司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 長くなってしまいました。
 よくない傾向ですね。
 でも、書いときたかったんです。

 では、お願いします。


九校戦編3

               1

 

 週刊誌でスキャンダルが暴露されて、大会委員会は大慌ての大混乱だったみたい。

 ザマまぁみなさい。

 

 そして、遂に一校でも九校戦対策会議が開かれる事になる。

 九校戦参加者は全員参加となり、会場は講堂で行われた。

「皆さん。週刊誌の件は既にご存知だと思います。本日は今日までに分かった事を

ご報告させて頂きます。そして、それを踏まえ、我々はどうすべきかを話し合う

会議となります」

 まずは閣下が、どのような目的の会議かを告げる。

 なんでも中止の話も上がったそうだけど、結局はやる事にしたみたい。

 アンタ等に信用なんてないって分かんないの?

「まずは、重要な警備の点は、軍が直前に要員を選び会場警備を担ってくれるそう

です。CADのレギュレーションチェックも軍で人員を選抜する事が決定しています。

大会委員会は、審判のみとなります」

 勿論、大会委員会の人員総入れ替えが断行された。

 これを聞いて、ホッとする人、まだ不安そうな人様々だ。

 大会の撮影も軍の広報が担当する徹底振りだそうだ。

「以上が大会委員が示した改善案となります」

 講堂は閣下の声のみが響いている。

 有り得ない程、私語がない。

 その後は、各魔法科高校の対応の話に移る。

 自分達が賭けの対象になっていたという事実は、特に第三高校が激しい拒否反応を

示しているそうだ。

 大会委員会にも不審感を露わにしているとか。

 流石、尚武の気風。

 賭けくらいは、どの年度でも勝手にやってた連中がいただろうけど、今回のは犯罪

組織の行っている大々的なものだ。本命を優勝させない為に、手を尽くしていたという

事実は、彼等には許せない事だろう。

 他校も参加を渋っているとか。

 まあ、危険が消えた保証もないしね。

「そこで、我が校の方針を決めなくてはなりません」

 妨害第一目標となっている一校の判断次第では、今大会全魔法科高校が出席しない

という事も有り得る。

「参加、見合わせた方がいいんじゃないんですか?」

 誰かがボソリと呟くようにいった声が響く。

 今までなら、大会委員会がガッチリとガードしてくれていた。だが、今回その大会

委員会そのものが信用できない状況だ。

 この発言もやむなしでしょうね。

「でも、このまま引き下がるのかよ!」

「そもそもどの程度の犯罪組織なんだよ!?」

「チンピラの訳ねぇだろ!?」

 誰かさんの発言に触発されて、徐々に声が上がり出す。

「犯罪組織の正体に関しては、今、警察が捜査中です」

 閣下が疑問に答える。

 閣下と十文字さんが、視線を交わし頷き合う。

「少し聞いて貰いたい。我々の考えを先に述べさせて貰う」

 十文字さんが立ち上がり発言する。

「これは当校に対するテロ行為に等しい。屈する訳にはいかん。だからといって、

参加を無理強いするものではない。生徒会役員並びに部活連有志のみでの参加を

考えている」

 十文字さんのセリフに参加者がざわつく。

 おお!では、頑張ってきて下さい!応援してますよ!って訳にいきませんよね。

「そんな!!」

 講堂内は喧々囂々ですね。

「俺達だって魔法師ですよ!会長達だけで送り出すなんて有り得ません!!」

「会頭が行くってのに、俺達だけ居残りなんて恥だぜ!!」

 俺達だけで行ってくるよ発言は、不評なようです。

 でも、私には違う意図が見えるんだよね。

 こんな状況を作った原因の私がいうのも、なんだけどさ。

「我々の三連覇が掛かっているが、そんな事は重要ではない。少しでも己の実力に

不安があるのなら、ここは堪えて参加を見送ってほしい。誰一人、こんな事で生徒

が犠牲になる事があってはならない」

 止めの言葉が十文字さんから放たれる。

 士気が高まりますよ、これ。

 

 乗せて使うのが、お上手で。効果絶大過ぎだけど。

 

 結局、慕われている人達の演出で、止めますなんて言える雰囲気じゃなくなった。

 閣下達にしてみれば、選手を奮い立たせる演出だったんだろうけど、作戦スタッフ

から、エンジニアまで誰も降りなかった。

 閣下は十文字さんに、ちょっとやり過ぎじゃないの?という視線を送っているが、

十文字さんに動揺はない。流石天然。

 第一高校参加表明が決定した。

 

