銀色の二重奏   作:乱れ咲

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デュノア夫妻の名前は面倒なのでそのままにします。


中英独独

濃い夜が明け、月曜日となった。いつもの時間に起きて、いつものようにコーヒーを淹れようとする。

「おはよう、フェルト」

そう言ってラウラがコーヒーとパンの準備をしていた。今まで私より先にラウラが起きることはあまりなかったので、とても新鮮だ。

「何を驚いた顔をしている。私だってたまにはお前より先に起きるさ。ほら、顔を洗って歯を磨いてこい」

そう言って私の背中を押して洗面所に向かわせる。たまにはいいな、こういうの。

パンを食べ、コーヒーを飲んでからジャージに着替える。さて、今日も走るか。

 

 

 

 

 

「そ、それは本当ですの!?」

「う、ウソついてないでしょうね!?」

いつもの流れでついた教室の扉の前で鈴さんとセシリアさんが何人かの女生徒に詰め寄っている。何があった?

「本当だってば!この噂、学園中で持ちきりなのよ?月末の学年別トーナメントで優勝したら男子のどっちかと交際できーー」

「男がどうしたって?」

「「「きゃああっ!?」」」

全員が後ろから聞こえる弟君の声に驚く。これはあれか。私達の意思を完全無視したあの噂か。ラウラも溜息ついて呆れている。

「で、何の話だったんだ?俺の名前が出ていたみたいだけど」

「う、うん?そうだっけ?」

「さ、さあ、どうだったかしら?」

嘘下手。そしてその嘘に気づかない弟君。まじか。

「じゃ、じゃああたし自分のクラスに戻るから!」

「そ、そうですわね!わたくしも自分の席につきませんと」

よそよそしく散っていく。弟君とシャルロットさんには言わないでおこうか。その方が学園の生徒はやる気出るだろう。

 

 

 

 

 

休み時間、私は学園に3箇所しかない男子トイレに向かって走っていた。元々女しかいなかったとはいえ、男が一応3人来たのだからもう何箇所か増やしてもらいたいものだ。

「ああ、ヴァルター。ちょっと待て」

帰りに織斑先生に呼び止められた。

「なんでしょうか」

「お前はIS学園の生徒の技量についてどう思う?」

「どう、とは?」

「そのままの意味だ。お前が思ったことを率直に言ってくれ。生まれついての軍人であるお前の意見は貴重だ」

思ったことか。

「ISの数に限りがあるためどうしても個人練習が多くなり、連携技術を学べていないかと。個人としての技術は確かに高いですが、実戦で重要視されるのはいかに連携をとり、周りに目を向けられるかですからね。競技として戦うにもタッグマッチなどがありますしね」

「やはりそうか・・・いや、ありがとう。私も気になっていたところでな」

「こんなことで役に立てたのなら良かったです。ところで、さっきから後ろで何を聞いているのですか?織斑君」

うげ、と声を出して出てくる弟君。ちなみに生まれついての軍人あたりからいた。

「なんだ、盗み聞きか?異常性癖は感心しないぞ」

「な、なんでそうなるんだよ!千冬ねーー」

頭を叩かれる。そろそろ懲りたらどうだ?

「学校では織斑先生と呼べ」

「は、はい・・・」

「そら、走れピンとキリ。このままじゃ月末のトーナメントの結果は目に見えているぞ。勤勉さを忘れるな」

「はい」

「わかってるって・・・」

「そうか。ならいい。それと、廊下は走るなとは言わん。バレないように走れ」

「「はい」」

さて、急ごうか。

 

 

 

 

 

