戦士絶唱シンフォギアIF   作:凹凸コアラ

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 どうも、シンシンシンフォギアー!(挨拶)

 皆さん、お久し振りです! 2ヶ月も投稿してなくて申し訳ありません。

 何分普段はあまり触れない修羅場ネタについて考えてたので、執筆の早さも良くない上に就活も重なってしまいまして。

 暇な時間を使って書いてたので内容も拙いかもしれませんが、面白可笑しく読んで頂ければ幸いです。

 それでは、どうぞ!


EXTRA EPISODE 2 逆転不可裁判

「皆さん静粛に。これより被告人、立花響の裁判を始めます」

 

 普通のものよりも大きめな机に備え付けられた椅子に座っている未来が、重苦しい空気が漂う一室を見渡しながらそう言った。

 

 そんな未来から見て右側にはノイズと戦う時に見せる険しい表情のまま椅子に座る翼が。

 

 左側には静かに目を瞑って椅子に座る弦十郎が。

 

 正面の奥の方には顔を真っ赤にして俯いているクリスや面白そうに笑みを浮かべている黎人の他に固唾を飲んで静観している緒川や藤尭や友里の姿がある。

 

 そして、未来から見て丁度真正面の1番近い位置にある椅子には、体の胴体や足を椅子に縛り付けられて身動き1つ取れないよう完全に動きを封じ込められている響の姿があった。

 

(……どうしてこうなった!?)

 

 本当に凍り付きそうな冷たい視線を未来から向けられながら、悪寒を感じて冷や汗を掻き続けている響はこうなってしまった詳しい経緯をパニック寸前の頭で必死に思い出していた。

 

 ほわんほわんみくみく〜……。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 行動制限が解除された響、翼、クリスの3人。元の日常に帰ることを許された3人は、その直後に発生したノイズの出現に即座に対応して危機に瀕していた未来や黎人と1人の女性を救い出して見せた。

 

 響が生きていたことを知って未来は喜び、全て丸く治まった……かのように思われていた。

 

 完全に安心し切っていた響の平穏は、響の無事を知ったことで何時もの精神状態へ一気に回復した未来の発した一言で崩れ落ちたのだ。

 

「ねぇ、響」

 

「ん、どうした?」

 

「どうして響の部屋に女の子の服があったの?」

 

 その一言によってまるで背景に落雷が落ちたかのように錯覚する程の衝撃が走った。落雷の如き凄まじい衝撃がその場を支配していく中、響は口をあんぐりと開けて固まり、翼の目からは光が消え、クリスの顔は真っ赤に染まる。

 

 近くで話を聞いていた大人組にも勿論衝撃は伝わり、弦十郎と緒川は驚愕の顔色を浮かべ、響の兄貴分である黎人は楽しそうに思いっきり噴き出して笑い始めた。

 

 何か不味いことでも思い出したのか、響の額や顳顬(こめかみ)からは大量の汗が流れ落ち、響を見る未来の顔は栄養不足による生気の無さが相まってその笑顔に恐怖しか感じさせないものになっている。

 

 しかもクリスの反応を見てから響に好意を抱いている2人の女の子の背中からはドス黒いオーラのようなものが滲み出始めているような錯覚を響は覚えた。

 

「どういうことか説明してもらっても良いかな?」

 

「え、あ、いや、あの、未来さん、それは……」

 

「私も気になるわね。良かったら私にも聞かせてもらえるかしら、その話?」

 

「うぇ!? つ、翼まで……!?」

 

 刃の如き鋭い目付きの翼を前に震え上がる響。状況を打破しようとこの件に関わりのあるもう1人の女の子に視線を送って響は助けを求めるが、助けを求めた先にいた女の子はふいっと響から視線を逸らしてしまった。

 

(おいっ!? 助けてくれよ、クリス!!)

 

(し、知らねえよ! あ、あたしはいらねぇって言ったのに、甲斐甲斐しくお節介を焼きまくったお前の失敗だろうが!? だからあたしは関係無え! 自分の力で何とかしやがれ!)

