王大人「“蒼の薔薇”、死亡確認!」
帝都
『愚かな侵入者よ! ここは譲らんぞ! 〈
「やっべ! 〈回避〉!」
「ふっ!」
ミミーニャが弓を引き、
『ぐ……〈
「うわっちっ!」
飛んできた火の玉を、ミミーニャは間一髪横っ飛びで回避する。
「ぬうんっ!」
その隙に、ドヴァービクが聖別されたメイスを振るう。それが
『くそ! まだだ! 〈
「ぐおぉっ!」
ドヴァービクは至近距離からの火の直撃にやられてゴロゴロと転がる。しかし、それほど致命的ではない。このメンバー全員は、今回の戦いの前に一通りの魔法防御をほどこしているからだ。〈
「〈
今度は
『煩わしい! 〈
「
電撃を受けて、マルシェが片膝をつく。
しかしながら、この4対1という多勢に無勢の状況は、相手の体力の低さという弱点を突く形となった。結果――
「これで終わりだっ! 〈双剣斬撃〉!」
3人による交互の攻撃の合間に後ろに回り込んだフェッケヤンは、2本の剣により
ゴトリ、と、敗者の首は無残に地面に落ち、頭を失った本体は倒れ込む。そして、断面から凄まじい勢いで最期の負のエネルギーを消失させてゆく……。
しかし、首だけとなったそのアンデッドの顔は、消滅の間際、渾身の叫びを発した。
『おのれ!
断末魔の形相でそう叫び、その
◆
「――以上が、お、私達が体験したことです」
バハルス帝国帝都アーウィンタール、その皇城の謁見の間で、皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは、深く目を閉じ、眉間に手を当てていた……。
「…………」
ワーカーチーム“ブフォッサイド”のリーダー、フェッケヤンは、何一つ覚えのない皇城での礼儀作法に戸惑いながら、どうにか皇帝陛下へ自らの経験談を語っていた。……それにしても、場違いも良いところだ。4人ともワーカーなりに身なりを整えて一張羅を着込んで来てはいるが、その精一杯頑張った姿がむしろ痛々しい。
……そもそも、こんなことになった事の発端は、わりとしょうもない依頼だった――。
『帝都の地下水路から妙な
……という、もはや便利屋以外の何物でもない依頼を受けて、メンバーは
一同は準備を整え、これをどうにか討伐したところ、先ほどのような意味不明な辞世の句を聞くこととなった、といういきさつだ。まあ一応、依頼主に事の
「……すまないが、もう一度言ってくれるか? 特にその、四秘宝とやらのところを」
「アッハイ」
半ば挙動不審で、フェッケヤンは再度記憶をなぞる。
「えっと……確かこう言ったんです。『取らせはせんぞ! 我らが守りし四秘宝! 「どんな強大なアンデッドをも消滅させる剣」! 「
「……………………」
ジルクニフは額に手を当てて、眉間の皺を更に深くした。
「……情報提供ご苦労だった。褒美を取らすから、もう帰っていいぞ」
「は、はぁ……」
機嫌の悪そうな皇帝の言葉に怯えつつ、どうにも腑に落ちないフェッケヤンは、そんな気の抜けた返事を返してしまう。それがまたジルクニフを不機嫌にさせる。
「おい、客人がお帰りだ。案内してやれ」
「ハッ」
「えっ? あ……」
近衛兵を促してとっとと退散させる。正直、さっきの四秘宝とやらの話で「……あ、あと」の部分まできっちり繰り返したのにはイラッとした。ぶっちゃけもう顔も見たくない。だいたいなんだ、そのうっかり発言で無礼討ちされそうな地雷ヅラは。名前ふざけてんのか殺すぞ。
「……ふぅ」
ジルクニフは椅子に沈み込むと、深い溜息をついた。
彼の現在の立場は、魔導国属国であるバハルス帝国を預かる元首でしかない。しかし、そのまま「帝国」の「皇帝」を名乗り、在位し続けることは許された。まるで、そんな人間の国の些事など意に介さないとばかりに……。
(馬鹿にしてるのか、あの骨!!)
