ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 冒険家の歩き方   作:amon

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第16話『望まぬ終点……そこで得たものは……の巻』

 

 

『グオオオオオォォォォッッ!!??』

 

 断末魔の叫びを上げ、相手が倒れる――緑色の肌に、頭とは別に腹にも顔がある異形の怪物。見る者が見れば1発で分かるその姿……今、俺が倒したのはドラクエ4のラスボス『デスピサロ』だった。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……て、手こずらせやがって……!」

 

 1人で戦っていたとは言え、今の俺がここまで消耗を強いられるとは……ゲームとは明らかにレベルが違う。

 

 

 『破邪の洞窟』地下190階以降……そこからは、迷宮ではなくボスとの連戦だった。

 

 1階層ごとにボスがいて、それを倒していく事で奥への扉が開く仕組み……俺は地下191階・192階のボスを見て、その仕組みを大凡悟った。

 

 各階のボスは、歴代ドラクエのボス達の幻影だったのだ。

 

 

 地下190階は、ドラクエ1の竜王――。

 

 地下191・192階は、ドラクエ2のハーゴンとシドー――。

 

 地下193・194・195・196・197階は、ドラクエ3のバラモス・キングヒドラ・バラモスブロス・バラモスゾンビ・ゾーマ――。

 

 地下198・199階はドラクエ4のエスターク・デスピサロ――。

 

 

 で、ついさっき倒したのがデスピサロ最終形態だったという訳だ。倒したボス達は全て、倒れた後に黒い霧になって消えていった。

 

 正直を言えば、迷宮の方が幾らか楽だった。各階のボス達は、今の俺でも容易には倒せない程の凄まじい力を持っていたのだ。明らかに上方修正されている……もしかすると、俺のレベルに反応しているのかもしれない。

 

 真相は不明だが……とにかく、1体倒すのに数日ぐらい掛かった。かなりの傷を負ったし、体力もMPも随分消耗させられた。

 

 

―――――――

エイト

性別:男

レベル:102

―――――――――――

E竜神王の剣(攻+137)

E竜神の盾 (守+60)

E竜神の鎧(守+110)

E竜神の兜(守+50)

―――――――――――

力:413

素早さ:232

身の守り:230

賢さ:370

攻撃力:575

守備力:450

最大HP:818

最大MP:486

Ex:7326590

――――――――――――――――――――――――――――――――

剣スキル:100  『剣神』(剣 攻+25 会心率UP)

槍スキル:51  『スターランサー』(槍 攻+10 会心率UP)

ブーメラン:55  『シューティングロード』(ブーメラン 攻+15)

格闘スキル:55  『格闘の師範』(素手 攻+20 会心率UP)

冒険心:100  『真の冒険者』(消費MP1/2)

――――――――――――――――――――――――――――――――

エイト

HP:116

MP:8

Lv:102

――――――――――――――――

ホイミ ベホイミ

ベホマ ベホマズン

キアリー キアリク

リレミト ルーラ

トベルーラ リリルーラ

トヘロス ザオラル

ギラ ベギラマ

ベギラゴン マホトーン

イオ イオラ

メガンテ

ドラゴン斬り 火炎斬り

メタル斬り 隼斬り

ミラクルソード アルテマソード

ドラゴンソウル

疾風突き 一閃突き

五月雨突き 薙ぎ払い

クロスカッター バーニングバード

超パワフルスロー 大防御

石つぶて 正拳突き

真空波 闘気弾

闘気砲

――――――――――――――――

 

 

 各階のボス――魔王達の経験値は凄まじく、俺のレベルは遂に100を超えた。俺は転生の際に貰った特典で、ステータスにカンストがない。よって本来はあり得ないレベル102というのが成り立っている。年齢による衰えはあるらしいが、生憎俺は育ち盛り伸び盛りの17歳――衰える道理が無い。

 

 あと、剣スキルを極めて覚えた特技『ドラゴンソウル』――北米版のドラクエ8で主人公が覚える技だった。あれは確かレベルが上がると自然に覚える特技だったはずだが、俺の場合は差し替えられているらしい。1度使ってみたが、かなり強力だ――闘気を纏い相手に突撃する技で、ゾーマを闇の衣ごと貫いて倒せたほどに。

 

 ここまで来ると、もはや敵と呼べる奴がいるのかどうかさえ……いや、いかんいかん!こういう油断が思わぬ隙を生む。

 

「とにかく、回復を……『ベホマ』!」

 

 呪文を唱えると、俺の全身が癒しの光に包まれ、傷が消えていく。

 

 やがて、傷も疲労も綺麗に消えてなくなった。

 

