないことはない

 

【挿絵表示】

 

 

得物の不備は技量で補う

 

さて行くか

 

 

八坂は左手を前に突き出し右手を引く

まるで目に見えない弓を引いているようであった

 

その構えに彼女、椎名京はどこか見覚えがあった

 

ヒョウと八坂は目に見えない矢を放つ

すると彼の宣言通りちょうど三十人

その場にストンと崩れ落ちる

 

 

――八雲流 弓術 氣弓 不射之射

 

(人としての情けを断ちて神に逢いては神を斬り、閻魔に逢いては閻魔を斬る

我これより凶刃なる)

 

八坂は窓から飛び降りる

 

 

ルー先生と一言話し先生には下がってもらった

 

「初めまして八雲八坂です」

「そこを通してください」

そう言いながら八坂は土下座した

 

――八雲流 落地勢

 

一番前にいた男は何も言わず刀を大上段へ振りかぶり土壇斬りでもするように

振り下ろそうとした

 

――八雲流 蛙之舌

 

八坂は片膝をたて目の前に居る数名の男たちの膝を撫でそして起き上がる

皆それに動じずに致死の斬撃を浴びせてくる

八坂はそれを躱し いなし 弾き返し 時には受け止めたりした

だが誰一人として諦めようとせず八坂に斬りかかる

 

そして遂には八坂は背中を斬られた

「チッ」

それに勢いづいたのか男達の攻撃の手数が増える

八坂は距離を取ろうとするが一人が離れない

そして八坂についてきた来た男は刀を背中まで振りかぶった

これ程のスキを見逃すわけはない

(頂きます)

八坂は八双の構えからフッと鎖骨へ振り下ろす

そして当たる寸前に刃を返し峰で打ち付けた

(鎖骨はいったな)

 

男はその場で悶絶する

 

その姿に一瞬皆が怯む

 

八坂は攻撃などしなかった

ただその瞳には何も映ってなどいなかった

ガラス玉のようであった

 

八坂は刀をだらりとさげていた

一人の男が八坂に斬りかかる

男は力任せに刀を振るったため上体が流れた

八坂はその男の腕を斬り飛ばした

 

八坂はヒタヒタと集団へと歩いてゆく

斬りかかられればカウンターにて腕を狙い

足を狙い 時には柄打ち 時には組技を使い

確実に人を壊して進

 

その人数がおよそ半数に減った頃だろうか

 

一人の老人とそれを取り囲む屈強な黒服の男達の一団が居た

老人が八坂を呼ぶとそちらをチラリと向くと

刀を血振るいし派手に刃毀れした刀を鞘へ納め 走り寄る

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お久しぶりで御座います、ご当主様」

そう言い深々と礼をした

 

「構わんよ、いつも通りでよい」

そう言ってご当主様こと椿井翁はニッコリと笑う

 

一人の黒服が八坂の替えの羽織を持って近寄る

「兄貴、これを」

そう言ってそれを差し出す

八坂は返り血と自身の血で紅色に染まった羽織をわたし きがえた

 

それを見ると椿井翁は口を開く

「ユックリと話したかったが仕方がない、後の事は任せて行って来い」

そう言って翁と黒服たちは前へ進む

「兄貴行ってらっしゃい」

 

「すまん」

そう言って八坂は走り去る

 

 

 

 

 

 

そして翁が出てくると鉄心も出てきた

「久しぶりじゃの椿井の」

 

「思ったより元気そうじゃないか鉄心」

「今はそんな事より後片付けが先じゃ」

 

「あ奴に斬られたものは院へ搬送済みじゃ」

 

「残った者たちは如何するつもりじゃ、鉄心」

 

「それについては心配いらん、川神学園名物 羅惧美偉(ラグビー)にて決着をつければ良い」

 

「そうかそれはありがたい、お主ら準備はいいのかの?」

「「「勿論」」」

 

「そちらの方は如何かの」

 

「構わん」

 

そう言ってみなが熱してくる

 

(午後の授業はやめて観戦にしようかの、折角これ程の実力者がそろっているのだから)

 

 




作中に出てきた
椿井 翁の名前
椿井翁 の息子の名前
八坂を兄貴と呼んだ男の姓名
を募集したいと思います
よろしければ 名前のアイディアを下さい
お願いします
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