思わず心の中で悪態をついた。
「あの噂、本当に
傍らに控えていた帝国三騎士――以前は四騎士だった――の一人、「雷光」のバジウッド・ペシュメルは、呑気にそう言った。
「まあ、実際にただの噂話だけでは済まん調査結果も出ているしな」
ジルクニフがそう返す。
「……と、言いますと?」
「騎士達に、例の
「へっ?」
バジウッドが間抜けな声を発する。
「ほ、本当ですか陛下? しかし、そんなこと、今まで誰も……」
三騎士のもう一人、「激風」のニンブル・アーク・デイル・アノックは、信じられないという表情を見せた。
「そうだ。帝都の民も誰一人として知らなかった。普通に考えてありえん」
帝国の歴史は浅く、建国から200年も経っていない。この帝都についても、魔神が暴れた後の更地に実質一から建設したようなものであり、都市計画の図面もしっかりと保管されている。当然ながら、そこにそのような地下迷宮の情報など存在しない。もしそんなものがはじめからあれば、地下水路を建設する時に気づかないわけがない。そもそも――
「我々の足元に地下迷宮だと? アンデッドが
少しだけ気持ちが入り過ぎたジルクニフは、軽く咳払いして調子を取り戻す。
「で、でも、現にあるんですわよね、迷宮が! でしたら、その四秘宝とやらも……」
思わず焦り気味に口を挟んだのは、三騎士の最後の一人、「重爆」のレイナース・ロックブルズである。
「レイナース、お前がなぜ必死なのか分かるぞ。少しは隠せ」
「今更隠すことなどありませんわ。だって――」
「まあ聞け」
ジルクニフはレイナースを皇帝の威厳で
「レイナース、ひとつ良い事を教えてやろう。他人を思い通りに動かすための、一番効果的な方法は何だと思う? それはな、そいつが一番欲しいものを、一番欲しい時にぶら下げてやることだ」
「ぅ…………」
色々と思い当たるところがありすぎるレイナースは、思わず沈黙する。
「……つまり陛下は、こう思われているわけですね? その四秘宝とやらも、よく分かりませんが迷宮とやらも、あの魔導王陛下のわ……お戯れである、と」
「……それしか考えられんだろう。何だこの……魔導王陛下に危険が及びそうなラインナップは」
ニンブルは、「罠」と言いかけて言い直した。返すジルクニフは、本音である「自分に都合の良すぎるラインナップ」を言い換えた。
……実のところ、今となってはこの謁見の間にいる全員が、帝都皇城は魔導王の配下の者に監視されていると踏んでいる。この会話もきっと聞かれているはずだ。不用意な言葉には注意だ。
……かと言って、何もしなければいいというものではない。自分達が優秀であることを証明してみせなくてはならない。「無能なニンゲンどもめ。お前ら全員の首を、我が直属の配下にすげ替えてくれる」……などと言い渡されないためにも……。
「陛下。他はともかく、3番目の『どんな呪いも解く
「ふ……
もともとレイナースはそのあたり明け透けだったが、帝国が属国化してからというもの、随分と露骨に吹っ切れた気がする。だからこそ、ジルクニフは
「……にしても陛下、この帝都の地下に迷宮を作るなんてこたあ、いかに魔導王陛下であってもできますかね? 俺らの真下ですぜ。んなとこでカンコン建設してたってんですかね? 一体いつから?」
「む……」
バジウッドの言葉に少し詰まる。それについては、ジルクニフも疑問に思っていた。調査隊の話によると、地下のそれは大迷宮とも呼ぶべき奥深さであると推測できるらしい。基本石造りの素材は、不思議な魔法の力で加工の年代すら読めず、ところどころに精緻な装飾まで施されているそうだ。
そんなものを短期間で、地上の誰にも気づかれることなく作ることなどできるだろうか? 何かを創造するというのは、破壊するのとはまるでわけが違う。人手が要り、時間が要り、資材が要り、道具が要り、頻繁な運び入れと運び出しが要る。それを誰にも気づかれずに成し遂げることなど、人間の常識では不可能だ。
(あのナザリック地下大墳墓にいた異形どもと、アインズ・ウール・ゴウンのとんでもなく高度な未知の魔法があれば、可能なのだろうか?)
ジルクニフ思案する。こういうとき、今までならフールーダが相談に乗ってくれた。だが、あの爺は帝国が属国化するやいなや、魔導王に弟子入りしたことを
「陛下、もし仮に、ですよ? その迷宮と四秘宝とやらが、魔導王陛下と全く関係なく、もとからこの帝都地下に眠っていたのだとしたら……?」
ニンブルが仮定の話を持ち出す。
「…………」
ジルクニフは、ありえないと思いつつも想像してみた。
この帝都の地下には、どういう仕組みでか誰にも知られることなく、本当に秘宝が眠っていた、と仮定しよう。それは、ともすればあの
(なんだそれは? どんな神のいたずらだ!? あれか、私の信心が足りなかったとでも言うのか?)
確かにジルクニフは、今まで信仰などという
(……いや、待てよ? 今からでも遅くはない……か)
……そうだ。属国と成り果て、奴に
……と、そこまで考えて、ジルクニフは
(……馬鹿か私は。何を考えているのだ。こんなもの、ただの願望から出た妄想だ。そもそも、この話も奴に筒抜けなはずではないか……)
ジルクニフは再度「ふぅ」と小さく溜息をつき――
「いずれにせよ、その内容が魔導王陛下を
――現状で最善と思われる対応、すなわち安全策を取ることを決めた。
(夢を見るのはよせジルクニフ。どうせ奴の悪趣味な
希望を捨てたジルクニフは、冷静だった。
……しかし、本人の意志とは無関係に、一度浮かんでしまった「もしかしたら……」という想いは、後ろ髪の先で静かに
なお、4番目の秘宝について言及した者は誰もいない。
?「茶番だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ごめんなさいごめんなさい。
違うんですアンチ・ヘイトとかじゃないんです。
オリキャラ考えるのが苦手なだけなんです。
フォーサイト大好きなんで2Pキャラとして使いたかっただけなんです……。