お茶会は終始和やかに進行した。
直前にあったことなどなにもなかったかのように。
他のペットのことから仕事のことまで色々な話をした。
まぁ大半は話を『した』というより話を『聞いた』だが。
お燐ちゃんやお空ちゃんが人の姿をしているからか、二人の話を笑みをこぼしながら聞くさとりさんの姿は飼い主というより姉という感じだった。
茶菓子がなくなり、全員が飲み干したところでお茶会はお開きになった。
二人は席を立ちそれぞれの職場に戻っていった。
残るは僕とさとりさんの二人だけ。
まぁもうどうなるかは考える必要もないだろう。
さ「えぇ、そうですね」
ナ「ですよね~」
さ「何かいいたいことは?」
ナ「盗み聞きしてすみません」
さ「素直でよろしい。まぁ貴方のことですからお空のフォローをしに来て聞いてしまったとかでしょうけど」
全部お見通しらしい。
さ「それでどこから聞いていたのですか?」
ナ「最後の方だけです」
さ「……それが一番困るのですが」
ナ「え?」
さ「…………」
真剣な顔をして黙り込んでしまった。
間もなく、顔を赤らめて大きな瞳で僕を見つめた。
さ「ナナシさん」
ナ「はい…?」
さ「貴方のことが…好き…です。私と…付き合ってくださいませんか…?」
ナ「!?!?!?」
え、いや、ちょ、ちょ、ちょっと待って待ってください。
さ「まずは落ち着いてください。深呼吸を」
スゥ~……ハァ~……
ナ「取り乱してすみません」
さ「いえ…その…それで…答えは…?」
心を読めるはずのさとりさんが言葉での返事を求めていた。
『口先だけでも良い』と暗に言っているのだ。
さとりさんの手が震えているのが見て取れた。
そんな目の前の少女に僕は――
ナ「すみません、さとりさんのことは姉みたいに思ってて」
さ「そう…ですか…」
さとりさんの握った手に力がこもる。
ナ「もちろんさとりさんのことは好きです。でもさとりさんの言うような『好き』なのか分からなくて…」
さ「…………」
顔は既に下げられ僕のことを見ようとしてくれない。
ナ「…そんな僕でも良いですか?」
さ「!?」
もう一度上げられた彼女の頬を大きな滴が伝う。
ナ「記憶すら不確かで曖昧であやふやで自分の気持ちにすら自信がもてない……こんな僕でもいいのなら―」
彼女の頬を拭い、一拍置いて言う。
ナ「さとりさん、僕と付き合ってください」
さとりさんは僕の胸に痛いほど力強くしがみ付いた。
どんな顔をしているのか分からない。
どう思っているのか分からない。
どんな風に声をかけたらいいのか分からない。
だから、無知な僕は何も言わずにただ彼女の背中を撫で続けた。
泣き続ける子供をあやすように。
彼女はそんな扱いを嫌がるだろうが今だけはこうさせてもらおう。
さ「……ずるいですよ……人の告白を断っておきながら……」
ナ「すみません」
さ「本当に…こんなひどい人を好きになってしまうなんて…私も大馬鹿ですね…」
ナ「…………」
さ「きっと……貴方を惚れさせてみせます……覚悟してくださいね…?」