戦士絶唱シンフォギアIF   作:凹凸コアラ

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 皆さん、どうもシンシンシンフォギアー!!(挨拶)

 畜生ッ! “Change †he Future”も“風月ノ疾双”も当たらなかったっ! 最近☆5が全く出ない! ☆5は出るけど、全部メモリアなんだよ!? 何が「これは!? やったじゃないですか! 当たりですよ!」だ!? 巫山戯るのも大概にしろよ、緒川ァ!!

 それはそうと、最近“魔法少女リリカルなのは”の映画を見に行ってきました。今週でもう3週しましたよ。

 主題歌や挿入歌を我らが防人こと翼さんの声優をしている水樹奈々様が歌っておられるので、Fullで聞いたことが無い人やCDを買ってない人は、今直ぐ財布を片手にCDショップに行きましょう。

 まぁ、近況報告もここまでにしてそろそろ本編に入っていきましょうか。皆さんの首の長さが、エラスモサウルスくらいの長さになる前にね。

 それでは、どうぞ!


EPISODE 22 繋いだ手だけが紡ぐもの

 時間は経ち、既に学生達が下校し始める放課後の時間帯となっていた。

 

 1人で考える時間が欲しいとクリスに言われた響は、未来に連絡を入れてから未来を迎えにリディアンの校門前までやって来ていた。

 

「♪〜♪♪♪〜♪」

 

 響は校門前からでも聞こえてくるリディアンの合唱部によるリディアンの校歌斉唱を聞きながら、自身も釣られるように鼻歌でリディアンの校歌を歌っている。

 

「♪〜♪……ん?」

 

 響が背後から近寄ってくる何者かの気配を感じて背後を振り返ろうとした直後、突然響の視界が真っ暗な闇に閉ざされた。

 

(柔らかいな……これって手か?)

 

 瞼を覆い隠す何かの感触を肌で感じ取り、その感触から目を覆い隠す何かの正体が誰かの手であると響は推理する。響が推理の為に少し動かないでいると、響の目を覆い隠した人物から声が掛けられる。

 

「ふふっ、だーれだ?」

 

「ん〜……誰だろうなぁ〜? 正直これっぽっちも全然ピンと来ないなぁ〜?」

 

 聞こえてきた声の主に心当たりのありまくる響であったが、ここは敢えて戯けることにして相手の反応を伺った。すると、仕掛け人たる声の主は軽く笑ってから響の目を覆い隠していた手を離し、回り込むように響の前に躍り出た。

 

「正解は私でした! お待たせ、響!」

 

「まぁ、誰かなんて知ってたけどな。そんなに待ってないぞ、未来」

 

 響はそう言って軽く笑い、未来も響の笑顔に釣られて優しく微笑んだ。

 

 合流した響と未来は、一緒に肩を並べながら歩き始める。特に何処かに行くという目的は無いが、それはそれで偶には悪くないだろうということで2人は適当に其処ら中をぶらつくことにしたのだ。

 

「そう言えば、さっきリディアンの校歌を鼻歌で歌ってたよね?」

 

「あぁ。それがどうかしたか?」

 

「ううん。ただ気になって。リディアンの校歌のこと好きなのかなーって。それとも合唱部に釣られちゃった?」

 

「そうだな。見事に釣られちゃったな」

 

 含羞(はにか)んで笑う響に未来は優しげな眼差しを向ける。

 

「けど、それだけじゃないんだ。リディアンの校歌はさ、聞いている内に心が和むというかまったりするというか、兎に角何だか落ち着いた気持ちになるんだよ。それに未来がいる場所だからだな。ここも俺が守ってる日常なんだなって。戦い始めてから2ヶ月ちょっとなんだけどな」

 

 含羞(はにか)む響は、次いで恥ずかし気に後頭部を掻き始める。そんな恥ずかし気に笑う響に、未来は首を少し横に振りながら応える。

 

「でも、私も響も色々あった2ヶ月だよ」

 

「……あぁ。そうだな」

 

 感慨深そうに言葉を述べた未来に、響は軽く笑いながら簡潔に言葉を返した。そんな2人の頬を撫でるように通常よりもほんの少しだけ強めの風が吹き抜けた。

 

 すると、響の懐に入っていた二課との通信用端末が音を鳴らし始める。響は手早く通信機を取り出して通信に出て、未来は響の隣で静かに通信機から話される内容にそっと耳を傾ける。

 

「響です」

 

『はい、翼です』

 

 響が通信に出て直ぐに翼の声が聞こえてきた。どうやら、ほぼ同時に二課からの通信に出たようであった。それと響だけでなく、翼にも通信が行くということは、かなり大事な案件であろうことが予想された。

 

『収穫があった。了子君は?』

 

『まだ出勤していません。朝から連絡不通でして』

 

『そうか……』

 

 今日未だ顔を出していない了子のことを心配している故に弦十郎の声が何時もより若干低くなっているのだろうと思った響は、周りを安心させるよう励ましの言葉を掛ける。

 

