織斑姉弟に父親がいたらこうなると思う(仮)   作:天叢雲

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 にじファンで予告したものを投稿します。

 あんまり期待しないでね!


第一話

 

 

 

「おい一夏ァ! 早くしねえと遅刻するぞ!」

 

「わ、わかってるよ親父!」

 

 

 住宅街が集中する、その街のある一軒家で一人の男が叫ぶ。

 一軒家の二階にいる少年はその声を聞いて慌てたように返事をし、ドタバタと階段を駆け降りる。

 バタンッと玄関のドアを開く少年。

 

 

「・・・ハァ。一夏、今日から高校生なのにそんな調子で大丈夫なのか?」

 

「ご、ごめん千冬姉。でも起こしてくれたっていいじゃん」

 

「甘ったれるなド阿呆。高校生にもなってそんなんでどーすんだ」

 

「親父・・・」

 

 

 少し大きめの鞄を持つ少年はしょんぼりする。

 一軒家の前にある黒い車の側に立つ先程怒鳴っていた男性と隣にいる女性に怒られて落ち込んでいるようだ。

 ハァと溜め息をつく女性、彼女は少年の姉のようで少年は千冬姉と呼んでいる。

 また、男性は少年と似たような顔をしているが、目が鋭く初めて会った人は睨まれると錯覚するだろう眼光をしていた。

 男性は少年の父親であり、千冬姉と呼ばれる姉と弟は彼の子供であった。

 

 

「一夏。前にも話したがお前は今の世の中では起爆剤なんだ。良くも悪くも、な」

 

「・・・俺はそんな事は望んでいないけどね」

 

「わかってる。変われるなら俺が変わってやりたい。ある意味、お前は千冬よりも過酷な人生を送ることになる。だからこそ、周りには警戒しろ。お前に近付く者は敵だと思うんだ」

 

 

 しょんぼりする少年を父親は肩を持って諭すように話す。

 少年はそんな父親の話を真剣に聞いていた。

 何故なら、彼や彼の姉は世界でも有名で、動けば間違いなく世界が動くほどの名声及び、話題性があるからだ。

 

 そんな彼等、姉弟を想う父親は姉弟に警告をする。

 すでに姉の千冬は成人しているが、まだ少年は幼いとまではいかないものの、高校生だ。

 その名声と話題性を悪用する人間の道具にしたくないと願う父親は息子に語り掛ける。

 

 

「周りが敵って・・・」

 

「そう心掛けろってことだ一夏。昔の友人や知り合いも簡単に心を許すな、金で買収されていれば誘拐は容易く起きてしまう。そうなりたくはないだろ?」

 

「そりゃ・・・まあ・・・」

 

「父さん、私もいるから大丈夫だよ。一夏が心配だから私も・・・現役引退して以来、それを教える立場になったんだ」

 

 

 困った様子の少年、一夏は姉の千冬にフォローされるように助けられる。

 それもそうか。と呟く父親は少しだけ背が低い息子の一夏の頭を乱暴に撫でると、背中を叩いた。

 

 

「注意だけはするようにな。ほら、車に乗れ。送ってやる」

 

「いや、親父。それは目立つだろ」

 

「何を言うんだ阿呆。今日から顔を見れなくなる子供等を送りたい馬鹿な親父の我儘くらい聞け」

 

「そうだぞ。そんなことまでわからないからお前はいつまでも子供なんだよ」

 

「なんか俺が悪いみたいになってるけど!?」

 

 

 しょんぼりしていた少年は姉に理不尽な事で責められる。

 思わず叫ぶ少年、一夏と姉の千冬が話すのを傍目に、父親は黒い車・・・かなり高級そうなそれに乗っていた。

 車の窓を開けて父親は二人に乗れと親指を後ろに向ける。

 

 

「ほれ、早くしないと遅刻すんぞお前等」

 

「あ、やべ!」

 

「一夏、お前のせいで遅れただろ」

 

「千冬姉のせいでもあるだろ!」

 

「・・・早く乗れてめぇら」

 

 

 また騒ぐ二人に父親は鋭い眼光を更に鋭くしてドスの効いた声で呼ばれる。

 ひぃっと一夏は慌てて後ろに乗ろうとすると、千冬がとっくに助手席に座るのが見えてしまった。

 千冬姉・・・相変わらず親父が怒ると動きが早いな。

 

