銀色の二重奏   作:乱れ咲

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入隊

ベルリンに到着した。見知った男2人に案内され、演習場へ行く。軍服に着替え、VP9とナイフ2丁を装備し、少し緊張しながら歩みを進める。演習場には7人の女性が整列し、厚化粧の女がその前に立っていた。ラウラの姿も伺える。見覚えのある厚化粧の女が腕を組んでこちらを睨む。何故あの時私の報告に嘘をついた。そう、目が物語る。私は最善策をとったまで。文句を言われることは許容するが、間違いだとは思わない。

 

 

 

7人の前に立たされる。肘でどついてもビクともしなかった私を厚化粧の女が睨み、自己紹介を促す。

「元ハーデン=ヴュルテンベルク駐屯地、ドイツ連邦陸軍特殊作戦師団コマンドー中隊第一小隊所属、フェルテン=ヴァルター大尉です」

8人は目を見開く。伝えられていなかったのだろうか。ラウラまで驚いている。まぁ、13歳で大尉、そして特殊作戦師団所属なんて、類を見ないだろうと自覚はしているが。

各々の自己紹介も済ませ、抱いた第一印象。

気持ち悪い。

8人中7人が女性至上主義の考えを持っているようだ。仲良くなる?こちらから願い下げ。向こうからもきっと近づかない。丁度いい。

昼食がすでに済ませてあり、個人技能の試験を行うらしい。私が来たことでやらなければならなくなり、ついでだからと全員で行うようだ。試験場所にむかう。ラウラから聞いたところによると、今日はISは使わないらしい。

 

 

 

 

 

各々自分の得物を取り出す。行動が遅い。動きに無駄が多く、会話も多い。その内容のほとんどが軍に関係のないものだった。呆れた。この部隊の長物はG36Cらしい。特に室内戦で使われるコンパクトなアサルトライフルだ。ハンドガンは私と同じVP9。やはり主戦力はISなのだろう。それ以外の装備はなかった。

技能試験が始まった。私は狙撃兵であることから、アサルトライフルは所持していない。ラウラに言って、G36Cを借りる。2.3発撃ち、癖を知る。癖と風、湿度から弾道を予測し、引き金を引く。セミ、3点撃ち、フルで撃つ。乱立している的を横薙ぎに撃つ。やはりなれないものは使うべきじゃない。何発か外した手応えがある。女共は銃の反動を殺しきれていない。初めて撃った人よりはマシ。

拳銃技能。小隊に入る前から慣れ親しんだ感覚。外すわけがない。マガジンの15発で的の金属板に穴を開ける。単発では威力が足りず凹むだけだが、何発も同じ場所に当てれば話は別。

狙撃。この部隊に狙撃兵はいないらしい。L96A1を出し、マガジンをセット。コッキング動作に不備がないかを確認し、スコープの倍率を合わせる。バイポッドを立て、寝そべって体と銃を固定。狙いを定め、1400m先の的を撃つ。7人は笑っている。当たるわけない、とか思ってるのだろうか。ズドン!とラプアマグナムの発砲音が響く。直後、1400m先の人型の目標の頭部が吹き飛ぶ。無言で銃を片付ける。全員が唖然としており、ラウラは少し得意げだ。

対人格闘。なんだこいつら。素人に毛は生えている。けれど、それだけ。使える技術ではない。まともなのはラウラだけって、部隊としてどうなのか。

知識も、ISに関しては周りよりも私が劣るが、それ以外はからっきしだった。どうしてこれでラウラを馬鹿にできるのか。

試験が終了し、早めに解散。あとは自由。ラウラがこちらに来た。

「流石だな、フェルト」

「あの人達から人生の半分以上の時間教わってたら、当然これくらいはできるようになりますよ」

そう返すと、ラウラは?を頭に浮かべ、理解したのか、はぁ!?と驚く。面白い。

「これからラウラはどうするのですか?」

「何もさせられないから、こうしてお前の所に来たんだよ」

自虐気味にそう言う。そんな言い方はやめた方がいい、とやんわりと言って、ラウラを連れて、演習場に戻る。

「で、何をするんだ?」

「ナイフを使った戦闘をしていないから、相手をして貰おうかなと」

いいだろう、と言うがはやいか、ラウラは私に襲いかかる。右手にナイフをもち、確実に首の静脈を切りにかかる。私はすぐに首を動かし、次の行動に移られる前に腕を掴み上げ、ナイフを落とさせる。本気に近かったのか、ラウラは嬉しそうに、

