帰る場所   作:ペンギン隊長

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睡眠関係の話 
同じ布団で一緒に寝る(同衾)で添い寝って認識 
この√の担当さんは割と良心的 刀剣男士はやさしい神さまって言われてきたところにアレである
特定の記憶だけ忘れるなんて器用な事はできない
三日月はさらっと地雷踏んでた感じのアレ 特に追いかけてからのフォローのつもりのアレが駄目だった感じの


ナイト・オーバー・ナイト

 

 

 

忘れてしまった方が精神衛生上良い、けれど、心情的に忘れてしまう事が恐ろしい。そんな、矛盾した心情を解消する為に碧猫が考えたのは、己の記憶を記録として残しておくことだった。歴史改変によってまた意味がなくなる可能性もなくはないが、データのバックアップがあることは一つの安心材料になる。

だから彼女は、眠れない時間を、ノートに自分の記憶を綴る時間に当てることにしたのだった。自分と家族の名前。誕生日。遊びに行った場所とその時あったこと。話した事。思ったこと。本人さえ不正確だろうと感じるそれは、いってみれば消失した歴史(せかい)の欠片だ。他の誰に見せるつもりもない、碧猫が自分で読み返す為だけにあるノート。

それが一冊、なんとか埋まったのは書き始めてからおよそ20日程してからのことだった。

 

 

 

「…一時過ぎ」

勿論、昼ではなく、日付を越えてからのことである。このところは、眠気が起こるまで夜更かしをしている。支障はない。どうせ、眠れるのは3時間程度だ。悪い夢でとび起きない事の方が珍しい。

のびをしたらパキパキと音が鳴った。体が大分強張っていたらしい。

「…そろそろ寝るか」

眠りたくない訳ではない。怖い夢を見るのが嫌なだけだ。このところは、夢を見ればいつも同じ夢である。それが、とても嫌だった。

 

 

 

夢から跳び起きた彼女は、辺りを見回し、ぬいぐるみを抱きしめる。心臓が早鐘を打っている。

「…ゆめ」

あの日から、殆ど毎日に近い頻度で見ている夢。彼女の悪夢(トラウマ)。世界の何処にも、居場所はないのだと、味方はないのだと、突き付けられる夢。

「…ゆめ、じゃない」

そこは、彼女の"家"ではない。ぬいぐるみも、愛用の物をなんとか再現したコピー。家族は、此処にはいない。

「うぅぅ…」

嗚咽を押し殺す。誰も頼れない。頼っていいと思える相手がいない。

「…おかあ、さん」

 

 

 

眠れないので本を読む。魔導書。実用書。小説。時間が潰せればそれでいい。そもそも今の彼女には生きる目的がない。死を選ぶ程の衝動がないから惰性で生きているだけだ。小狐丸やこんのすけが世話を焼かなければ衰弱死しているだろう。緩やかに死んでいっているようなものだ。

だって、色んな意味で彼女が此処にいる必然性はない。"別に彼女でなくても良かった"。此処に配属されたのは審神者だからだ。審神者になるには、審神者として必要な能力さえあればいい。そこに彼女である必要はない。他の審神者が配属される可能性だって勿論あっただろう。こんのすけが彼女を気にするのはこの本丸の審神者だからだ。小狐丸が彼女を慕うのは、彼女にはよくわからないが彼の持つ基準に合致したからだ。なら、他にその条件を満たすものがいればそちらを選んだって何もおかしくない。

もっと条件のいい審神者が現れれば、そちらを選ぶのだろう、と思っても何ら矛盾は感じない。そして、彼女は自分がさして好条件だとは思っていない。自分の事が好きではない。態々好き好んで自分を選ぶものがいるとは思えない。

そして、だからといって、無理に縁を繋ごうとは思わない。それで当たり前だろうし、改善しようと思えない。別に選んでくれなくてもいい。ずっと"そう"だったのに、今更変えられるとは思わない。それに何かを想うだけの執着がない。此処にも、彼らにも、そもそも生きる事にも。

 

 

 

日が差し込む。朝だ。眠気は曖昧で、頭の巡りは微妙。疲労もきちんと取れずに蓄積している。このままの生活が続けば、ほぼ間違いなく、彼女は壊れるだろう。別に、それでもいいと思う。壊れて本当に困るものなどいるものか。この本丸に新たな審神者が現れるだけだ。それだけだ。

 

 

「おはようございます、ぬしさま」

「…おはよう、小狐丸」

気だるげにそう言って本を閉じた碧猫の手をさりげなく取り、立たせる。

「今日の朝餉は根菜の味噌汁にございます、ぬしさま」

「根菜…」

まあ、食べられればいいか。小狐丸の器用さ、勤勉さは碧猫も良く知っている。彼の料理は一定の水準は保証されている。ただ、チャレンジ精神からかメニューの拡大に余念がないだけだ。食べ物の好き嫌いの多い碧猫には割と大きな問題と言えなくもないが、嫌いと伝えたものは二度と出ないので許容範囲だ。

 

 

 

 

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