ナザリック・ディフェンス   作:犬畜生提督

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<前回のあらすじ>

侵入者ヨ来イ、ト願ッテシマウノハ、不敬ダロウカ……?



報告

「アインズ様、こちらが、今までの侵入者をまとめた報告になりんす」

「うむ、ご苦労だった、シャルティア。感謝する」

「ああ、勿体なきお言葉!」

 

アインズは報告書を受け取る。最近、直接報告の機会が増えたシャルティアはやけに嬉しそうだ。脇にはソリュシャンが控えている。今はシャルティアの補佐に当てている。意外と気の合う組み合わせらしい。

 

アインズはまず要約部分を確認する。報告書は非常によくまとまっている。どこを見れば全体像が把握できるか、詳細を追うにはどうドリルダウンしていけばいいかが、一発で分かる。

 

「シャルティア、実に読みやすい報告書だ。素晴らしいぞ!」

「あぁ、ありがたき言葉でありんす! ……くっふふふ……やった……やりんした……!」

 

小さく抑えつつも全身で喜びを表すシャルティア。それをなんか生暖かい目で見守るソリュシャン。

 

アインズは知っている。シャルティアが方方駆け回って、資料のまとめ方について指南を受けていたことを。アインズとしては、多少(つたな)かろうと「シャルティアらしい」と許容する気満々だったし、事実、最初のうちはそんな感じだった。しかし、意外にもシャルティアの報告書作成スキルは、営業職・鈴木悟が太鼓判を押す出来にまで成長していた。シャルティア自身の努力と、守護者やメイド達の献身的な協力が透けて見えるようだ。主として誇らしい気持ちになる。

 

報告によれば、これまでの侵入者は合計246名。うち冒険者が177名、どこぞの貴族の私兵が24名、残りは所属が明確でないワーカーや盗賊など。チーム数にすると50チームほど。すべてエ・ランテルまたは近郊の人間種である。

 

(思ったより少ないな。やはりデミウルゴスの提案を実行してよかった。これを全部ダンジョン内で殺したら、おそらくエ・ランテルの冒険者組合は跡形もなくなる)

 

これらの侵入者のリピーター率はとても高い。そのため、のべ侵入者数は(ゆう)に1,000人を超す。これに伴う収入は――

 

(ホックホクだよ♪ ホックホク♪)

 

小卒サラリーマン鈴木悟の残滓が顔を出すくらいの高収入だった。このペースなら、ヌルヌル君や三吉君を日替わり使い捨て召喚に換えても全然痛くないくらいだ。……もうすっかり愛着が湧いてるのでやらないが。

 

……とはいえ、アインズの懐事情的には、アルベドの提案で作った、仲間捜索用の「最強のチーム」に使った分の支出が痛く、その補填にはまだ遠く及ばない。加えて、また新たに何体か傭兵モンスターを作る予定もある。差し当たっては、諜報系の仕事を任せられる上位モンスターの拡充だろうか。今後かなり入り用になってくると思われる。もっと稼がねば……。

 

「遺跡」用の宝の選別は、今のところ悪くないようだ。あくまで侵入者に「もう一稼ぎ」と思わせるような価値にするのが肝要だ。「売ったら一生遊んで暮らせる宝」など配置したら、そのまま冒険者を引退されかねない。このあたりの現地庶民の感覚はナザリックの面々にはあまり頼れないので、アインズの勘が物を言う。

 

今までの死者は4名。ほぼ不慮の事故と言っていい。自動湧き(P O P)アンデッドなのでそんなに制御は効かないかと思ったが、驚くほど忠実に任務をこなしてくれている。これには感謝だ。

 

(あれらに褒美を……いや、考えるのはやめておこう。数が多すぎる……)

 

アインズは、報告書を眺める自分をやや緊張した面持ちで見つめる二人に質問する。

 

「死体は有効活用しているか?」

「もちろんでありんす。シモベ達で仲良く分けあっていんす」

「そうか。数が少なくてすまんな。不公平感が出るのではないか?」

「何を仰りますアインズ様! ご褒美を下賜されたことに(よろこ)びこそすれ、不公平などと……」

「……そうか、感謝する。そのうちシャルティアやソリュシャンが気に入りそうな褒美も手配したいところだな。侵入者の中にはなかなかいなさそうなのが心惜しいが……」

「とんでもございません! そのお気持ちだけでも天に昇る心地です」

 