 そこからは会議内容は、安全管理の話し合いにシフトした。

 今こそ、勇気を振り絞る時ではないでしょうか。辞めるっていう。

  

 

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 会議という名の独演会が終了し、講堂から人が吐き出されて行く。

 私達もその流れに乗って、出ていく。

 結局、口挿む暇なんてありゃしませんでしたよ。

「深景さん!」

 背に声を掛けられ、振り返ると閣下が立っていた。

「どうかしましたか?」

「ちょっといいかしら?」

 生徒会室までご案内。

 

 生徒会室には、カンゾー君を含めたフルメンバーが揃っていた。

 一人凄い圧力の人が、追加されているけど。

 呼ばれたのは私だけど、結局は私達司波家全員参加してます。

 なんでしょうかね。

「選手の方は、想定を超える結果になったけど、応援にくる生徒をどうするかを

決めないといけないわ」

 え?来なくていいんじゃありませんか?それか自己責任。

「これからの為にも、応援も兼ねて見学は積極的にさせているのだけど、今回は

危険もあるし、来ていいとはいえないのよね」

 そういえば、アニメでは観客席に一校生一杯いましたね。

 あれ、見学者だったのか。

「今回は安全を考えて、見送った方がいいのでは?」

 達也が尤もらしくいうが、お姉さんは分かってるよ。

 どうでもいいと思ってるでしょ?

「逆に例年通りにしたら、どうです?」

 私は敢えて達也と逆の意見をいう。

 話し合いは、色々な意見が出た方が判断材料が増えるからね。

 対策会議は、それすら実行されなかったけど。

「う~ん。でも、達也君のいう通り危険なのよね。深景さんはどうしてそう思うの?」

「会頭の意見と同じ理由ですね。どこかの規模を縮小すると、もう一息だと思うアホ

もいるかもしれませんし」

 私の意見に生徒会の面々が渋面になった。

 それに軍が警備やってくれるなら、そこまで気にする必要ないんじゃない?

 記事では、軍の敷地に調査に入っていたようだとも書かれたしね。

 今回の件で軍も少なからずダメージ受けたし、これでしくじり先生やったら、評価

は地に落ちるよ。原作通り、風間天狗もくるだろうし。いざとなったら、天狗さんに

お願いしようよ。公務員に向いている方にさ。

 無頭竜(ノーヘッドドラゴン)くらい、あの面子なら余裕で潰せるでしょ。

 十文字さんは、私の意見を支持。閣下はどちらかといえば、達也の意見に傾いて

いるといった感じ。

 カンゾー君、渡辺お姉様が私の意見に賛成。CADオタ、市原さんが達也の意見に

賛成。

 あとは、深雪が意見をいっていないけど、さてどうするかね。

 ここまで分かれると、閣下の意見に掛かってくるんじゃないかな。

 閣下がまだ決めかねている為に、二手に分かれて議論を展開する。

「まあ、軍も面子がありますし。チャンとやってくれると思いますけどね」

 膠着状態になってしまったので、仕方な私は口を挿む。

「軍が護ってくれるなら、確かにある程度大丈夫なのではないでしょうか?」

 深雪がおずおずと口を開く。

 一番生徒会では下っ端な為に遠慮していたみたい。

 まあ、所詮犯罪組織だもんね。

「では、応援に来るのは構わないけど、身の回りに注意するよう警告する事に

しましょう」

 閣下が決断を下す。

 まあ、結局は自己責任ですよね。

 

 ところで、私は何故この面子の会議に呼ばれたんでしょうか?

 

 

               3

 

 なんとか練習も間に合い。準備も整いました。

 そこには、学生とは思えない残業がありましたけどね。

 なんで今から、こんな事してるんでしょうか?