 

 別に2人がテレパシーでも会話出来る訳でも、ニュータイプに覚醒した訳でもない。ただ単にこのある意味で危機的状況の中で響が考えてることなどクリスにお見通しだっただけである。

 

 そして両者のそんな以心伝心の反応がより少女達の怒りを刺激し、響が感じている未来と翼からのプレッシャーがより強いものに変わっていく。

 

「「ひ・び・き?」」

 

「あ、えーっと、その……逃げるが勝──」

 

「緒川さん!」

 

 2人のプレッシャーを前にその場からの逃走を図ろうした響であったが、響が行動を起こす前に響の行動を予見していた翼が声を張り上げて緒川に呼び掛けた。

 

 翼に名を呼ばれた緒川はと言うと、やれやれといった感じの呆れ半分の苦笑を浮かべながら懐から銃を取り出して早撃ちによる狙撃を動こうとしている響の影に命中させた。

 

 その直後、響の体はその場に縫い止められたかのように全く動かなくなり、その現象が何を意味するかを知っている響は顔に焦りの表情を浮かべながら(もが)き始める。

 

「か、影縫いぃぃぃぃぃぃぃッッ!?!!? ちょ、ま、待って! 緒川さん! 解いて! 影縫い解いて!? 解いて下さい!!? マジで解いて! 一生に1度のお願い!! 後生だから!! じゃないと俺死んじゃう!?!?」

 

「すみません、響君。そうしてあげたいのは山々なんですが、僕や指令も響君がクリスさんを僕らに黙って匿っていたことについてお聞きしたことがあります。それと、一生に1度のお願いはもっと大事なところで使うべきですよ?」

 

「そ、それは、その……」

 

 どうにか緒川から解放してもらおうと言葉を並べた響であったが、今の今までクリスを匿っていたことを黙っていたことに対する後ろめたさもあって言い淀んでしまい、そこから懇願の言葉を続けられなかった。

 

「後、本音を言うならば怒った女の子に逆らうのは得策じゃありませんしね。僕だって命は惜しいですから、馬に蹴られそうなことに助力はしたくありません」

 

「てんめっざっけんなぁ!? この糞忍者ぁぁぁぁぁぁぁぁあああッッ!!? 本音はやっぱりそうか!! 結局は保身の為かよッ!? 汚ねえ! 流石忍者汚ねえ!!!」

 

「どうとでも言って下さい。何の道、僕に非はありませんから」

 

 一層清々しいまでの笑みを浮かべた緒川がそう言ってのける。その笑顔に心底腹を立てる響ではあったが、今兎に角生き残ることを優先して煮え滾る怒りを思考の隅に移動させ、次なる人物に助けを求める。

 

「助けておやっさん!」

 

「……あの時から概ね予想はしていたが、やはりそういうことだったとはな」

 

「今まで何も報告しなかったことは謝る! 謝ります!! ですからこの惨めな私めを助けて下さい!? 俺はまだ死にたくないんです!! 世界中が俺を待ってるんです!!!」

 

「世界がどうかは知らないが、お前が大人しく応じることを心待ちにしている女の子達ならお前の直ぐ後ろにいるぞ?」

 

 完全に呆れ果てている弦十郎が溜め息を吐きながらある方向を指差す。指差された方向に響が視線を向けると、その先には絶対零度の極寒すら甘く感じる程の冷たい殺気を放ちながら笑みを浮かべている未来と翼の姿があった。

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!?!?」

 

「まぁ、これも良い機会だろう。平和な日常に戻る序でに今までの罪も浄罪されてくると良いさ」

 

「いやいやいやいやいや!! 浄罪も何も俺悪いことしてない!? そもそも俺が浄罪されるのって、話的にはもっと先の話だし!!?」

 

「何を言ってるのか知らんが無知であることも罪だぞ、響君。これ以上罪を上塗りする前に、1度学んで来ると良い」

 

「罪って何ッ!? 俺が何した!? 俺はただ皆を幸せにしたかっただけなのに!?」

 

 話の中に中々メタい話が混じってはいたが、まるで絵に描いたようなダメ男の常套句を口に出した響は結局のところ弦十郎からも見放されてしまったのであった。

 

「兄貴! ヘルプミー! 困ってる弟分を助けるのが兄貴分の甲斐性ってもんだよな!?」

 

「まぁ、確かにお前は俺の唯一の(きょうだい)だ。誰が何と言おうとそこだけは事実だ」

 

「兄貴……!」

 

 己の立場を利用し、最後の望みに賭けようとする響。助けを請われた黎人の良い反応を見て、響は希望を見出したかのように表情を明るくした。

 

