銀色の二重奏   作:乱れ咲

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愚者

授業が始まり、生徒達は各々が自分の知識を深めようと自分なりの方法で努力する。マーカーを引いたり、メモをとったり。私は特筆すべきことはしない。内容は全部叩き込まれているため、周りと同じように再確認の意味も込めてノートに板書とたまに先生が言うポイントを書く。そういえば、2.3ヶ月後にテストなるものがあるんだったな。

休み時間になり、ふと気がついた。弟君がこちらをチラチラ見ている。そういえば、まだ接触していなかったな。目が合うと弟君は硬直する。どうして硬まったのかわからず首を傾げると勢いよく目を逸らされた。何がしたかったんだ?

結局、彼から接触してくることはなかった。何故だろう、距離を置かれている。避けられている。本音さんなんて、既に私の鞄から勝手にお菓子をとって美味そうに食べているのだぞ。ここまでは望まないが、少しは見習って欲しいものだ。いや、自分から近づかない私が言えたことではないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「授業を始める前に、クラス代表を決めてもらう」

はて?クラス代表とは?

「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席…まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると1年間変更はないからそのつもりで」

クラスの女子が顔を見合わせる。

「織斑君がいいと思います!」

「いや、ヴァルター君が!」

なんて言う人が出てきた。これは、あれだ。実力ではなく、物珍しさからだな。弟君を選ぶところが特に。

「他にはいないのか?ないなら2人から決めるぞ」

「ちょっと待った、俺はそんなのやらな、」

「お前は推薦してくれた奴の意思を踏みにじるのか?」

「い、いやでも、」

「待ってください!納得がいきませんわ!!!」

金髪の女の子が立ち上がる。ああ、あの弟君に突っかかっていた、あの人だ。たしか、イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットだったはずだ。

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

一呼吸おいてから、まだまだ選出に対する不平不満を言う。

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿やクラウトにされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気も、キャベツを漬ける気もありませんわ!」

実力不足と言うのならなら弟君に関して私も同感であるので良いのだが、その、女性がなるべき、とか、文化が後進的、とか、なんとか。じゃあ聞く。IS作ったのどこの誰だよ。世界で一番のIS先進国はどこだ。あと、ドイツを馬鹿にするな。

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で、何年覇者だよ」

おい、火に油を注ぐな。ほら、ますますヒステリックに喚きだしたじゃないか。何より、お前たち。他国の文化を馬鹿にするな。先祖から受け継がれる、人々の生活と努力の結晶なんだぞ。

「美味しい料理はたくさんありますわ!貴方、わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

ブーメランってご存知?

「お前だって散々馬鹿にしたじゃないか!国がなんとか男がなんとかさ!」

・・・見るに耐えない。織斑先生も私をニヤニヤしながら見ないでください。本来多分貴方がするべき仕事でしょう?

「2人共、やめてください。正直見苦しい。織斑一夏君。イギリスの料理が不味かったのは昔の話。最近では普通に美味しい料理を食べられます。それに、料理が不味いのも生きるための知恵なのです。昔は鮮度の悪い食材しか手に入らなかったため、病気を防ぐために火を過剰に通したりしていたのですよ。ただの文化の違い。それだけです。他国の文化を馬鹿にするのはよしてください」

へぇー、となんてこともない豆知識に感心するクラスメイト。知らなかったことに興味を持つのはいいことだ。

「セシリア・オルコットさん、貴方にも非はあります。ISの生みの親はどこの誰ですか。また、IS技術最先端を行っている国は?それに代表候補生ともあれば、貴女の意見は国の意見。そう取れなくもないのですよ。上品なイングランド人らしさを忘れないで下さい。主義思考は個人の勝手ですが、世界中で表面上は男女平等が唱えられているのです。その中で女尊男卑を唱えるのは外交的に非常に良くない。Pride goes before destruction. 当然意味はわかりますよね?」

ふるふると震え出すセシリア・オルコット。顔が真っ赤だ。これは憤慨しているな。

「い、言わせておけば・・・決闘ですわ!」

「おう、いいぜ。四の五言うよりわかりやすい」

え、これって私も巻き込まれるのか?

