~Side ヤマメ~
パ「ヤマメッ!!」
買い物ついでにふらふらしてきてウチに着いた矢先、パルスィが走ってきた。
パ「はぁ……はぁ……」
ヤ「そんなに息切らせてどうしたのさ?」
パ「あ、あいつ……いる……?」
どうやらナナシに用らしい。
ヤ「いや、今帰ってきたところだから分からないけど?」
パ「あ…あぁ…そうだったわね…」
ヤ「とりあえず水飲んで落ち着きな」
戸を開け先に入る。
ヤ「ただいま~」
いつもなら「おかえり」の声があるところだがどうやらいないようだ。
ヤ「ん~、出かけてるみたいだね」
水を汲んでパルスィに手渡した。
パ「そう……」
ふと、テーブルの上の紙切れに目がいった。
ヤ「あら、書置きがあるね」
『さとりさんのところに行ってきます。いつ帰れるか分からないので先に食べててください』
ヤ「あいつも物好きだね、古明地のとこに行くなんて」
古明地のところと聞いた途端、パルスィがそわそわし始めた。
ヤ「物好きがもう一人いたか。あんたも行くんだろ?」
パ「う、うん……」
ヤ「ならこれ以上すれ違いになる前に行っといで」
パ「…ありがと、ヤマメ」
パルスィは飲み干した杯を置くとまた走り出して行った。
ヤ「パルスィからありがとうなんて聞くとわね。ふふ、妬ましいはどうしたのかね?」
最近めっきり聞かなくなっていた。
本人はそのことに気付いているのだろうか?
ヤ「物好き同士、お似合いかねぇ?」
~Side パルスィ~
この前と同じように、私は地霊殿の門の前に立っていた。
違うのは、今日は私一人だけということ。
屋敷の前まで来ていながら、あと一歩が踏み出せずにいた。
パ「……どうしよ……」
門の前を右往左往してしまう。
「…………」
うじうじ悩んでいると中庭の方から声が聞こえた。
私は、見つからないように忍び込み、植え込みから中庭の様子を覗き込んだ。
中庭には案の定と言うべきかナナシとさとりがいた。
ナ「…………」
さ「…………」
二人から離れているので何を話しているかは分からない。
ただ、その様子を表現するなら「良い雰囲気」だった。
さとりは頬を赤く染めて見たことのないような笑顔でナナシと接していた。
中庭を軽く廻った後、二人はベンチに腰掛けた。
さとりがあいつの肩に寄り掛かる。
これ以上は見ていられなかった。
私はあいつに声かけることなく立ち去った。
パ「逃げてばっかりね……私……」
空には雲が広がり、雨が降り始めようとしていた。
~Side 勇儀~
パルスィの背中を叩き押してからも私は酒をかっくらっていた。
そのせいですっかり雨降りに遭ってしまった。
まぁ、だからといって何が悪いということもない。
むしろ雨の中を歩きながら飲む酒ってのもオツなもんさ。
番傘を拝借してゆったりと雨音に耳を傾け、盃を傾ける。
「パルスィ、今頃あいつとよろしくやってるかねぇ」
誰に問うわけでもなく呟いた。
あいつらが仲睦まじくしているところ、いまいち想像できないねぇ。
想像に思いを巡らせていると人にぶつかってしまった。
「おっと、ごめんよ」
相手は何も言わず、そのまま歩いていく。
腹の立った私はそいつの肩に掴みかかった。
勇「人にぶつかっといて謝りの言葉もなしかい?いい度胸じゃない――!!?」
特徴的なエルフ耳にペルシアンドレスのような服。
間違いなくパルスィだった。
パ「あ……勇儀……」
出ていった時の生気は感じ取れず、金色の髪は濡れそぼっていて、緑色の瞳には光がなかった。
パ「せっかく勇儀に背中…押してもらったけどさ……ごめん……私、やっぱりダメだったよ……ごめん……」
勇「馬鹿ッ!そんなこと言ってる場合じゃないだろッ!!とりあえずウチにきな、そんなに濡れてちゃ風邪引いちまうだろうが!」
強引にパルスィを抱きかかえて私は自分の寝床に向けて走った。
パルスィの「ごめん」と謝り続ける声に胸が締め付けられるようだった。
次は6時投稿予定です。