食卓を4人で囲む。
朝あんなことがあったせいでどうしてもさとりさんのことを直視できなかった。
せいで、というとこいしちゃんが悪いと言い訳しているようでみっともないな。
とにかく不意打ちだったとはいえ彼女の妹とキスしてしまったのだ。
罪悪感でさとりさんの前にいるのがつらかった。
後ろめたさがそうさせるのか、さとりさんも目を合わせようとしていないような気がした。
もしかしたら、もう既に見られてしまったのかもしれない。
もしそうなのだとしたら、問い詰めてくれたならどれだけ楽なんだろう。
…………
この期に及んで楽になることしか考えていない自分に嫌気がさす。
ナ「ごちそうさまでした」
僕はそそくさと食べ終えて、ここから逃げだした。
あんなものを見なければきっと談笑しながら楽しい朝食になっていたでしょうね。
それが今は沈黙が支配している。
食べ物が喉を通らない。
お燐も察したようでちらちらと私達を見ながらも黙々と食べていた。
あのお空ですらこの空気を感じ取っておろおろとしながらも直接聞くことはしなかった。
聞いてくれればいいのに。
そうすれば、あれがどういうことなのか彼に訊くしかなくなるのに。
お空を手段にしようとしていることに自己嫌悪してしまう。
彼に訊くだけで済むことなのに。
彼を見るだけで済むことなのに。
その勇気が私にはなかった。
もしそれでこの関係が崩れてしまったら……
そう考えるだけで怖かった。
ナ「ごちそうさまでした」
彼はそのまま出て行った。
燐「私もごごちそうさまでした」
お燐も続いて後にして行った。
さ「お空、落ち着いて、ゆっくり食べていいのよ」
今だ食事に口を付けていなかったお空に言い付けて私は自室へ戻った。
てっきり自分の部屋に戻ったと思っていたのに部屋の中には誰もいなかった。
どう考えても今日の二人の様子はおかしかった。
あたいやお空のいなかった昨日の晩から今朝までの間に何かあったのは明白だ。
さとり様に訊くのは憚られるのでお兄さんに訊くしかない。
しかし、あたいにも与えられた仕事がある。
仕方ないがまずは仕事をこなしてからお兄さんを探すことにしよう。
そう思い中庭に出たのだけれど……
燐「…何してるんだい?」
ナ「あぁ、お燐ちゃん、助けてほしいな」
そこにいたのはペット達に群がられたお兄さんだった。
燐「ほら、みんな、お兄さんが困ってるじゃないか」
そう言うとそれぞれ弁明を始める。
かなりの数がいるのでそこそこ喧しい。
ただ、言っていることは皆同じだった。
燐「お兄さんの元気がないから慰めようとしてるんだってさ」
ナ「……そっか、それじゃあ振り解くなんて出来ないな」
お兄さんは起こしていた上半身を寝かせ仰向けに大の字になった。
流石に一緒に横になりはしないで、隣に座った。
燐「どうしたのさ?」
ナ「さとりさんとは何もないよ」
燐「他のことで何かあったってことだよね」
ナ「あ……」
燐「お兄さんって隠し事出来ないタイプだよね」
ナ「そんなこと……あるね」
燐「話してごらんよ、楽になるよ」
ナ「……今日の朝さ……」
それからお兄さんは今朝の顛末をすべて話してくれた。
話を聞く限り、さとり様があんな感じだったのは少し疑問だったけれどおおよそ理解した。
燐「お兄さん、確認したいことがあるんだけど」
ナ「なに?」
燐「さとり様と付き合ってるんだよね、まだ好きかはわからないけどなんて言って」
おおまかながらさとり様から聞いていた。
ナ「う、うん」
燐「お兄さんさ…」
ナ「?」
今だ良く分かってない様子のお兄さんにあたいははっきりと言ってやった。
燐「さとり様にベタ惚れじゃない?」
ナ「え?」
燐「だってさ、好きかも分からない相手に罪悪感なんて抱くわけないじゃないか」
ナ「それはそうだけど…でもさ」
燐「あぁもうじれったいねぇ!」
ナ「ちょっ、んんっ!?」
寝たままのお兄さんにまたがり強引に唇を奪った。
燐「今、誰のこと思った?」
ナ「…………そうだね、お燐ちゃんの言う通りだ…」
燐「人のファーストキス犠牲にして気持ちに気付くなんて鈍感もいいとこだよまったく」
ナ「ごめん」
燐「いいや、許さないよ、皆やっちまいな」
全員でキスしてやった。
燐「次やることはわかるよね?」
ナ「まず顔を洗わせてください」
肘で突く。
ナ「……わかってるよ」
燐「ならいいよ、許したげる」
お兄さんは立ち上がるとすぐさま駆けていった。
……世話が焼けるったらないよ……