東方地恋譚   作:月の海

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地霊殿へ行ってから数日が経った。

あの後の宴会ではお空ちゃんや他のさとりさんのペットも加わりいつもとは違うメンツながら大盛況だった。

記憶の手がかりこそ見つからなかったが行った価値はあったと思う。

まぁこの間のことはさておき、今日はというと僕にしては珍しく家で過ごしていた。

縁側に座りながら物思いに耽っていた。

ヤ「今日は出かけないのかい?」

珍しいと言わんばかりにヤマメさんが問う。

ナ「えぇ、特に用事もないですし。それに今動けませんからね」

ヤ「?…あぁ」

ヤマメさんは僕の膝の上を見て納得したようだ。

ヤ「買い出しに付き合ってもらおうと思ったんだけど、一人で行ってくるとするよ」

ナ「すみません」

ヤ「いいよ。何か食いたいものあるかい?」

ナ「んー、特には。ヤマメさんの手料理だったら何でも美味しいですからね」

ヤ「おだてたって何も出やしないよ。それじゃ行ってくるから、出かけるんなら戸締り頼むよ」

ナ「いってらっしゃい」

ヤマメさんが出ていくと、僕と膝の上のお燐ちゃんの二人きりになった。

ナ「今日は仕事は良いの?」

燐「さとり様から休暇をもらって来たから心配ないよ」

ナ「なら、ゆっくり休まないとね」

お燐ちゃんの背中を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。

燐「ふみゅぅ~…」

撫でているうちにお燐ちゃんは眠くなってしまったようで静かな寝息を立てていた。

燐「…くぅ…」

僕は撫でるのをやめ、頭の上で手を組み横になって目を閉じた。


√パルスィ

最近気になっている人がいる。

 

それは…パルスィさんだ。

 

それなのに記憶の手がかり探しに協力してくれたり、何かと気にかけてくれる優しい人。

 

その優しさに惹かれたのかもしれない。

 

ただ、問題があるとすれば、顔を背けられたりするあたり、あんまり良く思われていないだろうということだ。

 

今のままでは一方通行なこの想いを伝えたところでこれまでの関係が壊れるだけだろう。

 

ナ「はぁ…どうすればいいのかな?」

 

パ「何が?」

 

ナ「え?」

 

目を開けると目の前にパルスィさんがいた。

 

緑の瞳に自分の姿が映る。

 

思わず顔が赤くなる。

 

パルスィさんも突然顔が赤くなり、いつものように顔を背ける。

 

パ「か、鍵も開けたままでずいぶん不用心じゃない!?」

 

ナ「す、すみません」

 

パ「そ、それで、何か悩んでるの?」

 

ナ「そ、それは…」

 

あなたのことです。とは口が裂けても言えない。

 

パ「何?私には言えないことなの?」

 

ナ「えっと、その、はい…」

 

パ「え…?」

 

パルスィさんが一瞬悲しそうな瞳をした気がした。

 

パ「そ、そう。私じゃ役に立たないってことね」

 

ナ「いえ、そういうわけじゃ―」

 

パ「いいのよ、気を使わないで。ヤマメもいないし、帰るわ」

 

ナ「あ、ちょっと―」

 

僕の返事も聞かずパルスィさんは出ていってしまった。

 

ナ「…しくじったなぁ…」

 

力が抜け、起こしていた上半身が崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 

膝の上では変わらず、お燐ちゃんが丸くなって眠っていた。

 

 

 

~Side パルスィ~

 

ヤマメに会いに来たなんて嘘。

 

本当は彼に会いたかっただけ。

 

寝ているのだと思って、思わず近くでじっと見つめてしまった。

 

そんな彼からこぼれた悩みの言葉。

 

出来ることなら力になってあげたかった。

 

それなのに、教えてくれない彼に少しイラついて思わず言ってしまった―

 

「私には言えないことなの?」

 

きっと彼なら話してくれると思っていた。

 

だから―

 

「えっと、その、はい…」

 

「え…?」

 

彼の返答に動揺が隠せなかった。

 

胸が苦しくなる。

 

―私では彼の役に立てない―

 

「そ、そう。私じゃ役に立てないってことね」

 

動揺を知られないように早口で捲し立てた。

 

「いえ、そういうわけじゃ―」

 

「いいのよ、気を使わないで。ヤマメもいないし、帰るわ」

 

彼の言葉など聞いていなかった。

 

「あ、ちょっと―」

 

私は逃げるように立ち去った。

 

いや、言葉通り私は彼から逃げたんだ…

 

 

 

 

 

 

パ「はあぁぁぁ~……」

 

勇「私と飲みながら溜め息つくたぁいい度胸だね」

 

あいつの家から逃げ去ってふらふらしているところを勇儀に捕まっていた。

 

パ「あ、ごめん勇儀」

 

勇「何があったかなんて聞きだす気はないが、つらいことならうまい酒飲んで忘れちまいな」

 

そう言って私の盃に酌をする。

 

パ「ありがとね、勇儀」

 

勇儀は微笑んで私の盃に自分の盃を当てた。

 

それからしばらく私たち二人は黙ったまま酒を酌み交わしていた。

 

勇儀は何も聞かずにただそばにいてくれた。

 

今の私にはそれが何よりもありがたかった。

 

そんな勇儀に報いるために私に何ができるだろう?

 

パ「ねぇ、勇儀」

 

勇「ん?」

 

パ「独り言、いいかな?」

 

勇「…好きにしなよ」

 

私は私にできる限りの誠意で全てを独りごちた。

 

 

 

 

 

パ「以上、私の独り言」

 

勇「…………」

 

パ「気が楽になったわ。そろそろ私はお暇するわ」

 

席を立ち、勇儀に背を向け店を出ようとする。

 

勇「あんたはどうしたいんだい?」

 

立ち止まるが振り返らない。

 

パ「私は…」

 

勇「言ってみな」

 

私は…

 

パ「あいつの力になりたい…」

 

勇「なんで?」

 

パ「それは…あいつのことが…」

 

勇「はっきり言いな。それが仮初めじゃない自信があるならね」

 

パ「…私、あいつが…ナナシが好きなんだ…!!」

 

感極まって自然と涙が出た。

 

勇「鬼の私に言ったんだ、後は形にするだけだ」

 

すぐ後ろに勇儀の立っている気配がした。

 

勇「行ってきな!!」

 

バシンと背中を叩かれ私は涙を拭い走り出した。

 

逃げ出してしまったあの場所へ。




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