「了子さんなら大丈夫だって! 何かあっても俺を守ってくれた時みたいに何とかしてくれるさ!」

 

『それは少し難しいと思うわ、響。戦闘訓練も(ろく)に受講していない櫻井女史にそのようなことは……』

 

「えっ? おやっさんとか了子さんって、最早人間業とは思えない特技とか持ってるんじゃねえのか?」

 

 そう言って響が思い出すのは、正面から天ノ逆鱗を拳1つ且つ無傷で相殺する弦十郎と、デュランダル護送の際に自身をノイズから守ってくれた了子の不思議パワーによるバリアだった。

 

 当時は了子から口止めされた響であったがこの機会にそのことを言うかどうか考えている中、通信機越しで新たな通信コールの音が鳴り始めた。

 

『やーっと繋がった! ごめんね! 寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良くなくって』

 

 新たに聞こえてきたのは、今まさに話題となっている張本人たる櫻井了子であった。その当の本人は、何時もと変わらぬテンション高めの声で簡潔に寝坊した訳を話していた。

 

『無事か? 了子君、そっちに何も問題は?』

 

(……あれ? おやっさん、何か何時もと少し違う?)

 

 響は弦十郎の了子への対応の仕方に若干の違和感を覚えた。何時もとは少し違う低めの声での心配や、心配した際に何かを言う前に何時も吐く小さな溜め息などが無いほんの些細な違いであったが、確かに響は何時もとの違いを感じていた。

 

『寝坊してゴミを出せなかったけど、何かあったの?』

 

『ならば良い。それより聞きたいことがある』

 

『せっかちね。何かしら?』

 

『……“カ・ディンギル”。この言葉が意味するものは?』

 

(“カ・ディンギル”……。あの時、クリスが言ってた謎ワードのことか……)

 

 あれ以降も響は、クリスから“カディンギル”に繋がる情報を少しでも整理しようと街に戻るまでの間クリスと話し続けたが、結局クリスの記憶には“カディンギル”に繋がりそうな情報も語句も一切無いことしか分からなかった。

 

 徹底した情報の閉鎖に響は辛酸を舐めさせられ、クリスは改めてフィーネが最初から自分を信じず計画から切り離すつもりであったことを思い知らされたのだ。

 

 一旦視線を通信機から逸らした響は隣にいる未来を見遣った。響のその行動から全てを察し、未来は1度頷いて手元のスマホを操作し始めた。未来は未来でネットから情報を収集してくれているのだ。

 

『カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で高みの存在。転じて、天を仰ぐ程の塔を意味しているわね』

 

『何者かがそんな塔を建造していたとして、何故俺達は見過ごしてきたのだ?』

 

「確かにそう言われてみると……」

 

 弦十郎の言うことは最もであった。そんな天を仰ぎ見る程にバカデカい塔ならば、自然と誰の目もそちらに向いて混乱が広がっていただろう。しかし、現状はそんな塔の存在は確認出来ず、人々は至って普段通りの生活を送っていた。

 

 響が眉間に(しわ)を作って物思いに耽る中、弦十郎は口を開いて新たに言葉を紡ぐ。

 

『だが、漸く掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば、勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな!』

 

「『了解!』」

 

 響は返事を返してから本部との通信を打ち切り、端末を懐に仕舞ってから未来に向き直った。

 

「未来、どうだった?」

 

「ごめん、響。ダメみたい。ネットで検索しても、出てくるのはゲームの攻略サイトばかりで……」

 

「いや、未来が謝ることじゃないさ。気にすんな」

 

 響は、眉を若干八の字にして意気消沈する未来を慰めるよう未来の頭に手を置いて何時もと同じように撫でた。そのお陰か、未来の気分も持ち直していつも通りの表情に戻った。

 

「“カ・ディンギル”……誰も知らない秘密の塔、か……」

 

 響は見えもしない正体不明の塔を探すように視線を上に向け、独り青空を仰ぎ見ていた。

 

 一方、響と翼との通信を終えた二課は、弦十郎の指示の下“カ・ディンギル”についての情報をオペレーター総出で掻き集めていた。

 

「瑣末なことでも構わん。“カ・ディンギル”についての情報を掻き集めろ!」

 

 だが、その二課の行動を妨害するように非常事態のアラートが二課の本部内に響き渡った。これが意味するのは、即ち街内にノイズが出現したということであった。

 

「どうした!?」

 

「飛行タイプの超大型ノイズが1度に3体! いえ、もう1体出現!」

 

 モニターに表示された反応からノイズの種類と数を藤尭がデータを修正しながら弦十郎に報告する。

 

 藤尭が報告した通り、街内には今までに見たことも無いような大きさをした巨大なノイズ、空中要塞型とでも言うべき巨大ノイズが4体も上空に跋扈していた。

 

「合計4体。直ぐに追い掛けます!」

 

 仕事の都合で本部から離れていた翼は直ぐに支度を整え、緒川から自身のバイク用のヘルメットを受け取って建物から飛び出した。

 

「今は人を襲ってなくて、ただ移動しているだけ。あぁ、分かった。俺も直ぐにノイズの進行方向に向かう!」

 

