戦士絶唱シンフォギアIF   作:凹凸コアラ

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 どうも、皆さん。約3ヶ月ぶりくらいですかね。ご存知(?)SABATAです。

 どうにかこうにか帰って来ました(一時帰宅かもしれませんが) 心配してくれた人がもしいらっしゃるなら、感謝とお詫びを申し上げます。大丈夫です! 僕は生きてます!

 授業に、課題に、試験に、作品に、ポートフォリオに、資格講座に、バイトに、インターンシップにと様々な要素が絡み合って執筆時間を上手く確保することが出来ず、確保した短い時間で少しずつ執筆していたらこんなに遅くなってしまいました。

 それに執筆している途中で、こんなシーンも取り入れてみたいなと思って執筆料もどんどん増やしてしまい、気付いた時には文字数が2万字越してて我ながらビックリしてしまいましたよ(笑)

 それと長い時間を掛けて執筆したせいか、文章レベルが低く文の繋げ方や同じ言葉を短い間で何度も使っているシーンがあるかもしれませんので、そこはご了承してください。不承不承ながら了承して下さるなら嬉しい限りですし、直してくれる方がもしいらっしゃるなら誤字報告等で報告して下さい。皆さんで今作を面白く愛される作品にしていきましょう。

 それでは長ったらしい前書きもここで終了して、そろそろ本編の方に入っていきましょう!

 それでは、どうぞ!


EPISODE 19 想いの正体

 よく晴れた休日の日。とある公園の一角にある大きな像の前に1人の女の子が佇んでいた。その女の子とは、世界的に有名な大人気アーティストである風鳴翼である。

 

 今日は以前に予定していた響と共に出掛ける日である。響と決めた集合場所に一足早く到着した翼は、やって来るだろう響を捜す為に時々周りを見渡しながら小まめに服装のチェックをしていた。

 

(緒川さんに手伝ってもらったけど大丈夫かしら? ……似合ってると良いのだけど)

 

 今の翼は、膝くらいまでの長さの白色のワンピースの上に半袖の薄い水色の上着を着た格好をしている。露出は然程高く無く、シンプルではあるが、それさえも踏まえて翼の持つ魅力を十全に引き出すコーディネートだった。加えて、シンフォギアの待機形態であるペンダントが今はアクセサリーとしての役割を果たしており、翼の魅力の底上げに貢献している。

 

 そんな持ち得る魅力全開の翼が公園の一角に佇んでいれば直ぐに目立ってしまう。それに翼は老若男女問わずに人気の歌姫である為、そこに翼がいるだけで人の目を集めることになるだろう。

 

 それを避ける為に、今の翼は白色のキャスケットを被っていた。それもまた何処かミステリアスなものを感じさせることで翼の魅力を引き上げると同時に、翼の正体の隠蔽という一石二鳥の役割を果たしていた。

 

 このコーディネートは、今回の響とのお出掛けで何を着ていけば良いか迷っていた翼に緒川がしてあげたものである。翼は緒川のことを信頼しているが、今回の服のコーディネートに関して言えば半信半疑であった。

 

(もし似合っていなかったら、立花に幻滅されるかもしれない。本当に大丈夫かしら?)

 

 先から翼の脳裏を駆け巡る思考の連鎖には、必ずと言って良い程に響の存在が関連していた。それがまた翼の中で元々燻っていた大きな疑問を更に増長させる。

 

(……どうして私はここ最近立花のことばかり考えているの? 二課にいる時でさえ、気付けば立花のことを捜していて、一緒にいる時は知らない間に立花のことを目で追っている。胸の内が暖かくなる時もあれば、苦しくなることもある。叔父様や緒川さんには何も起こらないのに、どうして立花にだけ?)

 

 最初は距離を取って嫌悪にも近い感情を響に抱いていた。だが、“立花響”という男を知っていく内に翼の中の嫌悪は好感に変わっていった。そして気付けば、翼の胸の内には嫌悪していた時のようなただひたすらに重いだけの気持ちではなく、浮き沈みするが普段はとても暖かい木々の間から漏れる木漏れ日のような気持ちを抱いていた。

 

 同じ男である叔父の弦十郎や緒川に抱いたことが無く、翼が人生で初めて響だけに抱いた気持ち。翼は知りたい。この響だけに抱いた気持ちとそれに付随する心と体の異変の正体を。

 

 それを知ることも今日の響とのお出掛けの目的に含まれている。だがまぁ、それを抜きにしても翼は今回のお出掛けには来ていただろう。何せ今の翼は響が来るのが待ち遠しい程に今日のことを楽しみにしているのだから。

 

 待ち焦がれる翼は、まだかまだかと首を長くして響を待ち続けている。そんな翼の背後にある像の逆側には1人の男が佇んでいた。その男とは、今まさに翼が待ち続けている立花響であった。

 

(まだかな、翼さん。やっぱり予定が一杯だから大変なのか?)

 

 響はスマホで時間を確認しながら心中に自身の考えを吐露していた。どうやらこちらも待ち合わせの時間よりも早く着て、相手を待っているという状況のようだった。

 

 翼を待ち続けている響の服装は、何時もと違ってパーカーという装いではなかった。上が白色のVネックのTシャツの上にカーキ色のジャケット、下がベージュ色のチノパンという装いであった。

 

 今回は翼と2人きりで出掛けるということで、流石に何時もの格好では翼本人にも失礼だろうと思った響は、以前世界各国を黎人と回っていた時に言われたアドバイスを必死に思い出しながら自身のコーディネートをしたのだ。

 

 だが、響は1つ忘れていた。黎人のアドバイスは意中の女性を落としたり、交際中の女性に対して特別感を与えて好感度を更に高める為にすることだということを。

 

(にしても、あの後の未来は怖かったなぁ……何が怖いって未来は笑顔で笑ってるんだけど、その笑顔が何処か凄みを感じさせたんだよな。悪寒はするし、背筋が凍り付きそうになるし、冷や汗は流れてたし……)

 

 実は響、翼と一緒に出掛ける予定を詰めた後に未来に詰め寄られていたのだ。その時は周りに誰もいなかったがもし誰かいたのなら、その人はきっと消えない恐怖を体験することになっただろう。

 

 どうしても付いていこうとする未来を説得するのに響はとても苦労した。最初は響の言葉に全く聞く耳を持たず、どうしても付いてこようとしていた未来だったが、響が装者として翼と2人で話したいことがあると伝えると、それまで聞く耳を持っていなかった未来が響の気持ちを汲んで説得に応じてくれたのである。

 

(でもまぁ、そのお礼としてまた今度未来と出掛けることになったんだが。別にそれくらいなら、未来が頼むなら何時でも一緒に行ってやるのにな)

 

 今回は響の顔を立てて引き下がる代わりに、響は後日未来と出掛けることになった。しかし、響としては少し無茶なお願いをされるかもしれないことを覚悟をしていた為、寧ろ未来と出掛けるだけで良いという事実に拍子抜けしてしまっていた。

 

 悲しきかな。未来が緊張や焦燥や羞恥を感じながらもどうにか状況を上手く利用して取り付けたデートの約束は、響の中では“幼馴染みと出掛ける”だけという範疇に収まってしまっていた。

 

 そんな感じで、響と翼は2人して待ち合わせの時間よりも早く待ち合わせ場所に着いているのにも関わらず、像を1つ挟んでお互いがお互いの存在に気付かないという状況でただただ不毛な時間だけが過ぎていく。

 

 響はスマホを、翼は腕時計を見て時間を確認する。時計の針が2人の待ち合わせの時刻を示そうとした時、両方の位置から見える場所で遊んでいた子供のグループの内の1人がで()けた。

 

 像の前で待ちながら子供達の遊ぶ光景をのほほんと見守っていた響と翼は、子供が転けたのを見て心配し、像から離れて子供の様子を見に行こうとした。その時、偶然にも2人が同タイミングで歩みでたことで、お互いの姿を隠していた遮蔽物の像が無くなったことで響と翼はお互いの存在を視認出来るようになったのである。

 

「「あ……」」

 

 そして、全く同じタイミングで今日の相方の存在を目にばっちりと写した響と翼は、声を漏らしながら相手の格好を見て固まった。

 

 響が見たことのある翼は、大抵の場合制服の姿で、別の格好と言っても病衣や検査衣といった病院にいる患者が着ているようなものばかりだった為、今回初めて見る清楚で女の子らしい翼の私服姿に思わず顔を赤くした。

 

 対して翼が見たことのある響は、大抵の場合私服の姿で、色合いやデザインは違うが何時もパーカーという似たような装いだった為、今回初めて見る何時もと違う特別感のある男らしい響の私服姿に思わず顔を赤くした。

 

「あ、その……いたのね……」

 

「あ、あぁ……その、結構似合ってるぜ、その服。凄く可愛いと思う……」

 

「ッ! ……あ、ありがとう。そういう立花も何時もの格好と違って、凄くかっこいいと思うわ……!」

 

 まるで付き合い始めて出来立てほやほやのカップルの初デートのようなリアクションをする響と翼。2人が口籠もりながら言葉を伝えている間に転けた子供は他の子供達に起こされてさっさと離れて行ってしまっていた。

 

「あぁ、折角翼さんと出掛けるんだから、少し何時もと違うおしゃれな格好を意識してみたんだ。パーカー以外の服装で誰かと出掛けたのは、翼さんが初めてだ」

 

「ッ!」

 

 翼が初めてというある意味特別感のある言葉を聞き、翼の顔が先のものよりも更に赤色に染まっていく。恥ずかしくなった翼は、慌てて顔を背けて顔が赤くなり過ぎているのを響に悟られる前に無理矢理話を振る。