「けどなぁ、俺は手前の仕出かしたことで手前の(ケツ)も拭けねえような奴を弟分にした覚えは無えんだよなぁ」

 

「え? ……あ、兄、貴……?」

 

「手助けしてやっても良いが、それじゃお前は同じような失敗を繰り返すだけだろうしな。お前の頭の物覚えが悪いことを俺はよく知ってる。お前が1人で生きて金も稼げるよう色々仕込んだのは俺だからな」

 

「えーっと……あのー話が見えないんですがー……?」

 

「ここはいつも通りにしっかりと体で覚えてもらうしかねえだろうなぁ?」

 

 希望を見出したのも束の間に終わり、一転してこの世の終わりを見ているかのような表情を浮かべる響。そんな響と黎人は肩を組み、直ぐ傍でイイ笑顔を浮かべながら話を続ける。

 

「まぁ、自分が仕出かしたからには最後までやり遂げねえとな? それが道理を通すってこと。俺から学んだことなんだから、しっかりと実行出来るよな?」

 

 その黎人の言葉を聞いた響は、以前に黎人とこの街に来る直前の会話の中で余計なことを口走ったことを思い出し、過去の己をぶっ飛ばしてやりたいと思った。

 

「それとだな。クリス(あの子)は俺のダチ夫婦の大事な忘れ形見だ。変なことして泣かせたら、例え弟分のお前でもただじゃおかねぇからな……?」

 

 組んでいた肩を離す際に黎人は響だけに聞こえるくらいの声量でボソリと言葉を言い残した。その際の話し方が黎人がマジな時の声のトーンだと知っている響は、大きく肩を震わせて物凄い速さで何度も首を縦に振っていた。

 

「てな訳で俺の手助けは今回無しだ。社会体験だと思って経験してこい。女のMA☆JIって奴をな」

 

「……」

 

 何時も通りの話し方に戻った黎人は、緒川や弦十郎のように今回は手助けはしないことを響に伝え、響は絶望を体現したかのような表情を浮かべて黙り込んだ。

 

「さ、響♪ O☆HA☆NA☆SHI、しよっか♪」

 

「大丈夫よ、響。命を取りはしないから」

 

 そんな響が最後に見たのは、笑顔を浮かべてはいるが目は全く笑っていない体中から殺意の波動を漲らせている未来と翼だった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そこまでが響の覚えている出来事である。そこから先を覚えておらず、それから何があったのか、どういった手段で自分はここまで運ばれてこのような状態になっているのかも分からない。

 

 無理して思い出そうとすると、響の脳神経は常人では耐え難い苦痛を発して頑なにこれまでの経緯を思い出そうとすることを拒んでいた。

 

「あの、未来さん。ここって何処なんでしょうか……? それとこの状況は……」

 

「被告人に質問を許可した覚えはありませんよ? 勝手な発言すると、MI☆KU☆MI☆KU(ミックミク)にしちゃうよ?」

 

「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーッッ!!?!?」

 

 未来がMI☆KU☆MI☆KU(ミックミク)という言葉を発した刹那、響の頭にドリルで抉られているかのような一点集中且つ連続的な痛みが走った。

 

 突然の痛みで響は悲鳴を上げ、痛みに耐えようとその場で(もが)くが体を固定されているせいで動けず、響は芋虫のように体を捻りながら必死に痛みに耐え続ける。

 

「はぁ……はぁ……何だよ、この痛み……!?」

 

「さっきのように不用意な発言すると、今みたいな痛みが再び響を襲うことになるから発言には注意してね?」

 

 未来から注意が聞こえ、響は納得はしないものの不用意に何か言うのは不味いと本能的に悟って無言で頷いた。

 

「うん。それじゃー裁判を再開するね。まず、最初の議題はこれ」

 

 未来がそう言うと、未来の背後にあるスクリーンにある画像が映し出された。その画像とは響の家の響の私室の写真だったのだが、その写真には机の上に置かれている衣類が写っており、それらは女の子が着る衣類だった。

 

「ッ!?」

 

「おい待てッ! 何でこいつの裁判なのにあたしの服が映ってんだ!?」

 

「ちょッ!? おまバカッ!?」

 

 画像を一目見て未来が何について聞こうとしてるのか悟って響が目を見開いた直後、後ろで裁判を見守っていたクリスが映し出された自身の服を見て怒声を飛ばし、思わず響は狼狽しながらクリスに言葉を返した。

