カンストみっちゃん 倶利伽羅は低レベル組 みっちゃんは「
兄者は強迫観念に近いアレ
小鳥と数珠丸は二日目以降、自分たちから刀剣に接触することはしなかった。かといって、避けていたわけでもないし、自分から近付いてくるものには普通に友好的に接していたが。本丸内部の浄化のための清掃と内番に分類される事にいそしんでいた。そのおかげか、本丸内は大分清浄に近付いている。それでなのか、手入れの時は顕現が解けていた刀の内の何振りかが自力で再顕現してきている。
その中で比較的審神者に友好的に振る舞っているのが髭切と燭台切光忠(本刃ができたら光忠と呼んでほしいと言った為、小鳥は光忠と呼んでいる)である。
「小鳥ちゃんと数珠丸さんは畑仕事が好きなのかな?」
「不思議畑、ちゃんとお世話してあげるとはりきってくれるから面白くって」
白い青年は赤い瞳を細めて微笑する。
「…確かに、小鳥ちゃんたちが世話をすると豊作にもほどがあるよね」
「刃数があるので、余って無駄になる事をあまり心配しなくても良いですからね」
「さだつぐどの、おすそ分けしたら変な顔されたもんね」
「あれは困惑されても仕方ないと思いますが…」
「あ、さだつぐどの、こんにちは!」
「おや、よくわかったね。それとも、他の僕にもそんな風に挨拶してるのかい?」
「ううん、さだつぐどのはさだつぐどのだし、話した事ない人にわざわざ話しかけないよ」
「ふぅん…?ということは、君は僕と他の僕の区別がついているということでいいのかな」
「それが何かあるの?」
「うーん…自分の本丸の自分の刀剣はともかく、余所の刀剣の見分けがつく人は珍しいかな。僕もそこまで一般的な"にっかり青江"と差異があるわけじゃないし」
「ふぅん…」
「…暫くぶりですね、貞次殿」
「あぁ、暫くぶり、恒次さん。相変わらず…というわけでもない、のかな?」
「・・・」
数珠丸が言葉に迷っていると小鳥が言う。
「本丸、お引越ししたんだ。そしたら、お化け屋敷みたいなところだったの。今はそこまででもないかな、くらいにはなってきたけど」
青江が数珠丸を見ると数珠丸は沈痛な面持ちで首を振った。
「…それは大変だったね」
「…引き離されなかったのは、幸いでした。この子一人だったらどうなっていたことか…」
「…。流石に、そんな無茶苦茶なことはないと信じたいけれど」
「異動を告げた時の管狐の口ぶりからして、私が正式な契約を結んでいなければ他の審神者に引き取らせる心づもりだったようですから」
「…君、その子のこと大好きだよねぇ」
何やら色々な台詞を飲みこんだ顔で青江が言う。数珠丸は否定しない。
「ねぇ、できたら僕にも判る話をしてほしいんだけど」
ひょい、と髭切が小鳥を抱き上げて言う。紅色の瞳が青江を見ている。髪色も青江の知るものより金色に近いものになっているようだ。
「わからない?」
「そもそも彼は誰だい?」
「さだつぐどのは、えーと…余所の本丸のお友達だよ」
「僕はにっかり青江…ってのは知っているのかな。碧凪の刀だよ」
「僕は…まあ、この子が今いる本丸の刀だよ。他の僕との面識はありそうだね」
「まあ、一応うちにも君はいるからね」
「――お、いたいた。何やら面白そうなことをしているじゃないか、青江」
「余所の本丸の刀剣と審神者、か?」
鶴丸と鶯丸が青江に話しかける。小鳥はきょとんとして首を傾げた。
「おやおや、まさか覗き見でもしていたわけじゃないですよね?」
「はっはっは。この頃青江が余所の誰かと親しくしているらしいって話だったからって尾行なんかはしてないぜ。偶々ばったり出会っただけだ」
「浮いた話というわけでもなさそうなのが少々残念だったな」
「お二方とも暇を持て余してるみたいですね」
青江ははあと小さく溜息をついた。鶴丸はにかっと小鳥に改めて笑いかける。
「碧凪の鶴丸国永だ。俺みたいなのが突然来て驚いたか?」
「…おどろいた」
「おうおう、素直な子だなぁ」
「碧凪の鶯丸だ。そちらは…」
「僕は小鳥だよ」
「数珠丸恒次と申します」
「髭切だよ。…いや、鬼切だったかな。まあ、どちらにしても、鬼を切ることは僕の役目なんだけど」
「…鬼を切る、ねぇ」
「うん、斬らなきゃいけないんだけど、今は弟とこの子に止められていてね…鬼は斬らなきゃいけないんだけど」
「だって髭切が斬ろうとしてるの、"敵"じゃないよね?」
「元が味方だったかもしれなくとも、鬼は鬼だろう?僕は鬼切の太刀だからね」