「今のを止めるとはな」

なんて言うので、相手の正面にいるときは最初は首を狙うと見せかけて四肢の健を狙うのがいいことを教える。それから熱が入り、2時間ほど動き続けた。

部屋の場所を教えてもらい、シャワーを浴びる。浴び終わり、体が乾いたら部屋を出て、夕食を摂りにいく。ラウラがいないのを不審に思いながらも夕食を済ませ、部屋に戻る。幸いなことに、娯楽室のような所にピアノがあったため、断りをいれ、一曲弾く。天気も良く、月が綺麗なので、ドビュッシーの月の光を弾く。鍵盤を叩くのではなく、そっと、慈しむように触れる。一曲弾いて満足したので、帰る。無視していたが、周りからの視線が怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルリンにやって来てから1週間が経過。ラウラが毎食戦闘糧食であると聞く。いや、それはないだろうと思い、毎食私がラウラを食事に連れて行く。初めは嫌がっていたが、徐々に慣れて来たのか、それとも諦めたのか素直についてくるようになった。

今日はISを用いた訓練を行うらしい。用いるISはドイツの第二世代ISである、シュヴァルツ。その名の通り、真っ黒な機体。得意げにISを装着する女。ベルリンには3機のISが配備されており、有事の際の防衛と訓練の為、多目らしい。内1機は私にしか反応しない。私のIS適正値は、他のISではCであるが、例の機体ではAを叩き出した。相性があるのだろうか。

シュヴァルツは鈍重な機体で、高火力のライフルを用いて戦うのだとラウラに教わった。動きを見てみると、確かに遅い。ライフルを撃てば、ほぼ全弾命中している。腕がいいのではない。ただ、相手が遅く、自分も遅いから、偏差射撃をあまり考慮しなくていい為だ。戦闘というより、ステゴロの喧嘩のイメージが強い。

そんな感想を抱いていると、私もISに乗るよう、指示された。格納庫に向かって歩く。扉を開け、ISに向かい、歩く。そして気付く。

(このIS、他の機体より小さくないか?)

見るからに小さい。見間違いではない。疑問に思いながら、ISに触れる。声は聞こえない。ただ、どこかウズウズしている印象を受けた。頭に知識が入り込み、思考が明瞭になる。どう動かせばいいかを感覚的に掴み、前進。外に出る。女達が集まっている。合流した。

「これから、誰か1人と模擬戦をしてもらう」

そんな無茶な。私は思った。ラウラも同意見らしく、こちらを見て首を横に振る。

誰か相手をする奴は?の一言で5人が手を挙げる。そして気付く。ストレスの捌け口になれ、ということだ。IS以外での屈辱を、ここで晴らす魂胆なのだろう。現に、多くの女がいやらしく笑っている。私の意見など聞かぬまま、準備は着々と進められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛ぶ。感覚的にできることは今は心強いが、どうやって飛んでいるのか、気になるところではある。夜に勉強しよう。と決意し、正面を見据える。ニヤニヤ笑っている女。自分の勝ちは揺るがないと慢心しているのだろう。一瞥し、武装を確認する。あるのは、大口径ライフルとナイフ2丁のみ。他は無いのかと探すが、これだけらしい。ライフルの口径は80。装弾数10+1。愛銃と装弾数が同じで、笑みがこぼれる。ライフルを両手に構え、開始の合図を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

勝てるわけがない。

相手はISの訓練を2年間受けている上級者。代表候補生には届かずとも、実力は持っている。対し、ISに乗って2回目のフェルトが勝てるはずもない!悔やまれる。私がもっと強ければ、こんな茶番、すぐにでも終わらせたというのに!

 

 

 

 

 

 

 

ビーッ!!!

試合開始の合図が鳴った。

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