~Side ナナシ~
帰路を辿るうちに雨が降り始めた。
熱くなっている自分には心地の良い冷たさだった。
一刻も早くパルスィさんに会いたい。
この気持ちを伝えたい。
嫌われていようと、何を言ってるんだと馬鹿にされようと、伝えなければならない。
無我夢中で走り続けた。
傘を差して歩く人々を避けつつ走る。
正面に人影が見える。
右に避ける。
瞬間、その人の左腕が僕の首を刈る。
落下するように背中から転ぶ。
灰色の空が視界に広がる。
「どこに行く?」
僕を転ばせた人が問う。
降り続く雨と傘の影になって姿は見えない。
ナ「想い人のところです」
「…そうかい、あんたの想い人なら私のところにいるよ」
ナ「…教えてくれてありがとうございます」
「下世話なお節介で悪いんだが、あいつ泣いてたよ。ぼろぼろになって」
ナ「…………」
「ダチが泣いてんだ、私はこの怒りをどこにぶつければいい?」
ナ「…僕からも頼んでいいですか?」
「なんだい?」
ナ「死なない程度にキツイの一発お願いします」
「…死ぬか死なないはあんた次第さ。まぁ気張りな」
そう言うとその人は腕を振り上げた。
地を震わせるほどの正拳突き。
それが僕の―
―顔のすぐそばに振り下ろされた。
先程までその人―勇儀さんの纏っていた空気が変わったように感じる。
勇「お前だって私のダチ公なんだ、本気で殴るのも酔いの気分が削がれる。なによりパルスィに会わす顔がない。まぁ避けようとしたら直撃だったね」
ナ「変なこと頼んですみません」
わずかながら勇儀さんの拳に血が見えた。
勇「なに、こんくらいツバつけときゃ治るさ」
そう言い勇儀さんは一舐めする。
勇「もう覚悟は決まってるんだろ?」
ナ「はい」
勇「…あいつを頼むよ」
ナ「はい」
勇「私はさとりのとこに行ってくるからその間に全部かたぁつけな!!」
勇儀さんに蹴り出されて僕はもう一度走り出した。
勇儀さんの家の前に立ち、深呼吸をした。
震えそうになるのをこらえてノックをした。
パ「勇儀…?」
パルスィさんの声がした。
少しばかりの間の後、戸が開く。
パ「!?」
パルスィさんは僕の姿を見るとすぐに戸を閉めようとした。
ナ「痛っ…」
間一髪、足を挟んで閉めさせないことに成功した。
…すごい痛いが。
パ「あんた何してるのよ!?それに勇儀ならいないわよ」
ナ「知ってます。会いましたから」
パ「なら、なんで来たのよ!?」
ナ「パルスィさんに会いに来たんですよ」
パ「…………」
パルスィさんが戸から手を離した。
ナ「…おじゃまします」
雨で濡れているので中に入るのは気が引けるため、玄関口に立ったままだ。
パ「…それで、何しに来たのよ」
ナ「大事な話があるんです」
パ「古明地と付き合ってるって話?」
ナ「何の話ですか?」
パ「…見たのよ…地霊殿の中庭」
ナ「あぁ…」
そういうことだったのか。
パ「それだけなら、さっさと帰って…もう帰ってよ…」
ナ「帰れません」
パ「なんでよ!?」
ナ「まだ話したいこと言えてませんから」
パ「…………」
ナ「パルスィさん、僕のこと嫌いですか?」
パ「……嫌いよ」
想定していたことだ。
はっきり言われると堪えるが。
ナ「…そうですか。でも、僕は貴女のことが好きです」
それでも僕は言い切った。
パ「なっ!?」
ナ「では、言いたいことは言ったので失礼しますね」
反転して戸を開ける。
パ「待ちなさい…いや…待って」
背後から抱き締められ動けなくなる。
雨で濡れた体にパルスィさんの体温が伝わってくる。
パ「ずるいわよ…ずるい…本当に妬ましい」
ナ「…………」
パ「どうして、そんなにあっさり言えるのよ……私が馬鹿みたいじゃない…」
ナ「…一度だけ自惚れてもいいですか?」
パ「…………」
この際、無言は肯定と受け取ろう。
ナ「パルスィさん、僕のこと、好きですか?」
……………
………
…
Fin
あとがき
√パルスィはここで終了です、最後までお読みいただきありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
だいたい決めていた節目が文字数制限のためにずらす羽目になり、長いところは長く短いところは短くなりバランスが悪くなってしまいました。
今後の話ですが、ストックしていたのが√パルスィだけなのでまだ「次誰にしようか?」という段階です。
一応√さとりを予定しています。
ある程度話のストックが溜まり次第投稿しますのでもしよろしければご覧ください。