ヤ「ホントあいつってば突然だよ突然」
パ「はいはい、もうそれ何度も聞いたってば」
ループ回数はもう既に片手は越えている。
勇「あっはっは、荒れるヤマメなんざ久しぶりに見るねぇ」
勇儀は途中参加だったし、そもそも話半分にしか聞いてないからいいだろうけど最初から絡まれ続けている私には迷惑以外の何物でもない。
……しかも、よりにもよってあいつの話なんて……
ヤ「そりゃ古明地可愛いし、話してみた感じ、悪い子じゃないとは思うけどさぁ…」
勇「なら何が不満なんだい?」
ヤ「昨日の今日で出てったってことですよ!」
ぐいっとグラスを傾け酒を飲み干した。
そして、思い切りグラスを置いた。
ヤ「私があいつと過ごしてきたこの生活は簡単に捨てられるものだったのかなぁって……」
勇「それ、あいつにはちゃんと言ったのかい?」
ヤ「言える訳ないですよ。今まで作ってきたキャラもありますし」
勇「じゃ、仕方ないだろ。それにあいつと絶縁したわけでもなし」
ヤ「それはそうですけど……」
勇「幸せを思って見守ってやるのも姉貴分の務めだ」
ヤ「うぅ~…」
勇「そういうことで話は終わりだ。パルスィ借りてくぞ」
パ「は?」
聞きに徹していたのに突然話に出され思わず声が出た。
ヤ「いいよ、持ってけどろぼ~」
パ「私、あんたの所有物か何かなの?」
勇「それじゃ、まぁ気落ちすんなよ」
そう言うと私を小脇に抱えて歩き出した。
パ「いや、ちょっと、歩けるから!!」
勇「あっはっはっは、だが断る」
私はがっちりと抱え込まれてホールドを解けないまま連れ去られた。
勇「この辺でいいかね」
勇儀が連れてきた場所は街外れの橋の上だった。
もちろん私たち以外に人影はない。
パ「いいから、早く降ろしなさいよ」
勇「あ、悪い」
パ「まったく…」
ようやく解放された。
パ「で?わざわざこんなところまで連れてきて何の用?」
勇「まぁ、座んなよ」
勇儀は胡坐をかいて座るとここに座れとばかりに自分の隣の地面を叩く。
パ「はぁ……」
溜め息を一つついて指示通りに隣に腰掛けた。
勇「ほら」
たった一言だけかけて酒を注いだ盃をこちらに差し出してきた。
何を言っても無駄なのは承知しているので無言で受け取り飲み干した。
勇「あそこに居たらさ」
パ「?」
勇「泣くに泣けないだろ」
パ「…………」
勇「ヤマメの気持ちも分からんでもないけどな。パルスィに付き合わせるにゃちと酷だ」
パ「いつから」
勇「ん?」
パ「いつから気付いてたの?」
私があいつのこと好きだって。
勇「ん~、最初からかねぇ」
パ「そっか」
勇「ダテにお前らの姐御やってないってことさ」
パ「あいつに勇儀くらいの洞察力があったらなぁ……」
勇「そんなだったら惚れたりしないだろ?」
パ「あはは、そうかも」
そこで少しだけ沈黙が生まれた。
勇「……今まで私は色んな奴と酒を飲んできた」
パ「何を突然…そりゃそうでしょうよ」
勇「笑い上戸に怒り上戸、泣き上戸に…あぁ、空上戸なんてものいたなぁ」
パ「…………」
勇儀の意図が読めずに黙り込む。
勇「それでも同じなのは酔ってるってことだ。だから、その間は何やっても大半は無礼講よ」
パ「……そうね」
勇「パルスィ、今酔ってるか?」
パ「……後一杯ってところかしら」
トクトクと酒を注いでいく。
パ「私……きっと泣き上戸よ?」
勇「かまやしないよ。無礼講っつったろ?」
そう言いながら盃をもう一度こちらに差し出してくれた。
酔うまでの最後の酒。
私はそれを一気に流し込んだ。
パ「…………」
勇「…………」
パ「………っ…………っっ」
勇「…………」
パ「ぅっ……ぅく………ぅぅっ!」
勇「…………」
パ「うぁぁぁぁあああっぁぁぁぁああ!!!!!!」
勇「…………」
勇儀はただ黙って乱暴に私の頭を撫でた。
パ「っぅぅぐ……んぐ、ふぁぁあ……っぐ……んぁああ!!!!!」
勇「……あいつが悪くねぇのは分かってるが一発くらいは良いよな」
私は涙が枯れるまで勇儀の胸の中で泣き続けた。