戦士絶唱シンフォギアIF   作:凹凸コアラ

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 皆さん、どうもシンシンシンフォギアー!!(挨拶)

 最近花粉症と風邪の2つでKOされたSABATAです! 鼻が死にそうです。季節の変わり目ですから、皆さんも体調には気を付けて下さいね。

 本当はこの話、もう少し投稿までに時間がかかる予定だったんですよ。ですがね、風邪引いて花粉症を発症した途端にすらすら執筆出来るようになったんですよ。何ででしょうかね(笑)

 という訳で、そろそろ本編に入っていきましょう!

 それでは、どうぞ!


EPISODE 8 絶唱

 突如現れたネフシュタンの鎧を纏った謎の少女。その少女の存在は、当然二課の司令室まで行き届いていて、司令室のモニターに大きく“Nehushtan”と表示されていた。

 

「バカな……」

 

 二課のコンピュータが存在の検知を見落とすことは無い。故に謎の少女が纏うものが、本物のネフシュタンの鎧であることは明白であり、そのことに弦十郎は驚愕を露わにして立ち上がる。

 

「現場に急行する! 何としてでも鎧を確保するんだ!」

 

 弦十郎はマイクを使って指示を二課の職員全員に通達する。このことの重要性は二課にいる全員が周知していることであり、弦十郎の隣にいる了子も力強く頷いた。

 

 一方、現場でネフシュタンの鎧を纏う少女と直に遭遇した響と翼は、その少女と向かい合いながらあまりの衝撃に立ち尽くしていた。

 

「へぇ。ってことはあんた、この鎧の出自を知ってんだ?」

 

「2年前、私の不始末で奪われたものを忘れるものか! 何より、私の不手際で奪われた命を忘れるものか!?」

 

 翼の脳裏に浮かぶのは、戦う奏の姿と不甲斐無い自身の姿、そして散り逝く奏の最後だった。

 

 翼は歌を歌いながら大剣を構える。対してネフシュタンの少女は、右手に杖らしきものと左手に鎧に繋がっている紫色に淡く発光する鞭のようなものを持って構える。

 

(奏を失った事件の原因と、奏が残したガングニールのシンフォギア。時を経て、再び揃って現れるという巡り合わせ。だが、この残酷は私にとって心地いい!)

 

 示し合わせたかのように揃った嘗ての再現。その全てが、翼の内で静かに燃える炎を激しく燃え上がらせる。

 

「待ってくれ、翼さん! 相手は人だぞ! 同じ人間なんだ!」

 

 だが、今にでも戦いを始めようとする翼を止めようと、響は翼の下に駆け寄って肩を掴みながらどうにか引き止めようと訴え掛ける。

 

「「戦場(いくさば)で何をバカなことを!?」」

 

「ハモった!?」

 

 しかし、止めようとした響は、まさか翼だけでなく相手であるネフシュタンの少女にまで怒鳴られて一蹴されてしまう。しかも言葉がハモりながら同時にである。

 

 言葉がハモったことで、お互いに相手を見遣って視線を交えた翼とネフシュタンの少女は不敵な笑みを浮かべ合う。

 

「寧ろ、あなたと気が合いそうね?」

 

「だったら、仲良く戯れ合うかい!」

 

 ネフシュタンの少女は、そこで話を締め括り左手に持っていた鞭を響達目掛けて振るい落とした。鞭が落とされる直前、翼は響を押し飛ばすことで鞭から避けさせ、自身は大きく跳んで鞭を躱す。標的を失い空振りとなった鞭は、叩き付けられた地面を軽々と破壊する。

 

「っつぅ……!」

 

 押し飛ばされた響は、上手く受け身をしてから勢いを利用した後転をして片膝を着いた。間髪入れずに、響は跳び上がった翼を見上げる。

 

 大きく上に跳躍した翼は、持っていた大剣を上段に構えて勢い良く振り下ろす。

 

【蒼ノ一閃】

 