 

「も、もう予定の時間にはなってるのだから、そろそろ行きましょ! 時間が勿体無いわ! 急ぎましょ!」

 

「あっ! ちょっと待ってくれ、翼さん!」

 

 急かす翼を引き止め、響は背負っていたショルダーバッグからある物を取り出した。それは中に何かが入っている縦長のケースだった。

 

「はい、これ。翼さんにプレゼント」

 

「これを私に? ……ここで開けても良いのかしら?」

 

「あぁ、是非そうしてくれ!」

 

 響から手渡された縦長のケースをまじまじと見た翼は、一応響からの承認を得てからケースの蓋を開ける。開けたケースの中には、今の澄み渡った空のようなスカイブルーの眼鏡が収められていた。

 

「これは、眼鏡?」

 

「あぁ。翼さんは有名人だからさ、やっぱり顔の印象を誤魔化すことが出来る物は多い方が良いと思って。……気に入らなかったかな?」

 

「そんなこと無いわ。あなたの気遣い、とても嬉しく思うわ」

 

 感想を訊ねる響に、翼は微笑を浮かべながら極めて簡素に返す。余計な言葉など不要である。余計な言葉を付け足すだけ蛇足となって述べた言葉を薄っぺらくすることもある。相手に喜びや感動を伝えるなら、今の翼のように簡素な言葉と顔に出た表情だけで十分伝わる。そして、翼の想いは確かに響にも伝わっていた。

 

 すると、翼は早速ケースの中から眼鏡を取り出して掛けた。やはり眼鏡を掛けるだけで大人気アーティストである風鳴翼の印象からは離れる。しかし、普段の風鳴翼の印象からは離れても、決して似合わずに不細工(ぶさいく)に見えるということはない。寧ろ、眼鏡を掛けたことで何時もとは違うクールな印象を響は翼から感じていた。

 

「どう? 似合うかしら?」

 

「あ、あぁ! すっげえ似合ってるぜ、翼さん!」

 

 クールでありながらも女の子らしい可愛らしさがミックスされた今の翼に響はドキッとしていた。そんな顔を赤くしながら少し早口で喋る響が面白くて翼は笑みを浮かべた。

 

「さ、今度こそ行くわよ。折角の休日に出掛けるのだから、長く楽しみたいもの」

 

「あ、ちょっ翼さん!?」

 

 上機嫌になった翼は、響の手首を掴みながら街に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 街へ繰り出した響と翼は、ショッピングモールにやって来ていた。理由としては、ショッピングモールには色々なものが揃っているというの1番大きい。

 

「まずはやっぱりショッピングか。翼さんは何処か行きたい場所ってある?」

 

「ごめんなさい。私はこういう場所に来る機会が少ないからあまり勝手が分からないの。だから何処か行きたい場所と言われてもね……?」

 

 幼き頃よりあまり俗世と関わらず、歌姫と戦士の2つ顔を併せ持つ故に個人の時間を持つことが殆ど出来なかった翼には、友人や身内と共に出掛けるという経験が全く無い。故に翼は、行きたい場所を訊ねられてもどうすれば良いのかということが分からなかった。

 

「そっか。なら、順番に色々な場所を回るとするか」

 

「そんな目的も無くぶらつくものなの?」

 

「ん。特に目的無くデパートとかショッピングモールに来た時は基本的にこんな感じだ、俺は。ブラブラしてる間に自分の欲しいものとかがポンと出てくるかもしれないしな」

 

 響は少し昔を思い出しながら翼にそう言った。

 

 響にしても同年代の誰かと共にショッピングモールをぶらつくというのは実に2年ぶりである。黎人の仕事の関係上長期滞在をする機会というのは殆ど無く、仮に長期に渡って滞在したとしても響がその土地の地図や言語に慣れた頃には既に次の場所に行くのが決まっていたから、このような理由も無くショッピングモールをブラブラするというのは本当に久方ぶりなのであった。

 

 響は翼を先導して試しに近くにあった小物店に入った。その店には小さなストラップから様々なデザインのコップといった多種多様なな小物が並べられていた。

 

「へぇ、色々とあるもんなんだな。おっ、これとかどうだ、翼さん?」

 

 そう言って響が手に取ったのは、青一色が全体に塗られているマグカップだった。その青いマグカップの側面には、とても可愛らしくデフォルメされた鳥の絵が描かれていた。

 

 翼は響が手に取ったマグカップを受け取り、マグカップを様々な角度から見回す。

 

「とてもシンプルなデザインね。でも、シンプルだからこその良さが見て取れる。それにこの鳥の絵もとても可愛らしいわ。最近家で使っていたマグカップも壊してしまったから、丁度買い時なのかもしれないわね」

 

「なら折角だし俺も買おっかな」

 

 響はそう言い、今翼が手に持っているマグカップが元々置かれていた位置の直ぐ側に置いてあった黄色いマグカップを手に取った。色は違うが、そのマグカップは翼が買おうとしているマグカップと同様のデザインで同じデフォルメされた鳥の絵が描かれていた。

 

「立花はそれで良いの? 態々私の物と似たものを買う必要は……」

 

「俺がまだ中学生だった頃に聞いた話なんだけどさ、女の子って仲の良い友達と似た髪型に同じ服、同じ鞄、兎に角その友達と同じ物を揃えたりすることがあるって。俺は男だけど、翼さんのことを頼れる先輩って思うのと同じくらい友達だって思ってる。だから今日はそんな頼れる先輩で友達な翼さんと同じ物を揃えるのも有りかなってさ。それに俺個人も結構このマグカップ気に入ったし」

 

「立花……」

 

「それに色は違うけど、お揃いだぜ、お揃い。女の子、それも翼さんみたいな美少女と同じ物を使うって特別感があるじゃん」

 

「そ、そうね。私も友達と同じ物って思うと嬉しいわ……お揃い……立花とお揃い……

 

 響と同じ物を買って、それを使うことを想像した翼は、頰を少し赤く染めながら微笑を浮かべていた。その時の翼の顔はとても可愛らしく、そんな翼の顔を見た響はドキドキしながら目を離せずにいた。

 

 その後も様々な店を回り気に入ったものを買って回っていた2人は、一旦ショッピングモール巡りを終了して休憩がてら映画館にやって来ていた。

 

「翼さん、何か見たい映画ってある? 無いなら俺が勝手に選ぶけど?」

 

「あ、ある……」

 

「どれ?」

 

「そ、その……あ、あれよ……」

 

 翼が指で指し示した方向に視線を向ける響。翼に指し示された方向にあったのは、とある男女のラブロマンスを描いた恋愛ものの映画だった。

 

「へぇ、恋愛系か。そう言えば、俺って見るのは基本アクションとかSFとか特撮映画ばっかりだから、こういう恋愛ものって馴染みが無いなぁ」

 

「その……ダメ、かしら?」

 

「いや、良いぜ。俺も偶には未知のジャンルに挑戦してみたいし、どういう内容なのかも気になるしな」

 

 感慨深そうに話す響に、翼は響は恋愛ものの映画に不満があるのかもしれないと思い不安そうにするが、響はそんな翼の想いを払拭するように笑いながら翼の意見に賛同した。

 

「それにしても意外だなぁ。翼さんが恋愛ものに興味があるなんてなぁ……もしかして、翼さんって結構こういうの好きなのか?」

 

「わ、私も、こういったジャンルの映画は余り見ないわ……。その、立花みたいに偶には趣向の違うものを見てみるのも良いかと思って……!」

 

 翼は顔を赤くして恥ずかしそうにそう言うが、翼のこの言葉は文字通り真っ赤な嘘である。今の翼は響のような軽い気持ちで恋愛ものの映画をチョイスした訳ではなかった。翼のこの行動には、先日の了子の言葉が影響を及ぼしていた。

 

──兎にも角にも、出来る女の条件は何れだけ良い恋してるかに尽きる訳なのよ! ガールズ達も、何時か何処かで良い恋しなさいね……って、その辺りは野暮だったかしらね。翼ちゃんも──

 

 恋がどうのこうのといった話であったが、了子の話す対象の中には未来だけでは無く翼も含まれていた。未来に対して言うのなら翼もまだ分かる。未来の態度や言動は、目に見えて響に恋していることを示唆している。

 

 だが、翼には恋をしているという自覚が無い。故に了子が何故自身までも話の対象の中に含んでいたかの理由も翼には分からない。仮に恋をしていると言われても恋がどういったものか分からない翼は、何も理解することが出来ないのである。

 

 だからこそ、翼は恋愛ものの映画を見ることで、自身が本当に誰かに恋しているのか、また恋とは一体どういったものでどのように感じるものなのかを知る為に恋愛ものの映画を選んだのだ。

 

 そんな翼の思惑も知らぬまま、響は翼に言われた通りの映画のチケットを翼の分も含めて購入し、キャラメル味のポップコーンとコーラとオレンジジュースを売店で買ってシアタールームに入っていった。

 

 映画の内容は、互いに恋に落ちた1組の男女が、様々な困難に見舞われ、時に支え合い、時に衝突し合い、その多くの困難を共に乗り越えていき、最後は2人で幸せを掴み取るという王道のラブストーリーものであった。

 

 そんなラブストーリーものを見ていた響は熟睡……ではなく、マジ泣きの号泣をしていた。感受性豊かな性格をしている響は、案外こういった王道の物語に共感し易く、共感した故に涙を流しまくっているのだ。

 

 その隣にいる翼は、響程ではないがほろりと涙を流しながら物語の行く末を見守っていた。どうやら、翼も響には負けるがそれなりに感受性豊かな人間であったようだ。

 

