戦士絶唱シンフォギアIF   作:凹凸コアラ

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 どうも、シンシンシンフォギアー!(挨拶)

 今回は前話の後書きで言ったように覚醒回ということで、原作第1話と同じタイトルを使用しております。今後もこういう風に原作のタイトルは()()く使っていきたいですね。

 それでは、どうぞ!


EPISODE 4 覚醒の鼓動

 時間が経ち、その日の時間帯は既に夕暮れ時を迎えていた。

 

 昼に大好物の牛丼(ごはん)カレーライス(ごはん)の大盛りを完食した響は、見付けた公園の原っぱの上に横になっていた。

 

「自衛隊、特異災害対策機動部による避難誘導は完了しており、被害は最小限に抑えられた……か」

 

 横になっている響は、自身のスポーツバックを枕代わりにしながら手に持ったスマフォで情報をサイトを閲覧していた。

 

 そのサイトに載っていたのは、特異災害であるノイズの出現と被害、事の顛末についての情報だった。

 

「……ここから、そう離れてないのか」

 

 スマフォのページを捲った響が次に目にしたのは、そのノイズが何処で発生したのかの情報だった。詳細によると、発生したのは昨夜の深夜で、場所は現在響がいるこの街からそう離れていない場所だった。

 

「……」

 

 暫く無言でスマフォを眺めていた響だったが、スマフォをスリープモードにして枕代わりのスポーツバックの中に仕舞った。

 

(ノイズが出たってことは、翼さんはまた戦ってたのか? ……1人で)

 

 響の脳裏に思い出されるのは、あの日ノイズに立ち向かっていった奏と翼の姿だった。

 

 響はその時のことを鮮明に思い出すのと同時に自分の胸の真ん中に手を置いた。そこから人差し指と中指を揃え、なぞるように手を動かす。

 

 響が服の上からなぞるように触った箇所には、まるでアルファベットの“f”のような形をした傷跡あった。その傷跡は2年前の惨劇の時、響の胸に奏が振るっていた槍らしきものの破片が突き刺さった際に出来たものだった。

 

(あの日、俺を助けてくれたのは奏さんと翼さんの2人、“ツヴァイウィング”の2人に間違いなかった)

 

 あの時に確かに“ツヴァイウィング”が戦っていたのを響は目にしていたし、何よりも響の記憶には奏が最後に歌った歌が焼き付いていた。

 

(けど、退院してから聞いたニュースだと、世界災厄のノイズが原因で奏さんや大勢の人の命が犠牲になったことだけが報道されていた)

 

 しかし、響が後に聞いたニュースでやっていたのはどれだけの被害があったのかというニュースだけで、奏と翼がノイズと戦っていたという情報は1つも流れていなかった。

 

(戦っていた“ツヴァイウィング”は俺が瀕死の中で見ていた夢か幻だったのか? ……いや、それは無い)

 

 あの時の光景が都合よく自分が見ていた夢幻だったのかと、一瞬自分に疑心を持ち掛けた響だったが直ぐに真っ向からそれを否定した。

 

(あの時の痛み、あの時の感覚、何よりも……あの時の奏さんの歌を、俺は覚えている)

 

 胸を抉られた痛みと意識が遠くなっていく感覚、それに奏と交わした言葉の全てと彼女の最後の歌とその最後を、響は今も覚えているのだ。

 

(もう1度、翼さんに会わないといけない理由が出来たな)

 

 それは真実を知る為に。翼ともう1度会うことが出来れば、あの時に一体何が起こっていたのかを知ることが出来るような気がするのを響は直感的に感じていた。

 

(それに、もしあの時のことが真実なら、翼さんはきっとノイズと戦い続けている筈だ。なら、今こそ奏さんとの約束を果たすべき時なんじゃないのか?)