 放たれた蒼ノ一閃がネフシュタンの少女に向かって飛来するが、少女は持っていた鞭を振るって蒼ノ一閃を左方向に弾き飛ばした。

 

 重力に従って降りてきた翼は、大剣をネフシュタンの少女に向かって振り下ろし少女はそれを難無く躱す。続け様に翼は大剣を振るうもその全てが躱され、脚部のブレードの攻撃も少女には届かない。

 

 それでも翼は引かずに大剣を振るうが、ネフシュタンの少女が両手で持った鞭によって軽々と止められてしまう。

 

 少女は悪どい笑みを浮かべて大剣を鞭で逸らしてから翼の顔目掛けて鞭を振るう。翼は頭を下げて攻撃を避けるが、意識が顔に向かったことでガラ空きになった無防備の腹部に容赦無い蹴りを入れる。

 

(これが、完全聖遺物のポテンシャル!?)

 

 ネフシュタンの少女の蹴りでぶっ飛ばされながら、翼は難無く自身を簡単に(あしら)うネフシュタンの鎧の性能に驚き動揺を隠せない。

 

「ネフシュタンの力だなんて思わないでくれよな。あたしの天辺(てっぺん)は、まだまだこんなもんじゃねえぞ!」

 

 翼の動揺を見透かすように挑発の言葉を投げ掛けるネフシュタンの少女。少女は、跳躍しながら大きく鞭を振るう。

 

 ネフシュタンの鞭は大きく伸び続け、躱し続ける翼がどのような場所にいても難無く届き、叩き付けられる度に木々や地面を破壊していく。

 

「翼さん! 止めろ、てめえぇぇぇぇぇっ!!」

 

 一方的に追い詰められていく翼を見て、今までその場に立ち尽くすだけだった響が叫びながらネフシュタンの少女に向かって突貫する。

 

「お前はお呼びではないんだよ。こいつらでも相手してな」

 

 ネフシュタンの少女は、腰に付けていた杖らしきものを響に向ける。すると、杖の先端が発行して光が放たれ、放たれた光の中から駝鳥(だちょう)のようなノイズが4体出現する。

 

「なっ!? ノイズ、だと!?」

 

 響は驚きつつも勢いに乗った拳を振るってノイズを1体殴り倒す。残った3体のノイズは、響に向かって(くちばし)から粘液のようなものを吐き出し、響はバックステップで粘液を避ける。

 

 再度、翼がネフシュタンの少女に突貫する。大剣を上段から振り下ろし、大剣は再び鞭によって受け止められる。

 

「その子に(かま)けて、私のことを忘れたか!」

 

 力一杯吠える翼は、ネフシュタンの少女に足払いをする。足払いによって少女は体勢を崩し、そこに翼が回し蹴りを入れるが、少女は体を背面に逸らして回し蹴りを避ける。

 

 回し蹴りで回転に勢いが付いた翼は、もう片方の足も使って2度目の回し蹴りを入れるが、ネフシュタンの少女はそれを右腕で受け止める。

 

「お高く止まるな!」

 

 ネフシュタンの少女は、受け止めた翼の足を握って軽く振り回してから地面に向かって叩き付ける。叩き付けられた勢いで、翼は地面を跳ねながら転がり、転がっていく先に回り込んだ少女によって顔を踏み付けられた。

 

逆上(のぼ)せ上がるな、人気者! 誰も彼もが構ってくれると思うんじゃねえ!」

 

 煽るように汚い言葉を並べて吐くネフシュタンの少女を、翼は顔を踏み付けられながら強く睨み付ける。

 

「その足を退()けろぉぉぉぉぉ!!」

 

 すると、そこに駝鳥のようなノイズを片付けた響が勢い付けて拳を構えながら突っ込む。

 

「お呼びじゃねえって言ってんだよ、この突進バカ!」

 

 先程のように自身に迷い無く突っ込んでくる響を見て、ネフシュタンの少女はその姿を汚く罵り、振り抜かれた拳を体勢をズラすことで躱して左手で持った鞭を振るう。

 