 因みに一校が参加を表明した事により、九校戦中止はなくなった。

 何しろ、一番の標的が出るのに、優先順位の低い学校が出ないなんていえないで

しょうからね。

 可能なら、私も不参加を表明したかった。

 

 そして、出発当日。

 閣下が原作通り遅刻しています。事前連絡貰ってますけどね。

 達也と私で閣下を待ち受けています。

 私は日傘を差してますけど、達也は汗を乾かす魔法くらいしか使っていません。

 別に遅れてくるの分かってるんだから、中である程度待ってもいいと思うんです

よ。紫外線も長時間浴び続けるとヤバいですよ。若いといっても。

「ゴメンなさ~い!」

 閣下が到着したようですね。

 長かったよ。

「ごめんなさい。待たせちゃって」

 閣下は達也と私に丁寧に謝った。

 バスから鋭い視線が突き刺さるので、それくらいでいいですよ。

「いいえ。お気になさらずに。家の用事と予め聞いていましたので」

 達也が表情を変えずにいった。

 達也が持っているタブレット端末に、出席のチェックを入れる。

 これで完了っと。

「ところで、どう?この服」

 原作と同じ格好ですね。

 ただ、訊く相手間違ってませんか?

「地味過ぎず、派手過ぎず、可愛いと思いますよ」

 避暑地のお嬢様って感じですね。

「そう?」

 閣下が顔を赤らめて微笑んだ。

 しかも、席隣に座れとかいい出されて参った。

 

 ホント、相手間違えてますよ。なんで私に訊いたんですか。

 

 

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 技術スタッフは、機材と一緒に別のバスで移動する。

 まあ、変な気を遣わなくていいから、楽っていえば楽だ。

 しかし、私に油断はない。

 まあ、連中も忙しいと思うけど、警戒は緩めない。

 逆ギレもいいところだけど、報復攻撃とかはあるかもだし。

 目を閉じて、ジッと精神を研ぎ澄まし周りを探る。

 

 おっと。いらっしゃったよ。

 

 この精神状態だと、フランケンか。

 手加減無用だね。

 車がパンクし車体がスピンする。

 こっちに、ガード壁を使って跳んでくる積もりだろうけど、それはさせない。

 上方に跳び上がる力を、私の魔法で同じく瞬間的に上方に掛かる力を切断する。

 車は普通にガード壁に追突して止まった。

 

 お疲れ。

 

 一校のバスは、そのままただの事故車両の横を通り過ぎて行った。

 すれ違う瞬間に車を爆破しようとしたが、それも阻止。

 参ったか、これぞ秘技・放置プレイ。

 それから、何度か車やバイクの事故が多発したが、バスは無傷だった。

 

「今日は事故が多いのね」

 選手が乗るバスの中では、そんな呑気な発言があったとか。

 誰がいったかは、名誉の為に伏せておく。

 

 

               5

 

 問題なく現地到着。

 さて、ここまでくれば、普通に競技するだけ…といきたいですね。

 選手は悠々とそのまま懇親会まで休憩なのに、技術スタッフは仕事があります。

 ブラッキーめ。

 私も機材を乗せた台車を運び込んでいく。

 達也は私の分もやるといってくれたが、断った。

 押し付けるのもね。

 

 台車を押して、達也と深雪と一緒にホテルに入る。

 深雪は、律儀に私達を待ってくれていました。

「深景!深雪!達也君!ヤッホー!」

 陽気な声が出迎えてくれる。

 貴女の親、こんな状況なのに来させたんだ。

 エリカが私服姿で手を振っていた。

「エリカ!?貴女、どうしてここに?」

 深雪がエリカに訊く。

 お家の事情です。

「それじゃ、深雪。先に行っているぞ。エリカも後でな」

 達也はサッサと行ってします。

「それじゃ、私も以下同文」

 私も達也の後を追う。

 エリカがリアクション不足で、ブツブツ文句をいっているようだった。

 そして、見事に遊びに来ました的な格好の美月が、エリカのところに駆け寄る。

 う~ん。なんだか嫌な感じだね。何、この原作通り感。

 

 機材を置いてセッティングを行うと、懇親会まで暇ができた。

 私と達也に掛かれば容易い事よ。

 部屋に戻ろうと角を曲がった瞬間、赤と黒の制服が目に飛び込んで来た。

 私はいるのは分かっていたので、少し横にズレてやり過ごす。

 が、向こうはビックリしたようだ。

 顔を見て、私もビックリですよ。

 

 こんなところで何してんですか?ヘタレ赤王子。

 

 そこにいたのは、クリムゾンプリンスこと、一条将輝君だった。

 厨二病全開ですね。気の毒に。将来、黒歴史確定路線だ。

 向こうは何故かボケッと私を見ていた。

 うん。流石ヘタレ。反応が色々と残念過ぎる。

 フッと見ると袖が少し破れていた。

 何やったの?君。もうじき懇親会だよ?