 

「……こほん。これは先日、私が響の家で響の帰りを待っている間に響の家で発見した物です。これは明らかに女性物の私服です。家の主である響は男の子で、この家に1人で暮らしており、響に女装趣味でも無い限り普通ある筈が無い物です」

 

 未来は、それはそれはとてもイイ笑顔でつらつらと言葉を述べて詳しい状況を説明していき、逆に響は顔中が汗塗れになっていく。

 

「さて、被告人の立花響さん。ここで審議を問います。これはあなたの私物ですか?」

 

「……」

 

 未来の質問に響は答えない。ただ黙ってイイ笑顔を浮かべる未来の視線から必死に視線を逸らし続けているだけである。

 

 実を言うとこの質問に意味は無い。何故なら、この質問の答えは既に先程クリスの口から述べられたのだから。

 

「では、質問を変えます。立花響さん、これらの私服は全てあなたがそこで座っている雪音クリスさんに買ってあげたものですか?」

 

「……」

 

 続いての未来の質問を響は再び黙秘権を行使してやり過ごそうとする。しかし、そんな黙秘権が行使され続けることが許されるなんてことは、法律なんて一切関わっていないこの裁判では許されない。

 

MI☆KU☆MI☆KU(ミックミク)

 

「コ、コグスワァァァァァァァァァァスッッ!?!!?!?」

 

 再び呟かれた禁断(?)の言葉に反応して再び響の頭に激しい痛みが走り、響は何処かの童話の登場人物の名前っぽい言葉を出しながら絶叫した。

 

「この裁判では基本的に黙秘権は許されていません。基本的に“ハイ”か“YES(イエス)”で答えてね、響♪」

 

「……」

 

「返事は?」

 

「……」

 

「へ・ん・じ・は?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

MI☆KU☆MI(ミックミ)──」

 

「ッ!? ハ、ハイィ!!!」

 

「うん、宜しい♪」

 

 黙秘権も無ければ拒否権も無い。この裁判は徹底的に響の自由意思を無視された理不尽なものであり、今の響に許されているのは肯定の意を伝えることと経緯を話すことだけである。

 

「では、さっきの質問の答えは?」

 

「は、はい……。俺が彼女に服を買ってあげました……」

 

「じゃー次の質問です。立花響さん、どうしてあなたはクリスに服を買ってあげたのですか?」

 

「……流石に女の子に同じ服を使い回させる訳にはいかなかったし、他にも服があった方が少しは良いと思ったから……です……」

 

「……次の質問です。これらの服は響がクリスと一緒に服屋に行って買った物ですか?」

 

「……はい。クリスと一緒にデパートの服屋に行って、俺が選んだり、クリスが欲しいって言った服を買いました……」

 

「……下着の方も?」

 

「はい……。クリスはいいと言いましたが下着の方も無いと不便だと思い、自棄糞(やけくそ)の気分で一緒にランジェリーショップに入って買いました……」

 

「……何を基準に選びました?」

 

「基本は店員さんに選んでもらって……その、彼氏さんも何か1つ選んだらって店員さんに言われて1つだけ……」

 

 響がそう言った直後、未来と翼から発せられていた殺意の濃度が一気に激増した。その殺気の密度に、裁判を見守っていた藤尭は「ヒエッ!?」と震えた声を漏らして、弦十郎と緒川も額から冷や汗を流し、黎人はくつくつと声を押し殺して笑っていた。

 

「序でにその下着のデザインや色は?」

 

「えーっと、確かデザインは──」

 

「おい筋肉バカ!! そんな質問にまで馬鹿正直に答えんな!! それと裁判官の方もんな関係無えこと聞いてんじゃねぇ!!?」

 

 馬鹿正直に響が質問に答えそうになったところをクリスが怒声を飛ばして遮った。

 

 流石に色々とイキ過ぎた質問だった為、そこはクリスのプライベートに関わるので質問も取り下げられる。しかし、未来と翼は響の証言を聞き取れなかった故に裏で舌打ちをしていた。

 

「別の質問に移ります。立花響さん、あなたは裸のクリスとうっかり遭遇してしまったことはありますか?」

 

「……はい」

 

「何時? 何処で?」

 

「あの、その……朝のランニングから帰ってきた時、汗を流そうと思ってシャワーを使おうと思ったら、丁度朝風呂に入っていたクリスと遭遇しました……はい」

 

