ビクトーリアとアウラ、二人は顔を突き合わせ「うむむ」と唸る。その理由は、今だにビクトーリアにちょっかいを掛け続ける毛玉の正体についてだった。
「ビクトーリア様。ホントにこいつって、何なんですかねぇ?」
そう言われても、ビクトーリアには答える事が出来ない。アウラが発見する前、つまり、毛玉の敷物になっている時、色々な考察をしてみた。リアル、ゲーム問わずだ。
リアルでの場合巨大な鳥と言うと、ダチョウ、キウイ、絶滅種だがジャイアント・モス。
そして伝説の中では、
ゲームの世界で考えれば、様々な種類の巨大な鳥の魔物が存在していた。百年程前に流行したレトロゲーム内のチ○コボなどもそうだ。
だが、この毛玉はどれとも違う様に見える。リアルで考えた場合は、デカ過ぎる。コイツはどう見ても幼鳥だ。ならば大人になった時、どれほどの大きさになるのか? それほどの大きさならば、恐らくは飛ぶ事は出来ない。
ならば、ダチョウなどの飛ばない鳥? そうなると、毛玉の成体は十メートル以上になってしまう。それだと、自重で足が持たないだろう。
ではゲームでは? 少なくとも、YGGDRASIL内ではこんな毛玉は存在しなかった。そうなると、残された可能性は伝承の中。
「
アウラは謎の毛玉を、一番メジャーな物に例えて見た。そして、二人して決玉に視線を向ける。結果、お互いを見つめ首を横に振る。
「アウラよ。仮にじゃ、毛玉が
「そうですねぇ。ビクトーリア様が強いから! とかでは無いですねぇ」
アウラの言葉に、ビクトーリアは一度頷き
「左様。
「そうですねぇ。では! ビクトーリア様の特性とか?」
「妾のか?」
「はい!」
ビクトーリアは一度目を瞑り、自身の種族、
「違うのう。妾はテイム系の
ビクトーリアの言葉に、アウラは首を傾げ
「では、種族との関係は?」
「種族のう……」
頭では考慮すべきと考えるが、心では拒否したい。そんな思いで、ビクトーリアは考えに浸る。そして、おもむろに右人差し指と親指を立てると、その間にパリッと電気を走らせる。
「ぴぴーーー!」
毛玉が声を上げた。
「喜んで、ますね」
アウラが状況を述べた。どうやら、毛玉は喜んでいるらしい。放電を止めてみる。
「ぴー」
「あ、しょげた」
再び放電。
「ぴぴーーー!」
止める。
「ぴー」
「ビクトーリア様ぁ」
それが答えなのか? ビクトーリアの額を、嫌な汗が流れる。
その時、上空から羽音が聞こえた。その羽音に、ビクトーリア、アウラ、フェン、毛玉が一斉に警戒の姿勢を示す。だが、それは杞憂に終わる。
上空に現れたのは、茶と白が混じった羽色を持った者。セイレーンのニケ、またの名をワカメであった。バサリ、バサリと頭頂部の羽をはためかせながら、徐々に高度を落として来た。そして着地すると、礼を持って腰を折る。
「奇妙な波動を感じましたので、偵察に出て参りましたが、やはりビクトーリア様でしたか」
「失礼な物言いじゃのう。ワカメ……」
威厳を持って接しようとしたビクトーリアだったが、此処にはそれを邪魔する者が居た。ビクトーリアの黄金の髪を啄み、自分に興味を引かそうとする者が。毛玉はこう言っているのだ、もっと自分に構えと。
「なんじゃあ、もう。ちいと黙っておれ。妾は忙しいのじゃ」
「ぴー!」
従う気は無いらしい。毛玉はさらにビクトーリアにじゃれ付いて来た。
「じゃから! じゃれるなと言うておる!」
「ぴぴー!」
「やめんかー!」
言葉と共に、帯電状態の拳を叩きつける。それによって、毛玉は十メートル程吹き飛んだ。だが毛玉は一切のダメージを感じさせず、すぐに起き上がると、ビクトーリア目がけて突進して来た。どうやら、遊んで貰っていると思っているらしい。
一方ビクトーリアは、じっと自分の拳を見つめる。傍らのアウラも同様だった。ビクトーリアは、仮にもナザリック最強のシャルティアを打ち倒した人物なのだ。その攻撃が通用しない者など……。
「何故じゃ? 何故?」
そう呟くビクトーリアに、ニケが言葉を掛ける。
「その娘に雷撃は効果ありませんよ」
「「は?」」
ビクトーリア、アウラの両名の目が点になった。そして、ニケの言葉はこう続いた
「その娘は、ドラゴンにも匹敵する唯一の魔物。
真実が明らかになった。その事により、ビクトーリアはがっくりと腰を落とした。だが、ニケの追撃は続く。
「たぶん、ビクトーリア様の波動を感じて、親だと思っているのでは?」
そう言うニケに、アウラは毛玉と戯れるビクトーリアを視界に収め
「どっちかって言うと、飼い主じゃない?」