「あの、袖、破れてますよ」

 あたふたとしてから、どうにか正気を取り戻したようだ。

「どうも、どこかに引っ掛けてしまったようで…」

 私はここで考えた。

 このヘタレは深雪のお相手候補だ(私の中では)。

 ここで姉として、いいところを見せてはどうだろう?

 深雪にベタ惚れしたくらいだから、この人は面食いだろう。

 となれば、私は範囲外。

 感じのいいお姉さんがいるな、くらいに思って貰ってもいいだろう。

「替えの制服は?」

 王子様は困った顔で、首を振った。

 まあ、だろうね。

「袖、見せて下さい」

 私の言葉に、ぎこちなく袖を見せる。

 私はポケットに手を入れて、亜空間からソーイングセットを取り出す。

「いつも持ち歩いているのかい?」

 ビックリしたように王子様がいう。

 勿論、違う。亜空間に放り込んであるだけだ。

 私は答える代わりに、尼~ズの和物オタの人並のスピードと精度で、応急処置

を行う。

 うん。これでまじまじ見られない限りは、大丈夫だろう!

「気を付けて下さいね!」

 私はそういうと、用事は済んだとばかりに部屋に戻った。

 

 どうして、あのヘタレ王子は、ずっと私を見てたのかな?

 深雪の生霊でも背負ってたかな?

 

 

               6

 

 :将輝視点

 

 一校が参加を表明した時は、感心した。

 逃げずに戦うとは流石だ。いや、十師族の直系が二人もいるのだから、当然か。

 

 ホテルに到着し、選手は競技に備える。

「将輝。袖が破れてるよ!?」

 親友であり、俺の参謀である吉祥寺真紅郎が、慌てて指摘した。

 俺はコイツの事をジョージと呼んでいる。

「どこかで引っ掛けたかな」

「将輝。替えの制服は?」

 ジョージに訊かれ、俺は返答に詰まった。正直競技では制服は着ないし、一着

で十分だと思って持ってきていない。そもそも、持ってきてる奴いるのか?

「確か、伊原先輩は被服部を兼部していた筈だ。応急処置くらいはしてくれるよ」

 流石、ジョージ。そんな事まで把握しているとは。

 俺は伊原先輩を探す事にした。

 しかし、これが見付からない。

 当てもなく歩き回る羽目になった。

 

 暫く歩いていると、角から突然女生徒が出て来た。

 咄嗟に避けようとしたが、それより早く女生徒はアッサリと俺を躱した。

 凄腕だな。身のこなしが尋常じゃない。

 だが、それ以上に困惑する。

 女生徒は一校生のようだった。

 綺麗な長い黒髪に端麗な容姿。でも、眼鏡が台無しにしている。

 野暮ったい黒縁眼鏡の所為で、顔全体が地味な印象になっていた。

 

 それでも、彼女は柔らかい光に満ちていた。

 

 俺にはそう見えたというだけで、実際光っている訳じゃ勿論ない。

 俺はこの時、親父の言葉を思い出していた。

『美登里に初めて逢った時、輝いて見えたんだ。その場で声を掛けたさ』

 俺はこれを聞いた時、信じられない思いだった。

 勿論、女性が光る訳ないし、何より親父が初対面の女性に声を掛けたという事

に驚いたものだ。

 まさか、自分がそんな体験をするとは。

 

 彼女は怪訝な顔で、俺を見ていた。

 いかん。不審に思われたようだ。

「あの、袖、破れてますよ」

 涼やかな声でそういわれた。

 俺はなんて見っともない姿を晒したんだ!!

 心中で己を罵った。これ以上の無様は許されない。

「どうも、どこかに引っ掛けてしまったようで…」

 思うようにいかん。

「替えの制服は?」

 俺は首を振った。おい、これじゃ愛想のない男みたいだろうが!!