「がはっ!?」

 

 背中から諸に鞭を喰らった響は、勢いよく吹っ飛ばされて立ち並ぶ木々の中に突っ込んでいった。突っ込んだ響のせいで木々が倒れ、周囲一帯に砂埃が舞う。

 

「この場の主役と勘違いしているなら教えてやる。狙いは(はな)っからあいつを掻っ攫うことだ」

 

 ネフシュタンの少女は、未だに踏み付け続けている翼に視線を戻して、倒れた木々の中で痛みに悶える響を指差しながら自身の目的を語った。

 

「冷たく接しられてるのに痛い思いして助けに来てくれるなんて、良いお仲間をお持ちじゃねえか。けど、良いお仲間は勿論のこと、鎧だってあんたには過ぎたもんだろうよ」

 

「繰り返すものかと、私は誓った!」

 

 罵るネフシュタンの少女に翼の目付きが更に鋭くなり、翼は持っていた大剣を空へ向けて掲げる。

 

【千ノ落涙】

 

 翼を避けてネフシュタンの少女に降り掛かる千ノ落涙。少女は千ノ落涙を跳んで避け、踏み付ける足が無くなったことで自由になった翼は、早急に立ち上がってその場を離れる。

 

 尚も続く翼とネフシュタンの少女の激突を見ながら、痛みを堪える響は自分に何が出来るかを思案する。

 

「どうする、どうすれば良い!? ……そうだ、アームドギア! アームドギアがあるじゃないか!」

 

 未だに自身が顕現させることが叶わずにいるアームドギアに希望を見出す響。

 

「奏さんみたいにあの槍を出すことが出来れば、きっと翼さんを助けること出来る筈だ! おい、ガングニール! お前も翼さんとは長い付き合いだろ! 奏さんのもう1人の相棒として、翼さんや翼さんの天羽々斬と一緒に戦ってたんだろうが!なら、出ろ! 翼さんを助ける為に出てこい、アームドギア!」

 

 響は自身の纏うガングニールに訴え掛けながら何度も腕を振ったりと色々試すが、ガングニールは響の想いに応えず沈黙したままだった。

 

「何でだよ、ガングニール!? 俺がまだ未熟だからダメなのか!? それとも、俺にはお前を本当の意味で振るう資格なんて無いってことか!? くそっ、どうすれば良いんだよっっ!?!!?」

 

 見出した希望にも見放され、響は何も出来ない自分の不甲斐無さを恥じ、拳を地面に叩き付けながら嘆くように吠える。

 

 一方で、翼とネフシュタンの少女は大剣と鞭で鍔迫り合いを繰り広げて硬直状態に突入していた。

 

「鎧に振り回されている訳では無い。この強さは本物」

 

「ここでふんわり考え事たぁ? ()()てぇ!」

 

 独り言を呟く翼に、ネフシュタンの少女は罵倒しながら蹴りを入れる。翼はネフシュタンの少女の蹴りをバク転で躱して、そのままバク転を繰り返して距離を取る。

 

 対してネフシュタンの少女は、距離を取った翼に杖を向けて光を複数放つ。放たれた光からは、先程と同じようにノイズの群れが出現した。

 

 ノイズの攻撃を翼は大剣で受け止め、弾き返した直後にノイズの体を斬り裂いて後ろに控えていたノイズも続け様に斬り捨てる。

 

 距離の開いた位置にいるノイズにも素早く攻め入り、翼はノイズを迅速且つ討ち漏らしの無い様に全てを討滅した。

 

 翼は蒼ノ一閃を放ち、前にいたノイズごと後ろに控えているネフシュタンの少女を狙う。ノイズは簡単に斬り捨てられ、後ろにいた少女に蒼ノ一閃が命中するが、巻き起る爆煙の中から無傷の少女が出てくる。

 

 ネフシュタンの少女は、翼に向かって鞭を振るう。翼は、大剣で鞭を弾いて少女に斬り掛かり、少女は引き戻した鞭で大剣を受け止めてから前に押し退ける。

 

