銀色の二重奏   作:乱れ咲

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仮対策

「そんなの、許せるはずないだろ!愛しているったって、子供の自由を奪う権利なんてあるはずがない!」

まぁ、感情的な弟君ならこう言うよな。

 

 

 

 

 

音楽室での会話の後、シャルロットさんが弟君を連れて私の部屋にやってきた。弟君は訳が分からず辺りを見回している。時刻は2210。かなり夜も遅い。だが、あまり悠長なことは言っていられない。弟君はどこか抜けているし、多分人当たりの良いシャルロットさんに遠慮せず関わろうとするだろう。下手をすれば、最悪な形でシャルロットさんが女であることがばれてしまう。最悪な形とは何か?聞くな。

全員分の紅茶を淹れ、シャルロットさんが私達に話したように自分の出生、男装の理由などを話す。だんだん震えていく弟君。シャルロットさんが全てを話し終えると、ついち弟君は憤慨しだした。そして、今に至るのである。

 

 

 

 

 

 

 

「親がいなけりゃ子供は生まれない。そりゃそうだろうよ。でも、だからって、親が子供をどうしてもいいなんて、そんな馬鹿なことがあるか!生き方を選ぶ権利は誰にだってあるはずだ。親に邪魔されるいわれなんてない!親に愛されているって言われたとしても、この現状からはそうは思えない!」

シャルロットさん。最初の部分で私を悲しそうな目で見るのはやめてくれ。それに、

「織斑君。他人の親を簡単に否定するものではありませんよ。感情的になっても何も変わりません。落ち着いてください」

「・・・ああ。悪い。俺も親に捨てられたからさ。どうしても放っておけなくて」

ほう、捨てられたのか。シャルロットは驚き、ラウラは微動だにしない。以前織斑先生が彼が最後の家族と言っていたことから、親はいないとは予想していたが。

沈黙の後、弟君が言う。

「特記事項第ニ一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。つまり、この学園にいれば、少なくとも3年間は大丈夫だろ?それだけ時間があれば、なんとかなる方法だって見つけられる。別に急ぐ必要だってないだろ」

急ぐ必要がないわけではないが、概ね間違っていない。今弟君にいろいろ言ってもマイナスにしかならないため、その認識で良しとする。というか、

「一夏、よく覚えられたね。特記事項って55個もあるのに」

「・・・勤勉なんだよ、俺は」

そういうことにしておこうか。

「シャルロットさん、織斑君。話は一応まとまりました。とりあえずは部屋に戻ってください」

「でも、シャルルと俺は別の部屋で寝た方ががよくないか?」

「いえ、本来ならそうすべきなのですが、織斑君とシャルロットさんが同室であることは一部、それも織斑君が深く関わっているところに知られているはずです。例えばセシリアさんや鈴さんなど。ならば、不審に思われることを避けるため、部屋割りは変えない方が良い」

「わかった。ところで、ボーデヴィッヒさんの部屋はどこなんだ?」

「ここだが?」

さも当然といった風に言う。

「は?いや、男女が同じ部屋なのはまずいだろ」

「そう言う貴様こそ、少し前までは女と同室だったそうではないか。それに、これからシャルロットと同室なのだ。私達のことを言える立場ではあるまい」

弟君は言葉に詰まる。

「まぁ、その話はいいとして、シャルロットさんが女であることを周りにばれないよう振舞ってください。ばれてしまってはどうしようもないので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2330。シャワーを浴び、歯を磨いた後、私とラウラは同じベッドに横になっていた。やはり、この温もりだ。今まで物足りなかったのは。1ヶ月の空白を埋めるよう、私とラウラは抱き合う。ラウラは小さいので、私の腕の中にすっぽり収まる。しかし、親か。考えていると、ラウラと目が合った。

「なあ、フェルト」

「どうした?」

「お前は多機能性幹細胞を編集して、私は人間の性細胞を編集して作られた受精卵から生まれた。ならば、私達にとっての親とは?」

「・・・さあ、なんだろう。ブルーノ中将は書類上私の親だけど、ここで言う親とは違う」

「試験管が私達の母親なのか?それとも、作った人間が?」

「捉え方によっては。ただ、それだとなんだか嫌だから、親など初めからいないと考えた方が利口な気はする」

「はは、そうだな。・・・なあ、フェルト」

「なんだ?」

「私達は、親になれるのだろうか」

「・・・子は成せる。そういった意味ではなれる。私達は生殖機能を持っているからな。でも、親としての愛し方がわからない。それは親としてあるには大きくかけている。だから、わからない」

「私達ならなれると思うか?」

「・・・なれるよ、きっと」

「ふふ、そうか」

「ああ、そうだとも」

この会話を、ラウラがどんな気持ちで始めたのかはわからない。ただ、

「私が本当の家族を持つなら、その中にラウラが居てくれないと嫌だな」

なんだか、恥ずかしい。ラウラを見ると、真っ赤になっている。

「フェルト、それはプ、プロポーズというやつか?」

「・・・かもしれない。ただ、この気持ちに偽りはないことには自信が持てる」

「お、お前は私を殺すつもりなのか!?心臓が破裂しそうだ・・・」

「私もだよ」

そう言っていっそう強く抱きしめると、お互いの激しい鼓動が聞こえてきた。私達が生きていることを示す、力強く、早い音。

「・・・うるさいぞ、フェルト」

微笑みを浮かべ、私の目を見てラウラが言う。

「そっちこそ」

「「・・・ふふっ」」

笑い合う。

「Gute Nacht.ラウラ」

「Gute Nacht.フェルト」

キスをして、額をコツンッと合わせて目を瞑る。穏やかな夜だ。きっと、よく眠れる。

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