prolog
タタタ・・タン・タタ・・・
銃声が部屋に響く。満足に換気されていないのか、視界は白く、2m先が見えない程だった。
「外した奴は廃棄だ!覚悟して撃て!」
拳銃片手に男が喚き散らす。
この男が言っていることは身に染みてわかっている。
昨日まで居た仲間が今日は居ないなんてことも最早日常となっていた。
今日も今日とてただ廃棄されないよう、硝煙の先にあるであろう見えない的に喰らい付く。
撃って、撃って、撃って、撃って。
時間が経ってやっと気づく。ああ、また一人消えたのか。
どれほど経っただろう。
何日?何ヶ月?はたまた何年?
よくわかんないや。
残ったのは自分一人になった。
ああ、それでも、音は止まない。
今日もまた、独り硝煙に包まれて、誰もいない中撃ち続ける。
ガシャン!パタタ・・タタン・・・
聞き慣れない音が聞こえた。
複数人の足音も聞こえてくる。
それに……なんだ?
聞き慣れた声の、聞き慣れない声。これは、叫び声?
何を叫んでいるのだろう?
どうせロクでもないものだろうさ。
引き金を引き続ける日々は変わらない。
「っ!!生存者確認!!!まだ子供だ!!」
うん?誰?知らない。
自分の知っている男よりも強そうな人達に連れられて、知らない場所を歩かされる。
あ、廃棄か。
そう思ったが、違うようだ。
この人達は暖かい。
直感的にそう思った。
カツ、カツ、カツ、カツ。
何もない所に音だけが残る。
なんだろう?
あの明るいところは。
暖かい。眩しい。ちょっと怖い。
緑色の服を着た人達が、目を必死に隠す自分を見て、顔を歪ませていた。
なんだろう。何をしているのだろう、この人達は。顔を歪ませて、一体何になるというのか。
わからないから、真似てみた。
案外気持ちがいいな。そう思った。
途端、光が一層強くなった。
明るい。怖い。……温かい。
ここで、私は初めて太陽を知った。
何か茶色の物体を緑色の人に渡された。
匂いを嗅いでみる。
排泄物とは違うようだ。
では、これはいったい?
首を傾げていると、また緑色の人達が笑って、その一人が茶色の物体を口に入れた。
なるほど。これはそうやって使うものなのか。
よし。ならば真似てみよう。
一口、口にした。
……なんだこれは。なんだこの味は。知らない。
今まで口にしたものはボソボソで、何も感じなかったというのに。
しかも、口の中で溶けていく。口の中にドロドロした何かが絡みつく。
ますますなんだ。これは。
目を見開き、緑色の人を見る。
「甘いだろう。美味いだろう」
なるほど。これが美味いものか。
なるほど。これが甘いものか。
そういえば、昔いた仲間たちの一人に、よく食べるやつがいたな。
そうだ。いた。
他にも、しきりに髪を気にするやつ。いつも爪噛んでるやつ。片目が閉じたままのやつ。なんでもすぐに壊したがるやつ。そうだ。確かに居たんだ。なんで忘れてたのだろう。
思い出せば思い出す程、鮮明に浮かび上がってくる。
目が熱い。何かが流れている。
(食べたかったろうな)
私はもう一欠片口にして、緑色の人の手を振り払って、出てきた扉に一人で戻っていった。
(確か、14は数えたっけ)
茶色の物体を14個に割って、扉の前に並べた。
ふふん。ちょっと満足した。
振り返る。
緑色の人たちは、ある人は目を隠し、またある人は顔を歪めていた。
どうして?