銀色の二重奏   作:乱れ咲

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復讐

私が成長してきた時間の中で、忘れてはならないものは、きっと復讐だろう。

私のじゃない。私の元家族達のだ。

 

 

 

ブルーノ少将が珍しく第一小隊に仕事を持ってきた。

ISが登場して以降、仕事のほとんどはISが関わっており、結果、私達に仕事は回ってこず、この特殊部隊はやけに能力の高いおっさん達の集まりでしかなかった。

何より、これが私の初の本格的な実戦であった。

 

 

 

フクス装甲兵員輸送車に揺られ、とある邸宅前までやってきた。

一見怪しくもないが、どうやって突き止めたのか、地下にドイツ連邦陸軍の未確認実験施設があるらしい。

室内戦闘が予想されるということで、私は相棒のL96A1を駐屯地に置いてきて、UMPとVP9、ナイフ2丁、手榴弾複数といった装備である。

 

 

 

住人はもとよりいないらしい邸宅の塀を乗り越え侵入する。監視カメラの死角を進み、地下に入っていく。

ルッツのハッキングによってわかった内部構造は、地下は3階層あり、

上から順に倉庫、実験施設、居住区となっているとのこと。

順当に地下1階からクリアリングしていくことになった私達。

戦闘が得意なヨアヒムとマルコを先頭、私とベネディクトが後ろの隊列で進む。地下1階はあまり警備員もおらず、無事クリアリングできた。

 

 

 

地下2階。実験施設。

ここが最も厳しいように思える。至る所に警備員が配備され監視カメラが配置されており、自由に動くことができない。

警備員の喉を後ろからカランビットナイフで切り裂き、黙らせる。

死体はいつ見つかってしまうかわからない。その為、迅速な行動が求められた。

私達の任務は2つ。

・研究内容、結果のデータの持ち帰り

・アラスカ条約に反するものであった場合の証拠の収集

すぐに終わるものではない。そのため、ルッツには戦闘ではなく、情報収集に専念してもらっている。

ここで、私は感じた。

(どこかで見た事がある気がする)

ブルーノ少将にすぐさま意見具申。

「私、この建物に既視感があります」

「ということは、お前のいたあそこか」

はい、と首肯する。ブルーの少将は顎に手を置いてしきりに頷く。

自身の記憶を頼りに、重要度の低い部屋をピックアップし、伝える。

重要度の高い部屋は、知らなかった。

静かに、一部屋一部屋クリアリングしていく。

そこで、ある実験部屋に入った。

10人程、研究員がいた。

慌ただしくデータをまとめている。

「さっさとしろ!いつ来るかも分からないんだぞ!」

「あと少しだ!あと2分待ってくれ!それで終わる!」

会話が聞こえた。どうやら逃げる準備をしているようだ。

ブルーノ少将は瞬時に判断。対象を制圧。無力化もしくは殺せ。

「「「「「Ja!!」」」」」

11人いた研究員の内、銃を持っていたのは4人。優先的に無力化し、拘束。その間に逃げ出そうとする7人を、扉を塞ぎ、退路を経つことで閉じ込める。

全員を拘束し、端末から情報を引き出すルッツ。

その時、

カツ、、カツ、、と足音が聞こえた。

音からして1人、男性、小太り。

ブルーノ少将は私に無力化を命令。

足音は遠ざかっていく。引き返したのだろうか。心なしか急いでいるように感じられる。

私は足音と気配を殺し、追跡する。

 

 

 

ブルーノ少将達は情報を全て引き出し、撤収の準備を進める。

目標に十二分に届くものを手に入れ、驚愕していた。

実験内容は、人間兵器育成計画の廃棄品の女の中からISに適応した兵士を作り出すため、人体改造を施すといったものであった。

では、使われた人間は何処にいるのか。という疑問が出てきたところで、別行動していたフェルトから連絡が入った。

 

 

 

足音を追っていくと、不意に道が臭くなっていった。鉄と腐敗の匂い。体の奥から嫌悪感が湧き出てくる。この匂いを私は知らないが、本能的に理解した。

考えないようにしていた、『廃棄品』の成れの果て。臭いがきつくなるにつれて、予想が鮮明に思い描かれ、目を逸らしたい衝動にかられる。しかし、逃げることは許されない。頭を振り、思考を切り替えようとする。

足音が止まり、扉が開く音がした。物陰から見て、入った部屋を確認し、正面に立つ。

凄まじい臭いだ。

鼻がよじれそうになりながらも、意を決して突入する。

1人の小太りの男性が、目を見開き、私を凝視する。信じられない。そう目が物語っている。

そして、腐敗臭の正体。

身体中に穴を開けられ、苦痛に歪められた顔をそのまま残した同い年くらいの男女の死体が、積み上げられていた。目に光はなく、力なく四肢を投げ出している赤い影。それらの集合体。

怒りが込み上げてきた。体の奥からどす黒い感情が湧き出て来る。

この死体の山への感情は怒りではない。恐怖であった。自分が辿ったかもしれない道の終着点。きっとこの光景を自分1人で見ていたのなら食道を逆流してくる酸を押し留められずに逃げ出していただろう。その恐怖を塗り潰し、自身の心を塗り尽くさんとするものは、目の前の、既視感のある男性だった。

男性の口が力なく開く。

「ど、、どうして、廃棄品がここに、、、いや、そもそも、、は?なんで?なんで生きてんの?殺し、、、た、よね?え?」

そこからの動きは早かった。一瞬で間合いを詰め、その間に、左手にVP9、右手にナイフを持つ。だいたいの狙いを定め、撃つ。左足を動けなくし、男の脇にナイフを刺し込み、もう片方に至近距離で撃つ。ナイフを抜き、右足に刺す。

男の汚い悲鳴が響く。

「シュヴァルツヴァルト、研究所。心当たりは?」

男の目に動揺がはしる。

「人間兵器。何処から集めた?ドイツ中にあるのか?一点に集中しているのか?国外にもあるのか?」

目をゼロ距離で合わせる。

黒、白、白。

「分散させている。わかった。お前の立場は?大元?所長?一研究員?」

黒、白、白。

言葉を失った。

こいつさえいなければ。

私を殺意が染め上げる。ドス黒く、炎のように燃え上がる感情。

私はそれを押し留める。

ここで殺すべきじゃない。残った理性がそう判断した。

ポケットからオイルライターを取り出す。縄で男の四肢を拘束し、服を取り去る。右足の傷口に火を当てる。男の叫び声。止めない。次は脇。出血の多い方から燃やす。毛が邪魔だ。臭い。次、もう片方。最後、左足。縄で猿轡して、黙らせる。死体の山に向かい合う。懺悔。もう少し早ければもしくはと後悔。ポケットを漁る。以前もらった飴があった。山の前に置く。祈りを捧げる。どうか、死後の安らぎを。

ブルーノ少将へ連絡。

「実験対象を発見、全員死亡。計画首謀者確保。そちらへ向かいます」

 

 

 

 

 

 

地下3階を念のため完全封鎖し、撤収。この時、既に私を塗り潰していたものは既に剥がれていた。小隊の仲間が、家族が心配そうにこちらを見る。私は、精一杯の笑顔を作った。みんな、泣いていた。

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