「織斑先生、どうするのですか?私としては、この人達に巻き込まれるのは嫌なのですが」

「いや、もともと、自薦他薦は問わないと言ったからな。巻き込まれてくれヴァルター。1人2回戦い、勝利数が最も多かった者が決定権を持つ。これでいいな」

そうだった。他薦されたからどちらにせよ戦わなくてはならないのか。

「言っておきますけど、わざと負けたらわたくしの小間使い、いえ、奴隷にしますわよ」

・・・まだ続けるのか。

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

「そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

どうして自国の中でそこそこ上の成績を残しただけでこうまで自信を持てるのか。

「ハンデはどの位つける?」

おい、弟君。君はなんて愚かなのだ。周囲は意味がわかったのか、笑いが止まらない。

「織斑君、それ本気で言ってるの?」

「男が女より強かったのは、もう10年も前のことなんだよ?」

何もわかっちゃいなかった。何を言っているんだ?代表候補生であるとか軍属であるとかならば理解できなくもないが、一般人枠で入ってきた人と弟君ではお互いがISに乗れる以上大した差もないだろう。日本風に言うなら、同じ土俵に立っているのだ。それを自覚していない?嘘だろ?そして弟君。君は真剣勝負と言ったな。どうしてハンデなんて発想が出てきた。真剣勝負の意味を知っているのか?ドイツ生まれの私ですら知っているのだぞ。

「わかった。じゃあ、ハンデはいい」

周りにISの力を言われ、発言を取り消す弟君。男に二言はない。確か、日本のことわざ?にそんなものがあったな。クラリッサが言っていた。弟君、ハンデをつけると言ったことに対しては二言は許されるのか?

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、わたくしがハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがあるのね」

まだ2人は何か言っている。日本男子のジョークセンス?笑えないよ。そんなもの。

「話はまとまったか?まったく。勝負は1週間後の月曜。放課後、第3アリーナで行う。各々、準備を怠らないように。それでは授業を始める」

弟君の目に、慢心の色あり。どうせ1週間あるからどうにかなるとか考えているのだろうが、浅はか過ぎるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないな、ヴァルター。あいつらは井の中の蛙のようなものでな。大海を知ってもらいたかったんだ」

織斑先生が謝ってくる。

「いや、良いんですよ。良い準備運動になりますし、何より勝者に決定権がある、としてくれましたからね」

「そうか。助かる」

「いえいえ、織斑先生にはお世話になっていますからね。これくらい、えと、朝食前?です」

「ふっ、そうか」

織斑先生は笑い、職員室へ進む。さて、残りの1週間、どのような対策を彼は行うのか。何もしていなかったら、まあ、救いようがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

成り行きとはいえ、クラス代表の決定権をかけて戦うことになった以上、訓練にいつも以上に力を入れるのは当然だ。織斑先生に聞いたところ、今日は第三アリーナが空いているそうなので使わせてもらう。簡単な手続きを済ませ、装備を入念に確認してからアリーナ中央に移動して至る所に的を出現させ、リボルバーカノンを展開する。

アリーナに響く轟音と的が破壊される音。それは壁やエネルギーシールドすらも震えさせ、不協和音を奏でている。ランダムに再出現するように設定してあるため全て破壊してもまた予想外の場所に現れる的をシリンダーの弾がなくなったらシリンダーごと高速切替で交換しながら撃ち続ける。リボルバーカノンは反動が非常に大きい。そのため完全に殺しきるのではなく、反動を利用して別方向の狙いをつけるように撃つのだ。しかし、本当にうるさい。耳栓でもしてくれば良かったか。弾は無限じゃない。ある程度のところで引き上げよう。




これは原作登場人物アンチものではありません。
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