「ふぅ、体力は全快だが、まいったな……もう魔法の聖水がない」

 

 迷宮のモンスター共ぐらいなら、MPを使わずに倒せたが、歴代ドラクエのボス達ともなるとそうはいかない。出し惜しみも出来ないので、呪文も特技もバシバシ使い、戦闘が終わる度に持っていた魔法の聖水で回復していたが……遂に底を付いた。

 

「う~ん、どうするか……」

 

 体力が幾ら全快していても、MPが無ければ強力な呪文も、『アルテマソード』『ドラゴンソウル』等の特技も使えない。

 

 この先もボスが続く可能性が高い以上、MPを使わない特技だけでは心許ないどころか無理だ。さっきのデスピサロも、呪文や特技を駆使して尚かなりの苦戦を強いられた……。

 

「これは……引き返すしかないか」

 

 引き返してまた戻ってくれば、あのボス達が復活して立ちはだかる可能性が高い気がするが、止むを得ん。このまま無理に進んで死ねば元も子もない。

 

 決断し、引き返そうと振り返った――その時。

 

『待て』

 

「っ!誰だ!?」

 

 ハッキリと聞こえた呼び止める声に、俺は再び振り返り、辺りを見渡す。だが、声の主の影もなく、それらしき気配も感じられない……。

 

『奥へと進め』

 

「なに……?」

 

ギィィィ……

 

 声に続く様に、奥へと続く扉が勝手に開いた。

 

「…………」

 

 俺はその開いた扉を見つめながらも、足が中々動かせなかった。何故なら、怪し過ぎるから……。

 

 突然、どこからともなく声が聞こえ、『奥へ進め』なんて言われても、罠ではないかと疑わないなんて無理な話だ。しかも今の俺はMP切れの上にそれを回復する術がない状態……これ以上、強敵と戦うのは危険だ。

 

ボオォォォ……!

 

「っ!今度はなんだ!?」

 

 突如、周りに光が集まり、俺は光の円柱の中に立たされる状態になる。

 

「っ!?MPが、回復してる……!」

 

 光の中に居続けると、程なく俺のMPは全快した。なんだこれは……?『これで万全の状態になったから大丈夫だろう。安心して入ってこい』とでも言うつもりか?そうまでして俺を招き入れたいのか?

 

「………………………………よし」

 

 大分悩んだが、行ってみる事にした。確かに体力もMPも全快なら、大抵の状況には対処できる。まあ流石に、今まで倒したボスが総掛かりで来たら死ぬが……幾らなんでもそんな状況にはならないだろう。それなら今まで各階で1体ずつ戦ったのは何だったんだ?って事になるからな。

 

 ともかく、俺は剣を片手に警戒しつつ奥への扉を潜り、地下への階段を下りた――。

 

 

 

「なんだ、ここは……?」

 

 階段を降り切った先には、また妙な空間が広がっていた。

 

 これまでと同じくらいの広さの石壁と石畳の部屋に、砂時計が柱の様に立ち並んでいる。その砂時計も妙な代物で、普通に砂が落ちている物と、逆に下から上に砂が上がっている物がある。数は大体半々ずつだ……。

 

 そして、部屋の奥の壁際には人の曖昧なシルエットを形取った巨大な像……正直、気持ちの悪い部屋だ。

 

『待っていた』

 

「っ!さっきの奴だな!?どこだ!出て来いッ!!」

 

 周りを見渡す――が、誰もいないし気配もない。ここはもう行き止まり――つまり『破邪の洞窟』の最深部だ。この部屋の構造で隠れるところなんてないはずだが……。

 

『我は、汝ら人間の神より分かたれし意思……我は、そなたの様な人間を永い間待っていた』

 

「何……?」

 

 辺りを見渡していると、不意に巨像が目に入り、その目の部分が光っているのに気付く。あれが、俺に語りかけているのか?

 

『我は、この迷宮の底にて、試練を乗り越えてくる者を待ち続けてきた。力、魔力、心……人間にしてそれらを兼ね備えし者を』

 

 まるで『竜の騎士』みたいな話だ……。

 

「……それが、俺だと?」

 

『然り。ここに辿り着いたそなたには、確かな資格がある。そなたに伝えよう、『真なる時の秘法』を』

 

「真なる、時の秘法……?」

 

『時を自在に操る秘法……それを得られるのは、強靭なる肉体、強大なる魔力、正しき心を兼ね備えし者のみ』

 

 つまり……この『破邪の洞窟』は、その秘法とやらを会得できる人間を選別するのが隠された目的だった訳か。呪文の契約や途中にあった宝物などは、おまけみたいなものだったと……。

 

『万物の時を停め、逆行させる……しかし、それは万象の摂理に反する法。並の呪文とは比較にならぬ魔力を要し、肉体にも膨大な負荷が掛かる。乱用してはならぬ……』

 

「ふぅん……」

 

 確かに、時間を操るなんて大層な事をすれば、何かしらのリスクがあって当然だろう。

 

 説明を聞く限り、時間の操作が出来る範囲は極限られている。停止、逆行、どちらの操作にしろ範囲に比例して消費されるMPと肉体への負荷とやらは増大していくと見た……それも爆発的に。

 

 そこまでして数分や数秒の時間を操っても、出来る事が果たしてあるのだろうか?