「袖、見せて下さい」

 俺はギクシャクと袖を見せると、彼女はポケットからソーイングセットを取り

出した。

「いつも持ち歩いているのかい?」

 驚いた。今までそんな物をパッと出した女性は、見た事がなかった。

 彼女の手が俺の腕に触れる。硬い。大凡女性らしいとはいえない手だった。

 おそらく何度も手のマメが潰れて、硬くなったのだろう。

 これは彼女の努力の証だ。大抵の男なら嫌がるかもしれない。

 だが、俺は美しいと思った。

 彼女は恐るべき早さで、袖の応急処置を終えた。

 見てみると、よく見ないと気付けないくらいの出来だった。

「気を付けて下さいね!」

 ボケッと袖を見ている間に、彼女は背を向けて歩き出していた。

 呼び止めようと、手を伸ばしたが、言葉は出なかった。

 俺は何もできずに、彼女の背を見送った。

 

 彼女からは、火と鉄の匂いがした。

 

 立ち尽くしていると、後ろから声が掛かった。

「若。ここにいましたか」

 俺は顔を顰めた。

 振り返ると案の定知った顔だった。

 市之瀬奈津。一条家の親戚筋に当たる家の子で、俺と同い年だ。

 市之瀬の家は、一条家のサポートを担っている。

 だからか、彼女は俺の事を若と呼ぶ。

「何度もいうがな。俺を若と呼ばないでくれ。同い年じゃないか」

 奈津はいつもの如く無視した。

「伊原先輩を見付けました。行きましょう」

「ああ、それはもういいんだ」

 奈津が怪訝な顔をする。

 俺はグイッと袖を見せてやった。

「これは見事な。何方にやって貰ったのですか?」

 袖を見て奈津が感嘆の声を上げて、訊いてきた。

「……」

 それも訊いていない。

「一校の女生徒だ。名前は…訊いていない…」

 忸怩たる思いでいう。

 顔を上げると驚いた事に、奈津が驚いたような喜んでいるような顔をして

いた。なんだ?

「いえ。この奈津。ホッと致しました。このままクロウとの衆道ルートかと、

心配しておりましたので」

 おい!!なんだ、それは!!

「まあ、クロウは茜ちゃんが付いているから、平気だと思いましたが、少し

不安を感じていました」

 俺だけ変態みたいだろう!!

 クロウとは、ジョージの事だ。俺達三人は大抵一緒にいる。

「これは、御当主様に報告しなければなりません。若が女に興味を示した、

と!!」

 ふざけるな、お前!!

 おん…なに…。

 

 俺は、顔が真っ赤に染まっていくのを感じて、ソッポを向いた。

 

 

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 ヘタレた王子様との出会いがあったり…まあ、それだけですな。

 懇親会に突入した。

 

 一校代表団が他校の代表団と挨拶を交わし、陰険に戦力の探り合いをやって

いる。勿論、主力選手ではない私と達也は壁の置物と化している。

 花という程、華やかでも舞踏会でもない。

 突っ立っていると、エリカがジュースを持って来てくれた。

 私は達也と葡萄ジュースを片手に、ボンヤリと会場を眺めていた。

「お姉様、お兄様」

 深雪が帰ってくる。挨拶回りは終了したらしい。

 その後、ほのかに雫が合流。

 一校一年は、こっちの方をチラチラ気にしている。

「深雪。チームメイトはいいのか?」

 達也が見かねたのか疑問を口にする。

 深雪が苦い顔をする。

「みんな、深景さん達がいるから、こっちに来れないんだよ」

 代わりに雫が答えてくれた。

 私も含むんですか。

「バッカバカしい!今はチームメイトじゃない」

 私達の話に乱入してくる人がいた。

 千代田キャノンさんである。もとい、花音さんである。

 婚約者が絡まなければ、まあいい人ですね。

 彼女の婚約者・五十里先輩が宥めている。苦労してますな。

 達也がその発言を受けて、深雪を一校の挙動不審な一年の元へ

送り込んだ。

 キャノンさんは、御不満なご様子だったが、去って行った。

 入れ替わりで、エリカが幹比古君を引っ張って現れた。

「あれ、深雪いなくなっちゃった?」

 どうも、これを機に紹介して上げようとしたらしい。

 当の幹比古君は、ホッとしていた。

 エリカがそれを見て、幹比古弄りを開始。

 彼は戦術的撤退をしていった。

「幼馴染でしょ?もう少し手加減して上げたら?」

 私がいうと、エリカも浮かない顔をした。

「まあ、確かに八つ当たりだったかな」

 私は特に何もいわず、エリカの腕をポンと一つ叩いた。

 エリカはビックリしたように、私を見た。

 私は達也を引っ張って移動した。

 エリカは、私の背をジッと見ているようだった。

 

