緑色の人達に手を引かれ、大きな箱の中に入れられた。
全員が入ると、ゆっくりと動き出した。
世界が急速に変わっていく。
緑と茶色、黒に白。
暖かなコントラスト。
灰色の世界にいた私には、それはとてつもなく眩しく、鮮やかで、何よりも楽しかった。
キラキラした世界。初めての味、光。
ああ、顔がムズムズする。ただ、嫌な感じはしない。
世界がこんなにもキレイなものだったなんて。
そう思うだけで、ムズムズが止まらない。
気がついたら、口が歪み、目が細まり、声をあげていた。
はっとして周りを見る。
優しい目で全員が私を見ていた。
顔が熱くなって、下を向いた。
しばらくして、世界がまた大きく変わった。
緑色の世界から茶色の世界、茶色の世界から青と灰色の世界。たまに見える赤茶色の世界。
また声が出た。
箱はまだまだ動き続ける。
箱が止まった。全員が箱から出ていく。
どうしたらいいかわからなくてキョロキョロ周りを見ていたら、そっと手をとられ、箱から出された。
何処だろう。
大きな建物がある。
あ、これが昔いた仲間たちの一人が言っていた『お城』というやつかな?なんて。ああ、また顔が歪んだ。目も熱い。
私の手をとる人は、ゆっくりと歩いて行き、私もそれについていった。
大きな建物の中に入って行き、かなり進んだところで立ち止まり、扉を叩いた。
中から声が聞こえると、何か言った後、扉を開け、私を連れて中に入る。
大きな男がいた。
怖くて、でも優しそうな男。私を見るなり、頭に手を置いてきた。大きくゴツゴツした手。力を込めることもなく、ただ乗せて左右に揺らす。
どこか安心できた。
私が目を細めると、男はとても満足げに手を退け、私を連れてきた人に目を向けた。
それから二人は何か言い合っていた。
『銃』『子供』『使う』『戦争』
これくらいはわかった。
じっと男を見ていると、言い合いは終わったのか、男は膝を曲げて、私と目線を合わせて、笑顔で
「私が君の父親になるんだよ」
と言った。
はて?わからない。
『私』はわかる。『君』もまぁわかる。
『父親』とは?わからない。
首を傾げた。
男は困ったような顔をしていた。
私を連れてきた人は、目を抑えて、出てくる液体を拭っていた。
しばらく静かな時間が続いた。
男がすっと立ち上がり、板状のものを取り出し、それに向かって何かを言った。
私達がいる場所に、見たことのある人達が来た。そうそう。光を見せてくれたあの人達だ。
何かを話し合っている。
ギョロリ。
全員が私を見た。
びっくりした。
すぐに目を離して、また話し合った。
チラチラと何人かが私を見ていた。
話し合いが終わったらしい。
私は二人の男に連れられて、知らない道を歩いた。あの場所とは違う、暖かい道。
ある扉を開けて、中に入る。
突然服を取られた。
驚く暇もなく、頭から何かをかけられた。
どうやら水らしい。でも、冷たくなかった。
とろとろの液体を手につけて、二人が私を触ってくる。
くすぐったい。ちょっと暴れた。
二人は笑って続ける。
くすぐったい。顔が歪んできた。
二人はまだまだ続ける。
声が出た。今まで出したことのないような、気持ちのいい、信じられないくらいに大きな声が。
声が止まらない。二人の手も止まらない。
頭から温かい水をかけられ、今度は髪に手が伸びた。
気持ちいい。
目を細めた。
二人を見る。笑っていた。楽しいのだろうか。
また頭から温かい水をかけられ、身体を拭かれた。
二人はとても驚いていた。
初めて見る、キレイな服を着せられた。
「女みたいだ」
二人は言った。私は男だ。
来た道を戻っていく。
見覚えのある扉の前に着いた。
前来た時のように、私は扉を叩いた。
二人は笑った。
扉が開かれた。
全員が私を見て目を見開く。
大きな男が私に向かって言ってきた。
「ここに居る全員が、君の家族だ」
『家族』?意味はわからなかったが、きっと悪いものではないのだろう。だって、みんな優しい。
体の奥が暖かい。
私は顔を歪ませて、目を細めた。