 響は、必要な情報だけを二課から聞いてから再び掛かってきた二課との通信を切って今一度端末を懐に仕舞った。

 

「響……」

 

「平気だって。俺と翼で何とかしてやるさ。それにいざとなったら、きっと……」

 

 響は信じている。自分が、自分達がもしピンチなら、あの素直じゃない優しい少女がきっと力を貸しに来てくれることを。

 

 だが、事情を知らない未来からすれば、何故響がこの状況でそれだけ自信たっぷりの表情といつも通りの落ち着きを見せていられるのかが分からなかった。

 

「響?」

 

「いや、何でもない。……未来は学校に戻れ」

 

「リディアンに?」

 

「あぁ。いざとなったら、地下のシェルターを開放してこの辺の人達を避難させなくちゃいけない。未来にはそれを手伝って欲しいんだ」

 

「う、うん。分かった……」

 

「ごめん、未来を巻き込んじまって。こんなつもりじゃなかったんだけどな……」

 

 自分が不甲斐無いばかりに未来を巻き込んでしまったことに罪悪感を感じている響は、危険な役目を頼んでしまうことを含めて未来に謝罪するが、未来は小さく首を横に振った。

 

「うぅん、巻き込まれたなんて思ってないよ。私の役目は、響が何れだけ遠くに行っても前だけ走り続けることが出来るよう響が帰ってくる場所を守ることでもあるんだから」

 

「俺の帰る場所……」

 

「そう! だから行って。私も響みたいに大切なものを守れるくらいに強くなるから」

 

 未来の言葉を聞いた響は、何も言わずに未来の眼前まで歩み寄って自身よりもしなやかで華奢な体躯の未来の体を優しく抱き締めた。

 

「ひ、響……!?」

 

「……小日向未来は、俺にとっての平和な日常そのものだ。お前のいる場所は俺にとって安らぎの場所、俺が帰りたいと思える場所なんだ。これから先もきっとそれは変わらない。だから、俺は絶対に帰ってくる」

 

「響……」

 

 穏和な口調で紡がれた響の言葉は、未来の胸の奥底までスッと浸透していき、未来は微笑を浮かべながら自身よりも大きくて頑丈な体躯の響の体をしっかりと抱き締めた。

 

「……じゃあ、行ってくる」

 

「……うん」

 

 互いに互いの体を離し合い、響は踵を返してその場から全速力で駆け出した。未来は暫くその場から動かず、離れていく響の大きな背中を自分の視界から見えなくなるまで見送り続けていた。

 

 車道の速度制限以上の速さで走って次々と前の車を追い抜きながらバイクを走らせる翼と常人以上の身体能力を活かして全速力で街内を駆け抜ける響の下に二課から弦十郎の通信が届く。

 

「翼です!」

 

『ノイズ進行経路に関する最新情報だ』

 

「おう!」

 

『第41区域に発生したノイズは、第33区域を経由しつつ、第28区域方面へ進行中。同様に、第18区域と第17区域のノイズも第24区域方面へと移動中』

 

 弦十郎は司令室のモニターを随時確認しながら、4つある大型のノイズ反応が移動している方角を通信機越しで2人に伝える。

 

『そして……』

 

『司令、これは……』

 

『それぞれのノイズの進行経路の先に東京スカイタワーがあります!』

 

 響は通信越しで聞こえてきた藤尭の声に思わず急ブレーキを掛けて足を止める。

 

「東京スカイタワー?」

 

『“カ・ディンギル”が塔を意味するのであれば、スカイタワーは正にそのものじゃないでしょうか!?』

 

『スカイタワーには、俺達二課が活動時に使用している映像や交信といった電波情報を統括制御するという役割も備わっている。2人共東京スカイタワーに急行だ!』

 

(罠だとしても……)

 

 弦十郎の指示を聞き、翼は更にバイクのスピードを上げて東京スカイタワーに集おうとしている空中要塞型ノイズの1体を追うように走る。

 

「スカイタワー……けど、ここからだと距離が……」

 

 翼のように遠距離を移動する手段を持っていない響は、位置の離れたスカイタワーまで直ぐに辿り着ける方法を考えようとする。だが、響がそれを考える前に突然の強風が吹き抜けた。

 

 吹き抜ける強風と同じタイミングで聞こえてきた音が聞こえて来る方向へ響が目を向けると、その方向には今正に響の目の前に着陸しようとしているヘリコプターの存在があった。

 

『何ともならないことを何とかするのが俺達の仕事だ!』

 

「準備が良いな、おやっさん!」

 

 響や翼が動いているように、翼を見送った緒川自身も次の行動を起こす。本部からの直接的な支持を受け、通信機を仕舞った緒川は掛けていた眼鏡を外して車に乗り込み、自身の目的地の場所に向かって車を走らせた。

 

 二課の各々が自分に出来ることを成す為に動き出していく中、4体の空中要塞型ノイズが遂に東京スカイタワー周辺の上空に集結したのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 集結した空中要塞型ノイズは、自身の体を開いてそこから次々と無数且つ多種類のノイズを地上に向かって落としていく。落とされたノイズは地上に着地し、人間の姿を探して地上を徘徊し始める。

