銀色の二重奏   作:乱れ咲

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襲撃

翌日、クラス対抗戦の組み合わせが発表された。一回戦は1組対2組。仲が良さそうだったあの2人が戦うのか。鈴さんは専用機持ちで、それも中国の第三世代機だという。軍人として、とても興味がある。

アリーナの観客席まで移動して空席を探す。1組の面々が集まっている場所を見つけたので向かうと、本音さんが私に気づき、手を振ってきた。手を振り返す。

「ふぇるるん、おいでー」

隣を空けてくれた。座ってもいいらしい。ありがたく座らせてもらう。

アリーナ中央で鈴さんが待ち構える。

「どっちが勝つと思うー?」

本音さんが聞いてくる。誤魔化しても仕方がない。

「言ってしまえば、95%2組の方の勝ちでしょうね。織斑君が勝つには偶然が重なる必要があります。鈴さんがあまり近接戦闘に秀でておらず、油断したところに瞬時加速で一気に間合いを詰めるとか。織斑君が瞬時加速を使えるかはわかりませんが、近接格闘のみの機体で勝つ手はこれくらいでしょう。白式に射撃武器、それも遠距離用があれば、甲龍は近・中距離両用型なのでまだ勝算はあったのですけれど」

「そっかぁ・・・」

1組の誰かが落胆する。しかし、応援は皆全力でするつもりらしく、精一杯声を出していた。

選手2人がアリーナ中央で向かい合う。何か話しているようだが、こちらからはわからない。

試合開始の合図が鳴る。

弟君が斬りかかり、鈴さんは近接武器で受ける。確か双天牙月という名前だったか。何合が打ち合い、膠着していると鈴さんのISである甲龍の左肩周辺の空間が歪む。直後、白式は後ろへ飛ばされた。

「ふぇるるん、いまのなーにー?」

「衝撃砲、でしょうね。空間そのものに圧力をかけ、弾を発射する。エネルギーが切れない限り、弾数無限かつ射角無制限の中国の第三世代兵器です」

感心したようにへぇー、と皆が息を吐く。試合は明らかに鈴さんが有利だ。しかし、弟君の目には機会を伺っているような印象を受ける。これは織斑先生が教えたな。

 

 

 

 

 

 

 

衝撃砲から逃げ続ける弟君。鈴さんは短気な性格なのか、見るからに弾幕が散漫になってきた。仕掛けるなら、今だ。

 

 

 

 

 

 

バリイィィィン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

突如、アリーナの天井が破られ、謎の黒いISが出現する。同時に観客席が降りてきたシャッターによって外部から遮断された。クラスメイトが扉を開けようとするが、開かない。閉じ込められた。これはあの黒いIS。十中八九、あれかその仲間の仕業だろう。あれのビームはアリーナのシールドを貫通してきた。つまり、私たちにも攻撃が届くということだ。急いでここにいる生徒を避難させる必要がある。あのISも鈴さんと弟君だけで対処できるとは考えないほうがいい。そのためにも、

「全員、離れてください!!!!」

全力で声を出し、扉から生徒を引き剥がす。シュヴァルツェア・ヴォルケを展開。高周波ナイフを呼び出し、扉を斬る。無理矢理に出口を作って生徒を避難させるためだ。

「避難場所は頭に入っていますね!?すぐに向かって下さい!!」

雪崩のように同じ方向に向かって走る生徒達。他の扉も同じように破壊し、私も一緒に出て、1人ピットへと向かう。

ISのオープン・チャネルから声が聞こえた。山田先生の声だ。

「織斑くん!凰さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生たちがISで制圧に行きます!」

「いや、全員の避難が終わるまで、逃げるわけにはいかない。先生たちが来るまで俺たちで食い止めます」

その通りだが、問題はない。

「生徒の避難は完了しました、織斑先生。また、一刻を争う事態でしたので、私個人で判断し扉を破壊しました。事後承諾になってしまいましたが、ご容赦を」

「構わん。よくやった」

鈴さんと弟君が話す。

「一夏!逃げて!」

「お前はどうするんだよ!?」

「あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!」

「逃げるって・・・女を置いてそんなことできるか!」

まだそんなことを言うのか。戦場では男も女もないぞ、弟君。ISが登場してからは特に。

「冷静に考えてください、織斑君。君は弱い。単なる足手纏いにしかなりません」

そう言って、アリーナに突入する。運良く、ピットはシャッターが降りていただけだった。遮断シールドがなかったので、簡単に音もたてずに出ていけた。正体不明ISからのビームを弟君が鈴さんを抱えて飛ぶことで避ける。戦場で余所見をするな、鈴さん。