 そこから少女達によるインファイトに突入し、互いの攻撃は互いに避けられる。

 

 インファイトを止めて距離を取った翼は、左手に持った短刀をネフシュタンの少女に向けて3本投擲する。

 

「ちょせえ!」

 

 しかし、ネフシュタンの少女は鞭を振るって軽々と3本の短刀を弾き飛ばし、弾かれた短刀が宙を舞う。

 

 ネフシュタンの少女は、鞭の先端に黒い雷を内包した白いエネルギー状の球体を生成し、鞭を振るってその球体を翼目掛けて投げ付ける。

 

【NIRVANA GEDON】

 

 飛来するNIRVANA(ニルヴァーナ) GEDON(ゲドン)を、翼は大剣で受け止める。

 

「翼さん!」

 

 響が、翼の身を案じて声を張り上げてその名を呼ぶ。

 

 翼は、受け止めた大剣でネフシュタンの少女が繰り出した技に耐えようとするが、攻撃を受け止め切ることは出来ず白いエネルギー球は爆発して、爆炎と爆風に乗って翼は吹き飛ばされる。

 

 吹き飛ばされた翼は何度も地面に打ち付けられながら転がり、持っていた大剣も通常状態の日本刀の形態に戻ってしまった。

 

「ふっ、まるで出来損ない?」

 

 無様に地に這い蹲る翼を見下しながら、ネフシュタンの少女は罵倒を吐き捨てる。

 

「確かに。私は出来損ないだ……」

 

「あぁん?」

 

「この身を一振りの剣と鍛えてきた筈なのに、あの日、無様に生き残ってしまった。出来損ないの剣として、恥を晒してきた」

 

 翼は絞り出すような声で自分の無様さを語りながら、痛みとダメージで震える体を地面に突き立てた剣を支えにして、どうにか起き上がらせる。

 

「だが、それも今日までのこと。奪われたネフシュタンを取り戻すことで、この身の汚名を雪がせてもらう!」

 

 震える体で立ち上がった翼は、出来る限りの好戦的な笑みを浮かべながら啖呵を切る。

 

「そうかい? 脱がせるものなら脱がして、何?」

 

 ネフシュタンの少女は、啖呵を切った翼を沈める為に行動を起こそうとしたが、その体が自由に動かないことに気付いて困惑し、辺りを見渡す。

 

 ネフシュタンの少女は、すぐに身動きの出来ない原因を見つけ出した。少女の視線の先には、先程に少女が弾き飛ばした短刀の内の1本が自身の影に突き刺さっている光景があった。

 

【影縫い】

 

 それは、翼が(あらかじ)め仕込んでおいた影縫いという技だった。その効果は、対象の影に突き刺すことで、対象本体の身動きを封じるというものである。

 

「こんなもんで、あたしの動きを!? まさか、お前……」

 

 最初は強気だったネフシュタンの少女は、翼の目論見に気付いて目を見開いた。

 

「月が覗いている内に決着をつけましょう」

 

 意味深な笑みを浮かべる翼。影縫いは、対象の影が出ている間にしか効果を発揮しない。故に、翼は月光で影が出ている間に決着をつけようとしている。

 

「歌うのか、絶唱を?」

 

「翼さん!」

 

 翼が何をしようとしてるかを知るネフシュタンの少女は、思わずその身を後ろに引き、響は腕を押さえながら翼の名を呼ぶ。

 

「防人の生き様、覚悟を見せてあげる! あなたの胸に、焼き付けなさい!」

 

 ここで初めて響の呼び掛けに振り向いた翼は、手に持つ剣の切っ先を響に向け、強く見開かれた目で響を見詰めながら言葉を張り上げる。

 

「……っ!」

 

「つ、翼、さん」

 

 互いに目が合い、覚悟を決めたような面持ちの強い瞳で響を見る翼に、響は何も言えずに口籠もってしまう。

 

「やらせるかよ、好きに、勝手に! はっ!?」

 

 影縫いの拘束から脱しようと、身を捩るように動こうとするネフシュタンの少女だったが、不意に翼を見て動きを止めた。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

 翼は、天に向けて剣の切っ先を向けながら歌を──絶唱を歌い始めた。

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

 天に向けていた剣を収め、動こうとするネフシュタンの少女に向かって歩み寄って行く翼。

 

(まさか、この歌って……!)

