日本に着いた。まず、空港内の人の多さに驚く。時刻は1600。迎えの人がいるらしいが、どこだろうか。
「ヴァルター、久しぶりだな」
後ろから力強いアルトの声が聞こえた。振り返ると織斑教官がいた。
高速道路を車で走る。乗っているのはアウディ。私の愛車であった。特例的に日本での運転免許も発行してもらい、ナンバープレートも日本のものに変えてある。
「いやあ、すまないな。私は車が使えないのでな」
なんて言いながら後部座席に座るのは、織斑教官。嘘だな。私の車をわざわざ学園に送るのが面倒だったのだろう。にしても、織斑先生は私を迎えにきたはずなんだけれど。
「どうして送迎対象であるはずの私が運転しているのでしょうか?」
「・・・・・・」
無視された。あんまりだ。まあ、IS学園の入学手続きをしてくれた礼、ということにしておく。
「あれから少し調べたのですが、1人目の男性操縦者って織斑教官の弟だったんですね」
「1人目ねぇ」
「一般的に、ですよ」
わかっているさ、と一言。
「ああ。受験の会場を間違えたらしくてな。まったく、どうしたらあんな間違いをするのやら」
心底呆れたように、溜息混じりに言う。受験とは何かはよくわからないが、場所の間違えようのないものであるようだ。
「そうだ、2年前の事件にお前が関わっていることを一夏には伝えていない。一夏は連れていかれた所までしか覚えていなかったからな」
「そうですか」
まあ、別に恩義を感じて欲しいわけでもないし、下手に知られて変に意識されるのも困る。ちょうどよかった。
ドイツのアウトバーンとは違って速度をあまり出せないことにイライラしつつもアウディを走らせること3時間。巨大なアリーナが立ち並ぶ、これまた巨大な浮島が見えてきた。
「織斑教官、あれが?」
「ああ。あれがIS学園。私の職場だ。以降、私のことは織斑先生と呼ぶように」
「了解しました」
そこから、IS学園の説明が始まった。簡単にまとめると、
・ISの生みの親である篠ノ之束が生まれ、白騎士事件が起こった国である日本が全額を負担して建てた。
・世界中から人が集まるところであり、全寮制。代表候補生や国家代表も中にはいる。
・各国、各企業の影響をうけない。
だろうか。その他にもいろいろあったが、割愛させてもらう。にしても、影響をうけないなんてあり得るのだろうか?
橋を渡りきる。私の駐車スペースがあるらしく、そこにアウディを停める。しばらく歩き、正門に辿り着く。
「さて、ようこそIS学園へ。歓迎しよう」
織斑先生はそう言って、学園を案内する。アリーナ、校舎、寮など。設備は充実しているようだ。最後に、第1アリーナに到着した。
アリーナの中に入る。なかなかの大きさだ。3次元的な戦闘を行うISでも、ここでなら存分に動けるだろう。
「さて、これから、入学試験を始める。ヴァルター、ISを展開しろ」
・・・なんて?本気?
「私直々に試してやる。ドイツでは機会が無かったからな。失望させてくれるなよ?」
アリーナの中央で向き合う。織斑先生の機体は日本の第二世代ISである打鉄。織斑先生の戦い方はよく知っている。瞬時加速で一気に間合いを詰め、一撃で敵を屠る。しかし、織斑先生が乗っているのは打鉄。暮桜ではない。どうなるか。
試験開始のブザーが鳴る。私は左手にショットガン、右手にナイフを展開する。織斑先生は打鉄の装備の1つである葵を展開し、接近してくる。異様に速い袈裟斬りをナイフで受け流し、銃口を向ける。が、そこに織斑先生の姿はない。殺気を感じ、急上昇する。急降下しても良かったが、上から殺気が出ていたため落下の速度で追いつかれると判断。ナイフをブレードに当て、軌道をそらす。すぐさまスラスターを使って全速力で距離を取る。その際にショットガンを収納し、リボルバーカノンを展開。織斑先生の速さを考慮し、偏差射撃。加速して避けられる。加速も考慮し、撃つ。弾丸を切り払われる。
嘘だろ、なんで切れるんだよ。頭おかしいよ。落ち着け。相手は織斑先生だ。しょうがない。
ライフルをマシンピストルに換え、ばらまく。ことごとくを避けられる。単発じゃなければ切り払えないようだ。逃げながら攻め方を変える。ショットガンとマシンピストル。小刻みな瞬時加速で避けられる。ライフルと他の武装は射程が合わない。
詰み。少なくとも、思っていたよりも狭いこのフィールドでは、勝つことは難しい。機会をうかがって動き続けるが、膠着状態になるだけだ。ならば。
リボルバーカノンを収納し、両手にナイフを構えて織斑先生へと近づく。私の狙いを察したのか、口角をつり上げて近づいてくる。
お互いの、間合いに入る。
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギン!!!!!
織斑先生は私の攻撃を全て捌く。高周波ナイフに葵を削られないように当たった瞬間にすぐ引き戻すため、武器破壊は期待できない。何十回打ちあったか。左手のナイフを弾かれた。右手だけでは織斑先生の連打を防ぎきれず、確実にエネルギーが減っていく。エネルギーが切れる直前に、左手を後ろに回す。織斑先生が上段から振り下ろすのに合わせて、当たる直前に左手に持って体で隠していたショットガンゼロ距離で撃つ。8発の散弾の内、砂煙から判断して3発が命中。私のISのエネルギーは、そこできれた。試合時間は9分48秒。遊ばれていたからか、かなり長かった。
「久しぶりに楽しめた。またやろう」
試合が終わってそう言ってきた。いやいや、
「いいように遊ばれてから言われても、嫌味にしか聞こえませんよ」
「ははっ、そう拗ねるな」
そう言って水を渡してくる。受け取り、喉を潤す。美味い。
「試験は合格だ。もっとも、不合格でも入れるのだがな、まあ、儀式的なものだよ」
と、笑って言った。
寮の部屋を言い渡され、鍵を受け取る。部屋割りの都合上、私は2人部屋を1人で使えるらしい。荷をほどき、クローゼットに服をしまう。持ち込んだ銃と弾薬の大部分と出国の際に渡されたISスーツ3着のうちの1着をISの拡張領域にしまう。ドイツは今頃正午あたりだろうか。思いを馳せる。夕食は、食堂がまだ開いていないらしいので、同じく持ち込んだ戦闘糧食を食べる。時差ボケというやつなのか、それとも長旅で疲れたのか、シャワー浴び、ベッドに横になるとすぐに眠りに落ちた。