放課後、私とラウラはアリーナに来ていた。目的はいつもの通り訓練だが、今日は出来そうにない。なぜなら、

「あら、奇遇ね。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」

「まあ、奇遇ですわね。わたくしもまったく同じですわ」

この2人がいたからである。鈴さんとセシリアさんが揃って何も起こらない可能性の方が低い。

「ん?フェルテンにラウラじゃない」

「あなたたちも特訓を?」

「いえ、私たちは日課をしに来ただけですよ」

「ふーん、強者の余裕ってやつ?」

「まさか」

嫌な予感がする。こう、面倒なことに巻き込まれる感じの。

「ねえ、再戦させてよ。負けっぱなしは性に合わないから」

ほらきた。

「ならば2人で来い。2対2のタッグマッチだ」

ラウラは乗り気のようだ。プライベートチャネルで話しかけてくる。

「軽く折っておいた方があいつらのためになると思ってな」

「否定はしないが、タッグマッチにしたのは何故?」

「私達もあまり連携練習が出来ていなかったじゃないか。いい機会だと思わないか?」

言われてみればそうだ。ベルリンには2機しかなかったため、連携練習の回数も少なく、敵も仮想敵だった。

「確かにそうだ」

「私が前衛で2人を引きつける。狙撃を任せた」

「了解」

さて、やる気出てきた。

「話は決まった?ならやるわよ」

真っ先にアリーナ中央に真っ先に鈴さんが向かい、3人は付いていく。

 

 

 

 

 

 

試合開始。鈴さんが突っ込み、セシリアさんが後衛。私達と似たような布陣だ。

「くらえっ!!」

甲龍の両肩が開く。空間圧作用兵器である衝撃砲《龍咆》の最大出力攻撃だろう。

「右をやる」

「わかった」

セシリアさんのライフルによる援護射撃を避けながら鈴さんの甲龍の右肩の砲口の前の歪みが最大になった瞬間を狙ってリボルバーで撃つ。そこそこの速度は出ていたものの、動きが単調であったために偏差射撃は簡単にできた。制御しきれなくなったエネルギーが暴発し、吹っ飛ばされる甲龍。左肩から出る砲弾はラウラに向かうが、問題なく避けられる。

「もらいましたわ!」

セシリアさんがラウラに向かってビットを放つが、多少は動くが遅いセシリアさんを距離をとってリボルバーカノンで撃ち続けることで狙いを定めさせない。セシリアさんが手をこまねいている間にラウラが鈴さんと近接戦を行い、ワイヤーブレードで拘束する。

セシリアさんが狙いを完全に私に向けた瞬間、ラウラが鈴さんをぶつける。

「前後交代。分断」

「Ja」

 

ぶつかり、空中で姿勢を崩した2人に向かって私は瞬時加速で突撃し、炸裂弾を装填したショットガンとリボルバーを撃つ。鈴さんには当たらなかったが、セシリアさんに多弾命中し爆風によって分断される。彼女の相手はラウラに任せよう。

「このっ・・・!」

双天牙月による回転攻撃を行ってくるが、高周波ナイフで受け流す。甲龍はパワーは強いものの、あまり速くない。そこを突く。両手に展開したナイフと4基のマルチ・スラスターを用いて3次元的な高速戦闘を展開する。姿勢制御が難しいが、慣れたので問題ない。鈴さんはISのサポートによって目で追うことはできても、機体が追いつかないのだろう。衝撃砲はウェイトが長く、偏差射撃も間に合わない。双天牙月を振り回すが、当然当たらない。避けて、受け流す。隙を見て斬る。

「なめんじゃないわよ!」

右肩の衝撃砲をやられ、攻撃手段を大きく削られた鈴さんが叫び、両腕を私に向ける。そういえば腕部にも衝撃砲があったな。瞬時加速で離脱し、射程から離れる。その時にラウラの様子も確認。ワイヤーブレードでブルーティアーズを拘束し、リボルバーカノンを撃っていた。セシリアさんは逃げるためにラウラをビットで撃つが、ひらりひらりと避けられる。ブルーティアーズのエネルギーがきれるのも時間の問題だろう。

鈴さんが全速力で私に接近してきたため、視線を戻してナイフを展開する。

「もらったわ!!」

双天牙月による突き攻撃。なるほど。斬ろうとすると受け流されることに気がついたか。だが、甘い。胴を狙っていては、簡単にいなされるぞ。前方向に回転して受け流し、その勢いで甲龍の後ろに回り込む。後ろを見ずにナイフを投擲し、ショットガンを展開。撃つ。命中し、体勢を崩したところにリボルバーカノンを撃つ。装甲に当たったため、まだエネルギーはなくならない。

ドガァァァァンッ!!