 両者それぞれの形で涙を流しながら見守っていた物語は、最後に男が目覚めるかどうか分からない意識不明の重体から回復して2人は幸せに結ばれるという形で無事エンディングを迎えた。

 

 映画を見終わった響と翼は、周りの人に翼の正体がバレるのを未然に防ぐ為に、あまり人のいない休憩所まで移動してから映画の感想を話し合っていた。

 

「すっげえ泣けた。初めて真面目に見たけど、恋愛映画って凄く感動するもんなんだな。翼さんはどうだった?」

 

「……」

 

「翼さん? おーい!」

 

「……あっ!? そ、そうね! 私も良かったと思ってるわ。それに色々と考えさせられたり、勉強になったりして教えられたことも多いし、とても有意義な時間だったわ」

 

「そっか。そいつは良かった」

 

(緒川さん曰く、俗世に疎いらしい翼さんから見たら恋愛事情って結構新鮮だったんだろうな。この経験が何時か翼さんに良い影響があったら良いな)

 

 頰を染めて少し慌てながら返答する翼を見て、響はそう思った。対して翼は、先の映画の主要人物である男女の会話や心情を語る場面を思い出しながら、今の自分が抱いている気持ちと向き合っていた。

 

(好きな人と一緒にいると、心が安らぐ。安心する。けど、その好きな人が自分とは別の女性と一緒にいれば、心が揺れる。不安になる。それが恋や恋愛に含まれるものなのだとしたら、私が立花に抱いているこの想いは……)

 

 今の翼の動悸は何時もよりも激しい。運動もしていないのにここまで動悸が激しくなったのは、翼の生きてきた約18年間の人生史上初の出来事であった。しかし、動悸は激しいのに今の翼の心は驚く程に安らいでいる。

 

 以前に響の口から未来の名前が出た時、翼は胸の奥に物理的ではない何らかの痛みを感じたことがあった。その時の翼は、今の翼とは真逆で、とても不安に駆られていた。

 

 恋愛ものの映画を見た経験は、翼の心境と考えを認識させ、疑問だったものを半信半疑ではあるが少しは確信が持てるものに変えていた。

 

「さて! 小腹も空いてきたし何か食べようと思うけど、翼さんは何か食いたい物とかあるか?」

 

「え、えぇ。食べたい物……そうね、甘い物が欲しいわね」

 

「甘い物……なら、あれとかどうだ?」

 

 甘い物をご所望する翼の意見を聞き、響は一旦周りを見渡して見つけたものを指差しながら翼に問い掛けた。響が指差した先にあったのは、露店販売をしている1つの屋台であった。

 

 傍にソフトクリームの置物が置かれ、近くで“ソフトクリーム”と書かれた旗が揺れているその露店はソフトクリーム屋であった。

 

「ソフトクリーム……」

 

「……あれ? 甘くて美味いと言ったら、俺的にはアイスだったんだけど、翼さん的には御眼鏡に適わなかったか?」

 

「そんなことないわ。さ、早く行きましょう」

 

 少し不安そうな顔をみせる響に翼は微笑みを浮かべ、ソフトクリームを買う為に響の手を引いてソフトクリームの屋台の下まで歩いていく。

 

 翼は少々自覚が薄いかもしれないが、翼は紛うことなき美少女である。加えて言うと、響は“ツヴァイウィング”結成当初から翼と奏のファンであり、翼は響にとって憧れの存在だった。

 

 そんな翼と偶然とはいえ手を繋いでいる思春期真っ盛りの少年である響からすれば、ちょっと刺激が強過ぎるなんてレベルじゃない衝撃が響の胸中で走っていた。

 

(これヤバいって!? 俺、翼さんと手を繋いでる!? さっきは手首だったけど、今回はガチで手を握ってるんですが!?)

 

 刺激が強過ぎて内心パニックを起こしている響であった。自分からデートに誘ってはいたが、やはり響も所詮女性経験が皆無の童貞であった。

 

 その後ソフトクリーム屋にて翼は王道のバニラ味、響は子供に大人気なチョコ味のソフトクリームを購入して、近くのベンチで座りながらソフトクリームを味わっていた。

 

 何とか落ち着いた響は、ソフトクリームを味わっている時に横から視線を向けられているのを感じ取った。響が視線を横に向けると、響の隣に座っている翼が響のソフトクリームと響を交互に見ながら視線を送っていた。

 

「……少し食べるか、翼さん?」

 

「ッ!? あ、いやっ、私は別に、そんなつもりでは……!?」

 

「そんな遠慮すんなって! バニラはアイスの王道で美味いけど、やっぱり他が食べてる味がどんなのか分かってても気になるってのは俺も分かるから。だからさ、ほら! パクッと一口どうぞ!」

 

「え、えぇ……じゃ、じゃあ一口だけ……」

 

 響から差し出されたチョコ味のソフトクリームを翼は一口頂く。未だに翼の口の中で味と余韻を残していたバニラ味と、新しく入ってきたチョコ味が口の中で混ざり合い暫定的なミックス味となって翼の口の中を支配していく。

 

「どうだ、翼さん?」

 

「えぇ、とても美味しいわ。ありがとう、立花」

 

「おう! 翼さんが嬉しそうで俺も嬉しいよ。あむっ!」

 

「あ……」

 

 響は嬉しそうに微笑む翼に満面の笑みで返してから再び自身の持つチョコのソフトクリームを口に入れ、その様子を見ていた翼が無意識に声を漏らした。響が今食べた箇所は、つい先程に翼が響のソフトクリームを食べた箇所と同じ場所だった。

 

(これって、確か……)

 

 先程翼達が見た映画には、ヒロインが飲んでいたペットボトル飲料に主人公が口を付けて共有するというシーンがあった。その際、主人公は偶然ヒロインが口を付けていた箇所に自分の口を付けていた。物は違うが、(ヒロイン)が口を付けた箇所と同じ箇所に口を付ける(主人公)とシチュエーションは、先程の映画のワンシーンと類似するものがあった。

 

 ある人が唇をつけた箇所に別の人が唇をつけることを、人は間接キスと呼ぶ。響はある意味バカだから気付いていないが、先の映画の内容を鮮明に覚えていた翼は間接キスを意識してしまい、アイスを食べ終わるまで真っ赤になった顔を響に見せないよう響に背を向けて黙り込んだままであった。

 

 アイスを食べ終えてどうにか響とまともに話せるレベルにまで落ち着いた翼は、響と共にショッピングモールの洋服店コーナーにやって来た。

 

「これとかどうだ?」

 

 響が翼に勧めたのは、肩に当たる部分の殆どが露出している薄い水色のワンピースだった。響の持つワンピースを受け取った翼は、様々な角度でワンピースを観察してから感想を言う。

 

「デザインとかは良いと思うけど、季節的に少し早過ぎないかしら?」

 

「そんなことないって。確かに着るには少しだけ早い気がしないでもないけど、そこは一足先に夏を先取りって感じがして良いじゃん。ほらほら、折角手に取ったんだから試着して見せてくれよ!」

 

「もう、そんなに急かすものじゃないわよ? 急かさなくても私も服も逃げたりしないわ」

 

 口ではそう言いつつも楽しそうに笑いながら軽い足取りで試着室に入る翼。試着室の前で見張りをしている響は、時折聞こえてくる布の擦れる音を聞いて胸をドキドキさせながら翼を待つ。

 

「……着替えたわよ」

 

「あ、はい……開けても良いですか?」

 

「え、えぇ。ちゃんと似合ってるかどうか……確認してもらわないといけないから……」

 

 途切れ途切れに聞こえてくる弱気そうな声音で話す翼から了承を得て、響はごくりと口内の唾を飲み込んでから試着室のカーテンを開ける。

 

 カーテンを開けた先には、少し恥ずかしそうに頬を薄い赤色に染めながら右手で左腕の二の腕を掴んでいる翼がいた。翼の服装は、先まで着ていた白色のワンピースから、響が持ってきた薄い水色のワンピースになっていた。

 

「……」

 

 響はそんな翼に思わず見惚れてしまう。先程まで着ていた白色のワンピースと違い、今翼が着ているワンピースは肩の部分が大きく露出している。露出した肩やハッキリと浮き出ている鎖骨のラインが響の視線を釘付けにする。

 

「そ、そんなずっと見てないで何か言って! 恥ずかしいんだから……!」

 

 何も言われずにただずっと見られ続けられていることに羞恥が限界まで達した翼は、吃りながら響に声を掛ける。そんな何時もと違う普通の少女らしさ全開の翼を見て、響も顔を真っ赤にして自身の意見を述べる。

 

「あ、あぁ。そ、その、す、凄く似合ってると思う……う、うん。や、やっぱ! 俺の見立てに間違いは無かったな! よし! この調子でどんどん着替えてこうぜ!」

 

「あ、ちょ、ちょっと待って立花!?」

 

「大丈夫大丈夫! 俺が良い感じなの持ってくるから翼さんは待っててくれって!」

 

 響は翼に有無を言わせず逃げるようにその場から走り去る。翼から逃げるようにして移動した響は、翼からは見えないところで肩を大きく上下させながら呼吸を整えていた。

 

「あ、危ねえ……予想以上の破壊力だった。流石は翼さんだ」

 

 女性の中では高身長な身長と芸術の如きスレンダーな体型の理想型である翼の体に、翼の持つ肌の白さや美貌といった細かな要素が組み合わさり、そこに翼にピッタリな服が合わさることで、普通の男ならその場で昇天しているであろう美の女神と言っても過言でない存在が誕生したのだった。

 