「また友切に改名することにならなければ良いのですがね」
「あはは。友切は霊力を損ねてしまうから、勘弁してもらいたいなあ」
鶴丸は目を細める。
「随分厄介な知り合いができていたようだな」
「この子と恒次さんはいたって善良だと思うよ。…周りが色々と問題があるだけで」
「…もしかして僕、邪悪って言われてる?」
「…お世辞にも善良とは言えないのは事実でしょう」
「俺の顔に何かついているのか?」
じいっと己を見ている小鳥に気付いた鶯丸が聞く。
「ううん、本丸、目の色が金色か赤色のひとばっかりだから、そういうものだと思ってたんだけど、違うんだな、って」
「・・・」
「んー、そういえば君、他の僕たちに会った事ないんだっけ」
「うん、恒次のとこは他の刀いなかったから」
鶯丸と鶴丸は小鳥の様子を観察する。特に虐げられている様子はないし、刀剣男士に対する怯えも見られない。だが、髭切が明らかに清浄ではないというのも確かだ。
おそらく、下手に介入すれば逆効果になるのだろう。難しい案件であることは間違いない。
「…ところで髭切殿、いつまでその子を抱き上げているおつもりですか」
「うーん…満足するまで、かなぁ。ほら、この子抱えてるとなんだか落ち着くだろう?」
「・・・」
数珠丸は溜息をついた。
「…その子は猫の子ではないのですが」
「別に嫌がってるわけじゃないからいいだろう?」
「ずっと抱っこされてるのは嫌かなー」
「ありゃ」
「ばいばい、さだつぐどの、鶴丸殿、鶯丸殿」
「うん、ばいばい、小鳥ちゃん」
髭切に手を引かれて手を振る小鳥に青江は手を振り返した。
「…大丈夫かなぁ、あの子。恒次さんがいれば大丈夫、なのかなあ…」
「大丈夫だろう。少なくとも、殺されたりはしないんじゃないか」
「まあ、祟刀がああやって普通に(?)接する人間ならな。…単純にアイツの攻撃性の矛先が人間じゃないという可能性もあるが」
「だけどあの子、寧ろ刀剣じゃなくて人間の采配で危ない橋渡ってるんだよ、自分がどれだけ危い状況に居るのかわかってないんだ」
「あの子にとってはそうではない、ということじゃないか?」
宥めるように、鶯丸は言う。
「お前がそうして本気で心配しているように、かの本丸にも数珠丸以外にもあの子を本気で気遣ったり慈しんだりする刀がいるのではないだろうか」
「………ああ、そうか、浄化の方にばかり目がいっていたけれど、あの子は…だけど、だとするとますます恒次さんが苦労しそうな気がするよね…」
「君には何が似合うだろうねぇ。女の子だからやっぱり花柄の方がいいかな?」
「…あんまり女の子女の子してるのは好きじゃないんだけど」
呉服屋である。髭切は反物を手にとって楽しそうにしている。
「…そもそも、僕、着物は着なれてないし」
「大丈夫、君ならすぐ覚えられるよ。実際に使っていく方が覚えられるだろうし」
「…というか、そういうのって高いんじゃないの?」
「そういうのは気にしなくていいんだよ」
「えええ…」
「君、なんだか飾り気がないだろう?もう少し格好に気を使っても罰は当たらないと思うんだよね」
「僕、動きやすくてラフな格好の方が好きなんだけど…」
そもそも、掃除や畑の世話なんかが今の主な仕事なので華美な服装は合わない。汚れを気にしなくてもいい服の方がいいのである。
「…髭切殿」
「…駄目かい?」
「この子が飾り気のない服装ばかりしているのは確かですが、あまり己の我を押し付けすぎてはいけません」
結局、小袖を二着と袴、浴衣をあつらえることになった。二週間程したら取りにくればよいらしい。
「二週間かあ。今すぐにはできないんだね」
「刀剣男士の方々は好みも似てらっしゃいますし、大きく体格が変わる事もありませんからすぐご用意できるのですが、審神者の方々は皆同じとはいきませんから…」
「確かに、色々な人間がいるからねぇ」
「♪~」
小鳥は歌を口ずさみながら歩いていた。数珠丸は未だに本丸内の安全性について懐疑的だが、小鳥は危険だとは思っていない。刀剣たちとの距離感などは微妙だが、少なくとも敵対関係にはないからだ。友好的とも一概に言えないが。
「♪~」
刀剣たちには能天気な人間だと思われているが、小鳥は愚かではない。刀剣たちにその気があれば簡単に彼女を殺す事が出来ることもきちんと理解している。ただ、そうなったら、その時は仕方がないと割り切っているだけだ。そして己の打てる最善手は相手にそれを必要以上に意識させないことだと思っている。