 

 更に空中要塞型ノイズは体の上部からもフライトノイズを出し、空中要塞型ノイズの周りには既に多くのフライトノイズが空中要塞型ノイズを護衛するかのように飛び回っていた。

 

 一方で響を乗せた二課のヘリは、ノイズに悟られないよう上昇してノイズの上を取った。位置がズレないようギリギリまで空中要塞型ノイズに近付き、ドアを開け放っていた響はタイミングを見計らってヘリから跳び降りる。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 響は聖詠を歌い、空中でシンフォギアを身に纏った。次いで響は、ギアのエネルギーを腰部バーニアに集中させて推進力の勢いを上昇させ、その凄まじい勢いのスピードに乗ったまま空中要塞型ノイズに突っ込んで行き、握り締めた拳を打ち込む。

 

「我流・翔空降破ッ!!」

 

【我流・翔空降破】

 

 響の我流・翔空降破が空中要塞型ノイズの無防備な背中に叩き込まれ、空中要塞型ノイズは背中の表面から大きく抉られていき最終的にその大きな胴体に大穴を開けられて爆発四散した。

 

 響が空中要塞型ノイズを1体倒した直後、バイクで現場に向かっていた翼が丁度現場に到着する。

 

 翼は華麗な動きでバイクから跳び上がりながらシンフォギアを身に纏い、開幕からアームドギアを大剣状に変化させて空中の空中要塞型ノイズ目掛けて大剣を振り上げる。

 

「ハァ!!」

 

【蒼ノ一閃】

 

 大剣から放たれた蒼ノ一閃は、宙を飛び交うフライトノイズを殲滅しながらそのまま上空へと昇って行くが、空中要塞型ノイズに届く前に力が霧散して消滅してしまった。

 

「くっ!」

 

 着地した翼は上空にいる空中要塞型ノイズを鋭い目付きで睨み付け、上空で空中要塞型を1体倒した響がバーニアで落下の勢いを殺しながら落ちてきて翼の丁度隣に着地する。

 

「相手に頭上を取られることがこんなにも立ち回り難いなんて!」

 

「だったら、もう1度ヘリで空に上がれば──」

 

 響が言葉を言い切る前に空で変化が起こる。何と空中で待機していた二課のヘリが、同じく空中を飛び上がっていたフライトノイズによって襲撃されて爆散した。

 

「よくも!」

 

「やってくれやがったな、炭素野郎共ォ!!」

 

 犠牲となったヘリとそのパイロットを見て、翼と響の心の奥から怒りの感情が湧き上がる。フライトノイズは、次の標的に響と翼を選び2人目掛けて降下していく。

 

 響と翼は飛来してきたフライトノイズの攻撃を跳んで躱し、次いでやって来る別のフライトノイズを拳と剣を振るって防ぐ。

 

 2人は連携しながら地上と空中の近場のノイズを殲滅していくが、空中要塞型ノイズが減った分のノイズに割り増しでどんどんノイズを生み出していくせいでほぼ焼け石に水の状態となっていた。

 

「くそっ! 倒しても倒してもキリが無え!あの空飛ぶ親玉を何とか出来れば……けど、一体どうすりゃ……!?」

 

「臆してはダメよ、響。防人が後ずさると、それだけ戦線が後退して私達の背中にある大切なものが危険に晒されるわ!」

 

 響はこの悪循環をどうにかしようと策を考えるが何も案は浮かばず、翼は焦る響を落ち着かせる為に努めて冷静に呼び掛けて響を鼓舞する。

 

 しかし、メインが近距離戦闘及び近距離から中距離である響と翼には、敵の要であり空中を陣取っている空中要塞型ノイズを攻撃する術が無い。無限に湧き続ける敵を前にして、このまま防戦一方では消耗していくばかりである。

 

 そんな2人のことなど露知らず、尚も空中を飛び交うフライトノイズは響達目掛けて飛来していく。

 

 2人が構えを取り飛来するフライトノイズに備えようとした刹那、飛来する無数のフライトノイズの数を上回る無数の銃弾の弾幕が張られ、フライトノイズ達は成す術無く煤となって消え失せた。

 

「これはっ!?」

 

「来てくれたか!」

 

 突然起こった出来事に翼は驚き、これを為した人物に心当たりのある響は弾幕が飛んで来た方角へと体ごと振り返った。響が振り返った先には、2丁4門のガトリングガンを両手で構えているクリスが立っていた。

 

「勘違いするなよ! こいつがピーチクパーチク喧しいからここに出張ってきた訳じゃない! あたしはあたし個人の約束を果たしに来ただけだ! 決してお前ら二課の助っ人になった訳じゃねえ!」

 

『確かに彼女は我々()()の助っ人ではない。彼女は()()()()の助っ人だ。だが、響君と共に戦うということは、即ち俺達の助っ人でもあると受け取れる訳だがな』

 

「うっ……!?」

 