 

 響は、その何処か幻想的で、とても儚く聞こえるこの歌を知っている。そう、この歌は、2年前のライブ会場での惨劇の時、天羽奏が最後に歌っていた歌と同じものなのだ。

 

 響は知っている。この歌の持つ莫大な威力の力と、歌を歌った者が背負う代償とその末路を。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

「ダメだ、翼さん! 歌っちゃダメだぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 尚も歌い続ける翼を止めようと、響は喉が張り裂けんばかりに声を張り上げるが、翼の歌は止まることなく歌われ続ける。

 

 ネフシュタンの少女は、どうにか動かすことが出来た右腕で杖のようなものを再度取り出し、杖を突き出してノイズを出現させるが、その時には既に翼は少女の目前まで迫ってきていた。

 

「翼ぁ! 止めるぉ!!!」

 

 全くなっていない敬語から遂に尊敬する人への敬称まで無くなり、響は翼を呼び捨てにして、発音までも可笑しくなった声を張り上げる。

 

 しかし、響の想いが込もった静止を呼び掛ける必死の叫びは翼に届かない。

 

「Emustolronzen fine el zizzl」

 

 そして、翼はネフシュタンの少女の肩を掴みながら絶唱を歌い切ったのだった。最後まで歌を歌い切った翼は口角を吊り上げて笑みを浮かべ、翼の口から血が流れ出た。

 

 その直後、翼を中心に凄まじい衝撃波が巻き起こった。

 

「うあぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁっ!!?」

 

 巻き起こった衝撃波をゼロ距離且つ無防備の状態で真正面から喰らったネフシュタンの少女は悲鳴を上げ、纏っていた鎧や目を隠すバイザーに罅が入っていく。

 

 エネルギーを伴った衝撃波によって周辺にいたノイズは地表ごと消し飛ばさる。衝撃波に巻き込まれた響は、翼に向かって手を伸ばし続けていた。

 

 捲き起こる衝撃波の中で、翼は掴んでいたネフシュタンの少女の肩を離した。直後、少女は衝撃波によって吹き飛ばされた。

 

「うあぁぁぁあああぁぁぁっっ!!?!?!?」

 

 ネフシュタンの少女は、身に纏う鎧の様々な箇所を破壊されながら吹き飛んでいき、かなりの距離が開いた場所でエネルギー状の衝撃波を伴って地面に叩き付けられた。その際に多量の砂埃が宙を舞った。

 

 砂埃が晴れてネフシュタンの少女の姿が露わになる。

 

「あ……あぁ……あ……」

 

 少女は、鎧が破壊された箇所から色白の肌を露出させ、下半身を水に浸らせながらコンクリートの壁を背にして仰向けに倒れていた。

 

「あがっ!? あぅがっ!?」

 

 直後、ネフシュタンの少女の顔が歪み、少女は苦悶の声を漏らす。

 

 破壊された鎧が自己修復を始めていた。しかし、その修復は少女の体を巻き込んで、まるで彼女の体を蝕んでいくようであった。

 

「ちぃ!」

 

 自分の有様を見て、これ以上の戦闘続行が不可能だと判断したネフシュタンの少女は、身を翻して夜空の闇の中に消えていった。

 

「翼さん!」

 

 翼が立っている場所を中心にして出来上がった土だけのクレーターを、翼の名を呼びながら響は駆ける。すると、走る響を後ろからやって来た車が追い抜いて響の前に止まる。

 

「無事か、翼!?」

 