 

 再び脳裏に蘇る奏との約束。あの時のただの民間人だった頃の響と今の響とでは送ってきた生活と潜ってきた修羅場に凄まじい差がある。それを自負している響は、今の自分なら何らかの形で役に立てるのではないかと思った。

 

(それに今朝会った翼さんの目は……何処か悲しいものだった気がする)

 

 響には朝に見た翼の目が、とても冷たい悲しい目をしているように見えていた。その冷たい目が誰もが近寄り難くなるようなオーラを醸し出していた。

 

(それに……たぶん泣いてた)

 

 これはただの響の直感である。しかし、それは兄貴分とと共に世界を回り、幾度も世界の清濁を直で見たことで研ぎ澄まされた獣の第六感が如き直感である。

 

(直接泣いてた訳じゃない。でも、翼さんの中であの事件は終わりを迎えていない。だから、あんなに悲しい目をしてたんだと思う)

 

 そう響は検討を付けた。そして、響は決心する。もう1度翼と会い2年前の事の真相を知り、そして奏との約束を果たすのだと。

 

 響が翼のことをどうにかしようと思っているのは、何も奏との約束があるからだけではなかった。響が翼の大ファンであるということもあるが、何よりも大きいのは──

 

「やっぱ、男としては女の子には笑っててほしいんだよな。翼さんって美人だから、笑ったらきっとウンと可愛いだろうし、どうせならあんな悲しい顔よりも笑った顔の方が見たい!」

 

 単純に響が翼の笑った顔が見たかっただけだった。響の行動原理にそれ以上もそれ以下も無い。響が動くのは、何時だって誰かのことを思うが故であり、響自身が誰かの笑う顔が好きだからだ。

 

「って、あぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

 何かを思い出したのか、響は体を起き上がらせて唐突に奇声を発した。その音量はかなり高く、響のいる公園全域どころか、周辺地域にまで及び、奇声を発した響の近くにいた人々の視線は響に集中したのだった。

 

「今日って翼さんのCDの発売日じゃねえかぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 どうして忘れた俺ぇぇぇぇぇぇ、とまるでヘドバンのように頭を振り続ける響。何を隠そう今日は風鳴翼のニューシングルのCDの発売日なのである。

 

「初回限定生産版の初回限定特典のレア物がぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!?」

 

 しかも初回限定生産版に初回限定特典まで付いてくるレア物である。風鳴翼の大ファンである響として喉から手が出る程に欲しい是が非でも手に入れなければならない代物だった。

 

「早くしないと売り切れるっ!? どうして俺はこんな大事なことを俺は忘れてたんだぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 慌てふためき焦りながら大事なことを忘れていた自分に嘆く響。悲しいことに響には複数のことを同時に考えて脳の中に留めておくなんて器用な真似は出来ないのが原因であった。

 

「こうしちゃいられねぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇっ!?!?」

 

 言うが早いか、響はその場から腕だけの力で勢いよく立ち上がり置いてあったスポーツバックを肩に担いで駆け出した。

 

 一陣の風となって走る響。その速さは、肩に荷物を担いで激しい動きを想定して作れらた服でないのにも関わらずにかなり速さを誇り、50m走を走らせれば6秒台を余裕で切る速さであろう。序でに言うなら、響と同年代の男子の平均は7.47秒だったりする。

 

 歩道を駆け、人混みを瞬時に掻い潜り、障害物を飛び越えて一気に目的の物を目指して全力疾走する姿は、通行人の方々からしたら奇怪な光景に見えていた。

 

「な、何、あれ……!?」

 

「あの動き、まるでアニメね!?」

 

「というよりも、先程の方って今朝にお見かけした方ではないでしょうか?」

 

「凄え!速え! ヤベーイ!」

 

「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 

「俺が遅い!? 俺がslowly!!? 冗談じゃねぇ!!!」

 

 下校中のリディアンの生徒達、付近住民の少年、通行人のおっさん、明らかに速そうな青年、以上が響を見掛けた人々のリアクションであった。序でに言うなら、響はNINJAではない。

 

