昨日は結局落ち着かず、よく眠れなかった。
目元にはうっすらとくまができてしまっていた。
ヤ「おはよう、ってどうしたのその顔?」
ナ「ちょっと寝付けなかったもので」
ヤ「ははぁ~ん、なるほどねぇ」
ニヤニヤといやらしい笑みを向けられる。
ナ「な、なんですか」
ヤ「いやいや、何でもございません♪朝ごはん、早く食べましょう」
ナ「……わかりました」
釈然としないがわざわざ自分から藪をつつくこともないだろう。
それ以降は別段何を話すというわけでもなく黙々と食事をした。
ヤ「今日も古明地のとこに行くのかい?」
食べ終えた食器を洗っているとテーブルに突っ伏したままヤマメさんが訊ねてきた。
ナ「そのつもりですけど。何かありました?」
ヤ「いんや~、別に何もないし止めやしないけどさ~、あんまり無理するもんじゃないよ?」
ナ「大丈夫ですよ、楽しくてやってますしね」
ヤ「ならいいけど」
ナ「心配してくれてありがとうございます」
ヤ「看病するのが面倒だってだけよ。それ、後は私がやるからちゃっちゃと行って解決してきちゃいなさい」
さっきの反応からして、聡いヤマメさんはもう大体察してるんだろう。
ナ「お言葉に甘えます」
手を拭い、出来る限り身なりをしゃんと整えて、手を振るヤマメさんを背に僕はお燐ちゃんの元に向かった。
あいつが出ていったのを見届けて、ゆらゆら振っていた手を降ろした。
ヤ「う~……」
なんとなく動く気がしない。
テーブルに頬をついたまま、ぐだっと脱力する。
別にあいつが誰に惚れようが構わないんだけどさ、うん。
構わないんだけど、それでもなぁ…
ヤ「古明地かぁ…」
よりにもよって、なんであの嫌われ者を選ぶかねぇ…
それとも、そこがあいつの琴線に触れたのかな?
自分が守ってやらないと、みたいな。
ふふっ、人間のくせに、ってあくまで私の妄想か。
まぁ、どっちにしろ古明地みたいなのが好みなら私にゃ無理だね。
…………
……案外、私も女々しいなぁ。
…………
さて、そろそろ洗い物の続きでもしようかね。
あぁ、テーブルも拭いとかないと…ね
……ダメだ……もう…ちょっと、…だけ……っ……
ナ「お邪魔します」
さ「いらっしゃい」
毎日のように訪れるこの変わり者の客人を今日も迎え入れる。
いつもと違うのは彼の眼下のくま程度だろう。
さ「その目はどうかなされたのですか?」
ナ「いや、その…」
昨日お燐の視点で視た流れを、今度は彼の視点から想起する。
さ「そういうことですか」
ナ「…そういうことです」
苦笑いを浮かべる彼には私が心を見たことなど然したる問題ではないらしい。
ナ「お燐ちゃん、今はどこにいるか分かりますか?」
さ「いつものように中庭にいますよ」
ナ「ありがとうございます」
彼は私の答えると一礼し、踵を返して退室しようとする。
さ「お燐を…よろしくお願いしますね」
ナ「はい」
短くそう答えると彼は出ていった。
こ「お疲れ様、お姉ちゃん」
不意に声をかけられたがいつものことなので動揺はしない。
さ「見ていたのですか、覗き見なんて悪趣味ですよ」
こ「心の覗き見で追体験してるお姉ちゃんには言われたくないね」
こいしはころころと笑う。
こ「そんなことしなくても直接自分でしちゃえばいいのに」
さ「これでいいのですよ。彼の心はお燐に向いていますからね、ペットの幸せは私の幸せですよ」
こ「ふ~ん」
あまり納得いかないという様子のまま、こいしも出ていった。
私はソファに座り、紅茶を流し込んだ。
……私は何も間違ってはいないでしょう?ナナシさん……
さとりさんの言うように中庭にはお燐ちゃんがいた。
ちょうど僕に背を向けた状態でしゃがみ、猫を撫でていた。
僕はそのすぐ後ろまで近づいた。
ナ「お燐ちゃん」
ピクッっと猫耳と尻尾が反応する。
燐「えっと…この状態で話してもいいかな?」
ナ「いや、お燐ちゃんの顔を見て話したい」
燐「……わかったよ」
立ち上がるとくるりとこちらに向き直った。
大きな瞳の下にはくまができていた。
お燐ちゃんは僕の視線がそれに向いていることが恥ずかしいのだろう、すぐに俯いてしまった。
ナ「あはははははは」
おかしさが込み上げてきて、思わず笑ってしまう。
燐「だから嫌だったんだよぅ……」
同じだったんだ、お燐ちゃんも。
ナ「お燐ちゃん、こっち見てよ」
燐「うぅ……え…?」
ナ「僕も同じだよ、昨日は全然眠れなかった」
燐「お兄さんも……そっか……ふふっ」
ナ「ようやく笑ってくれたね。改めて言うよ、君のことが好きなんだ、付き合ってくれない……かな?」
どうしても照れが入って、最後の方は弱々しくなってしまった。
燐「改めて言うよ、あたいでいいなら、喜んで」
返事と共に軽い口付けを交わした。
ナ「なんか、一気に眠気が……」
燐「そうだね、あたいも眠くなってきちゃったよ」
…………
お燐達の様子が気になって中庭の様子を見に行った。
さ「…………クスッ」
そこに広がっていたのは動物達に囲まれながら幸せそうに眠っている、一匹の猫娘と人間だった。
さ「ここを切り取って永遠にしてしまいたいほどですね」
絵の才能がないことを少しだけ後悔する。
せめてこの光景を記憶にだけでも焼き付けようと私はしばらくその場で眺め続けた。
Fin
あとがき
作「はい、√お燐ENDです」
燐「ちょ、短すぎ!!」
作「挿絵入れてるから許して」
さ「挿絵付きでこれ以上長いとあの嫉妬妖怪の立つ瀬がないですしね」
燐「どうせ挿絵入れれること今更思い出してノリで描き始めただけのくせにぃ~」
作「ナ、ナンノコトカナ~」
さ「挿絵を描いている方は意外と少ないようですね」
作「画像のタグの番号見た感じ2枚目と3枚目の間には2枚しかアップされてないっぽいしね」
さ「読者の皆様は挿絵についてどう考えているのかしらね?ここからじゃ遠すぎて私の能力では読み取れないわ」
作「なくせと言われれば今後は載せないようにするし、あってもいいと言われるならできる限り描いていこうと思います」
さ「まぁ描こうにも元となる絵が必要なのでしょう?」
作「うん、最初のはそれこそノリで何も見ずに描いたから自作だけど2,3枚目は元絵をキャラいじって変えてるよ。わかる人にはわかるかもね」
燐「当てられるもんなら当ててみろっていう感想稼ぎだね」
作「これ以上ぶっちゃけられても困るんで今回はここまで」
さ「お疲れ様でした」