旧山梨県の山間部。地図にも乗っておらず日本のごく一部の人間のみが知るその場所に住んで居る魔法師一族の本邸がる。
その四葉の現当主は一族にも秘密のままある実験を行っていた。そしてそれは成功した。
当主、四葉真夜。眼の前には大人が一人は居れるほどにガラスで出来た巨大な筒―――巨大試験管とも言えるものを眺めていた。
真夜はガラスに手を触れる。
「まさか、上手くいくとは思っていなかったわ」
幼い時に攫われた際に、行われた人体実験の後遺症で子供を成すことは出来ないはずだった。だが、偶然にも自分の冷凍保存されていた自分の卵子が見つかったと分家の黒羽の当主からの知らせに無意識に涙が流れた。
もしかしたら、子供が作れるかもしれない、と。
自分には無理だったはずのことが、僅かな可能性と共に戻ってきた。ならば、やらないわけがなかった。
精子には四葉の情報力の持てる全てを使ってこの子が生きていく為に必要な才能を持つ人間を厳選に厳選を重ねた。
そして、今、眼のまえに自分の卵子から受精させた自分の子供、一般的な赤子までの大きさまで成長した”娘”が目も前に居る。
「早く大きくなって欲しいわ
ガラスから手を離し、名残り惜しそう出口の扉を開けて、おやすみ、と口にして扉をしめた。
そこに居るのは『極東の魔王』『夜の女王』と世間では呼ばれている真夜であっても、我が子の前では一人の母親でしかなかった。
膝の上に座っている七歳にまで成長した娘の髪を優しく撫でる。
自分と同じで綺麗な黒髪、整った顔立ち。将来は美人になると言えるだろう。
誰にも触らせたくない一人娘、自分の事をママと元気に呼んでくれる度に涙が込み上げてくる。
「ママ!昨日ね、達也に会ったよ。ボロボロだったけど」
達也は真夜の姉の四葉
輝夜は達也がお気に入りだ。一体どこがいいのかと聞いてみれば返ってきた返答は、分かんない、だ。
その返答を聞いた真夜は深夜は二人同時に頭を抱えた。
当たり前だ、達也には四葉の魔法師として才能は無い。使えるのは『再成』と『分解』の二つの魔法だけ。達也がなれるのは、良くてもガーディアンまでだ。それ以上は望めない。
「ママ、決めた!」
いきなり膝から降りて、笑顔で振り返る輝夜。
「何を決めたの?」
目線を同じ高さにまで低くして輝夜に問いかける。
「私ね、達也をお婿さんにするの!そしたら一緒に居られるでしょ!ママも伯母様とも仲直りして深雪も一緒に居られるから、皆とずっと一緒に居られるよね!」
確かに深夜とは輝夜が生まれてから話すようになったが、まだ、昔のように話せない。
甥の達也も姪の深雪、姉の深夜と自分に
輝夜の家族の範囲は狭い、それはそうだ。なにせ輝夜の存在を知っているのは四葉でもごく一部の人間だけ、輝夜にとってはそのごく一部が世界の全てと言えるだろう。だからこそ、人間関係が上手くいっていないのは気に入らなかった。
子供は大人の表情や態度にひどく敏感であり、それは輝夜も例外じゃない。
本来なら達也を婿にするなんてありえないと言い放つものだのだが、真夜はすこぶるが付く程の親バカだ。
輝夜が自分のことを考えていてくれたことに、自分の意見を言っているのだ。それをどんな手を使っても叶えてあげたくなる。
「分かったわ、達也を貴方の婿にしましょう。ただし、貴方の心が大人になっても変わらず、達也が貴方と一緒に居たいと言ったらね」
約束だよ、指切りね、と小指を出してくる輝夜。
約束、と指切りをした。
母親と娘だけの秘密の約束がここに結ばれた。
【設定】
四葉
魔法:・『操作』精神、物体問わずに操作することが出来る。手を触れずにものを動かすだけでなく、分子結合を操作することでものをバラバラにしたり、人間を操作して人形のように操る事もできる。
容姿:真夜と同じ黒髪に少しウェーブのかかった髪型。
好きなもの、こと:達也、真夜、深雪、甘いもの、昼寝
真夜とは違い、妖艶というよりは、元気っ娘。
司波 達也
今作品では、深雪ともう一人分(婚約者)に対する感情が空いている。
いつも通りのシスコン。