 二課の通信機片手にここに来た訳を説明するクリスであったが、弦十郎なりの受け取り方の解釈の説明を聞いて言葉を詰まらせてしまっていた。

 

「響、個人の? ……どういうこと?」

 

「要するに仲間ってことだよ、翼」

 

 響個人という言葉が引っ掛かって隣にいる響に翼は説明を求めるが、響は口角を吊り上げて笑いながら翼の肩に手を置いて超簡潔に説明した。若干要約し過ぎたせいで翼は混乱するばかりである。

 

 それも仕方のないことだろう。何故なら、翼からすればクリスはつい最近まで相容れること無く争い合ってきた敵である。なのに、その翼の仲間である響はクリスのことを仲間と言い張り、クリスの方は響だけには若干軟化した態度を取っているのだから。

 

『響君の言う通りだ、翼。第2号聖遺物、イチイバルのシンフォギアを纏う戦士、雪音クリスだ!』

 

「クリスゥ! 俺は信じてたぜ! お前は絶対に来てくれるって!お前は絶対に筋を通す女だってことぉ!!」

 

「引っ付くな、この筋肉バカ! お前ただでさゴツいのに、抱き締められたら無駄に暑苦し過ぎんだよ!!」

 

 弦十郎の説明に次いで、響がクリスとの開いていた距離を一気に埋めて抱き着きながら笑う。抱き締められたクリスは、手に持っていた通信機を放り投げて抱き締める響を離そうと抵抗するが何処か満更でも無さそうだった。

 

「……事情は後で聞くわ。兎に角今は連携してノイズを」

 

 少し不機嫌そうに顔を顰めた翼は2人に歩み寄り、自身の気になることを後回しにして今やるべきことを提案する。しかし、クリスは翼の意見に難色を示す。

 

「知るかよ! てめえは後ろにでもすっこんでな! 行くぞ、筋肉バカ!」

 

 翼の意見を無視して翼に後ろで引っ込んでるよう命令すると、クリスは響を伴って目の前にいるノイズを殲滅せんと動き出そうとする。だが、この横暴なクリスの態度に翼もまた難色を示す。

 

「待ちなさい! 響を連れて行く必要は無い筈よ。それにあなたは碌に響と連携をしたことが無い。あなたは私と響のサポートに回るべきよ」

 

「てめえの物差しで計ってんじゃねえ! 此方人等(こちとら)、てめえがいねえ時にかなり良い感じの連携決めてんだ! てめえは邪魔なんだよ! 邪魔者は邪魔者らしく、隅っこの方でノイズのお零れでも斬ってろ!」

 

「何ですって!!」

 

 戦闘中だというのに険悪な雰囲気を醸し出し始める翼とクリス。2人共響とは違い、つい先日まで戦っていた相手の言うことを聞ける程にバカではないのである。

 

 そんな2人の間に響は割って入り、どうにかこの場を治めようと試みる。

 

「何で売り言葉に買い言葉!? こんな時まで喧嘩すんなよ! 俺達が争い合う理由なんて無いだろ!? ほらぁ! 言ってる間に次が来たぁ!?」

 

 響が言うように翼とクリスが言い争っている間に敵は既に欠けていた戦力を補充し終え、既に次なる攻撃に移ろうと行動を開始しようとしていた。

 

「ちっ! もう良い! なら、こっちは勝手にやらせてもらう! 邪魔だけはすんなよ!」

 

「あっ、ちょ、おい!? クリス!」

 

「……」

 

 戦況を見たクリスは、これ以上は不毛と判断して翼との話し合いを早々に切り上げ、自身の邪魔はしないよう一言告げてから響達から離れて行った。去っていくクリスを響は呼び止めようとしたが時既に遅く、翼はそんなクリスの背中を険しい表情で見ていた。

 

 クリスは単独行動を開始し、アームドギアを2丁のボーガンに変化させてエネルギー状の矢を複数一気に撃ち放つ。矢は的確に空中のフライトノイズを射貫き、フライトノイズは空中で爆発四散する。

 

「ヒューッ! さっすがクリスだな!」

 

「空中のノイズはあの子に任せて、私達は地上のノイズを」

 

「あぁ!」

 

 翼の言葉と響の了承の返事を皮切りにして2人は再びノイズ殲滅に動き出す。

 

 宙を舞う空中要塞型ノイズが産み落としていく複数のノイズを地上を駆け抜ける翼が擦れ違い際に斬り裂き、響は跳躍してからの飛び蹴りでヒューマノイドノイズに奇襲を仕掛けて続け様に他のノイズを拳で粉砕し、空を飛ぶフライトノイズをクリスが両手に持つ2丁4門のガトリングガンのアームドギアで撃ち抜く。

 

 ある程度の数のノイズを斬った翼は、1度ノイズとの距離を取る為に近くにあるビルの上に向かって跳躍して後退する。しかし、翼が後退した先には、丁度同じタイミングで後退してきたクリスがいて、2人は背中から衝突し合ってしまった。

 

「何しやがる!? 引っ込んでな!」

 