アインズのどこまでも深い慈悲に感極まる二人。美しい主従劇だが、褒美の中身は美女とか無垢な子供とかだ。

 

「遺跡」入口に配置した看破能力特化のシモベは、良い仕事をしてくれている。が、今のところ役不足としか言えないような侵入者しかいない。下はレベル3から、上はレベル20程度まで。

 

(でも「レベル15チーム用エリア」すらまだ誰一人越えてないんだよなぁ……。ユグドラシル基準なら越えてもおかしくないんだけど、やっぱりビルドが下手なのかな? 攻略Wikiとかないもんな……)

 

ダンジョン内には、5レベル刻みで「レベル50チーム用エリア」まで用意してある。しかし、想定では、()()()()()これらが全て踏破されることはない。これらを踏破しうるような、レベル50以上の侵入者が現れれば、それは入口で早期発見した時点で()()()()することになる。

 

レベル50を(しきい)値とした理由は、ちょくちょく外にお使いに出しているプレアデスを「傷付けることができる存在」に当たるからだ。これに該当するこちらの世界の存在は、今のところ判明した限りでは、既に(たお)した魔樹ザイトルクワエ、それと、“蒼の薔薇”のイビルアイくらいか……。

 

(アレは、いつかエントマへのお土産にくれてやらんとな……!)

 

あの時のことを思い出し、チリチリと怒りを(くすぶ)らせるアインズ。

 

あの小娘はアダマンタイト級冒険者という分かりやすいところにいたが、いつどこに同じような強者が潜んでいるとも限らない。(いと)し子を守るためにも、油断は禁物だ。

 

それ以外の弱者に対しても、入口でのレベルチェックとダンジョン内でのパフォーマンスとで、何か不自然な差異がないかについてチェックさせている。

 

「レベルの割に妙に強かったり、レベルの伸びが著しかったりする者はいたか?」

「いえ、今のところ、想定内、もしくは想定以下の戦闘しかできないものばかりです」

「そうか……。変わった者がいれば報告せよ。生まれながらの異能(タレント)や強力な武技を持っているかもしれん」

「お任せくださいでありんす」

 

ダンジョンの運用がある程度安定した今、アインズはちょっとばかり欲目を出していた。……そう、レアモノ探しである。

 

未知の装備、未知の武技、未知のスキル、未知の現地魔法、そして、未知の生まれながらの異能(タレント)。これらを把握し、隙あらば自らの手中に収めておきたい。ンフィーレアのようなぶっ壊れ性能が他にないとも限らない。このナザリックのお膝元でなら、それらの発見と確保は容易だ。いつでも「行方不明」にできる。

 

つまり、この偽装ダンジョンは、弱者を踊らせての資金獲得、強者をおびき寄せることでの早期発見と対処、そして、レアモノ漁り、という、三重においしいプランになっているのである。まあ、後者二つは運頼みだが。

 

(凡人だけでつまらんな~。そろそろ誰か面白い奴来ないかな~?)

 

……とりあえずアインズは、数多(あまた)の古典文学に(なら)い、フラグを立ててみた。

 

――と、次の瞬間、本日のアインズ当番のメイドから声がかかった。フラグの力ってすごい。

 

「アインズ様、失礼します。マーレ様がお目通りを願っております」

「……通すがよい」

 

マーレがメイドの開けた扉からひょこっと顔を出し、おずおずと入ってくる。

 

「あ、あの、アインズ様、カッツェ平野への兵の準備が整いました。馬車も、用意できてます。いつでも行けます」

「……ああ、うむ。わかった。すぐ行こう」

 

……そうだった。フラグとかアホな事やってる前に、まずはそっちを片付けないとな。

 




……はい、そうです。
実はダンジョン運営はあくまで副業の一つ。
「本業」のほうは、ほぼ原作通りに進行してたりします。
つまり、次回にはもうエ・ランテルは……。

前回に引き続き、なんかほぼ設定回、溜め回で申し訳ナス……。
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