 二人が乗るのを確認すると、父親はアクセルを思いっきり踏む。

 急に動き出したために慣性の法則で傾く一夏。助手席に座る千冬は微動だにしなかった。

 

 

「お、そうだ。千冬、そこに封筒が二つあるだろ」

 

「これ?」

 

 

 走って暫くすると、父親は助手席の下にある袋を指摘する。

 千冬はそれを取ると、中から大きめの封筒が二つ出てきた。

 

 

「紐が赤が千冬、黄色が一夏のだ。ま、餞別って事で」

 

「俺に?」

 

「・・・父さん。これって最新型の携帯電話じゃないか? 発売って三日後だったはず・・・」

 

「うぇ!? CMでよくあるやつじゃん!」

 

「仕事上、こういったものを使うんでな。頼んで早めに二人分だけ用意してもらった」

 

 

 一夏は封筒の中にある携帯電話を見て興奮したようにそれを触る。

 クールな印象のある千冬ですら、驚いたように操作していた。

 

 その反応を待っていたのか、父親はハンドルを片手で切りながらニヤニヤと笑う。

 口に煙草をくわえる父親だが、子供がいたのに気付いて箱に戻した。

 ちょっと顔をしかめた父親は胸ポケットからガムを取り出して噛み始めた。

 

 

「・・・父さん。まだ喫煙癖は直らないの?」

 

「どうもな。昔の癖で機嫌が良くなると吸いたくなっちまうんだよ」

 

「えっと・・・確か親父って昔は刑事だったよな? ヘビースモーカーだったのか?」

 

「一日によっては三本は吸うな。まあ、あの事件でクビになって以来は煙草吸ってないが・・・一夏が報道されてからストレス溜まってな、吸いたくなる」

 

 

 すると、バツが悪そうに一夏は頭を掻く。

 現に、一夏は世界で一番有名な少年であり、現在の世の中で世界が動く存在意義を持つ。

 そのせいで、あらゆる組織や政府などが彼を獲得しようと動いて父親に交渉したり脅迫をしていた。

 その度に父親は一夏を庇い、武力で訴えられても抵抗している。それが父親に対して迷惑を掛けているのでは?と一夏はいつも思う。

 

 一夏と千冬、二人は血の繋がった正真正銘、本物の姉弟である。

 ある日、姉弟は実の両親に捨てられ、千冬が荒れていた頃に刑事だった父親に引き取られた。

 血が繋がっていないと言えばまた違う。父親の姉の子供が二人であり、二人にとっては父親は叔父であり父であるのだ。

 

 

「気にすんな。俺が好きでお前等を引き取ったんだ、後悔はしていない」

 

 

 それにいい後ろ楯もできたしな。と笑う父親に一夏は毒を抜かれたようになる。

 引き取られて数年、とある事件のせいで彼等の父という立場だった父親はとんでもないことになったのだ。

 それによって父親は刑事の仕事を失い、更なる事件に巻き込まれてしまう。

 姉弟は父親が刑事という仕事を失ったのは自分達のせいだと後悔するが、父親は気にしていなかった。

 『これでお前等といれる時間が長くなるな』と。父親はそう言った。

 

 その時から姉弟と父親は真の“家族”となった。

 今回の起きた新たな事件、父親を、息子を、娘をそれぞれがそれぞれを守るためにある学園に姉弟は行くことを決意した。

 弟は高校生、学生として、姉は学園の教師として。

 

 

「父さん」

 

「なんだ千冬」

 

 

 赤信号で止まる間、千冬は父に携帯電話をいじりながら問い掛ける。

 父親はガムを噛みながら千冬の話に耳を傾け、ハンドルに手を乗せて前を向いたまま。

 トントンと指でハンドルを叩きながら、千冬の言葉を待つ。

 

 

「これ、いいの? 最新型だから高いんじゃ・・・」

 

「安く取り寄せてもらったから大丈夫。さっき言ったが、仕事上で頼めたんだ。それに餞別だからな」

 

「・・・今の仕事ってなんだっけ? 最新型携帯電話を取り寄せてもらうなんて普通の職業じゃ無理だろ」

 

「秘密だ」

 

 

 ニヒルに笑う父親に千冬と一夏は父親の素性の謎が深まる感じがした。

 刑事をクビになってから違う職業に就いた父親は、二人を養える金額の金を稼いでる。

 仕事を聞いても秘密とはぐらかすため、怪しい仕事をしてるのではないかと心配する二人なのだが、トラブルらしいトラブルは無いので気にしていない。

 というよりも、深く聞こうとすれば。

 

