一回上限近くまで練度が上がってたが、堕ちた影響で特付いてちょいくらいまで下がっている
「私は、数珠丸恒次と申します。人の価値観すら幾度と変わりゆく長き時の中、仏道とは何かを見つめて参りました」
「僕は小鳥だよ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いしますね」
数珠丸は微笑し小鳥の手を取る。
「この刻より、私はあなたの刀であり、あなたの行く先に私も付き従いましょう」
「んー、何か大袈裟な気がするなあ。僕は自分の出来る事をするだけだよ」
「常に最善を尽くすよう心がけるのは良い事ですよ」
数珠丸と小鳥の間にはしっかりと正規の主従契約の縁が結ばれている。小鳥はそれをよくわかっていないが。
「うーんでも、それが本当に最善かどうかなんて、どうしたらわかるものかな」
「少なくとも、己のした事には自信と責任を持つものですよ」
「うん」
「…驚いた。たった七日でこうまで変わるとはね」
「この子は物覚えが良く、素直で呑み込みが早いですから」
「?そんな言われる程、一目でわかるような変化ってあったっけ」
「わかるものには、わかるものなのですよ」
「んー、俺はわからない人だからわからないってこと?」
「…かもしれませんね」
「個刃的には、それで見鬼でないというのは不思議な限りなんだけど」
「霊力があることが即ち見鬼であるというわけではありませんからね…」
青江は肩をすくめる。
「それにしても、主にはどう報告しようかな。君たちのことだけ切り取って伝えても、ただの世間話なんだよね」
「そうですね。こちらの本丸は私以外刀がおらず、門を凍結されていること以外に大した問題はありませんから」
「えっ」
「鍛刀するわけにもいかないしな。…まあ、そもそも資材がないけど」
「いやいやいや、それって所謂政府がブラックって案件だよね?何でそんな和やかな雰囲気なの」
「こちらから行動を起こす手段が見当たらないもので」
「さし当たって困窮はしてないし」
「困ってないの?本気で言ってる?」
「やらなきゃならないと判断したことが出来ない状況にはないし、日常生活は送れているし、命の危険とかは特に感じないし」
「この子は遡行軍にも政府にも、特に敵意は持っていないのですよ」
「……なんだか、なるべくしてそうなった感じがするんだけど。おそらく権力や後ろ盾なんかはないんだろう?」
「元々一般人だからね」
「一週間で刀の根深い穢れが祓える者は一般人とは言わないよ」
「って言われても、生粋の一般人だし。身内にオカルト関係も政府関係もいないし」
「・・・」
本丸の畑の生育具合は審神者や世話した刀剣の霊力に影響を受ける。ざっくり言うと、注がれる霊力が多いほど早く、良質な程味が良くなる。故に、規格外の霊力量を誇りそれなりに良質の霊力を持つ小鳥と、天下五剣の一振りたる数珠丸の家庭菜園は一晩でよく熟れた実を付ける二人で消費するには十分すぎるものになっていた。寧ろ、盛大に余っている。
「不思議畑、張り切り過ぎだと思うの」
「余らせてしまうのは、少々勿体ないですね…」
野菜を買わなくても良いのはいいのだが、余り過ぎるのはいただけない。冷蔵庫が保存性に優れた家電だといっても、限度はあるのだ。収納量も、保存期間も。消費するものがいれば問題ないのだろうが、この本丸には二人しかいない。式神たちもものを食べられないわけではないが、料理よりも菓子を好む。
「んー…今度さだつぐどのに会ったらおすそ分けする?」
「困惑されそうですね」
少しずつではあるが、本丸の使われていない部屋の掃除もしている。それよりも料理や畑の方に時間を使っているが。加工食品の類も、手作りに挑戦しているのだ。
「本丸に季節ってないのかな」
「景趣を切り替えることで擬似的に作り出す事は可能だそうですが…畑には関係ないようですね」
「ビニルハウスとかいらないのは便利なんだろうけどね」
本日のおやつはスイートポテトである。ちなみに本丸内で卵を取るための鶏と鶉も飼い始めている。流石に牛なんかはいないが、某牧場ゲー臭がしてきている。
「…まあ、僕もあんまり野菜の旬とか正しい種まき時期とか把握してるわけじゃないから、助かるといえば助かるんだけど」
ざっくりと収穫時期ならわかっているものもあるが、種まき時期は寧ろわからないものの方が多い。一年草なら収穫の時期よりは前になるだろうと予測を付けられないこともないのだが。