 

『これより、その秘法をそなたに刻もう。そなたの心の赴くままに、役立ててみるが良い』

 

 瞬間、俺の足下に複雑な魔法陣が現れ、光の柱に囲まれる。頭の中に、何かが流れ込んでくる感覚……なるほど、これがその秘法とやらが刻まれていく感覚か。

 

 やがて光が止み、魔法陣も消えた。少し意識を集中すると、確かに新しい呪文を覚えたと分かる。この感覚は言葉で表すのは難しい。コマンド画面でも確認してみよう……。

 

 

―――――――

エイト

性別:男

レベル:102

―――――――――――

E竜神王の剣(攻+137)

E竜神の盾 (守+60)

E竜神の鎧(守+110)

E竜神の兜(守+50)

―――――――――――

力:413

素早さ:232

身の守り:230

賢さ:370

攻撃力:575

守備力:450

最大HP:818

最大MP:486

Ex:7326590

――――――――――――――――――――――――――――――――

剣スキル:100  『剣神』(剣 攻+25 会心率UP)

槍スキル:51  『スターランサー』(槍 攻+10 会心率UP)

ブーメラン:55  『シューティングロード』(ブーメラン 攻+15)

格闘スキル:55  『格闘の師範』(素手 攻+20 会心率UP)

冒険心:100  『真の冒険者』(消費MP1/2)

――――――――――――――――――――――――――――――――

エイト

HP:818

MP:486

Lv:102

――――――――――――――――――――

ホイミ ベホイミ

ベホマ ベホマズン

キアリー キアリク

リレミト ルーラ

トベルーラ リリルーラ

トヘロス ザオラル

ギラ ベギラマ

ベギラゴン マホトーン

イオ イオラ

メガンテ タイムストップ

タイムリバース

ドラゴン斬り 火炎斬り

メタル斬り 隼斬り

ミラクルソード アルテマソード

ドラゴンソウル

疾風突き 一閃突き

五月雨突き 薙ぎ払い

クロスカッター バーニングバード

超パワフルスロー 大防御

石つぶて 正拳突き

真空波 闘気弾

闘気砲

――――――――――――――――――――

 

 

 こちらでも確認した……新しい呪文が2つ。『タイムストップ』『タイムリバース』――名前の通り、効果はそれぞれ停止と逆行だ。

 

 『タイムストップ』は、対象の時間を停止させる。ただし、1秒停める毎にMPを30も消費する……つまり、消費MPが1/2で済む今の俺でも止められる時間は最長で32秒が限界ということだ。しかも、停止させている間はあらゆる干渉を受け付けない――つまり『アストロン』を掛けたのと同じ状態になるという事だ。時間稼ぎ程度にしか使えそうにないな……。

 

 『タイムリバース』は、対象の時間を巻き戻す。ただし、巻き戻す時間範囲が1秒増す毎にMPを50消費……消費MP1/2にしても戻せる時間は最長19秒……。

 

 どちらも限界を越えて使うと身体に負荷が掛かり、命を縮めるらしい。しかも、対象に出来るのは人間にしろモンスターにしろ1個体だけ。

 

 ハッキリ言おう……何だ、コレ?消耗も制約も厳しい割に、効果は大した事ない。地下200階までの厳しい道のりを越えてまで手に入れる価値がある呪文とはとても思えない。

 

 これなら寧ろ、更に奥まで迷宮が続いていた方が、俺的には良かったかも知れない……。

 

 

 

 その後……俺は最深部から来た道をまた歩いて戻った。あの『真なる時の秘法』の番人から、地上に転送してくれるという申し出があったが断った。

 

 何とも言えない脱力感……前人未到の『破邪の洞窟』最深部到達を成し遂げたというのに、俺の心に達成感はない……最後に得られたものが魅力的とは程遠かったからだ。

 

 ともあれ、これでもう『破邪の洞窟』の冒険は終わってしまった。また、新しい冒険を探さなければ……。

 

 『冒険』を探す冒険……字面は良いが、実行する当人としてはなんだか微妙だ。

 

 

 


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