 それはまだ響がクリスを居候として家に迎え入れて間も無い頃、2人がお互いの生活リズムと生活スタイルを把握していなかった頃の話である。

 

 いつも通りの朝を迎えた響は、日課のトレーニングである朝のランニングに出ていた。一方でクリスは響がいないことには気付いていたが、寝起きということもあって特に深くは考えずにそのまま朝風呂に入ることにした。

 

 クリスは軽くシャワーで寝汗を流した後、静かに少し温めの湯を張った風呂に入浴していた。当時のクリスは、その静かな空間で余計な音を立てずに思考をぐるぐると巡らせることでこれからどう振る舞うべきかを延々と考えていた。

 

 考え事をしている内にクリスは気持ち良い温めの湯のせいで転寝(うたたね)を始めてしまい、そんなクリスの意識が朦朧としている時に響は朝のランニングから帰ってきた。

 

 帰宅した響は、まだ寝ていると思っているクリスに気を遣って物音で起こさないよう(あらかじ)めリビングに用意しておいた着替えを持って浴室に向かった。

 

 帰ってきた際に響は脱衣室兼洗面所と浴室に電気が付いていたことに気が付いてはいたが、それらは自身の付け忘れであり、これからシャワーを浴びるのだから気にしなくても良いだろうと短絡的に自己完結した。

 

 そして、響が洗面所にて着替えている際に立てた小さな物音に反応して転寝(うたたね)をしていたクリスの意識は徐々に覚醒していった。

 

 響が自身の衣類を全て脱ぎ去ったのと同時にクリスの意識も完全に覚醒し、事態に気付いたクリスが慌てて響に待ったを掛けようとしたがクリスが言葉を発する前に響は浴室に入ってきてしまった。

 

 そこで2人はお互いに相手の裸体を確認してしまった。

 

 クリスは風呂に入っていたせいで視線も低くなり、その視線は響の顔を見る前に自然と響の体のある部分に向かってしまった。

 

 逆に響は何時もよりも更に上からクリスを見下ろす形となり、浴槽のお陰でクリスの下半身は見れなかったが、それでも響の視線は普段では絶対生で拝むことが叶わないクリスのメガロポリスに吸い寄せられた。

 

 2人は暫しの間だが完全に固まり、お互いのある一点を凝視し続けたままの硬直状態が続いた。

 

 しかし、その時も当然直ぐに終わりを迎えた。硬直状態から解けたクリスが裸を見られたことへの羞恥と怒りによって激昂し、浴室にあった桶やシャンプーのボトルなどを無造作に投げ付け始めたのだ。

 

 流石は遠距離攻撃主体のイチイバルの装者でとも言うべきか、クリスが投げ付けた物は全て響に命中し、響は百発百中の投擲を全身に浴びながら風呂場から撤退したのであった。

 

 余談であるが、男のブツを父と響のものしか知らないクリスは薄らと記憶に残っている父のブツと響のブツを比較し、響のブツの方が父のものよりも遥かに凶悪であったことを認識したせいで恥ずかしさから湯舟にて悶えていた。

 

 その時のことを思い出して恥ずかしさで顔を真っ赤に染めたクリスを置き去りにして、響はその時のことを要点を掻い摘んで未来に自白した。

 

「……それで? 他にも似たようなことは?」

 

「……はい。クリスが着替え中だとは知らず、無遠慮にノックもせず部屋に入ったせいで着替え中のクリスと遭遇しました……」

 

 その時のハプニングもクリスとの同棲生活が始まって間もない頃に起こった出来事である。

 

 こちらは割と単純で、何時ものノリで響が私室に入ると、響の私室にて寝巻きから私服に着替え中の下着姿なクリスがいたのだ。

 

 当然の如く響はその場にて固まり、クリスは顔を真っ赤に染めながら激昂した。

 

「……以上ですか? 他にもあるなら、正直に言った方が身の為だよ?」

 

「それだけです……」

 

「ほ・ん・と・う・に・そ・れ・だ・け?」

 

「本当です! 信じて下さい! これ以上は何もしてません!!」

 

 1文字ずつ区切って確認する未来に、響はまるで死刑宣告を免れたいが為に必死に命乞いをする死刑囚のように咽び泣く一歩手前の情けない声音で自身の証言を肯定し続ける。

 