 

「え? 何? 仕事なんて知りたいの? ねえねえねえ?」

 

 

 と。キャラに合わないギャップも働いて恐怖感が半端ではなかったので聞くのをやめたのだが。

 トラウマになりかける表情と声に断念したのが正解だ。

 

 それもあってか、仕事に対してあまり聞こうとしないようになった。

 ちゃんと金を稼いで養ってくれるため、文句を言わないと二人は決めており、あんまりツッコミをしないことにしている。

 

 

「まあ・・・何れは話すつもりだ(ボソッ」

 

「?」

 

「それより見えてきたぞ」

 

 

 高速道路を走る三人を乗せる車。

 運転する父親は前を指差すと、姉弟はつられてそちらを見る。

 そこには大きな遊園地のような場所が見え、中心には大きな塔らしきものもあった。

 

 

「あれが・・・」

 

「ああ。お前等が通うことになる、“IS学園”だ」

 

 

 “IS学園”、それが姉弟が行くことになる学園である。

 

 ISとはインフィニット・ストラトスと言い、数年ほど前に世の中に出てきた。

 とある天才、篠ノ之束が開発した現存する兵器の中でも最高峰の技術と実力を秘めたものだ。

 新たな兵器の登場により、世界は一気に変化を遂げた。

 あらゆる兵器を凌駕する戦闘力、たった一機で国を落とせると呼ばれるISは世界の関心を引いた。

 世界の組織や機関がISの研究を始め、世界がIS一色に染まってしまい、今ではISが世界を動かしていると言っても過言ではない。

 

 しかし、そのインフィニット・ストラトスは重大な欠点を抱えていた。

 インフィニット・ストラトスは最強の実力を持つ代わりに、『女性にしか使えない』という弱点があった。

 そうなれば自ずと女性しか使えないというアドバンテージのせいで、女性の立場が向上してしまう。

 男尊女卑の反対、女尊男卑の幕開けである。

 そのインフィニット・ストラトスを使う最強の乗り手と名高いのが千冬。織斑千冬、“ブリュンヒルデ”である。

 インフィニット・ストラトスによる五輪(オリンピック)、通称“モンド・グロッゾ”の初代、二代目覇者だ。

 

 ある事件により、織斑千冬は日本代表兼戦乙女(ブリュンヒルデ)の輝かしい立場であるにも関わらずに現役引退をする。

 それから現在まで、ISには極力触れない生活を過ごしていた。

 転機が訪れ、千冬は現役引退したにも関わらずにIS操縦者育成特別政府機関、IS学園の教師として復活する。

 

 

「・・・何か緊張してきた」

 

「千冬姉よか俺が緊張するわ。世界でたった一人の男性IS操縦者だぞ? 女だらけのIS学園に行ったら煩悩まみれで死ねるわ」

 

「ついでに童貞捨ててこい」

 

「親父! 父親がそんな台詞は言わないって!!」

 

 

 というかなんで親父がそれを知ってる!?と叫ぶ一夏。

 挙動不審にあたふたとする一夏に、父親は冷静に淡々と話す。

 バックミラーに写る父親の目がギラリと光ったように、一夏は思えてしまった。

 

 

「刑事の勘だ」

 

「嘘だろッ!?」

 

「半分は。もう半分は匂いだな、家に女も連れてこないし、事後らしき痕跡もなかった」

 

「怖い! 我が親父ながら恐怖を感じるよ千冬姉!」

 

「ちなみに私もまだだ」

 

「唐突のカミングアウトやめて! 世の中の女の人が聞いたらイメージを壊すって!」

 

「世界なんざクソ喰らえだ。壊しても生きるのに支障がなけりゃ、なんだっていいだろ」

 

「父さんに同意」

 

 

 淡々と話す父親、ドヤ顔をする姉の千冬。

 普通の人間と感性がズレてる姉と父に、頭が痛くなる錯覚がする一夏であった。

 

 一夏・・・織斑千冬の弟、織斑一夏。

 彼はインフィニット・ストラトスの最大の欠点であり、利点である『女性しか使えない』という前提を覆した。

 女性以外の、男性で初めてのISを動かせる少年である。

 彼はIS学園で始まる波乱、少女達の一夏を巡る恋争奪戦に巻き込まれることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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