「あなたこそいい加減にして。1人で戦っているつもり!?」

 

「あたしは何時だって1人だ! 此方人等(こちとら)二課の奴らと馴れ合ったつもりなんてこれっぽっちも無えよ!」

 

 再び翼とクリスの意見がぶつかり合い、翼の言葉を邪険に跳ね除けるクリスに思わず翼も歯噛みして鋭い目付きでクリスを睨み付ける。

 

 積極的にお互いの距離を自分から詰めようとしていた響と違って、2人は戦場でしか顔を合わせておらず、その時も翼とクリスは基本的に敵対関係にあった。故にいきなり肩を並べて共に戦うというのは、やはり無理があることなのだろう。

 

「確かにあのバカの言う通り、あたし達が争い合う理由なんて無いのかもな。だからって、争わない理由もあるものかよ! 此間(こないだ)までやり合ってたんだぞ! そんなに簡単に人と人が──」

 

 言葉を捲し立てるクリスが言い切る前に、握られていたクリスの拳を何時の間にか2人の間に割って入るように立っていた響が優しくそっと握った。

 

「出来るさ。人は、誰とだって仲良くなれて、ダチになることが出来る。それに今思えば、俺達3人共最初は仲悪かっただろ?」

 

 そう躊躇い無く言い退けた響は、続けて空いている右手で得物を持っていない翼の左手をクリス同様に優しくそっと握った。そんな状況に2人も言い争いを止め、思わず呆然としてしまう。

 

 響の言う通り、ここにいる3人も最初はとてもギスギスした関係をしていた。だが、今は響を中心に手を取り合うことが出来るようになった。

 

 これは響だけに出来ることではなく、誰もがやることの出来る当たり前のことなのだ。

 

「俺は、どうして奏さんみたいにアームドギアをこの手で掴むことが出来ないのかずっと考えてた。2年前のあの時の奏さんみたいに、この手で槍を掴むことが出来れば、漸く半人前を卒業してもっと多くの人の命と笑顔を守ることが出来るのにってな」

 

 それは響が誰にも言ったことがない響が胸の内でずっと抱えていた悩みであった。尊敬する奏に近付くことは、響がずっと願って止まないことだからだ。

 

 しかし、今自身の胸の内を語っている響は、そんな悩みを話しているにも関わらず晴れ晴れとした表情をしていた。

 

「でも、答えは得た。俺は、俺の手に奏さんのみたいな立派なアームドギアが無くても構わない。空っぽで何も持ってないこの手だからこそ、俺は今こうして2人の手を握ることが出来るんだからな。こうして手を握れば、きっと誰だって仲良くなれるさ」

 

「響……」

 

 微笑を浮かべている響の言葉を聞き、翼は薄く微笑を浮かべて右手に持っていた刀状のアームドギアを地面に突き刺し、何も無くなった空っぽの右手をクリスに向かって差し出した。

 

「ぁ……」

 

 そんな翼の様子を見て、クリスの顔が薄らと赤み掛かり、外方を向いたクリスの視線の先にあるクリスの左手がピクリピクリと細かく動いている。

 

 翼な何も言わずにクリスを見詰め、手を差し出しながらクリスから手が差し伸べられるのをずっと待ち続けている。クリスが響の顔を見遣ると、響は何も言わずクリスに向かって笑顔を浮かべた。

 

 差し出された翼の手を見詰めながら、クリスは自身の左手を重ねるよう翼の右手の掌に向けてゆっくりと手を伸ばす。クリスの手が後少し翼の手に触れる距離まで近付いたところで、翼は自分からクリスの手を掴んだ。

 

 そんな突然な翼の行動に驚き、クリスは翼の手を振り払って自身の左手を引っ込めてしまう。

 

「ッ!? このバカに当てられたのか!?」

 

「そうだと思うわ。そして、あなたもきっと」

 

「……冗談だろ」

 

「ハハッ!」

 

 翼同様に響に影響を受けたことを素直に認めたくないのか、クリスは顔を赤くしながら外方を向いていしまう。クリスの様子は何処か満更でもなさそうであり、そんなクリスを見て響は軽く笑った。

 

 すると、和気藹々な3人に大きな影が覆い被さった。3人が視線を上に向けると、その先には太陽を遮るようにして飛ぶ1体の空中要塞型ノイズがいた。

 

 忘れ勝ちであるが、今は戦闘中である。

 

「親玉をやらないとキリが無いわ」

 

「だったらあたしに考えがある。あたしでなきゃ出来ないことだ」

 

 自信満々の様子で策を提案するクリス。そんな自身の満ち溢れている強気な語調に、自然と響と翼の視線もクリスに集まる。

 

「イチイバルの特性は、長射程広域攻撃。派手にぶっ放してやる!」

 

「絶唱ってのは無しだぞ?」

 

「バカ! 分かってるよ。あたしの命は安物じゃねえ!」

 

 今一度自身が纏うシンフォギアの特性を説明するクリスに、響は一応の忠告として釘を刺すが、クリスは響の考えを否定した。

 

「なら、どうやって?」

 