 事態を知ってやって来た弦十郎は、車から降りて翼に呼び掛け、後ろにいた響が弦十郎よりも前に躍り出る。

 

「私とて、人類守護の役割を果たす防人」

 

 弦十郎の呼び掛けに応えるように響達の方へ体ごと振り返る翼。しかし、響は翼の今の姿を見て目を見開いた。

 

 ボロボロになったアンダースーツ、所々によって破損した箇所が違う罅割れた装甲、無くなった片方の脚部のブレード、そして目と口からぼたぼたと血を流し続ける翼の姿がそこにはあった。

 

「こんなところで、折れる剣じゃありません」

 

 翼がそう言葉を口にした直後、翼は膝から崩れ落ちる。翼が地面に膝を着く直前、素早く駆け出した響が前に倒れ行く翼の体を抱き留めた。

 

 抱き留めた響の顔と体に、翼の目と口から流れ出た血が付着する。力無く自身に寄り掛かる翼の体を響は片方の手で優しく抱き締め、もう片方の空いた手を見詰める。

 

(……何も出来なかった。何も、掴めなかった……ッ!!)

 

 掴もうとした手も、守ろうとした笑顔も、何1つ為し得ることの出来なかった翼の血で濡れた空虚な手を見詰める響。

 

「あぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

 何も出来なかった自分自身への怒りを吐き出すように喉が張り裂けんばかりの咆哮を上げる響。その後悔と怒りの念が込められた咆哮は、夜の闇の中へ溶け込むように消えていくのだった。




・原作ビッキーと今作ビッキーとの相違点コーナー

(1)響、ネフシュタンに戦いを挑む
──今作ビッキーは、粘液で捕まえられずにノイズを撃破。それでもって、翼を助ける為にネフシュタンのクリスちゃんに戦いを挑みました。しかし、結果は惨敗。これは、戦闘経験や技術、自身の武装に対する理解度などの様々な要素が現在の響よりもクリスちゃんの方が遥かに高いからです。

(2)響、ガングニールに訴えかける
──これは個人的に男の子っぽい演出だと思ってる。自分の武器に語りかける男の子の主人公って良くないですか?

(3)響、絶唱を歌う翼を止めようとする
──今作ビッキーは、絶唱の歌詞と絶唱をした奏がどうなったかを鮮明に覚えています。だから、絶唱を歌う翼を止めようとしました。

(4)響、翼を抱き留めて咆哮を上げる
──原作ビッキーのように座りこまず、ちゃんと立っていた且つ弦十郎よりも前に出てたから抱き留めることができました。そして、今作ビッキーは戦いに中途半端に参加して何も出来なかった、正しく全てが中途半端に終わり、結果として何も出来なかった自分への怒りを咆哮にして吐き出しました。

 今回で僕が挙げるのは以上です。他に気になる点がありましたら感想に書いて下さい。今後の展開に差し支えない範囲でお答えしていきます。

 初めて絶唱顔を見た時の衝撃は凄まじかったですよね。EDの映像のこともあって、これってもしかして鬱作品か!?って当初は思わず身構えちゃいましたよ。

 この時のクリスちゃんって、すっごい悪役(ヒール)っぽいですよね。今ではすっかり愛されキャラですけど。

 シンフォギアって話が進む度にキャラクターの性格面が変わりますよね。響は普通の女の子からイケメンになって、翼さんは乙女成分が抜け切って、クリスちゃんは悪役(ヒール)から愛されキャラにシフトして、393は愛の深さが今では深淵なんて生温いレベルになりましたしね。

 次回は響の一念発起回!

 簡単に言うと、男なら誰かの為に強くなれ!って感じの回ですかね。……え? どっちかって言うと、今の響は青い果実だろって? なら、そっちもってことで!

 上記内容のネタが分かる人は、きっと特撮が好きな人。そして、僕と一緒に美味い酒が飲めると思う。

 ちょっと長くなりましたね。それではそろそろ閉めようとと思います。

 それでは、次回もお楽しみに!
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