「ふぅ……あまり翼さんを待たせて心配させるのも不味いし、そろそろ服選びに戻るか。えーっと、一先ず翼さんが青系統の服が似合うってことは分かったから、青を基調としたデザインの服を選んで、その服にマッチする彩りとデザインの物を選ぼう」

 

 興奮と呼吸を鎮めさせた響は、先ほどに翼に行った通り服選びを再開させた。先に言ったように響は青色の服を手に取って他の服を選ぶ。

 

 彩度の高い青色の服には、太腿を大きく曝け出しているスカート丈が短い黒色のスカートを。

 

 黒と白とが組み合わさったノースリーブの服には、ターコイズブルーのフレアスカートに水色のノースリーブの上着、更にそこにプラスしてスプリングコートよりも生地が薄くて丈の長さが七分袖以下の彩度の高い青色のコートも付け加えた。

 

 響が選んでいる服が夏物ばかりなのには理由がある。もう直ぐ夏も近いということで、今響達がいるショッピングモール服屋は季節を先取りして既に夏物の服をセールとして売り出しているのだ。

 

 故に響はそのセールを利用して、比較的安価な夏物の服で翼のコーディネートをしているというのが理由の半分である。後の半分だが、こちらは単に翼に肌の露出が多い夏物の服を着てほしいという響の欲望ありきの理由であった。

 

 やはりそこは響も男の子ということであり、思春期真っ盛りの響は女の子の服や肌に視線が向いてしまうのである。これも男に生まれたが故の弊害で、男としての(さが)である。

 

 そんな調子で響は翼に似合いそうな物を見繕っては翼に着替えさせ、翼自身も気に入った物は自腹で翼に買ってあげた。勿論、響自身も自分が着る服探しはしたし、時には翼にコーディネートを手伝ってもらいもしたが響が服に出した出費の額の大半が翼の物に注ぎ込まれていた。

 

 次に響達は、ショッピングモールにあるゲームセンターのコーナーにまで足を運んだ。ゲームセンターのコーナーの一角は、現在大いに盛り上がっていた。ゲームセンターに遊びに来た子供達は歓声を上げ、その子供達の同伴で付いてきた保護者達は賞賛の拍手を送り、ゲームセンターのスタッフは涙を流している。

 

 そんな大盛況のゲームセンターの中心にいるのは、家事万能ご飯大好き筋肉バカの立花響であった。響は笑みを浮かべながらあるゲームを操作していて、その直ぐ傍にいる翼は驚愕を露にしながら無言で響を見ている。

 

 響が現在操作しているのは、少年なら1度は必ず挑戦したことのあるであろうゲーム──UFOキャッチャーであった。響が操作しているUFOキャッチャーは、響の操作に従って順調に移動して景品を掴み取りそのまま無事に景品を穴に落とし、景品は響の手に渡った。それを見て、周りにいる多くの人達が拍手と歓声を響に送り、店員は再度悔し涙を流す。

 

「ほら、取れたぞ。はい」

 

「わぁぁぁ!! ありがとう、お兄ちゃん!」

 

 響は屈んで姿勢を低くし、翼とは逆サイドで固唾を飲んで響を見守っていた女の子に今さっき取った景品──可愛らしい(ひよこ)()(ぐる)みを手渡す。女の子は満面の笑みを浮かべて雛の縫い包みをギュッと強く抱きしめながら響にお礼を言って去っていった。

 

「凄いわね、立花」

 

「いやいや、そんなことないって! 俺も2年ぶりだから感覚鈍ってるし、2年前と比べると取った物の数と質もグッと下がってる。やっぱブランクがなぁ……」

 

「……これでブランクがあるなんて信じられないわね」

 

 響に話し掛けた翼に響はブランクを感じていることを軽く返し、翼は引き攣った笑みを浮かべながら戦慄する。そんな響の隣には、入るギリギリまで膨らんだゲームセンターで配布されているビニール袋が1つ置かれていた。

 

 ここまで見れば誰でも察しが付くと思うが、ゲームセンターのUFOキャッチャーのコーナーが盛り上がっているのは、響がゲームセンターにあるUFOキャッチャーの台を虱潰しに回ってはそれらの台全てで景品を取って回っていたからであった。

 

 最初はブランクもあり響も二、三度失敗を繰り返していたが、徐々に興が乗り始めて4度目辺りで景品を初獲得してから響の乱獲が始まったのだ。多くの景品を取り、それを何度も続けていれば自然とゲームセンターにいる子供達の目に止まり、場所を移して同じことを繰り返せばそれでまた人が増え、結果今では響のワンプレイに注目するようになったのである。

 

 そして、そんな響のプレイを見ていた子供達は、響なら自分達の欲しい景品も取ってくれるのではないか、と思い始める。子供達は響に頼み込み、響は子供達のお願いを承諾して子供達の欲しい景品が置かれている台まで移動し景品を取る。お金は子供達が手に握っていた物を使っている為、後に金銭的トラブルが起こるようなことも無く、響も楽しめて子供達も欲しい物が取れて嬉しいというWIN-WINの関係がそこにあった。

 

 つい先程響から雛の人形を受け取った女の子も響に景品を取って欲しいと頼み込んだ子供の内の1人である。

 

「さてと、もうそろそろ切り上げて終わりにしますか」

 

「そうね。流石にこれ以上は荷物が持ち切れなくなるわ。それにこれ以上取ってしまうと、店の方も商売上がったりよ」

 

 そろそろUFOキャッチャーを切り上げようとする響に、翼が苦笑を浮かべながらそう言った。翼から少し離れた位置にいる従業員も涙を流しながら何度も首を縦に降り続けている。

 

 響の手により、少ない消費で数々の目玉となる商品を取られに取られたゲームセンター側は赤字までとは行かないが、それでも手痛いダメージを受けたのも事実であり、これ以上はもう流石に勘弁してほしいのである。

 

「あぁー……それもそうか。じゃー最後に翼さんの欲しい物を取りますよ。何が欲しい?」

 

「えっ……良いのかしら?」

 

「モチのロンだ。寧ろ俺ばっか楽しんでたから、翼さんの欲しいものも取ってあげないと帳尻が合わないというか……兎に角、俺はもう良いから翼さんの欲しいものを取ってあげたいんだ」

 

「……分かったわ。それじゃあ……」

 

 後頭部を掻きながら苦笑を浮かべる響にそう言われ、翼は困惑気味だった顔を微笑を浮かべた優しいものへ変えて欲しいものを探す為に多くのUFOキャッチャーの台を物色し始める。響も隣に置いていた荷物を持って翼の背中を追従する。

 

「……あ!」

 

「おっ、欲しいものあった?」

 

「立花、私はあの子が欲しいわ!」

 

 翼は自身が止まった台の中にある景品を指差し、響は指された方向にあるものに目を向ける。示された方向にあったのは、とても可愛らしくデフォルメされた青い鳥の縫い包みだった。

 

「あの青い鳥で良いのか?」

 

「えぇ。……取れそうかしら?」

 

「少し難しい位置にあるけど、取れないことはないな。それに上手くやればお釣りも出るな」

 

 翼が指定した青い鳥の縫い包みは、端から見てUFOキャッチャーの難易度的にとても難しい位置に置かれている。しかし、何度もプレイしてUFOキャッチャーでの感覚を取り戻した響には少し難しいレベルの問題であった。それもただ取るだけでなく、それ以上の成果を出そうとする響の発言に店側の人間が多量に冷や汗を流しながら戦慄する。

 

「翼さんご所望の縫い包みは、この俺が必ずゲットしてやるぜ!」

 

「さっきのプレイを見たから期待はしているけれど、そこまで張り切らなくても良いのよ? 私はあの子を取ってもらえればそれで……」

 

 翼は張り切る響を諌めようとしたが、響は翼の言葉を右耳から左耳に受け流してスマホを台の入金レーダーにタッチする。電子マネーが払われたことでUFOキャッチャーは起動し、響はボタンを操作してUFOキャッチャーを動かしていく。

 

「……」

 

「……」

 

 真剣に操作する響の横で、翼は動くUFOキャッチャーのアームを凝視しながら固唾を飲んで見守る。操作していたアームが翼の欲しいもの上辺りに来たところで止まり、降下していく様子を見て翼は息を飲む。

 

 UFOキャッチャーのアームは、取り難い位置にあった青い鳥の縫い包みとその近くにあった可愛くデフォルメされた柴犬の縫い包みを一緒に掴んで持ち上げ、少し危なげに揺れながら運んで穴に落とした。

 

「ッ!」

 

「よし!」

 

 無謀な挑戦が上手くいき、翼は体を小さく震わせ響はガッツポーズを取った。屈んで景品コーナーから2つの縫い包みを取り出した響は、その両方を翼に差し出す。

 

「はい、翼さん。ご所望のものをどうぞ!」

 

「いや、でも、これは立花が取ったもので……」

 

 翼は差し出された柴犬の縫い包みを響に返そうとするが、響は首を横に振ってそれを断る。

 

「男の俺にはそういう可愛いのはあんま似合わねえよ。それに家には縫い包みの柴犬じゃなくて、本物の柴犬がいるからな。縫い包みなんて置いてたら、ズタボロにされちまうだろ? ミライはまだまだ赤ん坊の粋を出ない子犬だからな」

 

「けど……」

 

「なら、それは普段から世話になってる翼さんへのお礼ってことで受け取ってくれねえか? 元々翼さんにあげるつもりで狙ったんだから」

 

「……そう言われると、何も返す言葉が見付からないわね。分かった。ありがたく受け取っておくわ」

 

