今週も1日の休暇がやってきた。クラスの皆はどう過ごすかを楽しそうに話し合っている。私は特に行くところもないため、訓練に読書、あとはチェロとピアノを毎週弾いている。あとは専用弾の製作。
あの一件以降、弟君が偶に私に関わってくるようになった。弟君は一度自宅の様子を見に行き、その足で友人の所に遊びに行くのだとか。私も誘われたが、俗世に疎いのと、友人というものをもったことがないため一体どのように接すればいいのかわからない。そんな理由からお断りした。そのため、今私は他の部屋よりも一回り大きい部屋で1人チェロを弾いている。この落ち着いた音色が好きだ。今日もいい音を出してくれる。ああ、そうだ。新しく作る弾の設計図も書いておかなければ。
「ねぇ、聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「え、何の話?」
「だから、あの2人の話よ」
「いい話?悪い話?」
「最上級にいい話」
「聞く!」
「まあまあ落ち着きなさい。いい?絶対これは女子にしか教えちゃダメよ?女の子だけの話なんだから。実はね、今月の学年別トーナメントで優勝したら、織斑君かヴァルター君と付き合えるんだって!」
「えええっ!?そ、それ、マジで!?」
「マジで!」
「うそー!きゃー、どうしよう!」
夕食の為に食堂に行ったら、こんな話が聞こえてきた。男の私に聞こえている時点で秘密もクソもない。その噂、一体どこから流れた。私達男の意思は尊重されないのか。それに、私にはラウラがいるのだ。承諾するはずがない。
「ねぇねぇ、ヴァルター君。あの噂ってほんとーーもが!」
「バカ!秘密って言ったでしょうが!」
全然隠せていない。まぁ、知らないふりをしておこう。
「噂とは何ですか?」
「な、何のことかな?」
「何か隠していますね?」
「いや!?」
「何も?」
「隠してないよ!」
ここまでくると面白いな。
月曜日の朝。クラスがいつもに増して賑やかだ。どうやらISスーツについて話しているらしい。数人が1つのカタログに集まって話している。
「ヴァルター君のISスーツって見たことないデザインだよね。どこのメーカーのなの?」
急に話を振られた。
「ドイツ軍が私用に作ってくれました。織斑君のもきっとオーダーメイドですよ?聞いてみてはどうですか?」
そう言って弟君に押し付ける。悪いとは思うが、彼女達も弟君と関わりたいだろうし、ちょうどいいだろう。
「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」
山田先生が説明しながら現れた。
「山ちゃん詳しい!」
「一応先生ですから。・・・って山ちゃん?」
「山ぴー見直した!」
「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへん。・・・って、や、山ぴー?」
教師をあだ名で呼ぶのはどうなのだろう。
「諸君、おはよう」
「お、おはようございます!」
本当によく訓練されている。織斑先生が来た瞬間、教室内はしん、と静まり、全員がピシッと背筋を伸ばす。
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」
構わないのか?男の前だぞ?
「では山田先生、ホームルームを」
「は、はいっ」
そんなわたわたしているから、あだ名をつけられるんですよ、山田先生。
「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも2名です!」
教室内に響く驚きの声。そんなに転校生とは珍しいものなのか。
「「失礼します」」
2人が教室に入ってくる。よく知った銀髪の愛しい少女と、私が知っている少女に似た男?だった。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」
あぁ、確信した。あの時の少女だ。金髪に、アメジストの瞳。そしてデュノア。間違える要素がない。紫色の瞳はとても珍しいのだ。しかし、なぜ男子制服を着ている?
「お、男・・・?」
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国から転入を」
「きゃ・・・」
あ、まずい。耳を塞げ。
「「「きゃああああああーーーっ!!」」」
ああ、うるさい。
「男子!3人目の男子!」
「熱血系、クール系に守ってあげたくなる系が揃った!!」
「地球に生まれて良かった〜〜〜〜!」
「あー、騒ぐな。静かにしろ」
「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わって・・・あれ?どこ?」
銀髪の子が私の席に近づいてくる。どう見てもラウラだ。眼帯もいつもの私があげたものだし、この胸の奥が満たされる感覚は、間違えようがない。
私は立ち上がり、ラウラを待つ。
「あぁ、会いたかったぞ、フェルト」
私の顔に手を添えて、背伸びをして私に顔を近づけてながら言う。
「私も会いたかった」
そう言って私は少しかがみ、受け入れる。唇が触れ合った。周りの女は馬鹿みたいに口を開けて黙っている。
私達は抱き合う。1ヶ月の空白を埋めるように。
頭上から殺気を感じた。ラウラの背に回していた右手を使って落下物を防ぐ。これは、出席簿か。
「教師の前で堂々と不純異性交遊とは、いい度胸だな。え?」
「も、申し訳ありません!教官!」
すぐに離れ、ラウラは瞬時に敬礼。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
そう言って敬礼を解く。それにしても、本当に久しぶりだ。声を聞いてはいたが、やはり会わないとな。
直後、クラスの女から怒号のような声があがった。しまった、耳を塞いでいない。
「「「「「きゃああああああーーーっ!!」」」」」
「何!?何なの今のは!?」
「嘘だと!嘘だと言ってくれ!!」
「狙ってたのに!!」
口々に叫ぶ。耳が痛い。窓も震えてないか?
「ええい、黙れ!」
織斑先生の号令で瞬時に鎮まる騒音機。流石です。
「はぁ・・・挨拶をしろ、ラウラ」
「わかりました。ドイツ連邦軍特設IS部隊隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。階級は少佐。フェルトの上司であり、恋人だ!」
そう言って私の制服を掴む。またもや、怒号。強化人間である私の聴力をもってしても、個人が何を言っているのか判別できない。また織斑先生が黙らせる。ご迷惑をおかけします。
「あー、ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
さて、移動だ。ラウラにまた後でな。と笑顔で言って動く。今日はアリーナ更衣室だったか。
「織斑、ヴァルター。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」
どうだろうか。
「君達が織斑君とヴァルター君?初めまして。僕はー」
「いいから、急ぎますよ。まずは移動です」
そう言って、手を引く。
「教室では女子が着替えますので、私達男は空いている更衣室で着替えます。実習のたびにこの移動ですので、早く慣れてくださいね」
「う、うん、、」
「どうした、トイレか?」
弟君。男に聞くにしてもデリカシーなさすぎじゃないか?
「ち、違うよ!」
「そうか。それは何より」
「馬鹿言ってる場合じゃありませんよ。前を見てください」
前方から敵(興味本位で来たであろう女)多数。どう乗り切るか。
「いた!3人目の男子!」
「織斑君の黒髪やヴァルター君の銀髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」
「しかも瞳はアメジスト!」
「見て見て!ヴァルター君と手繋いでる!」
「日本に生まれて良かった!ありがとうお母さん!今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」
いい加減にして欲しい。あと、親は大事にしなさい。
「な、なに?何でみんな騒いでるの?」
「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」
シャルル・デュノア君。それでよく騙せると思ったな。そんな意味がわからないって顔をするようじゃすぐにバレるぞ。しかし人だかりに果てがないな。仕方がない。
「デュノア君、失礼します。織斑君、ご無事で」
そう言って抱え上げ、すぐさま窓の外へ。幸いにも高さはあまりなく、簡単に着地できる。着地してからシャルルデュノア君を下ろし、手を引いてアリーナ更衣室へ急ぐ。しかし、騒がしいな。本当に。