 このように周りを唖然とさせながら走る響だが、彼は1つ重要なことを忘れていた。それは、この街に来てから考え事をしてばかりで、すっかり住まいのことを忘れていたのだ。

 

 兄貴分にあれだけ啖呵を切っておきながら、何とも情けない響であった。

 

「CD! 特典! CD! 特典! CD! 特典! CD! 特典! CD! 特典!」

 

 壊れたオモチャのように2つの言葉を交互に言い続けながら走る響。最早今の響の頭の中には、その2つの物のことしか残っていなかった。

 

 それ故に響は気付かない。自分が向かっている方角に行くに連れて人の賑わいの声が少なくって言っていることに。

 

「ッ!」

 

 そんなバカみたいなスタミナを持ち先程からずっと走り続けていた響が突如足を止めた。それは遂にスタミナが切れたとか、響が唐突に足を痛めたなどの身体的な異常が理由ではなかった。

 

 響が足を止めた理由。それは、響の脳裏に深く焼き付けられた光景の一部分が響の目に映ったからだった。響の目に映ったもの、それは風に乗り宙を舞う黒い粉、人々に煤と呼ばれているものだった。

 

「は?」

 

 呆然とした様子で目を見開いた響が周りを見渡す。窓ガラス越しに見えるコンビニの店内は、商品の棚が荒らされたように棚ごと乱れ、通路やレジといった節々の場所に煤の山が出来上がっていた。

 

 建物と建物の間の路地裏に続く道の入り口の隅にも煤の山が出来上がっていて、その形は人が凭れ掛かっていたかのような人に近しい形状を取っていた。

 

 そして、歩道や道路問わずに積もられた煤の山の数々を見て響の脳裏に浮かんだ記憶と今の光景が合致したことで、響は何が起こったのかを全て理解した。

 

「ノイズッ!」

 

 この光景を作り出した原因たる存在の名前を声に出して力強く言う響。その響の目が鋭くなり、手に力が込もって拳が強く握られる。

 

 今、響の脳裏には2年前の惨劇の記憶が鮮明に蘇っていた。

 

「嫌ぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

 その時、誰もいなくなった街に悲鳴が鳴り響いた。それは明らかに悲鳴で、その悲鳴を聞いた響は肩に担いでいたスポーツバックを投げ捨て、視界を遮り走るのに邪魔なフードを取り声が聞こえてきた方角へ駆け出した。

 

「何処だっ! 何処にいるんだっ!! 返事をしてくれっ!!!」

 

 響は怒鳴るように声を張り上げながら声が聞こえてきた方角へ駆ける。

 

「助けてぇぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇっ!!?」

 

 その響の声に間髪入れずに助けを求める声が響く。響は、改めて声が聞こえてきた方角へ進路を修正して走る。

 

 すると、響の進行方向前方にある曲がり角から1人の女の子が飛び出してきた。

 

「見付けたっ!」

 

 それを見た響は走るスピードを更に速め、擦れ違い樣に掻っ攫うように女の子の体を抱き上げてそのまま走り抜けた。その時、響が視線を女の子が逃げてきた方へ向けると、その先には幾多ものノイズが走り迫っていた。

 

「お兄ちゃん……!」

 

「大丈夫だ! 助けに来た!」

 

 取り敢えずは女の子を安心させる為に兄貴分のように軽く笑みを作って笑い掛ける響。通り過ぎてかなりの距離が開いた後ろの曲がり角を響は一瞥し、そこからノイズが自分達を追い掛けて来ていることを確認して舌打ちをする。

 

「チッ、あいつらしっかりと俺達をマークしてるな」

 

 更にスピードを上げて距離を離そうとする響は、ちんたら避難用のシェルターを探すよりも手っ取り早く逃げる為の手軽な逃走道具を探して周囲を見渡す。

 

「ん? あれは……!」

 

 響は逃走中の進路の先の車道にバイクを見付けた。しっかりとサイドスタンドがされていて、シェルターに逃げる際に邪魔だから乗り捨てられたものだろう。

 