 手に持った青い鳥と柴犬の縫い包みを今一度強く抱き締めた翼は、頬を赤く染めながら優しげな笑みを浮かべていた。暫く縫い包みの抱き心地を堪能し、一先ず縫い包みを堪能し終えた翼は縫い包みをビニール袋に入れて、響と共にUFOキャッチャーのコーナーを後にした。

 

「さて、次は何処行くか……どうした、翼さん?」

 

 響の横を歩いていた翼の視線がとある一角に釘付けになっていことに気付いた響。自然と翼の見る方向に視線を向け、響はその先にあるものを視認した。

 

「立花、あれは何?」

 

「あれはプリクラだよ、プリクラ」

 

 翼の視線の先にあったのは、多くの女性や極一部の男性に人気があるゲームセンターに置かれている定番の機械──プリクラだった。

 

「そのプリクラってどういうものなの?」

 

「金入れて写真を撮って、その撮った写真に絵文字とかを後付けしてシールに印刷するって奴だ」

 

 プリクラとはどういったものかを翼に聞かれ、響はプリクラですることを細かいことを掻い摘んで大まかに説明する。説明を聞いた翼は成る程と頷き、その後もプリクラの機器に視線を送り続けていた。

 

「……やってみるか、翼さん?」

 

「えっ」

 

「今の翼さん、すっごくプリクラやりたいって顔してるぞ。俺で良ければ付き合うけど、やってみるか?」

 

 初めて遭遇したプリクラを使ってみたそうな翼の顔を見て響が提案し、翼はまた顔を赤くして少し恥ずかしがるような態度を見せながらも、こくりと頷いて響の提案を承諾した。

 

 プリクラの機器の入金のレーダーにスマホをワンタッチしてから中に入る響と翼。中に置いてある機械の指示に従って操作をし、プリクラの機器が写真を撮るカウントダウンを始める。

 

「ほら翼さん! 笑って笑って! そしてポーズ!」

 

「えっ、えぇっ!? そ、そんな、急に言われても!?」

 

「ポーズは何でも良いから! 兎に角カメラのレンズの方見ながら笑うんだって。来るぞ、3、2、1!」

 

 パシャりという音と共にフラッシュが焚かれる。機会が撮った写真のデータの処理をして直様画面に先程撮られた写真の画像が表示される。画面に映ったのは、緊張してるのか少し弱気そうな顔をしながら頬を赤くしている翼と、その翼の隣で満面の笑みを浮かべている響だった。その写真の中で翼は控えめにピースしていて、響はサムズアップを前に突き出していた。

 

「この時にデコレーションとかしたりするんだ、翼さん」

 

「そうなのね。それにしても、少し写真写りが悪いわね。何だか尻窄みしているみたい……」

 

「そうか? 俺は好きだけどなぁ。何かこう保護欲をくすぐられて、凄く守りたいって思う」

 

 そう言いながらも響は手を止めることはせず、写真のデコレーションを進めていく。時々翼の注文を聞き、プリクラの機器の操作に慣れていない翼の代わりに翼の意見をプリクラに反映させていく。

 

「よし、こんな感じで良いだろ」

 

 やりたいデコレーションを終わらせた響は、機器のタッチパネルに表示された完了の部分をタッチする。すると、画面にプリクラの製造が開始されたメッセージが表示されて中から出る響。響を追うように翼も外に出て、その直後に現像されたプリクラが機器から出てくる。

 

「どう、立花?」

 

「我ながら上出来だと思ってる」

 

 出てきたプリクラを手に取って見ていた響は、プリクラの出来前を見て自賛する。響は、手に持っていた2つあるプリクラの内の1つ翼に差し出し、翼はそのプリクラを見て微笑を浮かべる。

 

 プリクラには、『槍?』と『剣!』や『可愛い後輩!』と『かっこいい先輩!』、『響、参上!』や『翼、初めてのプリクラ』などと言った様々な言葉が書かれている。

 

「ありがとう、立花。大事にするわ」

 

「あぁ。さてと、ブラブラするのも疲れてきたし、ここは何処かの建物に入って休憩がてら何かしようと思うんだけど、翼さんはどうですか?」

 

「えぇ。私もその意見には賛成だわ。でも立花、何処に行こうと思ってるの?」

 

「ふふん。俺と翼さんが行くとしたら、そりゃもう一箇所しかないでしょう!」

 

 そんな響の発言を皮切りにして、響と翼は場所を移動し始める。響に明確な場所と名前を教えらもらえていない翼は、少し疑問に思いながら響に先導される形でショッピングモールを後にする。

 

 そして響が翼を連れてきたのは、ショッピングモールから歩いて10分程掛かったとある建物だった。その建物の屋上には、その建物が何のお店であるかを示す文字が書かれている。

 

「カ、ラ、オ、ケ、街……カラオケ?」

 

「そう、カラオケ。歌って戦うシンフォギア装者の俺と翼さんだからこそ、行くならカラオケ店一択でしょ」

 

 翼を連れて建物に入りパパッと受付を済ませた響は、マイクやジュースの入ったコップを持って翼と共に指定された部屋に入って一息吐く。

 

「ふぅ……」

 

 響の自宅の近所にあるカラオケ店とは違う店ということもあり、響は伸びをしながら部屋中を見渡す。響が見た感じでは特に不足や不備のある物は無く、現在翼が操作しているカラオケのリモコンの調子も良好である。

 

(……あれ? 今思ったら、トップアーティストな翼さんと一緒にカラオケに来てる俺って凄くね?)

 

 今更な話である。そもそも大人気トップアーティストである翼と2人きりでお出掛けしている同年代なんて片手で数えられる程に少なく、男だけならば響一人に限られるだろう。

 

「ん?」

 

 すると、唐突に部屋の明かりが消えて部屋の天井に設置されているミラーボールが回転を始める。その直後、設置されているスピーカーから渋い響きな和風テイストの音が流れ始める。

 

 この場にいる人間は2人だけである。だが、響は部屋に着いた直後から休憩していてリモコンを操作してはいない。そうなると、この曲を入れた人間は1人しかいない。

 

 部屋にあったテレビには、今流れている曲の題名が表示される。そこには、“恋の桶狭間”という題名と作詞者と作曲者の名前が載っている。

 

 響はこの曲を入れたであろう人物に視線を向ける。その視線の先にいる人物こと翼は、1度微笑んでから机に置かれていたマイクを手に取って立ち上がり、少し広いスペースに移動してから響に向かって一礼する。

 

「1度こういうのやってみたいのよね」

 

「……渋い」

 

 最初に選んだ曲が演歌ということが意外だった響は、その翼の意外な選曲と趣味に対する感想を漏らした。

 

 響のこの反応も無理は無いだろう。普段はアーティストとして若者に人気のありそうな曲調のものばかり歌っていた翼が、普段歌っているものと全くテイストの違う演歌を歌うだなんて誰が思うだろうか。

 

 そんなこんなで終始ノリノリで演歌を歌い切った翼は、響に向かって今一度会釈してマイクを置いて響の隣に座る。

 

「ほら、次は立花の番よ」

 

「あ、はい! 今入れます!」

 

 演歌を歌う翼に見惚れ、翼の歌う演歌にすっかり聞き惚れて視覚と聴覚から心を骨抜きにされ掛けていた響は、翼に話し掛けられたことでようやく正気を取り戻し急いでリモコンを操作する。

 

 そんな感じで響が歌った後は翼が、翼が歌った後には響がといった交代でローテーションしながら心のままに歌を歌っていった。演歌をあまり知らない響は様々な演歌を歌う翼の姿と歌に魅了され、逆に翼は響の本場仕込みの英語で歌われる英語メインの歌や英語のみの歌に聞き入っていた。

 

 そして今は翼が歌う番であり、響は翼の歌に聞き入りながらもリモコンを操作してある1つの曲の詳細が載った画面を見詰めていた。

 

(こいつを選んだら、やっぱ翼さんは怒るかな……? でも、それでも俺は翼さんと一緒にこの歌を歌いたい)

 

 過る迷いを振り払い、決意を決めた響はその曲をカラオケマシーンに登録する。翼が歌い終わり、再び一礼した翼は机にマイクを置こうとするが響がそんな翼を押し留める。

 

「? どうかしたの、立花?」

 

「まぁ少し待ってくれよ、翼さん」

 

 響がそう言った直後、響がリモコンで入力した曲のメロディが流れ始める。流れ出したその曲のメロディを聴いた瞬間、翼の顔の表情が完全に固まった。

 

「このメロディ……“ORBITAL BEAT”?」

 

「あぁ、その通りだ。翼さん」

 

 “ORBITAL BEAT”、それは2年前の惨劇が起こる直前に“逆光のフリューゲル”を歌い終えた“ツヴァイウィング”の翼と奏の2人が続けて歌おうとしていた曲である。

 

 しかし、ノイズによる惨劇の結果、“ORBITAL BEAT”という曲は、いや、“ツヴァイウィング”が歌った曲がその歌い手達によって歌われるということは永遠に叶わなくなったのだ。

 

「翼さんにとって、“ORBITAL BEAT”も“逆光のフリューゲル”も奏さんとの大事な思い出が詰まった大切な曲なのは俺も分かってる。俺が奏さんの代わりになれないってことは百も承知だ」

 

「……」

 

 言葉を紡ぐ響に翼は言葉を返さない。響は、翼の(さかさ)(うろこ)に触れた可能性があることも分かっている。折角気分良く休日を過ごしていたのに、唐突にデリケートな部分に触れられたのだから誰だって機嫌が180°ひっくり返って不機嫌にもなるだろう。

 

「でもさ、今だけは何も聞かずに一緒に歌ってくれないか、翼さん。……頼む」

 