 移動したから、新鮮な光景を見る事ができた。

 深雪が第三高校の三人組に絡まれていた。

 やけに、いいとこの出って感じの三人だね。

「第三高校一年、一色愛梨といいます」

「同じく、十七夜栞」

「同じく、四十九院沓子じゃ、よろしく頼む」

 最後の人、なんか面白い。

「第一高校一年、司波深雪といいます」

 深雪が優雅に挨拶を決める。

 だが、三人共、えっ!?って顔で顔を見合わせている。

 気を取り直したのか、一色さんとやらが微笑む。

「一般の方でしたか。失礼しました。てっきり名のある方だと思って、声を

掛けてしまいました。試合、頑張って下さい」

 悪意満載で一色さんとやらが、笑った。

 相手との力量を測れない段階で、大した事なさそうだね。

 それにしても、原作でいなかった人だし、イレギュラーって事なのかな?

 

 うん?

 

 一色さんとやらの背後を、何かが追っていく。

 私はすれ違いざまに、それを掴み取った。

 私は手の中でジタバタしているものに、目を落とす。

 精霊いや、妖か…。こんなものがどうしている?

 コイツ等は、そこら辺をうろついているような存在ではない。

 考えられる事は、一つ。

 原作より厄介な相手を敵にしたという事だ。

 私は溜息と共に、妖を握り潰した。

「姉さん。何があった?」

 達也が険しい顔で訊いてくる。

「うん。妖がいたんだよ。厄介な事になりそうだね」

 一瞬、達也が驚愕の表情をするが、すぐにポーカーフェイスに戻り、

 真剣な表情で頷いた。

「かっ…会長に教えとかないといけないね」

「狙いは一校。そういう事かい?」

「タイミング的にそれしかないよ」

 

 厄介事避ける為に、更に厄介事が発生するとか。泣きそうだ。

 だって、女の子だもん。

 

 

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 :将輝視点

 

 懇親会で各校の代表と挨拶をしていく。

 一年でも俺とジョージ、奈津は参加させられている。

 まあ、実際に有力選手を間近に観察するのも、勉強になるし断れない。

 しかし、後にいるのをいい事に、あまり集中できていない。

 気が付くと視線を周囲に彷徨わせている。

 そんな事を繰り返していると、横から肘で突かれる。

「若。個人的にはいい傾向だと思いますが、時と場合をお考え下さい」

 奈津に注意されてしまった。

 ジョージは不思議そうに俺を見た。

「将輝。誰か探してるの?」

「ああ…いや、気にしないでくれ」

 俺は目の前の事に集中すべく、首を振って気を取り直した。

 

 挨拶回りを終えて、各校の生徒が自由に話す場になった。

 俺は話し掛けてくる相手が途切れず、勘弁して貰いたくなった。

 すると、周りの同級生が騒がしくなる。

 なんだ?

「見ろよ!すっげぇ!ウチの学校もレベル高い子一杯いるけど、あそこまで

のは、流石にいねぇぜ!」

「何、興奮してんだよ。見るからに高嶺の花じゃねえか。無駄無駄」

「うるせぇな!将輝だったら、イケるかもしれねぇだろ!?」

 俺は同級生連中の視線の先を追う。

 そして、驚いた。

 あれは、別格だな。

 美しいのは勿論だが、物凄い輝きだ。あれは女王だな。

 彼女を最初に見ていなければ、あの子の輝きに目が眩み、膝を突いて賛美

したかもしれない。

 でも、今なら分かる。あれは隣に立つ男を飾りにしてしまう。

 惚れた男は、自らの才覚に絶望する事になるだろう。

 今から、その男に同情を禁じ得ない。

「若…。あの方ではないのですか?てっきり…」

 奈津が信じられない、といった感じて訊いてくる。なんなんだ、一体。

「ああ、袖を応急処置してくれた子?」

 ジョージも口を開く。

「違うな。あれは目の毒だ」

 二人が同時に信じ難い者を見る目で、俺を見た。

「若。そんなだから、将輝×真紅郎の薄い本を出されてしまうのですよ」

 ちょっと待て。なんだそれは!!