 響は一目散でバイクに駆け寄り使えるかどうかを素早く調べ始める。バイクに鍵は刺さっていて、走らす為の燃料は問題無いどころか十分過ぎる程に入っている。

 

「鍵も刺さってて、燃料も問題無い。ヘルメットもある。しかも、俺が大好きなオフロード物だ。こいつは良い」

 

 響は抱えていた女の子を真っ先にバイクのシートの前に乗せ、その後ろに搭乗する。バイクにエンジンをかけ、常備されていていたフルフェイスのヘルメットを女の子の頭に被せる。

 

「しっかり被っといてくれ。それとこれからバイクを動かすから、俺を信じて()()く動かないようにしてくれ。出来るか?」

 

「うん。……お兄ちゃん、運転出来るの?」

 

「あぁ、ハワイで兄貴に習った! けどまぁ、無免許の違法運転だけどな!」

 

 訊ねてきた女の子に、響は脱いだ自身のパーカーで女の子と自分自身を括り付けながら笑って答える。

 

「あいつらもう来たか!? しっかり掴まっといてくれ!」

 

「う、うん!」

 

 すぐそこまでノイズが迫っていたのを確認した上半身が黒のタンクトップ1枚の響は、最後に女の子に忠告をし、女の子が返事を返したのと同じタイミングでバイクを出した。

 

 そこに間髪入れずにノイズが形状を変化させて響達を強襲して、先程まで響達がいた道路のコンクリートが抉られた。その直前にバイクを出していた響達は九死に一生を得たのだった。

 

「危ねえ……! 流石オフロード車、初速の速さは伊達じゃないな!」

 

 かなりギリギリだったことに肝を冷やした響は、バイクのミラーを一瞥してノイズがまだ自分達を追ってきているのを確認して更にバイクを加速させた。

 

 響がバイクでノイズとの生死を懸けたレースを繰り広げている一方で、風鳴翼はとある施設の一室に足を運んでいた。

 

「状況を教えて下さい!」

 

「現在、反応を絞り込み、位置の特定を最優先としています」

 

 駆け足で入って来てノイズの出現位置を訊ねる翼に、複雑な機器を操作していたオペレーターと思わしき男性がマイクを通じて室内にいる全員に声を届かせる。

 

 その中で、勇ましい顔の男と眼鏡を掛けた女性は映し出された中央のモニターを神妙な表情で見ている。ノイズの反応が映し出される画面を見ていた翼の表情が強張ったものに変わっていく。

 

「……ノイズの反応が南に移動していっている。まるで何かを、いや、人を追い掛けているのか?」

 

 モニターに映るノイズの反応の動きを見て、勇ましい顔の男は独り言ちるのだった。

 

 一方、バイクを全速力で走らせて女の子と共にノイズから逃げる響も目付きを鋭くしていた。

 

(しまった。ノイズから逃げるのに夢中でシェルターからかなり引き離された……!)

 

 ノイズは、出現から一定時間後に自壊する性質を持っており、その自壊を待ちノイズから身を隠す為にあるのがシェルターというものである。

 

 しかし、響がバイクを走らせている方角はそのシェルターとは真逆の方向であり、響はそのことに焦りと危機感を感じているのだ。

 

(せめて……! せめて、この子の命だけでも!)

 

 逃げる度に危険度が増していく今の悪循環の中で、響は今自分の前に座る小さな命を助けようと必死に行動しているのだ。

 

「お兄ちゃん! あれっ!?」

 

 女の子が指し示したバイクの進行方向には橋があり、更にその先に無数のノイズが待ち構えていた。

 

「なっ!? くそっ、バイクを捨てるから何が起こっても良いように覚悟しておいてくれ!」

 

「う、うんっ!」

 

 女の子の怯えながらもしっかりと返された返事に、響は満足してバイクを橋の歩道に滑り込ませ、橋の丁度中間に差し掛かった辺りでハンドルを手放し、女の子の体を抱き抱えながらバイクを踏み台にして跳んだ。

