「自分一人で着られそうになかったら、僕が着付けてあげるけど」
「出来る限り自分でやるからいい。毎度手伝ってもらうわけにはいかないし」
「そう?」
「帯の結び方が変だね。他は大体出来ているようだけれど」
女の子の結び方じゃないよ、といって髭切は勝手に結び直す。
「ちゃんと結べたら何でもいいじゃん…」
「いやいや、女の子なんだから身だしなみには気を使おうよ。台無しだよ?」
「だから、僕は見苦しくない程度でいいんだってば」
「そういうこと言わないの。…これでよしと」
「…正直、本人の了解を得ずにやるのはどうかと思いますが」
「大将。俺のこと懐に入れてよ」
信濃が目をキラキラさせて本体を差し出す。
「…え、うん…」
小鳥は思わず受け取ってしまったもののどうするべきか悩む。懐に入れるという事は、帯にはさむのではなく、着物の胸元のあたりに挟むということなのだろうが、入るのかこれ。落としそうな気がするのだが。
「入れてくれないの?」
「…落としそうな気がするんだけど」
「大丈夫だって」
ぐいっと入れる。
「…せくはらかな?」
「だから俺は邪念はないんだってば」
「小鳥は愛らしいのぅ」
小狐丸は金色を細め、静かに床に押し倒した小鳥の手に口付ける。
「こぎつねまる」
「怖いか?まあ、酷くはせぬ故、案ずるな」
「せくはらはノーセンキューなので、全力で抵抗しようと思う訳ですが」
「嫌よ嫌よもなんとやら、じゃろう?そう照れずともよいのじゃぞ」
「負傷状態になったらちゃんと手入れするつもりあるけど、本当やめない?」
小鳥はこてりと首を傾げる。その足元には、霊力集中の副作用たる燐光が現れている。
「…おぬし、なかなかに冗談が通じぬな?」
「冗談で済むならいいけど」
「私としてはぬしは思い切り私の魔羅でよがり啼かせてやりたいのじゃがのう」
「…?小狐丸、いじめっ子なの?」
「酷くされる方が良いのであればそうしてやるが?」
「俺、やられたらやり返す主義だから暴力には暴力で返すけど」
「その細腕でか?」
「僕は喧嘩を買えばいいの?」
「…色気のない会話じゃのう。私の気勢を削ぎ落そうという策か?」
「?」
「・・・」
「離してほしいんだけど」
「…従順かと思えば、意外と強情じゃの」
「自己主張しないで意を汲んでもらえるとは思ってないし」
「…まあ、汲まんじゃろうな」
小狐丸は手を緩めた。
「小鳥ちゃん、着物が乱れているよ」
光忠がそう言って小鳥の着物を直しているところに、鶴丸が通りかかる。
「…光忠にそんな趣味が在るとは思わなかったぜ」
「え、は?」
「鶴丸、光忠はろりこんじゃないぞ」
「それはわからないだろう。表に出してないだけかもしれない」
「鶴丸さん、僕全くそういうんじゃないからね?!僕小鳥ちゃんのことは保護対象としか思ってないからね?」
「普通の男の人はおっぱいの大きい大人のおねいさんの方が好きなんでしょ、僕知ってる」
「小鳥ちゃんはちょっと黙っててくれるかな」
「ふむ、それは誰の見立てだ?」
「?着物の事?髭切だよ」
「…成程なあ。…アレはその割に何故そなたと契約を結び直さんのだろうな」
「契約って、そんなに大事なものなの?」
「当然にな。契約は我らを縛るものだが、同時に主と繋がるためのものでもある。契約を通じて傍におらずとも主の存在を感じ取ることもできる。…まあ、簡単に結んだり断ったりできん繋がりとなるわけだな」
「んー…まあ、なんとなく、わかったような、わからないような…」
「…俺も、そなたが気に入らんというわけではないのだがな」
「んー…僕、まだまだ勉強が足りなくて頼りないよね。ごめん」
「いや、一朝一夕に学べるものではない故、仕方ない。向上心があるならよい」
「…ありがとう、三日月」
三日月は小鳥の頭を撫でる。小鳥は目を細めた。
「…兄者は随分君を気に入っているようだな」
「そう?」
「迷惑をかけていないか?兄者はあの性格だろう」
「んー…時々、強引だなって思うけど、迷惑ってほどのことはないかな。…何だと思われてるんだろうとは思うけど」
「…兄者から君の話はよく聞くが…まあ、可愛い年少の子と思っているのではないか」
短刀とそう変わらない扱いというか。
「…俺、そんなに子供じゃないんだけどなあ」
「1000年近く過ごしてきた俺たちから見れば、人の子など皆ほんの子供のようなものだ」
「…そう言われると何とも言いようがないけど」
大人に見えないのは承知しているがもにょる。