 ジョージもあまりの言葉に、奈津の方を向く。

「なんですか!?それは!?」

「男同士でベタベタくっついていれば、そういう妄想も生まれるという事です」

 尤もらしく奈津がいったが、納得など到底できるものではない。

「奈津さん。後でそれを作った人を教えて下さい。()()()()話し合わなければ

なりません」

「俺も立ち会おう」

 二人で腐った嗜好の持ち主を、潰す決意を固めた。

 

 そんな俺達を見て、奈津は無駄だと思いますけどねっと呟いた。

 

 

               9

 

 口からエクトプラズムを垂れ流しつつ、閣下に耳打ちする事になった。

 閣下は笑顔のまま、後で詳しい話をっと囁いた。

 渡辺お姉様が、外に未だにいる連中を呼び戻す。

 会場からアナウンスが流れる。

 来賓から長~い挨拶が始まる。

 そして、最後は腐れ爺…もとい、九島烈の登場である。

 

 爺さんは普通に舞台袖から出て来た。

 あれ?精神干渉のトリック使わないんだ。

 なんて思ってたけど、あれ、当人じゃないね。歩き方が若い。若過ぎる。

 三巨頭も気付いているようだ。

 閣下はCADに手を掛けているし、十文字さんは一校生徒の前で仁王立ちしている。

 渡辺お姉様も、いつでも動けるように余計な力を身体から抜いている。

 だが、私と達也はもう一つの仕掛けに気付いていた。

 視線を交わし、頷き合う。

 達也は深雪の傍に。私は渡辺お姉様すぐ動けるように構えた。

 すると何かに制止されたように、偽烈が歩みを止めた。

 マイクスタンドの前に照明が当てられる。すると本物が悠然と立っていた。

 偽烈の姿が霞むと、若い男が姿を現す。

 爺が手で下がるように合図すると、舞台袖に戻っていった。

「まずは、悪ふざけに付き合わせた事を謝罪する。だが、君達の警戒の甘さが露呈した

結果になったな」

 その一言に会場がざわめく。

「これは魔法というより手品だ。大したものではない。しかし、君等はそれを見破れず、

騙されてしまった。私の見たところ、最後のタネまで見抜いた者は二人だけだった」

 そこで、爺が私と達也をチラッと見た。

 気付いた人達も偽烈に注意していたからね。

「つまり、私が件の犯罪組織とやらで、君等をどうにかしてやろうと思えば、阻止する為

に動ける人間は二人。あとは偽物に気付いた五人が参加できるかといったところだろう」

 偽物にすら気付けなかった連中は、顔を顰めて聞いている。

 爺の話は、ここから聞いた事のある話だった。

 魔法を工夫して使わんかい!!以上である。

 

 微妙な拍手と共に、爺は去って行った。

 

 

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 :戸愚呂視点

 

 全く困った雇い主だね。

 勿論、左京さんの方ではない仮の雇い主の方だ。

 ホテルの一室でビールを飲んでいると、通信が入る。

 出ると件の仮の雇い主だった。

『どういう事だ!?戸愚呂!!』

 それはこっちが訊きたい事だね。

「そっくり返しますよ。昼間のコントは何のマネです?」

『何故、連中を黙って行かせようとする!!』

 冷静さも何もあったもんじゃないね。

「これでも雇い主を思い遣ったんですがね」

『何!?』

「第一高校が到着しなかったら、賭けになりゃしませんよ。それじゃ、顧客もアンタの

ボスも納得しないでしょうなぁ。合計で91兆円。これくらい稼がないと命が危ういんで

しょう?なら、開始前に無用の警戒なんてさせてどうするんですかねぇ?」

 黄は言葉に詰まった。

 やれやれだねぇ。

「こちらとアンタとの間に齟齬があっちゃぁならない。第一高校を道連れに自殺する気

なら、今すぐ殺してきますがね」

 沈黙が続く。辛抱強く待つ。

『負けさせられるんだな!?』

「それが仕事だと思ってたんですがね」

 普通の魔法師なら、ここまで軍が警戒していては無理だろうねぇ。

 でも、私達なら可能だ。

『いいだろう。失敗は許さん。定時連絡を忘れるな』

 乱暴に通信が切られる。

 

 俺は溜息と共に、ビールを呷った。

 

 

 

 




 深景はずっと深雪と暮らしていたので、容姿に関して自己評価
 が低くなっています。
 
 オリキャラは奈津さんです。
 因みにボーイッシュな女の子であります。
 王子様が興味を示したくらいだから、深雪レベルだろうと勘違い
 してました。

 あと、戸愚呂の一人称どうだったか忘れたので、俺にしました。
 この世界じゃ、これって事でお願いします。

 これからが本番です。
 頑張って、どんな魔法を使わせるか考えないとな。
 どうするかな。

 では、次回も気長にお待ち頂ければ。
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