「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込み、一気に解き放ってやる」

 

 手段と方法を問う翼に、クリスはこれから実行しようとしている自身が思い付いた案を詳しく説明した。要するに、ゲームで言うところの大規模なチャージ攻撃をするという話である。

 

「けど、チャージ中は丸裸も同然よ。これだけの数を相手にする状況では危険過ぎる」

 

 しかし、それには翼の言う通りリスクが伴う。エネルギーを臨界まで溜め込むということは、相当な時間と集中力を要する。その間は動くことも出来ず、周りへの注意力も散漫する。その状態で攻撃を受ければ一溜まりも無いだろう。

 

「確かに翼の言う通りだ。だが、それは俺達がクリスを守れば良いだけの話だ」

 

 翼が弱点と危険を指摘し、響は危険な立場に置かれるだろうクリスを守るだけのことだと言って退けた。

 

 そう、1人なら難しいことも仲間がいればきっと乗り越えることが出来る。そしてここには、クリスと共に肩を並べる仲間達がいる。

 

 そんな堂々とした響の言葉にクリスはハッとした顔で驚いて目を見開き、響と翼は軽く笑みを浮かべてから近寄ってくるノイズに向かって攻撃を始める。

 

(頼まれてもいないことを……。私も引き下がれないじゃねぇか!)

 

 クリスは心中でそう呟くと、その場から動かずに歌を歌うことに集中して自身のギアの出力をどんどん高めていく。

 

(皆が繋ぎ繋がる手を持ってる! 俺の戦いは、誰かと手を繋ぐことだ!)

 

「オルァ!!」

 

【我流・撃槍衝打】

 

 響は様々な体術の組み合わせの動きでノイズを粉砕し、一方向から集団でやって来るノイズの先頭に向かって我流・撃槍衝打を打ち込み、技の余波による衝撃波で後ろの敵も纏めて木っ端微塵にする。

 

(砕いて壊すも、束ねて繋ぐも力……ふふっ、響らしいアームドギアね!)

 

「ハァ!」

 

【蒼ノ一閃】

 

 翼はノイズをカウンターの要領で斬り捨て、クリスの下へ向かおうとするフライトノイズの集団を蒼ノ一閃にて殲滅し、大剣と化したアームドギアをそのまま振り切って背後にいたクロールノイズも序でに斬り裂く。

 

 寄ってくるノイズを体術と剣術、加えて我流・撃龍槍や逆羅刹などの技を織り交ぜて殲滅することで十分な時間を稼ぎ、ついにクリスのチャージが完了する。

 

「「任せた!」」

 

 響と翼の声を聞き、クリスのシンフォギアの腰部アーマーが展開すると同時に変形していく。クリスの両手には何時もの2丁4門のガトリングガン、腰周りには何時もと少し形状の違う小型ミサイルとその射出器、そして肩より上の位置の背部には左右2基ずつ合計4基の大型ミサイルとその射出器が形成された。

 

【MEGA DETH QUARTET】

 

 ギアそのものを地面に固定する形で射撃体勢を取り、フルバーストとでも呼ぶべきクリスのMEGA(メガ) DETH(デス) QUARTET(カルテット)が撃ち放たれる。

 

 まず最初に、背部にある4基の大型ミサイルが空中にいる空中要塞型ノイズ3体に向かって飛んでいく。次に腰部ミサイル射出器から三角柱型のポッドが複数発射され、最後にガトリングガンによる弾幕を空域全体にばら撒く。

 

 発射された三角柱型のポッドは、敵攻撃圏内に到達すると同時に内蔵された無数の小型ミサイルがフライトノイズ目掛けて乱射していく。

 

 近場にいたフライトノイズはガトリングガンの弾幕で撃ち抜かれ、次に距離の離れた位置にいたフライトノイズも小型ミサイルによって殲滅され、最後に上空にいた空中要塞型ノイズも大型ミサイルが着弾したことで爆散した。

 

「やったのね」

 

「当たり前だ!」

 

 地上空中を含めた全てのノイズを殲滅し、街中にノイズの残骸である煤や炭素の塊が降り注ぐ中で戦闘は終わりを告げた。

 

「ハハッ! やっぱお前は凄えぜ、クリス! 最高だ! 天才だ!」

 

「うわっ!? 止めろ、バカ! いきなり何しやがるんだ!?」

 

 戦闘が終わるや否や響はギアも解除せずそのままクリスまで駆け寄り、力一杯クリスの体を抱き締めた。突然抱き締められ驚いたクリスは、響の抱擁を無理矢理振り解こうとするが、身体能力や体格差にも大きな隔たりがあるせいで響のホールドから抜け出せないでいた。

 

 それはギアが解除されてからも変わらず、クリスは響にされるがままの縫い包みに近い状況であった。

 

「勝てたのはクリスのお陰だ!」

 

「だから止めろって! いい加減離せ、この筋肉バカ! 少し痛えんだよ! せめてもう少し加減しろ!」

 

「……」

 