 響は翼の目から視線を外さずに頼み込む。何時も爛々と輝いている響の瞳からは不真面目な気配は一切感じられず、寧ろ今の響には真剣さ以外の要素が目からは窺い知れなかった。

 

「……マイクを持ちなさい、立花」

 

「ッ! 翼さん!」

 

 翼は響に対して激昂することな無く、寧ろ強気な笑みを浮かべて響に了承の意を返した。そんな翼を見て、自然と響の表情も先程の固いものから年相応少年らしい笑顔に変わる。

 

「その曲で私にデュエットを持ち掛けてくるとはね……付いて来れるかしら、()()に?」

 

「当然! 何たって、俺は奏さんのガングニールを受け継いだ翼さんの後輩だからな!」

 

 挑戦的な言い回しをする翼に自信満々の笑みを浮かべる響。そしてイントロが終わり、Aメロに突入した曲を響と翼は歌い始める。

 

 2年間という長い間ずっと“ORBITAL BEAT”を含めた“ツヴァイウィング”の曲を歌ってこなかった翼。時に歌詞に目を通し、時に音楽プレイヤーから曲を聞き、時に歌を口ずさんでいた翼であるが、その歌唱力は2年前と遜色無いどころか翼個人の歌唱力は当時のものよりも優れていた。

 

 そんな2年前よりも優れた歌を歌う翼に必死に食らい付く響。奏が担当していた歌詞を奏に代わって歌う響は、奏がどのように歌って翼と共に歌を重ね合わせていたかを思い出しながら、当時よりも素晴らしい歌を歌う翼に自己流のアレンジを加えて翼に付いていく。

 

 最初はバラツキがあって若干不揃いだった歌は、1番から2番、2番から3番にかけての間でシンクロしていき、3番のCメロに入った時には既に2人の歌は完全調和(パーフェクトハーモニー)を奏でていた。

 

(懐かしい、この感じ……)

 

 歌を歌う中で、翼はその胸に懐かしさを感じていた。“ツヴァイウィング”の歌を歌うこと自体が懐かしいこともあるが、それ以前に翼は別の何かを感じていた。そう、それは忘れていた何かを思い出したのかのような……。

 

 ふと翼は自身の隣に視線を移した。この歌を歌う時、何時も自身の隣には笑顔の奏の姿があったことを翼は覚えている。しかし、今の翼の隣には奏の姿は無い。

 

 代わりにその隣には、必死さを感じさせながらも笑顔を浮かべて心底歌うことを楽しんでいる無邪気な笑顔を浮かべた響がいる。

 

 歌唱力が唯でさえ高い翼が自身の持ち歌を歌っていて、そんな翼に必死に付いていこうとするだけでも普通の人間には難しいことだろう。だが響は、そんな状況下でも笑顔を絶やさずに歌って入られている。それは何故か?

 

 決まっている。大好きだから、楽しいからだ。大好きな歌を、大好きな曲で、大好きな翼と共に歌えることが楽しいからだ。

 

 そして、その“大好き”と“楽しい”という想いこそが、翼が奏を失ってからの2年間の内に胸の内に封じ込めて忘れてしまったものだったのだ。

 

(あぁ……思い出した)

 

 胸の内に仕舞い込んで鍵を掛け、忘却の彼方に忘れていたことを響が思い出させた。

 

(私は……こんなにも歌うことが大好きで、誰かに歌を聞いてもらえることが楽しいんだってことを……!)

 

 Cメロから曲中最後のサビに入り、完全にシンクロした響と翼の歌は一瞬もブレること無く完全にサビを歌い切る。

 

(ありがとう、立花。私に大切なことを思い出させてくれて)

 

 何故響が“ORBITAL BEAT”を翼と共に歌おうとしていたのか、翼は今ならその答えが分かるような気がしていた。だが、翼は敢えてそれを口に出さない。代わりにその想いを歌に乗せて響に送ることにする。

 

 曲がアウトロに入り、翼は置かれているリモコンを操作して新たに曲を入力した。そして““ORBITAL BEAT””のアウトロも流れ終わって、響は如何にか歌い切れたことに満足感と達成感を感じながら一息吐こうとしたが、新たに流れ始めた曲に響は素早く反応する。

 

「これって、“逆光のフリューゲル”か!」

 

 流石はファンというべきか、流れ始めたイントロの最初の部分だけで曲名を見事に言い当てる響。この曲を選曲したであろう翼に響が目を向けると、そこには笑みを浮かべた翼が立っていた。

 

「あなたが私を焚き付けたのだから、今日はとことん付き合ってもらうわ。それとも、もう疲れてしまったのかしら?」

 

「ははっ! OK! 付き合ってやろうじゃないか! 燃えてきたぞ!」

 

 置いたマイクを再び手に取る響。そこから響と翼による“ツヴァイウィング”の曲の完走フルマラソンが始まったのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 “ツヴァイウィング”が出した曲の全てを歌い切り、流石にこれ以上は喉的にも限界を迎えていた響は、時間も時間であったり店の方から規定の時間になったという知らせも聞き、翼と共にカラオケ店を後にした。

 

 そんな響達が次に向かった場所は、街から少し離れた郊外にある丘の上の公園だった。喉は限界であるが肉体には()して疲労が溜まっていない響はスイスイと階段を登っていたが、一方の翼は息を切らせながら響の後を追い掛けるように階段を登っていた。

 

「翼さーん! 早く早く! Hurry up!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……立花、どうしてそんなに元気なの?」

 

「体力馬鹿に定評のある俺だからな。元気莫大ってな! まぁ、翼さんがへばり過ぎってのもあるか? だとしても、それは仕方無いさ。翼さんにとって、今日は慣れないことの連続だったんだからな」

 

「防人であるこの身は、常に戦場(いくさば)にあったから……」

 

 そうこう話している間に翼は階段を登り切って響に追い付いた。すると、丁度タイミングよく心地良い風が吹き、木々や草花、それと翼の綺麗で長い髪を揺らした。

 

「本当に今日は知らない世界ばかりを見てきた気分ね」

 

「そんなことないって。俺達が今日回ったのは、他でもない俺達の住む世界なんだからよ」

 

「えっ?」

 

「ほら、翼さん。そんなところで突っ立ってないでこっちに来てくれ」

 

 呆然と空を眺める翼の手を掴み、響は公園に設置された落下防止の手摺りの側まで翼を誘導する。

 

「立花!?」

 

 翼は抵抗する間も無く力強い響の腕に引っ張られて手摺りの前に立つ。その場所からは、黄昏の光に照らされる街全体を一望することが出来た。そんな在り来りでありながらも何処か神秘的な光景に翼は自然と夢中になっていた。

 

「ほら、あそこが今日待ち合わせした公園だろ。今日俺と翼さんが回った場所も、回ってない場所も全部俺達の世界だ。今日まで翼さんが戦い続けてくれたから皆が暮らすことが出来てる世界だ。だからさ、知らないなんてそんな寂しいこと言うなよ」

 

 響にそう言われ、翼は今一度視線を響から下に広がる街に移す。

 

──戦いの裏側とかその向こう側には、また違ったものがあるんじゃないかな。私はそう考えてきたし、そいつを見てきた──

 

「……そうか。これが奏の見てきた世界だったのね」

 

 翼は眠りに就いていた時に夢で出てきた奏が話していた言葉を思い出していた。そして、翼は自分なりに奏が言っていた言葉の答えに辿り着くことが出来た気がした。

 

 奏の見てきた世界。戦いの裏側やその向こう側には、平和な世界とその世界に暮らす大勢の人々の存在があったのだ。

 

「平和を謳歌する人達と平和を守る俺達は、確かに立場は違うかもしれないけど、それでも同じ世界で暮らしてる。人としての生き方をしている人達も、戦士としての生き方をしている俺達も要は世界の一部だ」

 

「立花、急にどうしたの?」

 

 唐突に平和に暮らす人々やノイズと戦う自分達の存在について語り始めた響に疑問を抱いた翼は、その疑問を解決すべく響に問い質した。

 

「前に翼さんは言ったよな。戦士として生きるってことは、それだけ人としての生き方から遠ざかることだって」

 

「えぇ……そんなことを言ったこともあったわね」

 

 響の口から語られたのは、以前響が絶唱の負荷によって入院していた翼と話をした際に出ていた内容だった。人の生き方と戦士の生き方の違いを語り、響の胸の内の想いと覚悟を聞き届けた日のことを今でも翼は鮮明に思い出せる。

 

「俺達がいる非日常は、人々が暮らす平和な日常とは程遠い場所にあるのかもしれない。でも、俺達のいる非日常も皆の暮らす日常も同じ世界の一部だ。ならさ、同じ世界にあるのなら戦士として生きながらも人として生きようとすることも可能なんじゃないかって最近思い始めたんだ」

 

「戦士としても、人としても……」

 

「人として死んでも、戦士として生きる。それは多くの人を守るのに必要な心構えなのかもしれない。でも、人の生き方を諦めても良いって言い訳にはならない。人と戦士の二足の草鞋を履いても良いと思うんだ」

 

「……それはとても難しい、いえ、不可能に近いことだと私は思うわ、立花」

 

 響の考えを翼は真っ向から、然れど優しく否定する。以前の翼なら響の言葉を戯言と切り捨てて聞く耳も持たなかっただろうが、今の翼はあの頃とは違って響のことも理解しているし、何より響の話に興味もあったから今この場で切り捨てるようなことはしなかった。

 

「個人の幸福と人々全体の幸福の両方を両立させることは難しい。人の生き方に執着すれば、戦士として半端になって綻びが生まれる」

 

「……」

 

「けれど、戦士の生き方に執着すれば、何時の間にか何を思って戦士となったかも忘れ敵を屠り続ける修羅となり果てる。難しいものね。私は身を以て、それを経験したわ」

 

