銀色の二重奏   作:乱れ咲

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日独

「貴方は一体何を怒っているのですか?」

「さっきの試合だよ!!なんだよあの卑怯な戦い方は!!女の子を一方的に痛めつけやがって!!それでもお前は男か!!!」

余計わからなくなった。

「戦場に男も女もありませんよ?相手が慢心しきっており、力の差も大きかった。だから反撃の機会を与えることがなかった。それだけじゃないですか?」

「それでも!!煙玉なんて卑怯な手を使ってんじゃねぇよ!!それだけ力があるって言うなら、正々堂々真っ向から勝負しろ!!無抵抗なのをいいことにバカスカ撃ちやがって!!!女の子を傷つけるなんて最低だ!!!」

「ISを纏っている以上怪我はしませんし、使えるものは何でも使うのは当たり前です。スモークから咄嗟に出ない方がおかしい。それに、見るからに射撃主体の相手の正面に立つのは愚の骨頂ですよ?」

「それでもーー」

ちなみに私が言い終わった直後に試合開始の合図が鳴った。だが、弟君はまだ喋っている。このままリボルバーカノンを展開して撃ってもいいのだが、またうるさくなるだろう。正々堂々とかなんとか言って。もしかしたら合図に気づいていないだけかもしれない。左手にマシンピストルを展開してセミオートで弟君の顔から横に10cm離れたところを狙って撃つ。

パァン!

乾いた音がアリーナに響いた。

「な、何しやがる!?」

「もう試合始まってますよ?」

だからそう驚くな。

 

 

 

私はマシンピストルを収納し、両手に高周波ナイフを展開する。

「う、うおおおおお!!」

弟君はまっすぐ私に向かって突撃してきた。こういうのを猪武者と言うのだったか。ブレードを私に向かって振り下ろす。ひらりと避ける。振る、避ける。振る、避ける。振る、避ける。たまに受け流す。

「避けんじゃねぇ!!」

そんな無茶な。それにしてもそのブレード、見たことがある気がする。独特なエネルギー刃から織斑先生の雪片を連想し、織斑先生から貰った、という言葉から零落白夜かと結論。当たるわけにはいかない。もっとも、はなから当たる気はないが。

「男なら、正々堂々真正面から打ち合え!」

「私は貴方の真正面にいますが。それとも、刃をぶつけ合うことが正々堂々だと貴方は言うのですか?」

「そうだ!」

「貴方の言っていることを私は理解できない。貴方がしたいのは戦いではなく、日本の剣道というものでしょう。あくまであれはスポーツ。礼儀を重んじる良い競技だとは思いますが、戦場には向かない」

「ISはスポーツだろ!それに剣道は武道だ!」

「ISは兵器ですよ。剣道を私は映像でしか見たことがありませんが、射撃武器がなく、試合開始時に敵が正面にしかいない時点で現代の実戦とは程遠い」

受け流しながら会話する。弟君のブレードを避け続けていると、疲れてきたのか動きが鈍った。すぐに行動。横薙ぎの刃を左のナイフで受け流し、右のナイフで斬りかかる。生身を狙うが、関節の駆動部も斬って駆動を重くする。怪音と共にみるみるうちに傷だらけになっていく白式。ブレードのエネルギー刃でない部分を重点的に攻撃し、ナイフの背でグリップ部分を叩き上げると、弟君の胴ががら空きになった。一瞬の隙を逃さない。ナイフ2丁で斬って、斬って、斬る。ボロボロになった白式からは試合開始時の輝きは既に失われていた。

「ちっくしょぉおおお!!」

また突っ込んでくる。いい加減学習したらどうだ?ナイフをショットガンに換え、撃つ。8発の散弾の内の4.5発は当たっただろう。しかし白式は止まることなく私に近づいてくる。

「もらったぁぁ!!!」

ブレードを振り上げ、上段から振り下ろしてくる白式の下をマルチ・スラスターを使って潜りながらブレードの持ち手を狙ってゼロ距離でショットガンを撃つ。白式の腕が弾かれるが、ブレードは無事か。流石に頑丈だな。もう1発背後から撃つ。何故かすぐに白式のエネルギーがきれた。

