泥濘の中に眠る   作:ペンギン隊長

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なんだかんだ一ヶ月くらい 
数珠丸の来たことのない本丸 数珠丸側は大体面識がある
2P刀(祟刀)本丸


読めない墓標1

 

門が開くのを感じ取り、小鳥が顔を上げる。

「…どうされましたか?」

「誰か来た、みたい?」

きょとりと小鳥は首を傾げた。数珠丸は僅かに眉をしかめた。

「…そう、ですか」

「見に行こう」

「同行いたします」

 

 

 

門からこの本丸に降り立ったのは、黒い狐のような形をした式神(くだぎつね)だった。

「…狐さん?」

(わたくし)、政府から派遣されて参りました、くろのすけと申します。小鳥様と…数珠丸恒次、浄化はお済みでしたか」

「くろのすけ?」

「私は辞令の伝達とこの本丸の始末の為にやってまいりました。小鳥様には、異動の命が出ております。数珠丸恒次は…ああ、正式な契約を結んでおられるのですね。では、小鳥様に同行して構いません。…賢明な判断でしたね」

「・・・」

「んん?お引っ越し、するってこと?この本丸ってどうなるの?」

「初期化を行うことになります。廃棄にはせずとも良いようですので」

「なくなるってこと?」

「本日中の異動をお願いいたします。異動先には私が繋ぎますので」

「えっと…荷物をまとめなくっちゃ。あと、あと、式神さんたちにもお引越しするって教えて、それから…」

「小鳥」

「なに?」

「大人しく従うのですか?」

「逆らっても特に良いことなさそうだし。…恒次が一緒に来てくれるなら、僕は大丈夫だよ」

小鳥はふにゃりと笑ってみせた。数珠丸も微笑を返した。

 

 

「…冷蔵庫ごと持っていこう」

「えっ」

「ご飯は大事だよ。調理器具はどうにかなるけど、食材は確保しとかないと」

「……そう、ですね」

 

 

「…ん、付いてくるってこと?いいのかなあ」

式神たちの身振り手振りに小鳥は少し困った顔をした。

「…良いのではありませんか?彼らも気に入った主に仕えたいのでしょう」

「んー…じゃあ、よろしくね」

式神たちは敬礼して道具箱の中に入った。それを持っていけばいいらしい。

 

 

 

 

「…お化け屋敷みたいだね」

と小鳥はその本丸をこわごわ見て言うが、実際の所そこはお化け屋敷なんてものじゃない酷い有様である。特に瘴気の類が酷い。数珠丸にはそこに何があるのか良くわからないほどである。とても、嫌な感じがする。

「警戒を怠らないでください。此処は、危険です」

「うん…」

その時、くろのすけとは色の違う、式神(くだぎつね)が姿を現す。

「あなたが新しくこの本丸に寄越された審神者でしょうか」

「間違ってなかったらそうだと思うよ。僕は小鳥。君は?」

「私、この本丸の式を統括し、本丸システムの管理等を行っている管狐のこんのすけと申します」

「こんのすけ」

「はい」

「ってことは、今度は人柱まがいの軟禁じゃないってことかな、恒次」

「…私の時より厄介なことになっていそうな気はしますが、凍結は…どうなのでしょう」

「え、ええと…」

「…とりあえず、管理権限を書き換えた後にこんのすけの話を聞きましょう」

 

 

 

とりあえず、離れの小さな建物を拠点とした。二間だけだった所に改造を施し水回りと式神たちの仮居としての小部屋を追加している。

「…うーん、時間も時間だし、夕餉にしよう。こんのすけも食べる?好き嫌いとかある?」

「え、いえ…私は管狐ですので…」

「狐ならやっぱり油揚げとか好き?んー…流石に油揚げ自作するのはハードル高いかなあ」

「いえ、えっと、こんのすけはですね…」

「…嫌?」

「そういうことではないのですが…」

「…あまりこんのすけを困らせてはいけませんよ、小鳥。物珍しいのはわかりますが」

「むぅ、そりゃあ、式の子たちには甘味(おやつ)だけで良い、って断られてるけどぉ」

「ええ、私も先程のおやつで十分ですので!」

「…そっか」

小鳥は若干しょんぼりする。こんのすけの良心が少しチクチクした。

「夕餉は何作ろうか。恒次は食べたいものとかある?」

「そうですね…鳥の使ったものが良いですね」

ちなみに前の本丸で飼っていた卵鳥は庭に囲いを作って離してある。半分絞めたが。

「んー…じゃあ、親子丼かな。どんぶりってあったっけ」

なかっても作るけど、と小鳥は収納の中を覗く。

 

 

 

この本丸の刀剣は多数が堕ちているのだという。所謂祟刀となっているのだ。と言われても、小鳥にはピンとこないらしかった。逆に数珠丸は厳しい顔をしている。明らかに状況が悪くなっている。

「…正式に契約を結んでいて、よかった」

でなければ、くろのすけの反応からして、彼は他の審神者に引き取られることになっていたのだろう。小鳥が一人で沢山の人に害意を持っている(かもしれない)刀と戦わなければならないというのは、ぞっとする状況だ。見た目通り、小鳥は非力な少女なのだ。武力でかかられれば勝ち目はまずない。

 

 

 

 

 

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