 戦士としての生き方に執着し続けた翼は、自分の胸の内にあった想いを忘れてしまっていた。故に戦士で有り続ける上での危険性を理解している。だが、半端な者が守れるものなど無いことも翼は知っている。

 

「確かに人としても戦士としても生きるってのは、俺が思ってるよりも難しいことなのかもしれない。実際にそうなんだと思う。でも、それは1人っきりだったらなんだと思う」

 

「1人っきり?」

 

「あぁ。1人っきりだと大変だと思うけど、傍に誰かが居てくれるのなら俺は戦士でありながらも人として生きられると思ってる」

 

 響のその発言は大いに翼を驚かせた。何故なら、今の響が考えていることは翼が1度たりとも思いもしなかったものだったのだ。

 

「大切な誰かが俺の手を握ってくれていて、俺の帰りを待っていてくれるのなら俺は戦士であっても人の生き方を歩んでいける」

 

 戦士として生きる為に人としての生き方の幸福を捨てる気でいた響。しかし、響のこの考えは未来のお陰で一変した。彼女が響の手を握り、戦いの場から帰ってきた響の帰る場所で居続ける限り、響はきっと戦士でありながらも人としての生き方を続けることが出来るだろう。

 

「それに、昔の翼さんは実際に戦士としても人としても生きれてたじゃん」

 

「私が……?」

 

「あぁ。奏さんがいた頃の翼さんは、両翼揃った“ツヴァイウィング”は本当に楽しそうに歌を歌ってた。翼さんにとって、あの頃が1番幸せだったんじゃないかって俺は思ってる。翼さんはどうだ?」

 

「……えぇ。正しくその通りね。あの頃が1番幸せだった。辛いことは沢山あったけど、それでも私は人としても、防人としても1番充実した生き方をしていられた」

 

 響に言われ翼は思い出した。当時はまだ臆病で引っ込み思案だった翼だったが、隣に奏がいれば戦場(いくさば)でノイズと戦い続けながらも、大好きな歌を歌い続けることが出来ていた。

 

 そう、確かに翼は出来ていたのだ。戦士でありながらも人としての生き方を歩むことが。

 

「そもそも人としての生き方って何だって話になるけどさ。やっぱり色々考え方があるんだと思う。夢や目標に向かって努力してそれを叶えるとか、今この瞬間を思いっきり楽しむとか。でも結局は、自分が今したいことをするってのが人としての生き方なんじゃないかって俺は思ってる」

 

「立花……」

 

「俺には未来や翼さん、沢山の人が傍にいてくれてるから、人として今この瞬間を全力で楽しんでいられてる。……翼さんはどうだ? 翼さんには、今全力でしたいことってあるか?」

 

「……えぇ。あるわ」

 

 翼は少し考える素振りを見せて少しを間を空けてから響の問答にハッキリと答えた。その穏やかながらもしっかりとした意思を写している目をした翼を見て、気になった響は翼にその理由を訊ねる。

 

「それについては聞いても?」

 

「別に良いわよ。……実は前に海外のメトロミュージックのプロデューサーから、私に海外への進出展開を持ち掛けられたことがあったの」

 

「メトロミュージックって、あの有名なイギリスの!? 凄いな、翼さん! 日本の歌姫から世界の歌姫にレベルアップじゃん!」

 

「ふふ。流石に世界を回ったことのある立花は知ってたかしら。……以前の私はその話を蹴ってしまった。理由は聞かなくても分かるでしょ?」

 

「あぁー……うん。まぁ、確かに……」

 

 以前の剣呑とした翼を見ていて、実際に剣を向けられて直に大技を仕掛けられたことのある響には、何故翼が世界へ羽撃く話を蹴ったのかは容易に察することが出来た為、何も言わずに曖昧な反応を返すしかなかった。

 

「でも、今なら少しは考えてみても良いかもしれないと思っているわ」

 

「いやいや、考えるって翼さん!? そこは首を縦に振っても良いところじゃん! どうしてだよ!?」

 

「それは私が防人であるからよ」

 

 翼の説得を試みようとした響だったが、その翼の一言が捲し立てるように口を動かしていた響の口を一旦閉ざした。そんな響を見た翼は、話を再開させて自身の心中を語る。

 

「私は歌うことが大好き。私の歌を誰かに聞いてもらうことは楽しい。でも、私はノイズと戦う防人で、常にこの身を剣として鍛え上げてきた。世界にノイズが蔓延(はびこ)り続ける限り、私はノイズを根絶するまで戦い続ける。それが防人としての私の使命だから」

 

「翼さん……」

 

「世界に行けば、きっと私は沢山の人に私の歌を聞いてもらえる。けど、その分だけノイズの被害が広がってしまうかもしれない。だから──」

 

「なら俺が戦う」

 

 翼が言葉を言い切る前に、響は翼の話を遮って自身の想いを語る。その響の言葉を聞き、翼は憂いを帯びた目を見開いて響を見た。その視線の先には、強い意思を瞳に映しながらも笑みを浮かべている響がいた。

 

「立花?」

 

「翼さんが安心して歌を歌えるようにする為に、翼さんの分も俺がノイズと戦います」

 

「けれど、立花! それだとあなたが──」

 

「俺は皆の笑顔の為に戦う! その皆の中には翼さんも当然含まれてるんだ!」

 

「ッ!」

 

 響の身を案じようとする翼に向けて、響は自身の想いをぶつける。そんな響の心からの言葉を聞いて翼の頰が自然と赤く染まり、翼の胸の鼓動がドクンと高鳴った。

 

「俺がいる。俺が翼さんの笑顔と夢を守る。翼さんが両手で抱えてるものを、片手分だけで良いから俺に分けてくれ。そうすれが、空いた片手で夢に向かって手を伸ばせるだろ?」

 

「立花……」

 

「ずっと戦士で居続ける必要はないんだ。スイッチのオンオフ切り替えるみたいにその場その場で変われば良い。それが難しいなら俺が翼さんの拠り所に……鞘になる」

 

「鞘……?」

 

「鞘って、漫画とかアニメとかだと剣と一緒に使ったりして二刀流の代用品みたいに使ったりするのが増えてたりするけど、その本当の役目は剣の刃を保護すること。要するに剣を休める為に鞘はある。翼さんが自分を剣だって言うのなら俺はそんな翼さんの鞘になって、翼さんが防人として休めて歌女として存分に歌を歌えるようにしてあげたい」

 

(未来が俺の帰る場所に……俺が休める場所になってくれたように、俺も翼さんが安心して寄り掛かることが出来るような存在になりたい)

 

 未来が自身にそうしてくれたように、響も尊敬していて大きな恩を感じている翼の為にそんな拠り所のような存在でありたいと思ったが故の言葉だった。

 

「……良いの、かしら?」

 

「良いに決まってる。だって俺は翼さんの後輩である以前に、翼さんの仲間なんだから」

 

「……ありがとう、立花」

 

「……うーん」

 

 お礼を言う翼であったが、一方でお礼を言われた側である響はどうにもしっくり来ない様子で、うーんと唸っていた。

 

「どうかしたの、立花?」

 

「それだ! それだよ、翼さん!」

 

「えっ、何!? どれのこと!?」

 

 訊ねる翼に主語も無く自身の意見を伝える響。響が何のことを示しているのかが今一理解出来ていない翼は、今一度響が何について話しているのかを訊ねた。

 

「いやだから、それだよそれ! その呼び方!」

 

「呼び方?」

 

「そう呼び方! 折角仲間宣言もして付き合いも1ヶ月そこそこあるのに、未だに翼さんは俺のこと名字呼びだろ? 今日一日中一緒に遊び歩いて親睦も深めたんだから、そろそろ名前呼びして欲しいんだ! それに名字呼びだと距離感があるみたいで嫌だし」

 

「名前呼び!? ……えっ、その……逆に良いの?」

 

(何、この、可愛い、生き物……凄く意地悪したい)

 

 名前呼びして欲しいと頼む響に、逆に名前呼びで呼んで良いのかと訊ねる翼。ここ最近で稀に見るようになったしおらしい表情の翼を見て、再び響の中の入れてはいけないスイッチのオンオフが切り替わりそうになり、そしてスイッチはオンになってしまった。

 

「えー翼さんはー俺のこと名前呼びしたくないってことですかー? そうですかーそれは俺も悲しいなー(棒読み)」

 

 白々しさ全開の棒読みの台詞である。しかし、今の翼にはこんな大根役者全開の台詞でも効果はあったようで、響の言葉を聞いた途端に翼は落ち着き無くテンパり始めた。

 

「や、いや、別に、そういう訳じゃないの!? ただその、同年代くらいの男の子の名前を今まで1度も呼んだことが無くて!? だから!?」

 

「……ぷくくくく」

 

「へ……?」

 

「HAHAHAHAHAHAHAHA!!! すみません、翼さん! HAHAHAHAHA!! そこまで動揺するなんて思わなくて! HAHAHA!いやー、やっぱり翼さんって可愛いな 」

 

 翼のこれまでに見たことのないくらいの動揺っぷりを見た響は、ついに笑いを堪え切れなくって吹き出した後に思いっきりアメリカンな笑い声を上げた。そんな響を見て、揶揄われたことに否応無く気付かされた翼は顔を赤くして不貞腐れてしまう。

 

「やっぱり立花は、奏みたいに意地悪だ。ガングニールの装者は皆意地悪だ」

 

「ごめんごめん、翼さん! 何でも言うこと聞くから許してくれって!」

 

 不貞腐れた翼に謝る響。そんな謝る響が口にした“何でも言うことを聞く”という単語に対して翼は確かな反応を示し、逆にそれを言ってしまった響は“しまった”といった感じの表情をしていた。

 

「なら、早速言うことを聞いてもらおうかしら?」

 

「お、おう……」

 

(1度言ったことを今更取り下げるなんて、そんなの筋が通らないし男のすることじゃないよな、うん……!)

