フランスの山の麓。そこまで大きな山でもなく、すぐに頂上まで行けそうだ。流石に軍用車で国境を越えるわけにもいかず、私のアウディとベネディクトのポルシェでここまで来た。どちらも防弾加工を施し、隠しトランクに火器をしまっている。時刻は2000。日も暮れ、街灯もない為非常に暗い。
進行開始。目的地は山頂付近にある研究施設。ルッツ曰く、着工されてから日が浅いため、すぐに潰せる規模だとか。L96A1を胸元に抱えて進む。
山頂に到着。研究施設らしき建物の影も見える。地下施設ではない。事前調査で地下がないことはわかっている。それでも念のため調べるが。窓は見当たらず、扉も1つだけ。まるで収容所みたいだ。外からの狙撃は難しいだろう。
扉の鍵は古典的な鍵穴式だった。マルコがピッキングツールで開け、突入する。室内戦においてスナイパーライフルはあまり役立たない。持ってきたUMPをメインに構える。
何処から仕入れたのか、FA-MASを持った兵が歩いてきた。見回りだろうか。厄介だ。FA-MASはブルパップ式のアサルトライフル。取り回しが良く、室内戦において大きな脅威だ。兵は3人。すぐさま無力化しようとするが、敵に気づかれた。敵兵が他の兵に気づかせる意味も込めて連射する。ここまできたら隠密行動は意味を持たない。こちらも撃ち返す。3人を殺した瞬間、2人の新たな兵が走ってきた。相手は他の隊員に任せ、私は外を警戒する。まだ扉から入ったばかりだ。
扉のロックは全て鍵穴式らしい。ピッキングする暇もないので、鍵穴を撃つ。扉を開け、中にグレネードを放り込み、爆発を確認してから中に入る。クリアリングを4人で行い、残り2人は外の警戒。私はクリアリング組だ。この作業をこれまで4回。死んだのは9人。小隊の損害は弾薬のみ。まだまだ終わらない。進む。進む。
ほぼ全ての部屋をクリアリングし、最後の部屋。例に漏れず鍵を破壊し、グレネードを投げ込む。今回の目的は施設の破壊。データは二の次三の次。ある程度無くなっていても問題はない。部屋には爆発によって焼け爛れた男の死体と、トランクに入った紙の資料があった。なるほど。人の手で情報を渡していたのか。アナログな手段だが、重要度の高いものなどでは今でも使われている。フランス語は駐屯地の中佐に習った。なんとか読める。その資料によると、この研究施設では子供を作るのではなく、子供を連れてくる予定だったらしい。間に合ってよかった。
連れてくる(誘拐)予定人物リストの中に、一際目を引く人物。金髪の少女。名前をシャルロット。少女が目を引くのではない。彼女のバックが目を引くのだ。そこには、デュノアの文字。私達の間違いでなければ、フランスの大企業の名前と一致する。世界シェア第3位ISであるラファールを作っている会社だ。たしか、第三世代機の開発が遅れているのだったか。偶然だろうか。仮にそこの娘であったのならば、どうして名字が一致しない?他の隊員も同じ考えのようだ。では、なんだ?
私達小隊はもはや廃墟となった施設を後にする。車は麓に停めてあるので、そこまでは歩きだ。全員の怪我がないことを確かめ、山を下っていく。
パキッ、、、
音が静寂の世界に響く。誰かが乾いた枝を踏んだ音。小隊のメンバーはそんなヘマをする人じゃないし、なにより音が軽すぎる。動物にしては重いな。熊にしては軽い。人間。それも子供?
「誰だ!!」
そうブルーノ中将が言い、残りの全員は銃を構える。数秒待つと、震える両手を挙げた金髪の少女が出てきた。そして、私達はこの少女を写真で見たことがある。
ブルーノ中将が私を見る。同年代の私の方が警戒が薄れると考えているのだろう。もちろん、警戒心が無くなるわけじゃない。銃をおろし、少しカタコト気味のフランス語で話しかける。
「こんにちは」
怯えた目で会釈してくる。ほら、こうなる。
「貴女はシャルロットで間違い無いですか?」
少女は驚くが、はい、と首肯する。しかし、先程までのものとはまた別の恐怖を抱いている。まあ、当たり前だろう。
「では、貴女はどうしてここに?」
「と、遠くから音がして、、、気になって見に来た、、そしたら、ここで、、」
成る程。出会ったのが私達でよかった。下手すれば殺されていたぞ。
「貴女の家は?夜も遅い。送って行きます」
ブルーノ中将を見る。頷いた。
「で、でも、、」
「ここで会った以上、私達には貴女を無事自宅に送り届ける義務があります。あの施設の残党がいた場合を考えると危険ですので」
「やっぱり戦闘だったんだ、、わかりました。付いて来てください」
そう言って、少女は歩き出す。私達もそれに続き、山の斜面にある、小さな民家に辿り着いた。