敵ISは私に気づいていないようなので、仕掛ける。

どうやら前衛に弟君、援護に鈴さんで戦っているらしい。あの布陣に混ざっても良いが、連携訓練もしたことがないため、やめる。

しばらく待つと、2人が一時的に戦闘から離脱した。2人に私のことを呼ばれても困るので、私は仕方なくシュピーゲルを使用している。本来の用途とは異なるが、光を乱反射させて自身の姿を隠しているのだ。地面の上ならば違和感もないだろう。飛び上がろうとする正体不明機の生身の部分に瞬時加速で近づいてナイフを刺し、引き抜く。どうして刺さったのか疑問に思っていると、あることに気がついた。

(何故、身体からオイルが流れる?)

私は無人機、という予想に辿り着く。いや、あり得るのか?少なくとも世界中の研究・開発機関が開発したなんて発表はなかったぞ。どちらにせよ、私の存在は気づかれた。シュピーゲルは既に解除してある。マシンピストルを展開し、ばら撒く。その時にできた砂煙に正体不明機は包まれるが、体勢を立て直して的確に私を狙ってビームを放ってきた。感知は視覚で行なっていないのか?そうでなくては説明がつかない。熱源感知でもしているのだろうか。そうならばさっき私が見つからなかった理由がわからない。いや、今は考えるのはよそう。私は今なお流れているオイルと不自然な感知から無人機であると断定し、対象の破壊に移る。人が乗っていたのなら、それまで。

砂煙の中から出る。新たに展開したショットガンの弾は自作の特殊炸裂弾。8発の小型爆弾の直撃に、正体不明機は吹き飛ばされる。ショットガンをリボルバーカノンに換え、通常弾を2発撃つ。敵の動きが鈍重なため非常に当てやすい。その2発で片足を吹き飛ばし、3発目を撃とうと引き金に指をかけた瞬間、

「一夏ぁあ!男なら!この程度の敵を倒せないでなんとする!!!」

中継室から声が響いた。声の主は篠ノ之箒。愚か者!

正体不明機は照準を中継室に定め、ビームを撃とうとする。チラと確認したところ、そこには愚か者以外にも2人の女が意識を失って倒れていた。

このまま奴を倒したところで、悪足掻きに中継室にビームを放たれればそこにいる人間は確実に死体も残らず死ぬだろう。そんな威力を持っているのだ。反動が大きく連射が難しいリボルバーカノンでは2門の砲を防ぎきれないと判断し、スラスターの推進力に瞬時加速を加え、一瞬で正体不明機に肉薄する。ビームの放出口は両肩にある。正体不明機の右腕を放出口ごと切り落とし、もう片方の放出口にナイフを突き刺す。ナイフは1丁無駄になってしまうが、仕方がない。刺したまま手を離し、その場から離脱する。直後、爆発。放出口にある異物によって暴発したのだろう。だが、油断はできない。無人機であった場合、人間では致命傷足りうる傷を負っても普通に動くなんてこともある。人間ですら心臓を撃たれても反撃してくることがあるのだ。警戒を一層強化する。

アリーナの屋上にセシリアさんがいることを確認。狙撃体勢に入っていた。動かないかを警戒しているのだろう。だが、動いてからでは遅いのだ。私もリボルバーカノンを再度展開し、動いたかを確認せずに撃つ。正体不明機の頭部に命中し、吹き飛ばす。頭部がなくなった首から数多のケーブルがでてきたことから、無人機であったと確信した。

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