突如響く爆音。音がした方向には煤で汚れたブルーティアーズが横たわり、離れたところに無傷のラウラがいた。そこでエネルギーが尽きたのかブルーティアーズが動かなくなる。

「よそ見してんじゃないわよ!!」

鈴さんが斬りかかってくる。見てはいなかったが、警戒していないわけがないだろう。鈴さんがいる方向を大まかに視認してショットガンを撃つ。炸裂音。命中したようだ。そこにラウラの援護射撃。88mm弾が命中し、甲龍のエネルギーはそこで尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「また負けちゃったか」

「第三世代兵器も使わせてられてませんわ」

「いいように分断されちゃったしね」

鈴さんとセシリアさんが言う。

「でも、2人の戦い方ならうまく連携できればもっと強くなりますよ。今回の敗因はお互いをまだ意識しきれていないことですね」

項垂れる。中距離狙撃型と近・中距離格闘型なのだから、いいペアになると思うのだが。

 

 

 

 

 

「ところでラウラ」

「なんだ?」

「今日の戦闘でAICを使ったか?」

「いや?使っていないぞ?」

「じゃあ戦闘中の爆発音はなぜ?」

「ああ、あれはセシリアがゼロ距離でミサイルを放とうとしたからビットにプラズマ手刀を刺したんだ。すぐに離脱したから私にダメージはなかったがな」

「なるほど。だから第三世代兵器を見れていないと言ったのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからやって来た弟君達と合流してしばらく訓練をしたのち、ラウラと別れて更衣室に行く。今思えば1年1組にISは5機あるのか。大国に喧嘩を売れるな。

着替えてから外に出ようとして、やめる。更衣室前に多くの人の気配がするのだ。

「どうしたんだ?早く行こうぜ」

弟君が扉を開ける。向けられる無数の狩人の目。

「「「織斑君、デュノア君、ヴァルター君、私と組んで!!!」」」

そう言って差し出してくるのは学内の緊急告知が書かれた申込書。内容は

『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、ふたり組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする』

といったものだ。なんとも急な。

「私と組もう、織斑君!」

「私と組んで、デュノア君!」

「お願い、ヴァルター君!」

そうは言っても組むなら私はラウラ一択なのだが。シャルロットさんが私と弟君を困り果てた顔で見る。バレたらまずいな。

「そのことなのですが、一夏君はシャルル君と組むことになっているのですよ。そうですよね?2人とも?」

「あ、ああ。実はそうなんだ。悪いな」

静まり返る大衆。

「まあ、そういうことなら・・・」

「他の女子と組まれるよりはいいし・・・」

「男同士っていうのも絵になるし・・・ごほんごほん」

2人のことは納得してくれたようだ。

「なら、ヴァルター君!」

「すみません。私も既にラウラと組むことにしているのです」

「そっかぁ・・・」

各々が仕方ないかと口にしながら去っていく。それからは女同士のペア探しが始まったらしく、廊下がうるさくなった。

「助かったよ。ありがとう」

「いえ、バレてしまうと私としても不都合なことがありますので」

「不都合なこと?」

「気にしないでください」

そこで他の女性たちと合流して先程のことを話す。セシリアさんと鈴さんが弟君に突っかかっていたが、なんとか納得してくれたようだ。ついでに2人が組むことも決まった。事後承諾になってしまったが、ラウラと組むと言ったことも話す。

「なに、私もそうするつもりだった。問題ない」

よし、これで私もペアが決まった。あの噂をどうにかするためにも、勝たなくては。

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