 響が話す度に未来と翼から発せられる殺気は濃くなっていき、今や響は己が身の安全を天命に任せていた。

 

 だが響が吐くべきことを全て吐き出すと、未来と翼から発せられていた殺気が急激に弱まっていき、最終的に殺気は引っ込んでその場の空気が軽いものに変わった。

 

「……うん、分かった。正直に話してくれてありがとう、響」

 

「未来……」

 

「響が嘘吐いていい加減なことばっかり言ってたら、1週間の監禁以上の刑を執行してたけど、ちゃんと正直に話してくれたから罰の内容を考え直すね?」

 

「未来!」

 

 ただでさえ今まで軟禁状態であったのに、軟禁から監禁に変更されて更に1週間も室内にぶち込まれていたら、きっと響の精神は干からびた植物のようにしおしおになって萎えていたことだろう。

 

 故に響は未来が下す罰の内容を再考してくれたことを嬉しく思うの同時に、未来の声色から罰の方も思ったより軽くなるかもしれないと思い始めて希望を見出す。

 

「それでは判決を言い渡します」

 

「うんうん!」

 

「立花響さん、あなたに自宅にて1週間の監禁と、その間は毎日O☆HA☆NA☆SHIの刑を言い渡します♪」

 

「……へ?」

 

 しかし、現実は何とも無慈悲である。死刑宣告にも等しい判決が言い渡された直後、引っ込んでいた未来と翼の殺気が先程以上の濃さと殺意を漲らせて発せられ始めた。

 

「まさか、正直に全て話したから罪と罰が軽くなるなんて思っていたのかしら? ……だとするなら、甘々よ? グラブジャムンよりもよっぽど甘いわ……」

 

 ゆらゆらと殺意の波動を漲らせて立ち上がる翼。その右手には、どう見ても模造刀には見えない真剣と思われる刀が握られていて、気のせいか刀にまで翼の殺意が乗り移っているようにも響には見えた。

 

 話は逸れるが翼の入ったグラブジャムンとは、世界一甘いと言われているインドのドーナツであり、今現在響の考えの甘さによってその甘さが世界2位に下方修正された悲しいお菓子である。

 

「MA☆TTE! 俺ちゃんと正直に話したよ!? 言われた通りに全部話したのに何で!? どうして!?!!?」

 

「全部正直に話して罪状を重くなっただけだよ? だからそれ相応に罰を重くしただけ。何か可笑しなところがあるかなぁ?」

 

 最早響に救いはない。今の未来と翼の目からは完全にハイライトが消失しており、それがまた身体中から漲らせる殺意の波動とその雰囲気に拍車を掛けていた。

 

「刑は明日から執行するから、今から響は私と翼さんと一緒にO☆HA☆NA☆SHIの時間だよ♪」

 

「んなっ!? どうして!!? 何故!?!? Why!?!!?」

 

 今まさに未来と翼から判決を言い渡されたばかりなのに、何故それ以上に刑の内容以上のことが行われようとしているのかを響は訊ねた。

 

「これから行うのは裸を見られたクリスの分だよ? 確かに私と翼さんの分はさっき決まったけど、裸を見られたクリスの分はまだだから」

 

「女の子の裸を見ておいて、処されずに済むと思っていたの?」

 

 言うなれば先に言い渡されたのは翼と未来の個人的な私刑であり、今から行われるのは大衆的に見て響が受けるべき死刑ということである。

 

「さぁ、響♪ これから楽しい楽しいO☆HA☆NA☆SHIの時間だよ♪」

 

「うわぁぁぁぁぁぁああああああッッッ!?!!?!? 嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!?!!?」

 

「大人しくしなさい、響。大丈夫よ。最後にはしっかりと私が介錯してあげるから♪」

 

「笑顔でそんなこと言うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! うわっ、止めろ!? マジで止めて!! HA☆NA☆SE!!」

 

「大丈夫♪ 痛みは一瞬だから♪」

 

「止めろぉ! 死にたくない!! 死にたくなぁぁぁぁぁぁぁぁあああああーーーーーーいッッッッ!!!!!」

 

 裁判は終わった。見るべきものも無くなった弦十郎達は、早急且つ静かに席から立ち上がり、これから刑を執行される哀れな罪人には目も呉れずに部屋から出て行こうとする。

 

