正体不明機が完全に機能停止したことを確認して、オープン・チャネルを開く。
「敵ISの沈黙を確認。頭部と左半身が吹き飛び、右腕が離れていますが、コアは無事かと」
「よくやった、ヴァルター。すまないが、装備やエネルギーを補給してからでいい。お前は管制室に来てくれ。残りは別に指示がある」
大きな事件の後にそんな緩くていいのか?
「今回の事件、完全にフェルテンに持っていかれたな。俺が考えてた作戦も無駄になっちまった」
「え、あんた作戦なんて考えてたの?」
「ん?まあな。衝撃砲を俺に撃ってもらって、そのエネルギーで瞬時加速して零落白夜で斬るつもりだった」
「馬鹿ですか?」
「ごめんフェルテン、こいつ昔から馬鹿なのよ」
「馬鹿とはなんだ!失礼な」
「それ、運が悪かったらあんたのIS解除されて無防備になって最悪死ぬわよ?」
「げ!?まじで?」
「何も考えずにやろうとしてたんですか?」
「・・・・・・」
「こら、黙らないの。まあ今は大した損害もなく全部終わったことを喜びましょ。ありがとね、フェルテン。一夏が馬鹿なことする前に片付けてくれて。私じゃ無理だったわ」
「いえ、できることをするのは当然ですから」
「ヴァルター、今回の件の当事者であるお前の意見を聞きたい。あのISにどんな印象を受けた」
管制室に着くなりそう聞かれた。どう感じたと言われてもなあ。
「・・・試作機、といった印象ですかね。もともと完成していないとされているISですが、あれはその中でも飛び抜けています。あるのは力だけ。駆動が甘く、動きが遅いなどといった改良できる点が多すぎます。完成品としたいのであれば、これらは既に改善されているはずです」
そうか、と言って織斑先生は下を向き、黙る。ああ、そうだ。1つ聞いておかなくては。
「篠ノ之さんの扱いはどうなるのですか?避難命令無視に加え、傷害に戦闘妨害。これだけのことをして何もないなんてことはありませんよね?軍なら追放もありえるかと」
そう言うと、織斑先生が溜息をつく。ああ、ダメなやつだ。
「こちらとしても何かしらの罰を与えるべきだとは思うのだがな。篠ノ之束の怒りを買うことを恐れて日本政府が何もしないように言ってきているのだ。あの行動を他の生徒が見ていないのをいいことにな」
本当に腐っているな。罪には罰を。甘やかしてもロクなことにはならないというのに。
「わかりました。では私はこれで」
「ああ、ご苦労だった」
管制室から出る。ここから学生寮までそこそこの距離があるから面倒くさい。
それから2度目、3度目の聴取を受けてやっと解放された。私と同時に意識がある状態であの場にいた3人は早々に解放されているらしい。なんでだよ。
学生寮の廊下を歩く。ついでに自動販売機で水を買う。そこにあったらなんとなく買いたくなるんだよな、これ。
1025室が何やら騒がしい。どうやら引っ越しのことでもめているようだ。あ、篠ノ之箒が部屋から出て来た。すごく怒っている。弟君、何かしたんだな。今一瞬弟君の表情が見えたが、絶対怒った原因をわかっていないぞ。あの3人、苦労しているんだな。今日の戦闘ではいらいらした・・・いや、言葉では言い表せない怒りに似たものを感じたが、これに関しては同情する。が、それはまた別だ。人気のない場所に篠ノ之箒が行ったのを見計らって声をかける。
「篠ノ之さん」
「・・・なんだ」
いかにも私、不機嫌ですといった具合に返事をしてくる。
「何故先程はあのような馬鹿な愚行をしたのですか?」
「愚行だと!?私はただ、一夏に喝を入れようとーー」
「喝?応援ということですか?」
「そうだ!」
何も悪びれた様子もなく言ってのけた篠ノ之箒に、私は言葉を失いそうだった。
「貴女は馬鹿です」
「なっ!?いきなり何を言うか!!」
「試合ならまだしも、実戦で応援などしても意味はありません。完全に邪魔です」
「っ!?」
「それに、応援程度で力が出るなら、初めから出せます」
「だが、限界を超えたーー」
「超えられる限界なんて限界じゃありません。第一、貴女の応援が無い方がより安全に終わりました」
「そ、それはーー」
「何か言い返すことはありますか?」
「っだ、だが!どうにかなったではないか!」
ーーあ?
「どうにかなった!?違います!私がどうにかしたんですよ!!貴女の存在があの場になかったなら、中継室の2人が危険に晒されることもなく、より安全に、より早急に対処できていました!!貴女は2人の無関係な人間を命の危機に晒し、最悪織斑一夏君にも被害を及ばせていたのですよ!!!」
「っ・・・」
弟君に被害が及ぶと聞いて大きく顔を歪ませる篠ノ之箒。こいつ本当に反省しているのか?
「・・・呆れました。今の貴女には戦う資格どころか、戦う者に並び立つ資格も武器を手にする資格もない。早急に学園から立ち去ることをーーいや、無理か。ならば、一度絶望の淵に立って考え直すことをお勧めします」
「な、何をーー」
「罰が無いから罪は無い、もしくは軽いなどとは考えていませんか?そんなこと当然あり得ないとは思いますが。自分なりに考えて、深く反省してください。貴女は全てにおいて認識や思慮が足りなさすぎます」
どこからか取り出した木刀を握りしめて震える篠ノ之箒。あの木刀も危険だとは思うが、放っておいて足早に立ち去る。あれで何か問題が起きれば折ろう。今はあの馬鹿を見ていたくない。