 

 言ってしまったことを若干後悔する響であるが、今更言ったことを撤回するなんて筋の通らないことをしたくない響は、男として覚悟を決める。

 

「……よし! さぁ、翼さん! 何でも言ってくれ! 地球割りしてくれとかいう無茶なお願い以外なら何だってしてやる!」

 

 覚悟を決めはしたが、流石に漫画のキャラクターしか出来ないような常人には再現出来ない事象を起こさせるような滅茶苦茶なお願いだけはされないよう譲歩してもらう為に最後に言葉を付け加えた響。

 

 覚悟を決めたのなら、せめて巨人になって光線技で敵怪獣を1発KOするぐらいはしてもらいたいものである。

 

「流石にそんな無茶なお願いはしないわ。……私のお願い事は立花、私があなたのことを名前で呼ぶように、あなたにも私のことを名前で……呼び捨てで呼んでほしい。勿論、敬称や敬語も無しで」

 

「……え?」

 

 少し無茶振りをさせられることを覚悟していた響は、翼の細やかで小さなお願いを聞いて呆然としてしまい、ポカンとしたまま思わず声を漏らしてしまった。

 

「あー、その……理由を聞いても?」

 

「私もさっきの立花と同じよ。私も敬称を付けて呼ばれていると、あなたとの距離感を覚えてしまうから。同じ戦場(いくさば)に立ち、肩を並べて背中を預け合う仲間と距離感があるのは寂しいもの。それに全く出来ていないとはいえ、立花が敬語を使っているのは違和感があるもの」

 

「い、違和感……。そんなに変でしたか……?」

 

「えぇ。立花の敬語の使い方は正直言って、壊滅的だわ。今日なんて全く敬語を使えていなかったわよ」

 

「そ、それはー……面目無いです」

 

「それなら、敬語無しで話し掛けてもらった方が私としては良いの。敬語が下手な立花に敬語を使われていると、余計に距離感があるように錯覚してしまうわ」

 

「本当にすみません。……でも、本当に良いんですか? 本当に敬語無しを許可したら、滅多なことでは俺は敬語を使いませんよ? 本当の本当に良いんですか?」

 

「えぇ。本当の本当に構わないわ」

 

「本当の本当の本当に?」

 

「本当の本当の本当によ」

 

 まるでゲームや漫画のような問答をする響と翼。暫くして、そんな自身達の遣り取りを可笑しく思った響と翼は、お互いの顔を見ながら小さく笑い合った。

 

「……そ、そんじゃまぁ、コンゴトモヨロシク……翼」

 

「どうしてそこで片言なの? 全く、最後の最後に締まらないわね……響」

 

 響が吃ったり、片言で話してしまうのも仕方がないことなのだ。忘れがちかもしれないが、立花響は翼が“ツヴァイウィング”であった頃からの大ファンである。それも“ツヴァイウィング”がツインボーカルユニットのアーティストとしてデビュー仕立てだった頃からの筋金入りの古参ファンである。

 

 そんな響が、今日憧れの翼をちゃんとリードして遊び歩けたこと自体が奇跡なのだ。これも兄貴分の教えと師匠に鍛えられた度胸と肝っ玉があったからである。OTONA様々である。

 

(言われた通り呼び捨てで呼んだけど、何やらかしてんだよ、俺!? 緊張とか不安とかはあったけど、どうにかこうにか今日一日翼さんに楽しんでもらう為に気合いと根性でリードしてたのに、何で最後に吃って片言で話しちまうんだよ!? あぁぁぁぁぁぁぁ……俺って本当にバカ!!)

 

 最後の肝心なところでボロを出してしまい、自己嫌悪と羞恥で内心パニックになっている響。内心パニック状態の響とは逆に、翼の内心はとても落ち着いていた。寧ろ安らいでいると言っても過言ではなかった。

 

 翼の今の心は、喜怒哀楽の“喜”の感情で溢れていた。響に名前で呼んでもらえたことに翼は喜びを感じている。名前で呼び合ったことで、2人の距離がグッと縮まった気がして翼は頰を綻ばせて笑みを浮かべていた。

 

「何だよ何だよ、そんなに笑うこと無えじゃねえかよぉ……。人の失敗見て笑うなんて人が悪いにも程があるぞ、翼ぁ……」

 

「別にそういう意味で笑っていた訳ではないわ。勘違いさせて申し訳ないわね、響」

 

 すっかり落ち込んでいる響だが、その口調には敬語は一切見られず、しっかりと翼のお願い通りの対応をしてくれた響に再び胸の奥から嬉しさが湧き出てくる翼。

 

──兎にも角にも、出来る女の条件は何れだけ良い恋してるかに尽きる訳なのよ! ガールズ達も、何時か何処かで良い恋しなさいね……って、その辺りは野暮だったかしらね。翼ちゃんも──

 

 胸の内が暖かくなっていくと同時に、翼は以前に了子から言われた言葉の内容をふと思い出していた。そして、翼はどうして了子が言葉の最後に自分のことも付け加えていたのかを今ここで漸く理解した。

 

 どうして一々響の一言一行に注視しドギマギしていたのか、どうして響と共にいると安心感を覚えて心が安らいだのか、どうして響が自身以外の別の女性と共にいると不安感を覚えて心が揺らいだのか、その時の胸の内の温もり、その時の胸の内の苦しみ、それら全てに理解が及んだ。

 

 理解してからは早かった。時に暖かく、時に切なく、自分で自分が分からなくなる程の翼自身の意思では全くコントロールすることが出来ない大きな想いの正体を翼は知った。

 

(響……私は、貴方に恋をしています)

 

 少女(風鳴翼)は、少年(立花響)に恋をしていた。




・原作ビッキーと今作ビッキーとの相違点コーナー

(1)響、翼とお出掛けする
──原作では393もいましたが、今作の響は翼さんと2人っきりです。つまり、完璧なデートです。……へぇ、デートかよ。

(2)響、翼とお揃いのものを買う
──翼と同じデザインのマグカップを買う響。デート要素その1。

(3)響、映画を見てマジ泣きする
──今作ビッキーは感受性豊かな子。故にどんなジャンルであれ、王道は大好き。作者も王道は大好き。最近の昼ドラみたいな要素と陰鬱とした描写ばかりのドラマは嫌い。

(4)響、翼とアイスクリームで伝家の宝刀“あ〜ん”をする
──しかも翼が食べた箇所を無意識で自身でも食べる二段構えである。デート要素その2。

(5)響、翼さんをコーディネートする。
──尚、1つコーデェネートする度に予想を上回る翼の魅力によって死にそうになっていた模様。デート要素その3。

(6)響、ゲームが得意である
──今作ビッキーはゲームが大得意である。今作ビッキーの1番得意なゲームは太鼓の○人。理由は、本人曰く“鍛えているから”らしい。

(7)響、翼とプリクラを撮る
──後にこのプリクラは、翼の生徒手帳に挟まれることとなる。デート要素その4。

(8)響、翼と共に“ツヴァイウィング”の曲を熱唱する
──翼とデュエットをする今作ビッキー。“ツヴァイウィング”ガチ勢である今作ビッキーは、翼と奏のどちらのパートでも歌詞を見ずに全曲歌うことが出来る。

(9)響、翼さんにとっての鞘になる
──“響は、私の鞘だったのですね”的な? この辺の台詞の言い回しなんかハッキリ言って殆どが告白紛いの殺し文句である。

(10)響、翼と名前で呼び合うようになる
──敬称と敬語が消えてどんどん距離が縮まる今作ビッキーと翼さん。これには393もウカウカしていられない。

 今回で僕が挙げるのは以上です。他に気になる点がありましたら感想に書いて下さい。今後の展開に差し支えない範囲でお答えしていきます。

・ルート選択

  SAKIMORIルート

 →UTAMEルート ピッ!

 ▼防人ルートではなく、歌女ルートが選択されました。▼

 説明しよう! 歌女ルートとは、翼さんの口調がシンフォギアG以降になっても女性らしい言葉遣いのままのルートのことである! 更にUTAMEルートには隠しコマンドがあり、翼の設定を“モードFATE”にすることが可能である!

 更に説明すると、“モードFATE”とは奏がご存命だった頃のまだ引っ込み思案で、それこそ“魔法少女リリカルなのは”に出てくる“フェイト・テスタロッサ(又はフェイト・T・ハラオウン)”のような翼のことである。発動条件は定かではないが、もっと親密度を上げて2人っきりで行動をすることが鍵だ!

 何故そのキャラを例に挙げたかって? 中の人ネタに決まってるだるぉ!?

 兎に角、この先の今作では女の子らしい成長を遂げた翼さんの活躍を思う存分に見られるようにしていく方針です。皆さん、女の子らしい成長を遂げた翼さんを見たくはありませんか? ……僕は見たいです(切実)

 公式が翼さんをどんどんSAKIMORIにしていくのは勝手だ。けどそうなった場合、誰が代わりに翼さんを女の子らしいUTAMEにしていくと思う?

 ……僕だ。

 茶番もここまでにして、今話はこれで閉めたいと思います。また間隔が空いてしまうかもしれませんが、失踪はしないので長いお付き合いを宜しくお願いします。

 次回は、予定ではライブ回です! 頑張るぞー!!

 それでは、次回もお楽しみに!

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