「弁護人席の意味ってあったのか……?」

 

 終始何も言わずにずっと裁判の行方を見ていた弦十郎を見て、クリスはこの一方的に進行した裁判に果たして弁護人と弁護人席の必要性があったのかを訊ねた。

 

 しかし、それに答えるものは誰もいない。何故なら、もう既に全て終わったことなのだから。

 

「俺達も行くぞ、クリス」

 

「……なぁ」

 

「どうした?」

 

「あいつを助けなくて良いのか? 一応あんたの弟分なんだろ?」

 

 クリスは椅子ごと引き摺られて部屋の奥に連れて行かれそうになっている響を指差しながら黎人に訊ねた。その質問に対して、黎人は微笑を浮かべながら響に視線を向けて答える。

 

「良いんだよ。これも立派な青春だ。あいつはただでさえ中学での青春が中途半端に終わっちまったからな。本人も学業に復帰する気は満更無えようだし、少しは別の場所で青春っぽいものを送る必要があるだろ」

 

「そうか……」

 

「まぁ、青春云々で言ったら(あいつ)と裸で出会しちまったクリスも十分に青春してるけどな!」

 

「んなっ!?」

 

 黎人が先程の裁判の中にあった響の証言を蒸し返すことでクリスを茶化し、それを聞いたクリスは先と同じように顔を耳まで真っ赤にした。

 

「裸で男女が出くわすなんざ明らかに学園モノにありがちな青春じゃねぇか。いやーダチの忘れ形見が無事に青春してたようで俺も一安心だ」

 

「茶化すんじゃねぇ! そんな青臭えもん、あたしは真っ平ごめんだっての! それに前はあいつのブツ見せられたせいで変なこと考えちまったんだからな!」

 

「へぇ。前はってことは、今見せたらそれ以上のことでも考えちまうようにでもなるのか?」

 

「ッ!? うっせぇ!! このスケベオヤジ! お前らバカ兄弟に付き合ってたらこっちの身が持たねえんだよ!!」

 

 黎人に揶揄われたクリスは、髪を怒髪天にして激昂した後に不貞腐れてそっぽを向いたまま部屋から出て行く。

 

 その様を見ていた黎人は、そんなクリスに温かい眼差しを送る同時に苦笑を浮かべながらその後を付いていく。

 

 そして、クリスと黎人の遣り取りを見守っていた緒川達も笑みを浮かべ合った後に自身の職務に戻るべく部屋から退出した。

 

「……南無三」

 

 最後に残った弦十郎は、部屋を一瞥してからぼそりと呟いた後に扉を閉めた。

 

「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーッッッッッ!?!!?!??!!?」

 

 そして傍観者が誰もいなくなった室内にて制裁が行われ、最後に何とも情けない悲鳴が室内に響き渡ったのであった。




・原作ビッキーと今作ビッキーとの相違点コーナー

(1)響、裁判を受ける
──本編中に女の子関係で色々と遣らかした結果、遂に裁判(非公式)沙汰になりました。女の子にモテるのも場合によっては考えようである。

(2)響、男連中から見捨てられる
──緒川は保身の為に、弦十郎は響のこれからの為に、黎人は面白そうだから響を見捨てました。

(3)響、新たなトラウマが生まれる
──MI☆KU☆MI☆KU(ミックミク)と言ってもあの有名なツインテールは全く関係ない。それとツインテールって言葉は、その語源が怪獣のツインテールだったりする。

(4)響、クリスの私服をプレゼント
──現在クリスが着ている服は、その殆どが響からプレゼントされたものである。その中には当然GやGXで着ていた私服も含まれている。

(5)響、クリスちゃんの全裸(上半身)を見てしまっていた。
──ある意味青春の醍醐味である。これが原因で響の刑の内容の約8割が決まった。

 今回で僕が挙げるのは以上です。他に気になる点がありましたら感想に書いて下さい。今後の展開に差し支えない範囲でお答えしていきます。

 今話は1期最終話と番外編第1話の直後に起こったお話です。響を裁判した部屋は、政府のパゥワーで用意してもらった二課とは関係のない施設の一室です。

 番外編は後1つくらい書いたら終了して、2期ことG編のお話に入っていきたいと思っています。

 その際には相違点コーナーもパワーアップさせて、お話全体の相違点コーナーにするつもりです。

 それでは、次回もお楽しみに!
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