 口ではキツいことを言いつつも何処か満更でも無さそうな様子のクリス。そんな2人を見ている翼は、当初は無言だったが次第に目に見えるくらいに不機嫌さを表情に浮かべていき、無理矢理響とクリスの間に割って入った。

 

「どうしたんだ、翼?」

 

「……別に何でも無いわ。……こんな簡単に分かることを訊ねるなんて、やっぱり響は意地悪だ

 

「えぇー……」

 

 翼の突然の行動に響は驚きつつもその訳を訊ねたが、翼は何故か不貞腐れていて響に訳を話すことは無く、響にしか聞こえないくらいの声量で呟かれた翼の言葉を聞いて響は困惑するばかりだった。

 

 それと翼が響とクリスの間に割って入った際に、翼は地味に少し力を入れてクリスを響から遠ざけるよう手を動かし、自分は若干響に凭れ掛かるような足運びをしていたりした。

 

「……私からも礼を言うわ。今回は助けられたわね」

 

「嫌なら別に礼なんて言わなくても構わねえんだぜ? ……それと、さっきのはどういうつもりだ? 小一時間くらい話し合おうじゃねえか」

 

「望むところよ」

 

 しかし、どうやらクリスは然りげ無い翼の行動に気付いていたようであり、響と無理矢理離されて本人も気付かぬ内に苛立っているクリスは怒り心頭の攻撃的な笑みを浮かべ、翼は笑っているようで全く笑っていない底冷えするような冷たさを秘めた微笑を浮かべていた。

 

 一方が溶岩でもう一方が凍土を彷彿とさせる笑みを浮かべたまま睨み合う2人の視線がぶつかり合う丁度中間の場所では、稲妻の如き赤と青の視線がぶつかって紫電を飛び散らせているようだった。

 

「けど、あなたへのお礼そのものは私の本心よ。本当に助かったわ」

 

「んなっ!? か、勘違いすんじゃねえ!? 良いか、お前達の仲間になった覚えは無い! あたしはただフィーネと決着を付けて、やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだ!」

 

「夢?」

 

「あ……いや、これは……その……」

 

 翼がクリスの口から出た夢という言葉に反応を示し、思わず口走ってしまったクリスも墓穴を掘ったと言わんばかりに動揺して視線を泳がせている。

 

「そうそう、夢だよ夢! 翼も聞いてくれよ! クリスの夢はだな──」

 

「わぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁっっ!?!!? 何口走ろうとしてやがる、このバカッ!? お前本当のバカッッ!!!」

 

「2回もバカって言うんじゃねぇよ! せめて筋肉付けろよ!」

 

「食い付く場所はそこなのね……」

 

 響がクリスの夢を口走る前にクリス自身が言葉を捲し立てて響の話を無理矢理遮り、バカ呼ばわりされた響が妙なところに食い付いていることに翼は苦笑するしかなかった。

 

 すると、響の懐から電子音が鳴り始めた。電子音を鳴らしていたのは二課の通信用端末で、端末を取り出した響は通信機のボタンを押して通信に出た。

 

「はいはーい。もすもす終日(ひねもす)〜! こちら響でありま──」

 

『もしもし、響!? 学校が!? リディアンがノイズに襲われ──……ツー……ツー……』

 

 上機嫌で通信に出た響とは対照的に焦りに焦った状態であることを連想させるには十分な声音の未来の声が聞こえてきた刹那、唐突に通信が途絶えて未来の声は聞こえなくなり、後には無機質な話中音だけが鳴っていた。

 

「……え?」

 

 突然起こった出来事に頭の理解が追い付かずにいる響は、ただ呆然と立ち尽くすのだった。




・原作ビッキーと今作ビッキーとの相違点コーナー

(1)響、リディアンまで未来を迎えに行く
──今作ビッキーはリディアンの生徒じゃないので、態々迎えに来てくれます。

(2)響、戦場に赴く前に未来を抱き締める
──本家よりも大胆に気持ちを伝えに行く今作ビッキー。まるで夫婦みたいだなぁ。

(3)響、修羅場に遭遇する①
──戦闘中に翼とクリスに取り合われる今作ビッキー。人気者は辛いね。

(4)響、修羅場に遭遇する②
──戦闘後、響とクリスの仲が良いことに嫉妬した翼の乱入により再び修羅場発生。こんな調子で翼とクリスは、GX編にて“BAYONET CHARGE”を歌うことが出来るのだろうか……?

 今回で僕が挙げるのは以上です。他に気になる点がありましたら感想に書いて下さい。今後の展開に差し支えない範囲でお答えしていきます。

 今話で登場した“我流・翔空降破”は、シンフォギアXDのオリジナル必殺技が元ネタとなっております。

 今話にて、1期のクリス編も終了となります。始動編、成長編、未来編、翼編、クリス編の5つが終了し、遂に物語は最終局面を迎えます。

 次回からは決戦編がスタートです! 次回も少し時間が掛かると思いますので、読者の皆さんは市丸ギンの卍解並みに首を伸ばしたり、引っ込めたりしながら更新をお待ち下さい。

 それでは、次回もお楽しみに!

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