 

「目を瞑って鼻を摘まめぇ!」

 

「うん!」

 

 女の子は響に言われた通りに目を瞑り手で鼻を摘まみ、響は自分の背中を空中で下にして橋の下を流れる川に着水した。

 

 その直後、響が乗っていたバイクは転倒し、火花を散らせながら勢いに乗って滑りノイズに激突して爆発した。しかし、爆発から出て来たノイズに外傷は無く無傷だった。

 

 響は女の子を抱えながら川から頭を出し、再びノイズからの逃走を図る為に川の流れに乗って移動し始める。

 

「げほっ、げほっ!」

 

「大丈夫だ。お兄ちゃんが付いてる! しっかりお兄ちゃんに掴まるんだ!」

 

 まだ寒さが残る春の川に体力を奪われていく女の子を鼓舞しながら流れに乗って泳ぐ響。

 

(俺は良いけど、このままじゃこの子の体力が持たない……!)

 

 そう判断した響は適当な場所で川から上がり、今度は女の子を背中におんぶしてパーカーをキツく結び直してから走り出した。

 

──生きるのを諦めるなっ!!──

 

 思い出される奏の言葉を胸に響は走った。ただひたすらに走り、走り続けた。自分の命も、自分の手にある女の子の命も諦めない為に。

 

 走り続けた響は、無人となった工場地帯まで逃げ込んでいた。太いパイプを次から次へと飛び越え、距離を稼ぐ為にかなりの高さまで続く梯子を頂上まで登り切った。

 

「ぶはぁ!? ここまで、来れば、流石に大丈夫だろ!」

 

 公園を出た時から体力を使いっぱなしだった無尽蔵な響のスタミナも流石に限界に達し、響は登り切った屋根の上で腰を下ろして座り込み、肩を上下に揺らしながら荒い呼吸を繰り返す。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 響が背負っていた女の子も大逃亡の果てに限界を迎え、体を横にして小さな体で荒い呼吸を繰り返していた。

 

「死んじゃうの……?」

 

 今にも泣き出してしまいそうな声音で女の子は弱音を漏らす。それを聞いた響は、疲れていながらも優しい笑みを浮かべて女の子の頭を撫でた。

 

「大丈夫だ。俺が、お兄ちゃんが絶対に守る」

 

 目を瞑り優しい笑みを浮かべながら首を振る響。だが、響が不意に別の方向を一瞥した時、無数のノイズが響の視界に映り込んでいた。

 

「うわぁうぅぅぅぅぅっ!?!?」

 

「勘弁してくれよ……!」

 

 何時の間にか背後に立っていたノイズに、女の子は怯えて響に張り付き、響は女の子を守るように抱き締める。そんな響達を前に、ノイズは開いた距離を埋めるようにじわりじわりと詰め寄っていく。

 

(終われない……こんな所じゃ終われない!)

 

 この絶望的状況の中で、響の目は絶望に飲まれること無く、寧ろより一層の輝きを灯していた。女の子を抱き締める響の腕に力が込もる。

 

「生きるのを諦めるなっ!!!」

 

 2年前に奏が響に向かって送った言葉を、今度は響が自分の腕の中で諦めそうになっている女の子に向けて送る。

 

「……Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 その時、1つの歌が無人の工場地帯に響き渡った。その直後、響の胸から発せられた橙色の凄まじい光が辺り一帯を照らし、1つに纏まった光が柱となって天高く昇った。

 

「反応絞り込めました! 位置特定!」

 

「ノイズとは異なる高出量エネルギーを検知!」

 

「この波形を照合! 急いで!」

 

 一方で、翼のいる一室にて複雑な機器を操作しているオペレーターらしき人達が慌ただしく動いていた。その理由は、ノイズの反応を追っていた先で、ノイズとは別の異質なエネルギーが検出されたからだった。

 