そう言って苦笑いを浮かべた。
ニケは心配そうにビクトーリアを視界に収めつつ、
「我らが神鳥様。あなたはどうしたいのですか? ビクトーリア様は、この地を御去りになります。此処で暮らしますか? それとも………」
「ま、待て!」
ビクトーリアは、ニケの言葉を止めようと口を開く。
「ぴー!」
「付いて行くそうです」
間に合わなかった様だ。再びビクトーリアはがっくりと地面に四肢を付く。
「お、おもい……」
「これはぁ、おんぶですね」
アウラが冷静に分析する。
「な、ならば、わ、妾の上に乗って、いたのは……」
「だっこ、と言う事になります」
「ぴー!」
それから二十分程経ち、
「これわぁ、どう言う事じゃ?」
ビクトーリアは、自身の状態に対し疑問の声を上げる。だが、アウラとニケは目をそらしながらも事態を冷静に判断した。
「「鳥って、肩とか頭に止まりたがりますよね!」」
この言葉に、ビクトーリアは眉をピクリと跳ねあげる。その中で、アウラが羊皮紙を広げているのが眼に付いた。
「アウラよ、何をしておるのじゃ?」
「ん? ああ、これですか? 記録を撮っているんですよ」
どうやら、アウラが持っている羊皮紙は、記録用のスクロールの様だ。ビクトーリアは盛大に溜息を吐くと、話の方向を変える。
「ワカメ。実際の所、この毛玉は何を喰うておるのじゃ?」
「
「また子にかや?」
「はい。サイレン様は、
ニケの説明に、毛玉の世話はその巫女に丸投げしようとビクトーリアは決めた。
「それでビクトーリア様。その子の名前はどうします?」
アウラが急にそんな事を言い出した。
「名前かや……」
ビクトーリアは瞳を閉じ、じっくり考えてから名を口にする。
「毛玉、で良いのでは?」
そう言ったビクトーリアを、二人は半眼で見つめていた。この表情には見覚えがあった。アインズ・ウール・ゴウンの四十人が、モモンガを見る目つきだ。それを敏感に感じ取ったビクトーリアは、毛玉を頭の上から降り落し、コホンと咳払いをすると
「冗談じゃ。さすれば、コンスタンチンではどうじゃ?」
「ぴ!」
毛玉がそっぽを向いた。これは、拒否の姿勢らしい。
「うーむ。ならば、デュランダル」
「ぴ!」
これもダメらしい。その後、ランスロット、ガウェイン、モルドレット、サザーランド、ジェレミア・ゴッドバルトなど言ってみたが、全て拒否された。この名付けに飽きて来た、いや、疲れて来たビクトーリアはどうでも良いと開き直り
「じゃあ、ビリビリ」
適当に語感で選び、その名を口にした。アウラ、ニケの二人の反応は、散々な物だったが、当の毛玉は
「ぴぴー!」
気に入った様だ。
だが、アウラはもちろんだが、ニケの視線は鋭い物に変わる。それはそうだろう。ここで、この毛玉の名がビリビリなどと言う冗談で付けた以外考えられない物に決まったならば、自身達が信仰する神の名が、ビリビリ様となるのだ。それは何としても阻止しなければならない。もしかすると、神の名付けに立ち会った者として、自分の名も後世に残るかもしれないのだから。
だからこそ訴える。言葉に出すと怖いので、目力のみで。その願いは、その思いは、ビクトーリアの鋭敏な感性に確実に届く。やはり、あまりにもだと。
ビクトーリアは自身の記憶を混ぜ返し、正解を導き出そうと努力を繰り返す。そして、行きついた。以前、仕事で過去のサブカルチャーの歴史を記録していた時に見た覚えがある言葉。ビリビリと対成す言葉。ビリビリを体現した者の名。
「ミサカ」
「ぴぴ!」
「本日、この場を持ってうぬの名はミサカじゃ!」
「ぴぴぴーーー!」
凄いはしゃぎ様だった。よほど気にいったみたいだ。
「ミサカ……」
「ミサカ様!」
アウラとニケの評価も上々の様だ。ビクトーリアは、満足げに何度も頷いた。
こうしてビクトーリアは、ドラゴンに匹敵すると言われる神鳥を手に入れたのだった。ちなみに、
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二人がナザリックへと帰還した後、アウラから報告書(記録映像付き)が提出された。そして、その結果、ナザリック地下大墳墓 第九階層では、支配者の楽し気な笑い声が途切れる事は無かったと言う。
アウラ篇、とりあえずの終了。
次話では、マーレをお供にビッチと豆の木、です。
ちなみに、ミサカはメスです。
感想の返しでも書いたのですが、ミサカの見た目は、コポポで画像検索して頂ければと思います。それのひよこバージョンです。
感想お待ちしております。