結局、弟君は私に一太刀も入れられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルーティアーズと白式のエネルギーを補給し、装甲などのパーツを変え、第三試合が行われた。セシリア・オルコットの目からは慢心が感じられなかった。良い変化だ。常に一定の距離を保ち、白式の間合いに入らないように試合を運ぶ。ビット操作時に動きが止まってしまうという欠点に弟君が気づき、そこを突こうとするが、セシリア・オルコットは動けないと知られたと感じると、ビットは使わずにエネルギーライフルのみで戦うようになった。初心者がある程度習熟したIS搭乗者に実力でかなうはずもなく、織斑一夏をセシリア・オルコットは完封した。最終戦績は私が2勝、セシリア・オルコットが1勝、織斑一夏は0勝に終わった。ルールにより、私はクラス代表の決定権を持つことになる。

 

 

 

 

 

 

 

更衣室から出たところでセシリア・オルコットに会った。ここで何も言わずに去るのは流石に失礼か。

「オルコットさん、怪我はありませんでしたか?」

「え、ええ。お気遣い感謝しますわ」

少し震えているな。

「そうですか。外傷はなくても衝撃は通りますからね。心配だったのですよ。ところで、クラス代表のことなのですが」

「ルールでは、貴方が決定権を持つのでしたわね」

「はい。それで私は織斑君を代表にしようかと思うのですが、よろしいですか?」

「もちろんですわ」

「・・・意外とあっさり納得するんですね」

「ええ。わたくしもあの方には多くの経験を積んでもらわなければと思いますし」

「同意見です。では、代表は織斑君ということで」

そこで私は去ろうとするが、

「・・・お待ちください!!!」

呼び止められた。

「貴方は、何故わたくしを庇うような真似をしたのですか?」

「庇う?そんなこと私はしていませんが?」

「いえ、貴方はやろうと思えばドイツが一方的にイギリスに侮辱されたとしてわたくしを潰すことができたはずです。何故?」

「・・・未来ある若者を無知と若気の至りで潰したくなかった。それだけですよ。私は以前の貴女と似た人間を何人も見てきましたが、あれらとは違って貴女には正しく考える能力がある。そう思ったんです。それに、現に自身の問題点を把握し、反省している以上責める気にはなりません」

「それでも、貴方は軍人でしょう?何故利用しないのですか?」

「軍人だからといってなんでも利用するわけではありません。それに、ドイツを馬鹿にしたと言っても、よくある喧嘩みたいなものではありませんか。・・・私はこの後用事がありますので、これで」

会話はそこで終了。本来なら私は確実に本国に今回のことを通達して然るべき対応をするべきだったのだろう。だが、そのために金融だけでなくIS業界にも進出した、あのオルコット家を潰してしまうのはあまりに勿体無く、イギリスとの関係も悪化はさせたくない。まあ、今回はあちらに完全に非があるため、ドイツに被害はないだろうが。それに、オルコット家現当主に大きな貸しを作れたのも大きい。

 

 

 

「失礼します」

職員室に入る。要件は当然クラス代表についてだ。織斑先生は机に向かって端末を眺めていた。

「織斑先生」

「ん?ああ、ヴァルターか。クラス代表の件か?」

「はい。試合に勝った者が決定権を持つのでしたよね?」

「そうだ。その言い方だと、お前がやるつもりは無いんだな?」

「はい。織斑一夏君をクラス代表にしようと思いまして」

「ほう、それはどうしてだ?」

「彼には実力をつけてもらわなければなりません。いくら織斑先生という強大な後ろ盾があるといっても、強行手段で捕獲、研究しようとする人間は少なくありませんし、最終的にそれらに対抗するのは彼自身です。この選出にはセシリア・オルコットさんも賛成してくれています」

「まあ、そうだろうな。私もずっとあいつのことを見ていられるわけでもないし、お前に2度も守ってもらうわけにもいかんからな。わかった。クラス代表は織斑一夏にしよう」

「ありがとうございます」

「できれば一夏に色々教えてやって欲しいんだがな」

「考えておきますね。では、失礼します」

職員室から出る。まだ夕食まで時間があるな。一曲弾いてこようか。

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