「まさかこれって、アウフヴァッヘン波形!?」

 

 その中で、白衣を着たメガネの女性が導き出された結果に目を見開いて驚く。そして、中央のモニターに大きく“GUNGNIR”という単語が表示された。

 

「ガングニールだとぉ!?」

 

 表示されたその単語を見た赤いカッターシャツを着た男が声を張り上げて驚愕を露にし、その後ろで男と同様にモニターを見ていた翼の目の瞳孔が細くなり顔から表情が消え失せる。

 

 光が胸から発せられている当の本人である響はあまりの事態に固まり、周りのノイズも動けずにその場に突っ立ていた。

 

 響の体内では、心臓付近を中心に毛細血管を伝って何かが纏わり付くように蠢いて響の体を侵食していく。その影響で、響の細胞の1つ1つが人間とは違う別の何かに作り変えられていく。

 

「ぐぅ!? あぁぁぁっ!? ぐぎぎっ!?」

 

 その影響は現状の響にも表面化して瞳孔が落ち着かずにギョロギョロと動き続け、響は何かに耐えるように両手両膝を地に着いて歯を食い縛る。

 

「がぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 そして、響が獣の如き咆哮を上げるのと同時に、一瞬の発行と橙色の雷を伴って何かが響の背中を貫いて出現した。それはまるで、機械の翼のような形状をしていた。

 

 機械の翼は1度収まるように小さくなった直後に規模を大きくして再び飛び出し、また小さくなるように見せ掛けてその大きさを増して又もや出現する。

 

 その3度目の出現の際には蒸気を伴って出現し、今度こそ機械の翼は小さくなって響の背中の中に消えていった。

 

 機械の翼が飛び出すのと同時に響の身体中に展開された様々な機械のパーツが、響の体にフィットするように変形し装着される。

 

 響の劇的な変化の一部始終が終わったその時、響の装いは最初の不審者的格好からは掛け離れたものに変わっていた。

 

 頭から角のような装飾のあるヘッドホン、胸元に宝石のような集音マイク、肩まである胸から上が橙色で下が黒色のアンダースーツの上に白を主軸として黒のラインが入った半袖のジャケット、腕には白色の籠手のような装甲、腰には対になった2つの白い装甲、腰から下は橙色のラインが入った長く黒いボトムス、最後に膝くらいまである足を覆う黒い装甲。

 

 今ここに、失われた力を受け継ぐ者が顕現したのだった。

 

 その者の名は、立花響。




・原作ビッキーと今作ビッキーとの相違点コーナー

(1)魔改造された速度
──2年間の間に数々の修羅場を潜ってきた響は原作よりも素の足が速くなっている。高い身体能力の中の1つ。

(2)バイクに乗れる響
──2年間で数々の仕事をしていくに当たって、黎人から数多くの乗り物の運転を教わっている響。但し、彼自身は無免許なので日本ですれば即座に捕まる。

(3)魔改造されたスタミナ
──2年間の間に数々の修羅場を潜ってきた響は原作よりも強靭なスタミナを持つ。高い身体能力の中の1つ。

(4)シンフォギア装着時の姿
──ピッチリなボディコンスーツではなく、それなりにゆとりを持った近未来的な服装になっている。それと半袖のジャケットが追加されている。

 今回で僕が挙げるのは以上です。他に気になる点がありましたら感想に書いて下さい。今後の展開に差し支えない範囲でお答えしていきます。

 響の聖詠は原作と同じ仕様になっております。ここの部分も少し変えようかなって思ったけど、作者には聖詠をオリジナルで作ることが出来なかったのと、ここを変えたら響じゃないなと思い、原作通りすることにしました。

 何処かの赤い弓兵のお洒落ポエム型のオリジナル詠唱なら作ったことがあるんですがねぇ。やっぱ、オリジナルの単語を考えるって難しいですね。

 次回、シンフォギアを纏った今作ビッキーの戦いが幕を上げる!

 それでは、次回もお楽しみに!
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